「投票により、アダム・カドモン率いるダモクレスとの決戦を行う事が決定しましたが、敵は、こちらの決定などお構いなしに、既に太陽系に侵攻しています」
ヘリオライダーの高御倉・康が、真剣な表情で告げる。
「現在、アダム・カドモンが座上する、惑星級星戦型ダモクレス「惑星マキナクロス」は、亜光速で太陽系に侵攻、太陽系の惑星の機械化を開始していることが判明しました。予知によれば、アダム・カドモンの目的は『機械化した惑星の運行を制御し、グランドクロスを発生させる』事です。グランドクロスは、宇宙版の『季節の魔力』で、その魔力で『暗夜の宝石である月』を再起動させ、一気に地球のマキナクロス化を行おうとしているのです」
そう言って、康はプロジェクターに画像を出す。
「ダモクレス軍は、惑星の機械化と同時に、魔空回廊を利用して、月遺跡の内部に直接星戦型ダモクレスを転移させ、遺跡の掌握を行おうとしています。皆さんには、万能戦艦ケルベロスブレイドで月遺跡に急行し、遺跡の防衛を行ってもらいたいのです」
説明とともに、月面遺跡の位置画像が現れる。
「月遺跡の制御を奪う為にダモクレスが狙うだろう地点は、聖王女エロヒム様の御協力により予知することが出来ました。この地点に先回りし、魔空回廊から転移してくる星戦型ダモクレスを迎撃し、月遺跡を守り抜くのが、今回の作戦の目的となります」
そう言いながら、康は画像にズームをかけ、月面遺跡の一地点を示す。
「敵は、魔空回廊を通じて星戦型ダモクレスを送り込んできます。1つの地域につき投入されるダモクレスは3体で、最初のダモクレスが現れてから8分後に、もう1体。更に8分後に、もう一体が魔空回廊から出現します。素早く敵を撃破する事で各個撃破が可能ですが、逆に、倒すのに手間取れば、複数の敵を同時に相手しなければなりません」
そう言うと、康は一同を見回す。
「勝利が難しい場合は、遺跡を破壊して撤退する決断も必要になるでしょう。暗夜の宝石の遺跡の破壊はできれば避けたいですが、地球のマキナクロス化を防ぐためには、やむを得ないと思います。また、暴走して敵を倒した場合、遺跡が巻き添えになる可能性が高く、その後、理性を失って宇宙にさまよい出るので帰還の可能性が極めて低くなります。遺跡を破壊して撤退することが可能なら、暴走よりそちらを選ぶべきだと、私は思います」
もちろん、暴走せずに勝てれば何の問題もないんですけどね、と言い置いて、康は画像を切り替える。
「皆さんに待ち伏せをしていただく場所は、ここです。大菩薩決戦時の遺跡は、マスタービーストが改造を加えていた為『邪悪な神の神殿を思わせる禍々しい雰囲気』でしたが、今回戦場となる月遺跡内部は、暗夜の宝石の本来の姿となる為、ヴァルハラのような荘厳な神殿となります。周囲は保護の結界に覆われているので、意識的に破壊しようと思わなければ、グラビティの余波程度では壊れません。そして、最初に出現する星戦型ダモクレスは、これです」
康が画像を切り替え、一同の間から当惑したような声が漏れる。現れた画像は「月面遺跡に侵攻してくる星戦型ダモクレス」というイメージとはかけ離れた、何というか、珍妙なものだった。
「このダモクレスの名は『ロボティクス番長玉置ユウダイ』といいます。えーと、「最強の番長」の称号を得るため日本の学校の征服を目論んでいたらしいのですが、その作戦が実行される前にマキナクロス侵攻が始まり、星戦型ダモクレスに改造されました。ポジションはディフェンダー。ひたすら力押ししてきますが、とにかく頑丈で、気合で自己治癒もします。これが出現した後、8分後に次の星戦型ダモクレスが現れます。これです」
そう言って、康は画像を切り替える。
「こちらは『黒鉄マサト』という名で、元は人間だったものが、自分の意志で改造されてダモクレスになったようです。えーと、学園最強が望みだったようですが『ロボティクス番長玉置ユウダイ』の作戦と関係があったのかどうかは不明です。ポジションはスナイパー。腕のガトリングガンが主武器ですが目からビームも撃つようで、火力は『ユウダイ』より上かもしれません。そして更に8分後に現れるのが、これです」
そう言いながら、康は更に画像を切り替える。
「このダモクレスの名は『タイプ・ジョン』といいます。月面遺跡をコントロールする役目の一端を担う優秀なダモクレスで、攻撃より作戦指示やフォロー、回復等を得意とします。ポジションはキャスター。これが出てくるまでに二体の脳筋……いえ、実戦タイプを倒しておけば恐れるに足りないと思いますが、生き残っていた場合は目いっぱい厄介な事態になると予想されます」
そう言って、康は一同を見回す。
「月遺跡をダモクレスに掌握されれば、グランドクロスを用いた宇宙規模の『季節の魔力』により、地球は瞬時にマキナクロス化し、決戦は始まる前に敗北となってしまいます。何としてでも、阻止しなくてはなりません。月遺跡内部での戦いとなる為、ケルベロスブレイドの直接援護は受けられませんが、『ヘリオンデバイス』での支援は可能な限り行いますので、どうか星戦型ダモクレス三体の撃破をお願いします」
ケルベロスに勝利を、と、ヘリオンデバイスのコマンドワードを口にして、康は深々と頭を下げた。
参加者 | |
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日柳・蒼眞(落ちる男・e00793) |
スウ・ティー(爆弾魔・e01099) |
如月・シノブ(蒼の稲妻・e02809) |
皇・絶華(影月・e04491) |
揚・藍月(青龍・e04638) |
ニケ・ブレジニィ(マリーゴールド略してマリ子・e87256) |
●強敵! ロボティクス番長
「我こそは、最強無敵星戦型ダモクレス『ロボティクス番長玉置ユウダイ』だ! 地球の守護者ケルベロスよ、見知りおけ!」
魔空回廊から月面遺跡地下に出現した星戦型ダモクレスが、轟くような声で宣言する。
映像や資料で姿を見た時には、時代錯誤というか何というか、滑稽な感じしかしなかったが、実際に目の前に出てこられると、意外なほど圧が強い。
そして『番長』は、作業用ロボットじみた武骨な腕を、ずん、っと前へ突き出した。
「挨拶代わりに、こいつを一発喰らってもらおうか! 飛ばせ鉄拳、ロケットパァンチ!」
咆哮とともにパンチが打ち出され、レスキュードローン・デバイスを傍らに置いた後衛のニケ・ブレジニィ(マリーゴールド略してマリ子・e87256)を急襲する。
「か……はっ!」
ディフェンダーの庇いも間に合わず、デバイスを盾にもできず、むろん躱せるわけもなく、ニケは猛迫する鋼鉄の拳に直撃され、文字通り吹っ飛ばされる。
(「じょ、冗談じゃない! 何もしないうちに、やられてたまるもんですか!」)
消えそうになる意識を必死で繋ぎ止め、ニケは気力のすべてを注ぎ込んで踏みとどまる。開戦直後で万全だったHPが、あろうことが一撃ですべて飛ばされ、魂で肉体を凌駕することで、かろうじて戦闘不能に陥ることをまぬがれた。
「貴様っ!」
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)が火炎弾を乱射し、ダモクレスの肩から腕にかけて炎が付着する。続いて皇・絶華(影月・e04491)が、エアシューズ『斬狼』を駆使して重力蹴りを叩き込む。すると『番長』はにやりと笑った。
「やるな……そうこなくちゃいけねえ」
「お約束のセリフだねえ。でも、そんな余裕ぶっこいてていいのかい?」
スウ・ティー(爆弾魔・e01099)が軽口を叩きながら、ダモクレスの胸板に達人の一撃を打ち込み、氷を付着させる。続いてフードをかぶったままの如月・シノブ(蒼の稲妻・e02809)がルーンアックスを振るい、肩口に打ち込んで氷を付着させる。
揚・藍月(青龍・e04638)は自分とサーヴァントのボクスドラゴン『紅龍』を含む前衛五人に、応援爆破を送って攻撃力を上げる。一方『紅龍』は、瀕死のニケに属性インストールを行い、治癒とBS耐性付与を行う。
「ふううっ……」
大きく吐息をついて、ニケはアニミズムアンクを掲げた。周囲の岩盤と同調することで自分自身に大きな治癒を行い、かつ治癒力を上げる。当初から予定していた行動だが、しかし、これでも全快にはほど遠いほど手痛いダメージを、たった一撃で負うとは思ってもいなかった。
(「もう一撃受けたら……確実にやられる」)
全身が凍り付くような冷たい確信を無理矢理抑え込み、ニケは気丈にダモクレスを睨み据える。
すると『番長』は、拳を上方に突き上げて叫ぶ。
「気合だーっ!」
その瞬間、ダモクレスの身体に付着していた氷や炎がすべて消える。傷も、少なくとも目に付くようなものは残らない。
(「参ったな……予想以上の気合、いや回復力だぞ」)
内心唸ったが言葉には出さず、蒼眞は『番長』に斬りつけ、氷を付着する。続いて絶華が『斬狼』で炎の蹴りを入れる。更にスウが、オリジナルグラビティ『悪神の狡知(トリックスター)』を発動させる。
「惑乱の世界へようこそ」
スウがにこやかに言い放つと『番長』の周囲に散布された、浮遊する水晶形の「見えない機雷」が爆発し、氷や炎を増やしていくが、ダモクレスはさほど堪えた様子はない。続いてシノブがルーンアックスを叩きつけ、ダモクレスの肩の装甲板に亀裂を入れる。更に藍月が、縛霊手に雷の霊力を帯びさせ、シノブが作った亀裂に突き込む。『紅龍』はブレスを放ってBSを増やし、ニケはアンクを振るってダモクレスの回復を阻害する。
すると『番長』は、遺跡の床を蹴って強烈な回転飛び蹴りを放ってきた。
「必殺! 炎のキィィィィック!」
「ひいっ!」
おそらくグラインドファイアと同じ原理だろう。炎を伴う飛び蹴りが、あわやニケを直撃するかという寸前、『紅龍』が飛び出して攻撃を肩代わりする。ディフェンダーだけあって、さすがに一撃で戦闘不能とはならないが、ダメージは大きく炎のBSが付く。
「やってくれたな!」
蒼眞が踏み込んで斬霊刀を振るい、ダモクレスのBSを増やす。そして絶華がオリジナルグラビティ『四門「窮奇」(シモンキュウキ)』を発動させる。
「我が身…唯一つの凶獣なり……四凶門…「窮奇」……開門…!…ぐ…ガァアアアアアア!!!!」
「ぬおっ!」
凄まじい勢いで飛び掛かり、まさに凶獣の牙のようにカタール型惨殺ナイフ『三重臨界』を振るう絶華に対し、ダモクレスはわずかに下がって巧みに防御する。そして、その口元には不敵な笑みが浮かぶ。
「やってくれるじゃねえか……こいつぁ、歯応えがある」
「……歯応えがあるのは、貴様の方だ」
不承不承ながら相手の堅固さを認める口調で、絶華が唸る。この相手を、果たして8ターン以内に潰せるのか。
(「潰せなければ増援が来る……そうなったら、絶対に不利だ」)
言葉には出さず呟いて、絶華はぎりっと奥歯を噛んだ。
●死闘! 星戦型ダモクレス
「必殺! 炎のキィィィィック!」
「きゃあっ!」
それは、開戦から七分後。『ロボティクス番長玉置ユウダイ』が放った炎のキックが、執拗に狙われていたニケをついに直撃した。今度は凌駕もできず、ニケは意識を失い戦闘不能となる。
(「結局、こっちが先にやられちまったか」)
苦い思いとともに呻いた蒼眞が、斬霊刀を振るってダモクレスに斬りつける。
(「だが、かなり削ってはいるはずだ」)
『番長』は、ニケへの攻撃と気合による自己治癒を、交互に繰り返している。BSは気合で消されてしまうが、2ターン分のダメージは消しきれないらしく、身体のあちこちに傷が生じている。
「行くぞ、銀静……我が刃は鉄をも貫いて見せるっ!!!」
絶華が気合を籠めて黄金の斬霊刀『霊剣「Durandal Argentum」』で斬りこみ、ダモクレスの傷をなぞって広げる。
「ニケちゃん、落ちたか……きっついなあ」
ぼやきながらスウが『悪神の狡知(トリックスター)』を発動、『番長』を取り囲むように爆発を起こす。シノブはフードをかぶったまま、ルーンアックスを振るう。適当なタイミングでフードを脱ぎ、旧知のスウに挨拶するつもりだったが、完全に時機を逸してしまった。
続いて藍月が縛霊手を突き込み、『紅龍』がブレスを吐いてBSを増やす。ダモクレスは顔を顰め、わずかによろめくが倒れはしない。
そして8ターン目。『番長』は気合を放って自己治癒を行う。
「気合だーっ!」
(「くそっ……削り切れないか」)
呻きながらも蒼眞は『番長』に火炎弾を放ち、あらためて炎を付着させる。絶華も『斬狼』で炎の蹴りを入れる。スウは達人の一撃で氷付着、シノブはディフェンダーにポジションチェンジをする。藍月が縛霊手に雷を帯びさせて突き込み、『紅龍』がタックルを仕掛けるが、頑強なダモクレスは潰れるには至らない。
そして8ターンが終了し、二体目の星戦型ダモクレス『黒鉄マサト』が魔空回廊から姿を現わした。
「来たか……待ちかねたぜ。攻撃は任せた」
言い放つと『番長』は再び気合を放ち、自己治癒を行う。そして次の瞬間『黒鉄マサト』の右腕、ガトリングガンが火を噴いた。
「ヒャッハー! 皆殺しだぁ!」
「させるかよっ!」
シノブが蒼眞を、藍月が絶華を庇い、攻撃を肩代わりする。戦闘不能にこそならなかったものの、庇った二人はごっそりHPを奪われる。
(「ディフェンダーにポジションチェンジしていて、これかよ……」)
声には出さず、シノブが呻く。一方、蒼眞は『番長』を見据える。
(「こいつ……攻撃は増援に任せて、防御回復に徹する気か?」)
まずい、一人が戦闘不能、一人がクラッシャーからディフェンダーに変更した状態で、この固いダモクレスが防御回復に徹しようものなら、事実上潰せなくなる、と、蒼眞は内心歯噛みする。
(「こうなったら……いちかばちかだ!」)
しくじったら、次は遺跡を壊して暴走しかないな、と腹を据え、蒼眞はオリジナルグラビティ『巨大うにうに召喚(ギガントウニウニコーリング)』を発動させる。
「うにうにっ!」
「な、なんだっ!?」
この場に出てきて初めて、『番長』が狼狽した声を出す。その頭上から、蒼眞が召喚した謎の巨大存在『うにうに』が、どかっと雪崩れ落ちる。見栄えもへったくれもない、とにかくひたすらダメージが大きい質量攻撃を受け『番長』の全身各所が音をたててひしゃげ潰れる。
(「当たったか……」)
蒼眞が内心吐息をつき、続いて絶華が『四門「窮奇」(シモンキュウキ)』を発動させ、全力で敵の体力を削る。
「ここが攻め時……かね」
スウが『悪神の狡知(トリックスター)』を発動、絶華の猛攻を受けた『番長』の周囲で猛爆を起こす。シノブも自分の回復を後回しにして、オリジナルグラビティ『怪蛇噛鎖(テュポーン・アルスィード)』を放つ。
「毒蛇共、敵を蝕め」
禍々しい蛇の形へ変化したグラビティ・チェインが、もはや満身創痍の『番長』へと一斉に襲い掛かる。
「ぐわああっ!」
ついに苦痛の呻きを上げた『番長』へ、藍月が満を持してオリジナルグラビティ『神火八卦陣(シンカハッケジン)』を発動させる。
「八卦炉招来! 急急如律令! 行くぞ紅龍! 今こそ俺達の力を見せる時だ!」
「きゅあっ!」
藍月が八枚の板型呪符を飛ばして『番長』を包囲し、上方から『紅龍』が火炎弾を連続して数十発叩き込む。凄まじい高熱が籠り、ダモクレスの体表が熔けだした……と見えた瞬間、大爆発を起こした。
「や、やった……」
藍月が呟いたが、次の瞬間、『黒鉄マサト』が憤怒の咆哮をあげる。
「てめぇら、よくも番長を! 生かしちゃ帰さねえ!」
叫ぶと『マサト』は両眼を光らせ、スウめがけてビームを打ち込む。しかし命中寸前、『紅龍』が庇って肩代わりをする。
「貴様には、番長ほどの防御力はないよな?」
念を押すように告げ、蒼眞は『マサト』に火炎弾を浴びせた。
●決断
「死ねっ! 死ねっ! 死ねえっ!」
絶叫して『黒鉄マサト』がガトリング砲を乱射する。蒼眞を庇った『紅龍』が消滅し、庇われた蒼眞以外の前衛三人……絶華、シノブ、藍月が深手を負う。
(「……どちらが先に潰れるか、だな」)
言葉には出さずに呟き、蒼眞が斬霊刀を振るう。ぎゃあっ、と『マサト』が大仰な悲鳴を上げる。
そして絶華が、すかさず『斬狼』で炎の蹴りを入れる。
「く、くそお……てめえらなんかに……」
「それはこっちのセリフだよ。番長ならともかく、お前さんみたいなチンピラ君にはやられたくないねえ」
軽口とともに、スウが達人の一撃を打ち込む。BS耐性持ちの『マサト』に対抗するには【破剣】を付ける必要があるかと考えていたが、相手が激昂して自己治癒をしないので、それなら攻撃して潰してしまえ、という構えである。
そしてシノブがルーンアックスで、藍月が縛霊手で攻撃に出る。『マサト』の全身を氷と炎が苛む。
「えーい! とっとと死にやがれ!」
罵声とともに『マサト』は目からビームを撃つ。狙われたのはスウだったが、藍月が庇い、そのまま崩れ倒れ失神する。
「そっちこそ、とっとと死んでくれ」
真顔で応じ、蒼眞が斬霊刀を振るう。絶華も、黄金の斬霊刀『霊剣「Durandal Argentum」』で『マサト』の傷を正確に抉る。スウは『悪神の狡知(トリックスター)』シノブは『怪蛇噛鎖(テュポーン・アルスィード)』それぞれオリジナルグラビティで攻撃する。
「く……くそお……」
満身創痍の『マサト』が低く呻き、さすがに自己治癒するかと思った瞬間、ガトリング砲をぶっぱなす。
「死にやがれーっ!」
「ぐはっ……」
シノブが絶華を庇い、戦闘不能となる。蒼眞も銃弾を浴び、かなりの痛手を負ったが、戦えないほどではない。
「死ぬのはお前だ」
一瞬、うにうに召喚も考えたが、外れたら目も当てられない。蒼眞は『マサト』に火炎弾を撃ち込み、続いて絶華が『四門「窮奇」(シモンキュウキ)』を発動させる。
「我が身…唯一つの凶獣なり……四凶門…「窮奇」……開門…!…ぐ…ガァアアアアアア!!!!」
「ぎゃあああああっ!」
絶華に全身を滅多切りにされ『マサト』は断末魔の絶叫とともに絶命する。もとが人間だからなのか『番長』のように爆発はせず、全身をずたずたにされた無残な遺体が残る。
するとスウが『マサト』の遺体に銃弾を浴びせて細かく引き裂き、そして抑揚のない声で告げた。
「三人……いや、四人か。とにかく半分やられた。遺跡を壊して撤収しよう」
「えっ?」
絶華が、一瞬、何を言われたかわからない、という表情になったが、蒼眞は即座にうなずく。
「そうだな。敵の三人目が出てきたら勝ち目がない。今のうちに撤収だ」
「勝ち目は……ないか?」
訊ねるというよりは自問するように絶華が呟いたが、蒼眞は淡々と応じた。
「ない。最悪、催眠だの麻痺だの付けられて、遺跡の破壊も暴走もできないまま全滅しかねない。そのリスクは冒せまい?」
「……確かに」
うなずいて、絶華は失神している藍月を担ぎ上げた。蒼眞はニケ、スウはシノブを担ぎ、そして無雑作に、壁際の遺跡に向かって大量の銃弾をばらまく。中には火炎弾もあったのか、各所で火が燃え上がる。
「こんなもんかな?」
「いいだろう。長居は無用だ」
短く言葉を交わし、彼らは破壊された月面遺跡を後にした。
作者:秋津透 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年6月17日
難度:やや難
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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