迎撃、星戦型ダモクレス~美しき鎧装

作者:大丁

 月面には、ビルシャナ大菩薩決戦の戦場となった遺跡がある。
 対比するかのように、万能戦艦ケルベロスブレイドの姿。
 それらの、映像資料がすでに、ブリーフィングルームのスクリーンに投影されている。
 軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)は、ポインタを振るごとに、着衣の裾をふわふわさせた。
「投票により、アダム・カドモン率いるダモクレスとの決戦を行う事が決定したよぉ。これを最後の戦いとするためにも、全力を尽くさなきゃねぇ!」
 気合が入って、裾はひときわ大きく捲れあがる。
 現在、アダム・カドモンが座上する、惑星級星戦型ダモクレス『惑星マキナクロス』は、亜光速で太陽系に侵攻、太陽系の惑星の機械化を開始している。
 アダム・カドモンの目的は『機械化した惑星の運行を制御し、グランドクロスを発生させる』事だと予知されている。
 グランドクロスは、宇宙版の『季節の魔力』であり、その魔力で『暗夜の宝石である月』を再起動させ、地球のマキナクロス化を行おうとしているのだ。
「ダモクレス軍は、惑星の機械化と同時に、魔空回廊を利用して、月面遺跡の内部に直接、星戦型ダモクレスを転移させ、月遺跡の掌握を行おうとしているよ。みんなには、万能戦艦ケルベロスブレイドで月遺跡に急行し、遺跡の防衛を行ってもらいたいの」
 月遺跡の制御を奪うために、ダモクレスが狙うだろう地点は、聖王女エロヒムの協力により予知することが出来たという。
 この地点に先回りし、魔空回廊から転移してくる星戦型ダモクレスを迎撃し、月遺跡を守り抜くのが、今回の作戦の目的だ。
「敵は、魔空回廊を通じて星戦型ダモクレスを送り込んでくる。星戦型ってのは、宇宙での戦闘用に改修強化されたダモクレスのことね。1つの地域につき投入されるダモクレスは3体で、最初のダモクレスが現れてから8分後に、もう1体。更に8分後に、もう1体が魔空回廊から出現するの」
 素早く敵を撃破する事で各個撃破が可能だが、逆に、倒すのに手間取れば、複数の敵を同時に相手しなければならないのだ。
「どうしても、勝てそうにないときは、遺跡を破壊して撤退する決断も必要になるかも。『暗夜の宝石』の遺跡の破壊はできれば避けたいけど、地球のマキナクロス化を防ぐためには、やむを得ないかな」
 冬美は、裾をなおしてからプロジェクターを操作した。
「みんなに担当してもらう防衛地点は、天井がとっても高い宮殿のようなところ」
 月面遺跡の3D映像が拡大される。
 装飾された柱が並び、その一本ずつに制御用の機械が埋め込まれていた。
「魔空回廊を通って転移してくる星戦型ダモクレスは、いずれも等身大の女性型。フィルムスーツとアームドフォートを装備していて、飛行能力もあるの。遠近両方に対応した攻撃は、みんなの防御を削ってくるから、気を付けて!」
 スクリーンには、3体の全身図が映し出された。
 予知をもとに構成された推定画像だ。
 黒っぽい姿にそれぞれピンク、赤に紫といった個別のカラーを持っていた。
「先鋒は、ピンクスーツちゃんの『数の狩猟者カサンドラ』よ」
 画像では、右肩のレーザーキャノンに、チェーンソー剣を携えている。
「カサンドラは、今回の作戦にあわせて再起動されたみたいで、メモリーのほぼ全てを消失してる状態よ。だから、任務のことだけ考えてる感じなの。作戦遂行の妨げになるみんなのことを排除しようと攻撃してくるけど、数字や数字に関するものへの執着だけは残ってるみたいねぇ」
 冬美が次にポイントしたのは、赤スーツ。
 くすんだそれは血を連想させた。
「『ヴァンピレスのレモン・ブラムレオン』は、小悪魔のような性格で挑発的。本来は前線に出てこない身分らしいけど、遺跡制圧には前向きね。自分の棺桶でも背負っているかのような大きさの十字架型アームドフォートからは、コウモリのような戦闘ドローンが飛び出してくる。特に狙ってくるのはぁ……」
 ポインターの光点が、十字架のあたりをくるくる回った。
「美少女の血よぉ」
 レモンの二つ名の由来だという。
 最後に紹介されたのは、紫だ。
「大将で、この制圧部隊のボス格の『インヴィディア』」
 実際に指揮官機として制作されたらしい。
 アームドフォートは飛行ユニットとしても、防御マントとしても機能するようだ。
「まぁ、部下のことを下僕と呼ぶような尊大さも持ってるけど。あと、手にしたバスターライフルなんだけど、標的の構造的弱点を撃ち抜く腕前だから、こっちも要注意!」
 説明を終えた冬美は、上着を脱いで演台に置くと、皆の前に降りてきた。
「強敵との三連戦、わたしはみんなの勝利を信じてる。だから、元気に送りだすよ」
 サムズアップとともに、ぴょんっと跳ねる。
「レッツゴー! ケルベロス!」


参加者
パトリック・グッドフェロー(胡蝶の夢・e01239)
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
シフカ・ヴェルランド(鎖縛の銀狐・e11532)
白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)
小柳・瑠奈(暴龍・e31095)
 

■リプレイ

●月面遺跡
 ヴィ……ン!
 出力を上げた機械がバイブレーションを生み、ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)の体幹をつらぬく。
「……んっ」
 思わず、甘い吐息が漏れる。しかし、それもほんの一瞬だけだ。
 彼女のジェットパック・デバイスは良好で、ハイレグなレオタード型の戦闘スーツとも良くフィットしていた。
「ミスラちゃん、顔が赤いみたいだけど……」
 気になった白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)が声をかけてきた。
「いえ、お気になさらずに。それに……再生怪人はやられ役というのがセオリーです。一度は倒した相手……同じ相手なら私達が負ける理由はありません」
 そう告げると。
「それならよかったねん。何かあったらすぐ直してあげるよん」
 永代はいつも通りの服装で、周りには、いくつものドローンが、レスキュードローン・デバイスが舞っていた。
「何時も通り気楽にやっていこうと思ってたけど……流石に今回は無理そうだねん」
 ふと、少し前の冬美とのやりとりを思い出していた。

「あ、冬美ちゃん、一応人数分のヘリオンデバイス貸してくれる? それでも厳しい戦いになると思うけどねん。ま、頑張ってくるよん」
「はい! みんなの分、ちゃんと用意しておいたよ。みんな、頑張ってねぇ!」
 永代は、いつもと変わらぬ様子に思わず笑みがこぼれた。

「遂にここまで来たか……」
 その隣で、パトリック・グッドフェロー(胡蝶の夢・e01239)は、いつものように女の子と勘違いしそうな可愛らしい服装でこの地にやってきていた。ふと、内ポケットから写真を取り出す。そこに写っているのは、もう既にこの世にはいない彼女の姿。
「全ての仇をここで討つぜ、ユイ! ……いや」
 再び、その写真をポケットに仕舞い込んで、頭部につけた強化ゴーグル型のゴッドサイト・デバイスを目元に下ろした。
「兎にも角にもここは、ぶっつぶして、デウスエクスとの争いの全てを終わらせる!」
 そう意気込んで見せる。その先には、近づいてくる敵が見え始めていた。
 パトリック達は、月面遺跡内部の空洞を仲間とともに飛び、巨大な柱の間をすり抜けていく。
「正直、防衛戦はどうにも苦手ですね。負けた時にこちらが失うモノの事を意識してしまうので、気が沈みます」
 そう告げるのは、シフカ・ヴェルランド(鎖縛の銀狐・e11532)。ミスラと同じジェットパック・デバイスを背負い、愛用のブラックスーツを身に纏っている。
「とっとと終わらせてしまいたいものです」
 それはシフカの本心だろうか。憂いを帯びた表情でミスラと共に前衛に立つ。
「強敵相手の三連戦、か。ゲームのボスラッシュみたいで私は燃えて来るけれどね? 何と言っても、可愛い仔猫ちゃん達に私のカッコ良さを誇示できるワケだしさ」
 そう力強い言葉を口にするのは、小柳・瑠奈(暴龍・e31095)。白の艶めいたニンジャスーツを身に纏い、足には靴型のチェイスアート・デバイスを装着している。
「……と、戯言はその辺りにして、未来の為に全力を尽くそうか」
 目の前に現れたのは、第一の敵、数の狩猟者カサンドラ。
「……月遺跡は……我々のもの……消えろ」
 右肩のレーザーキャノンをケルベロス達に向け、チェーンソー剣を携えている。
「戦闘準備完了……では、行きましょうか」
 じゃらりと、シフカの両腕にまとわりついた鎖の音で、戦いの火蓋が切られたのだった。

●カサンドラとの戦闘
「……邪魔だ」
 一番先に狙われたのは、ミスラ。
「くっ……そうは、させるか!」
 カサンドラの持つダモクレス特有の、飛行能力を付加された推進力でもって放たれた無慈悲な斬撃が、虚空ノ双牙-陽-と虚空ノ双牙-陰-の2本の喰霊刀で、なんとか受け止めるも、スーツの一部が切り裂かれた。
 カサンドラの目覚めたばかりだというのに、勢いのある推進力に、ケルベロス達は目を見張るが、彼らにはへリオライダーから受け取ったヘリオンデバイスがある。二人のジェットパックと、ビーム牽引とで、カサンドラの攻撃を躱しつつ、相手のスーツを狙う剣戟が、柱と柱の間を縫うようにして、空中での接近戦が展開されていく。
「カサンドラ! これでも喰らいなさい!!」
 シフカは雷刃突を、雷の霊力を帯びた廃命白刃『Bluと願グ』で、神速の突きを繰り出していく。
 その間にミスラは。
「報復には許しを~♪ この魂に憐れみを~♪」
 憐れみの賛歌(キリエ・エレイソン)だ。救いを求める者、救われぬ者達へと向けた祈りの言葉を紡ぎ、祝福を込めた力の加護を、バッドステータスへの耐性を、前衛から高めていく。ミスラはこのまま、この場にいる全員の耐性を高めてから攻勢に入るつもりだ。
 目の前に繰り広げられるスーツの斬り合いに、永代は。
「相手側も綺麗な子で目の保養になりそうだけど……悠長に保養してる余裕が全くないねん。凄く、残念!」
 前衛を守るため、ヒーリングパピヨンとマインドシールドでもって、前衛の怪我を癒しながら、強化していく。
 と、そのときだった。ピピピと何かが鳴った。
「4っ!!」
 シフカの持つストップウォッチが4ターン目を知らせたのだ。キャスターはいないので、シフカは大きな声でもって、皆にそれを伝えると。
「……数字!」
 カサンドラは、大声で叫んだシフカにレーザーキャノンを放ってきた。
「キュイッ!!」
 そこに割り込むのは、パトリックのボクスドラゴンのティターニア。カサンドラにボクスタックルを仕掛けて、その軌道を逸らしたのだ。
「ありがとう、ティターニアさん! それと、やはり来ましたね……」
 シフカはにやりと笑みを浮かべる。そう、カサンドラは数字に反応したのは、かなり大きい。なぜなら。
「ああ、仔猫ちゃんが言ったのは、4! 4だったか!?」
 シフカの牽引を得ながら前に出る瑠奈も、あえてシフカの数字に返答をし、カサンドラの攻撃を引き付けながら、シャドウリッパーで、影の如き、視認困難な斬撃を繰り出し、密やかにカサンドラの急所を掻き斬った。
「オレも、うかうかしてられねえな……残像剣!!」
 パトリックのスパークバインから放たれた残像を伴う超高速斬撃で、カサンドラを斬り裂いていく。
「行くぞ! ……憑霊弧月!!」
 悪鬼羅刹紋を自らにかけ終わったミスラがやっと戦線に加わった。虚空ノ双牙-陰-に無数の霊体を憑依させ、斬りつけたカサンドラを汚染していく。

 気がつけば、シフカのストップウォッチが鳴った。
「7っ!!」
 戦いはかなり優位に続けられている。但し、前衛を務めるミスラとシフカ、それに攻撃を引きつける瑠奈の服は、切り裂かれ、少しずつ裸へと近づいていた。
 だが、服を切り刻んでいたのは敵だけではない。
 ケルベロス達もそう。カサンドラはケルベロス達よりも早く一糸まとわぬ姿になっていた。
「姉弟子様の子、使わせていただきます。螺旋忍法、『槍草葬』!」
 シフカが良く手懐けた攻性植物を地面に這わせ、合図と同時に硬質化した蔓を槍の様に伸ばしてカサンドラを貫く。
「がああああっ!!」
 そのまま、瑠奈が自らの周囲に一本の光の苦無と複数の影の苦無を顕現させ、標的に向かい一斉に射出した。
「Hasta la vista!!」
 BEFORE I FORGET(キセツハツギツギシンデイク)でもって、カサンドラはそのまま、後ろに吹き飛ばされると同時に爆発してその姿を消したのだった。

 結果、ケルベロス達は裸に近い状態ではあるが、全員が生き残ることが出来た。
「やった、倒したぜ!!」
 嬉しがるパトリックに永代が声をかけた。
「けどまた、次の子も来たようだねん」
 安息の時間はないようだ。
 そこに現れたのは、第二の敵『ヴァンピレスのレモン・ブラムレオン』。
 彼女の纏う紅に染まるスーツは、くすんだ血の色を連想させた。
 さっそく、自分の棺桶でも背負っているかのような大きさの十字架型アームドフォートから、コウモリのような戦闘ドローンが飛びだしてくる。
 彼女の……レモンの狙っているのは美少女の血だ。

●レモンとの戦闘
 レモンは、カサンドラの姿が無く、黒い爆発の跡を一瞥すると、すぐに先鋒の敗北を悟ったようだ。
「無様よね、カサンドラ。でも……」
 くすりと笑みを浮かべ、舌舐りしながらケルベロス達を……いや、ケルベロスの女性陣の姿の方を嬉しそうに見つめた。
「美味しそうな美少女達を残してくれたのは、褒めてあげる。このレモンがいただいてあげるわ♪」
「美少女って齢でもないがな」
 ミスラが言う隣で、シフカが。
「不死のヴァンピレスなら、年上なのかもしれませんよ」
「いくよ、仔猫ちゃん!」
 瑠奈の声にケルベロス達もすぐさま戦闘モードへと入っていく。
「はあっ!!」
 先陣を切ったのは、パトリック。後方から気咬弾を、レモンに喰らいつくオーラの弾丸を当てていった。
「喰霊殲神剣!!」
 ミスラは二振りの喰霊刀を暴走させて、喰霊刀究極奥義を放つ。
「早くレモンも倒しましょう!」
 手早くストップウォッチをセットし直すと、シフカも緩やかな弧を描く斬撃、月光斬で、腱や急所のみを的確に斬り裂いてみせる。
「なら、今のうちってねん!」
 永代も前に出て、マインドリングから光の剣を具現化し、そのまま敵を斬りつけた。
「仔猫ちゃんには悪いけど、これを喰らいな!」
 最後に瑠奈が空の霊力を帯びた惨殺ナイフで、レモンの傷跡を正確に斬り広げていった。
「あああん!! で、でも、そんなんじゃ、このレモンを倒せないわよ……」
 そう言って、レモンはコウモリ型の攻撃ドローンを放った。
「うわっ!!」
「くっ……」
 最初に狙われたのは、前衛の二人。先の戦いで削られた装甲がミスラとシフカをより痛みつけて来る。とっさにミスラは憐れみの賛歌で回復を図るが、与えられた傷を回復しきるまでには至っていない。
「二人も……!? 急ぐねん!」
 永代は変わった空気を変えるため、後方に下がりながら、急いで体力が減っているシフカへとマインドシールドを放つ。
「仔猫ちゃん達の援護は任せて!」
 デバイスの速度を使って、ナイフ片手にレモンの肉体を回復しづらい形状に斬り刻んでみせる。
「ティターニア! ブレスを頼む!」
 ボスクドラゴンの援護を受けながら、パトリックも負けじと残像剣を放ち、レモンへと攻撃を重ねていく。

 ここに来て、勢いづいていたケルベロス達の戦況が徐々に悪いものへと傾き始めた。最初に倒れたのは、前衛を担うシフカ。
「くはっ!!」
「シフカ!!」
 すぐさま、永代がドローンを使って、その倒れた身体を受け止める。
「こっちは任せろ!!」
 パトリックがその穴を塞ぐべく、前に出て行き、星座の重力を剣に宿しながら、あらゆる守護を無効化する重い斬撃を放った。
「ほら、こっちよ! 仔猫ちゃんっ!!」
 瑠奈がレモンの攻撃を引きつけていたのだが。
「ふふ、なら……貴女の血も頂いてあげるわ!」
「あああああっ!!」
 コウモリのドローンに襲われ、そのまま失神してしまった。彼女もまた、永代のドローンが回収を担う。
「くっ……瑠奈もか!!」
 ならばとミスラは捨て身の攻撃に出た。
「これでも喰らえ!!」
「一体何を……!?」
 レオタードの中で溜めに溜めた攻撃をレモンに浴びせたのだ。
 今までの攻撃で溢れた血と、熱くほとばしる体液が形を成す。
 CODE≪Gleipnir≫だ。ブラックスライムを捕食モードへと変え、レゾナンスグリードでもって、レモンを丸呑みにしたのだ。
「くっ身体が……で、でも……!!」
 動けなくなるレモンの代わりに、レモンのドローンがミスラを捉えた。
「ああっ!!」
 恍惚とした表情でミスラもその場に倒れ込む。
「痛いのは嫌だからねん。ちょっと、邪魔するぜ!」
 永代が絡み付く白焔(カラミツクビャクエン)を、白焔をレモンへ放ち、コウモリ型のドローンに纏わり付いて燃え盛っていく。レモンのドローンが一時的に操作不能になっていた。また、残りのドローンを全てレモンへの牽制へと行かせる。
「くっ……なんてこと!!」
 動けなくなっている間に倒れた三人の回収を終え、一気に後退していく。
「ちょっと勿体ないけどねん……」
 あられもない姿の女性陣をこのまま堪能したい気持ちは山々だが、一人で戦うパトリックの元へ急がねばならない。永代はほんの僅かな時間でその姿を目に焼き付けると、安全な場所でドローンを待機させ、踵を返すと戦場へと戻った。

●決着
 一方、レモンの攻撃を一人で担っているのは、パトリック。
「残念ね……貴女達、3人も倒れちゃったわよ……」
 そういうレモンもケルベロス達の攻撃により、かなり傷つけられていた。だが、その攻撃はなおも勢いを増していく。
「可愛い貴女も彼女たちのところへ連れて行ってあげる!!」
「くっ!!」
 コウモリ型のドローンがパトリックを襲った。
「……えっ……あ、貴女……」
 バリッとパトリックの服が破れ、その中が露わになったのだ。レモンはそのときにやっと気付いた。
 ニヤリと笑みを浮かべるのは、パトリック。
「わりぃ、オレ男なんだわ。服の趣味は、こんなんだけどな」
「きいいい、あんた、私を騙したのね!!」
「騙すもなにも、始めっから、オレは男だぞ!」
 と、そのときだった。
「悪い、待たせたねん!」
 ドローンを伴って後退していた永代が戻ってきた。すぐさま、パトリックの傷が癒される。
「いいわ、あんたから、消してあげる!!」
 戻ってきたばかりの永代を狙い、レモンはドローンを放った。
「気付いたって遅いねん!」
 いや、彼だけではない。
「キュイッ!!」
 忘れて欲しくないと、パトリックのティターニアが間に入り、その攻撃を肩代わりしてくれたのだ。
「ま、まだいたわね、そんなのがっ!!」
 劣勢ではあるが、まだ終わったわけではない。ティターニアに気を取られていたレモンに迫る影が。
「オレは生きる! 死ぬのはテメェだっ!!」
 渾身の力を込めたパトリックの攻撃! MIRAGE GLAVE(ミラージュ グレイブ)だ。
 無数の残像を伴う剣撃により、レモンのドローン攻撃を諸戸もせずに捌きつつ、放たれた一撃がレモンを貫いた。
「がああああああっ!!!」
 そのまま後ろへと吹き飛び、レモンはその身体を破損させながら、その場に動かなくなってしまった。
 ギリギリの戦い。ここで、ようやく2人目を倒したのだが。
「もうすぐ、三人目が……来ますっ!!」
 気力を振り絞り、シフカが声を張り上げた。
「くそ、こんな状況じゃ三人目を相手に出来ねぇ……」
「手はず通りに行くしかないねん!」
 二人は頷くとティターニアを伴って、急いで遺跡を破壊し、三人目である『インヴィディア』が来る前に撤退していく。
 厳しい戦いではあったが、こうして、ケルベロス達は2体の星戦型ダモクレスを撃破し、役目を終えたのであった。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年6月21日
難度:やや難
参加:5人
結果:成功!
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