●都内某所
芝刈り機が置かれていたのは、納屋の奥だった。
芝刈り機を使っていた祖父が亡くなり、孫が納屋の奥にしまい込んでしまったため、存在すらも忘れられていた。
だが、芝刈り機の考えは違っていた。
もっと働きたい、頑張りたい。
ガンガン芝を刈って、刈りまくりたい。
その気持ちが小型の蜘蛛型ダモクレスを呼び寄せた。
小型の蜘蛛型ダモクレスは、芝刈り機の思いを受け止め、機械的なヒールをかけた。
「シバカリキィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した芝刈り機が、耳障りな機械音を響かせながら、納屋の壁を突き破るのであった。
●セリカからの依頼
「野々宮・くるる(紅葉舞・e38038)さんが危惧していた通り、都内某所にある納屋でダモクレスの発生が確認されました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある民家の納屋。
この奥にしまわれていた芝刈り機が、ダモクレスと化してしまうようである。
「ダモクレスと化すのは、芝刈り機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていった。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスと化した芝刈り機は、機械で出来たケモノのような姿をしているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
カタリーナ・シュナイダー(断罪者の痕・e20661) |
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176) |
野々宮・くるる(紅葉舞・e38038) |
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384) |
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764) |
九田葉・礼(心の律動・e87556) |
●都内某所
「わたしが危惧していたダモクレスが本当に出て来るとはね。まぁ、これも何かの縁だろうし、誰かの命を奪う前に倒してしまおうかな」
野々宮・くるる(紅葉舞・e38038)は仲間達と共に、ダモクレスの存在が確認された民家にやってきた。
民家の敷地には納屋があり、そこに問題の芝刈り機があった。
だが、そこは民家の敷地内。
念のため、民家の所有者に事情を話したところ、迷惑そうにしながらも、納得した様子でケルベロス達の要求を受け入れた。
ただし、ダモクレスと戦うのであれば、民家の所有者が帰ってくる前に、終わらせてほしいという事だった。
「……芝刈り機か。僕は、あまり芝刈りみたいな仕事はした事ないから、使い勝手が分からないけど……」
そんな中、四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、キープアウトテープを貼った。
その間に、騒ぎを聞きつけた野次馬達が、ワラワラと集まってきたものの、立入禁止テープが貼られているため、敷地内に入ってくる者はいなかった。
「確かに、芝刈り機って、使い方が良く分からないのよね。まぁ、草が生えっぱなしの土地は勘弁して欲しいから、芝刈り機が必要な時ってあると思うけど……」
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)が、自分なりの考えを述べた。
しかし、民家の所有者は、芝刈り機を必要としなかった。
それどころか、ケルベロス達に言われるまで、その存在を忘れていたほど、どうでもよいシロモノだったようである。
そのため、芝刈り機の話をしても、最初はピンと来なかったらしく、『あー、まだあったんだ、アレ。てっきり捨てたんだと思っていたわ。処分するんだったら、好きにしていいわ』と言った感じであった。
「何だか色々と事情がありそうだけど、芝刈機が命を刈るなんて、シャレにならないと思うの……。ちゃんと動くなら、欲しい人に気軽に譲れるようなシステムないのかな?」
九田葉・礼(心の律動・e87556)が、気まずい様子で汗を流した。
このままでは負の連鎖が終わらない。
少なくとも、ダモクレスが存在している限り、ここ戦いが終わる事はないだろう。
それでも、このまま何もしなければ、確実に犠牲者が出てしまうため、放っておく訳には行かなかった。
「まあ、芝刈り機がダモクレスの力を手にしたところで、ケルベロスの首までは刈り取れまい。屑鉄にして産業廃棄物の山にぶち込んでやる」
そう言ってカタリーナ・シュナイダー(断罪者の痕・e20661)が、納屋の前に陣取った。
既に覚悟が出来ているため、迷いは……ない!
……後はダモクレスが現れるのを待つだけである。
「シバカリキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その挑発に乗るようにして、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせながら、納屋の壁を突き破って、ケルベロス達の前に現れた。
ダモクレスは機械で出来たクマのような姿をしており、ケルベロス達を睨みつけて、グルルッと機械音を響かせ、前脚で地面を蹴った。
「この手の事件は後を絶たんな……。SYSTEM COMBAT MODE」
それを迎え撃つようにして、マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)がダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
「シバカリキィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
すぐさま、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、超強力なビームを放ってきた。
そのビームが地面を削り、物干し台を破壊し、植木鉢を蹴散らしながら、ケルベロス達に迫ってきた。
おそらく、この状況を民家の持ち主が目の当たりにしたら、悲鳴を上げながら卒倒するだろう。
しかし、ダモクレスにとっては、単なる障害物でしかないため、まったく躊躇いがないようだった。
それどころか、ケルベロス達と戦うため、すべて壊す勢いで行動しているようだった。
「雪の属性よ、仲間を護る盾を形成しなさい!」
即座に、依鈴がエナジープロテクションで雪属性の盾を形成すると、ダモクレスが放ったビームを防いだ。
その拍子に、尻餅をついてしまったものの、既にビームが消えていたため、命にはまったく別条がなかった。
「まさか、その程度の実力で、私達に攻撃を仕掛けてきたのか? だとしたら、愚かを通り越して、滑稽だな。自分の選択が間違っていた事を、あの世で後悔するといい。まあ、そもそも……あの世に逝くかどうかも分からないが……」
その間に、カタリーナがゼログラビトンを仕掛け、ダモクレスのグラビティを中和し、弱体化するエネルギー光弾を射出した。
「それに、いまさら何を言ったところで無駄な事。俺達を敵に回した。その事で、すべてが決まってしまったのだから……」
それに合わせて、マークがゼログラビトンを仕掛け、ダモクレスのビームを弱体化させて無力化した。
「シ、シ、シィィィィィィィィィィィィ……」
その事に気づいたダモクレスが、動揺した様子で再びビームを放とうとした。
だが、ビームは完全に弱体化しており、安っぽい水鉄砲のように、少しだけ飛んだ。
「それじゃ、ビームを撃っても意味がないね」
その隙をつくようにして、くるるがスターゲイザーを放ち、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「バカリィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その一撃を食らったダモクレスが吹っ飛び、民家の窓ガラスを突き破って応接間に転がった。
「……後でヒールを使っておかないとね」
そこに追い打ちをかけるようにして、司もスターゲイザーを放ち、ダモクレスの身体を戸棚にめり込ませた。
一応、ヒールをしておけば、すべて修復する事が出来るものの、あまりにも甚大な被害を出しているため、その気持ちは複雑だった。
それも、そのはず。
ダモクレスが破壊した物の中には、とても高価な壺や皿などもあったため、頭の中が円マークでいっぱいになった。
「とにかく、今はダモクレスを倒す事だけ考えましょう」
そんな空気を察した礼が、仲間達に声を掛けながら、ボディヒーリングを発動させた。
「シィィィィィィィィィィィィバァァァァァァァァァァァァァ!」
それと同時に、ダモクレスがムックリと立ち上がり、芝刈り機型の腕を振り回した。
その姿は、異様そのもの。
クルクルと芝刈り機型の腕を回転させる事によって、威力が増す訳ではないようだが、物凄い勢いで迫ってくるため、反射的に身構えてしまう程のヤバさがあった。
「……ここは私に任せてください!」
すぐさま、礼がエナジープロテクションを発動させ、ダモクレスの攻撃を防いだ。
「カリィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それでも、ダモクレスは諦めておらず、殺意を剥き出しにして、ジリジリと距離を縮めてきた。
しかし、礼はまったく臆する事無く、仲間達を信じるようにして、まっすぐダモクレスを睨みつけていた。
「この地に眠る霊達よ、仲間を癒してあげてね」
その隙をつくようにして、依鈴がゴーストヒールを発動させ、この地に眠る霊の力を借りて礼の傷を癒した。
「……背中がガラ空きだ」
その間に、マークがダモクレスの背後に回り込み、フォートレスキャノンを撃ち込んだ。
「キィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その一撃を食らったダモクレスが、再び前脚を地面につけ、苛立ちを隠せない様子で唸り声のような機械音を響かせた。
「機械が生命体を象ったところで、所詮は人工物。人の上に立てるなどと思い上がるな」
そこに追い打ちをかけるようにして、カタリーナがバスタービームを放ち、ダモクレスの顔面を破壊した。
「炎よ、高く昇れー!」
それに合わせて、くるるがグラインドファイアを放ち、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「シィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その熱さから逃れるようにしながら、ダモクレスが応接間にあるモノを壊しまわった。
「これ以上、抵抗しても無駄だよ」
その行く手を阻むようにして、司が薔薇の剣戟を仕掛け、華麗な薔薇の舞でダモクレスを翻弄し、次々と攻撃を繰り出し、装甲を剥ぎ取った。
「ババアァァァァァァァァァァァァ!」
その事に危機感を覚えたダモクレスが、大量のミサイルを発射した。
発射されたミサイルは次々と爆発し、家の中にあったモノを、ガタクタの山に変えていった。
「……重力装甲展開……」
即座に、マークが重力装甲(ジュウリョクソウコウ)を発動させ、グラビティの防護膜を展開し、ダモクレスが放ったミサイルから身を守った。
「もうあなたに勝ち目はありませんよ。この魂達が、それを許さないのだから……」
それに合わせて、礼がArmoerd Prison(アーマードプリズン)で光の翼が粒子化させ、様々な武器に変化させてダモクレスの身体に突き刺した。
「カ、カ、カ、カァァァァァァァァァァァァァァ」
その途端、ダモクレスの動きが封じられ、悔しそうにガタガタと身体を震わせた。
だが、その気持ちに反して、身体は全く動かず、無駄に時間ばかりが過ぎていった。
「いい加減に、現実を受け入れたら、どうだ? これ以上、足掻いたところで、苦しむだけだ」
カタリーナがダモクレスに視線を送り、破鎧衝を繰り出した。
その一撃を食らったダモクレスの背部装甲が弾け飛び、無防備なコア部分があらわになった。
「……そろそろ終わりにするわよ」
それと同時に、依鈴が鈴蘭の吹雪(スズランノフブキ)を発動させ、鈴蘭の花弁を吹雪の如く飛ばし、ダモクレスを攻撃した。
「リィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その攻撃を防ぐようにして、ダモクレスが勢いよく立ち上がった。
「わざわざ狙いやすくしてくれたんだから、外す訳には行かないよね」
その間に、くるるがダモクレスの背後に回り込み、木枯らし乱舞(コガラシランブ)を仕掛け、華麗なる舞と共にレイピアを振るい、ダモクレスのコア部分を破壊した。
「キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスが断末魔のような機械音を響かせ、大爆発を起こしてガラクタの山と化した。
「何とかダモクレスを倒す事が出来たけど……。酷い有り様だね、これは……。この家の人が帰ってくる前に、全部修復しておこうか」
そう言って司が苦笑いを浮かべながら、仲間達と協力して辺りをヒールで修復するのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年6月8日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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