迎撃、星戦型ダモクレス~月遺跡防衛作戦!

作者:青葉桂都

●決戦! ダモクレス!
 集まったケルベロスたちをゆっくりと見回すと、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)は語り始めた。
「投票の結果、アダム・カドモン率いるダモクレスと決戦を行うことになりました」
 全力を尽くさねばならない。これを、最後の戦いとするために。
「現在、アダム・カドモンが座上する惑星級星戦型ダモクレス『惑星マキナクロス』は亜光速で太陽系に侵攻してきています」
 そして、太陽系の惑星の機械化を開始しているのだ。
「アダム・カドモンの目的はグランドクロスを発生させることと予知されています。惑星を機械化して運行を制御しているのです」
 グランドクロスとは宇宙における『季節の魔力』となる。その魔力を用いて『暗夜の宝石』、すなわち月を再起動させて、地球をマキナクロス化しようとしているのだ。
「ダモクレス軍は惑星の機械化と同時に、魔空回廊を利用して月面遺跡の内部に直接、星戦型ダモクレスを転移させています」
 月遺跡の掌握をはかっているのだと、芹架は言った。
「皆さんには、万能戦艦ケルベロスブレイドで月遺跡に急行して、遺跡の防衛を行っていただきます」
 ケルベロスたちへ告げると、彼女は頭を下げた。
「今回の目的は月遺跡を守り抜くことです。ダモクレスが狙う地点については、聖王女エロヒムの協力により予知することができています」
 予知を元に先回りして、魔空回廊から転移してくる星戦型ダモクレスを迎撃するのだ。
「1つの地域に投入されるダモクレスは3体と予知されています。2体目の転移は最初のダモクレスの8分後になります。3体目はさらにその8分後です」
 つまり、それぞれの敵を8分以内に倒せば各個撃破できるということだ。逆に、倒すのに手間取れば複数の敵を同時に戦うことになって、不利になるだろう。
 敵が狙ってくる地点は、いずれも暗夜の宝石の制御を司る重要地点だ。
「勝利が難しい場合は、遺跡を破壊して撤退する決断も必要になるでしょう」
 暗夜の宝石の遺跡を破壊することはできれば避けたいところだが、地球のマキナクロス化を防ぐためにはやむを得ない。
 防衛を行う各地点には、それぞれ月遺跡を制御するための機械が設置されている。
 ただ、ダモクレスは遺跡の制圧が目的であり、機械を狙うことはないので戦闘に大きな影響はないだろう。
 戦場となる部屋に、機械以外に目立った障害物はない。
「それから、皆さんが迎撃していただく3体のダモクレスについてです」
 いずれも宇宙戦闘用に改造され、強化されており、強敵だ。もっとも、機械の制御を行う都合上、いずれも大型ではない。
「皆さんに戦っていただく敵のうち、2体は『アミューズメント・オクテット』と呼ばれるゲーム機を模したダモクレスです」
 全部で8体いるそうだが、そのうちの2体が今回の敵だ。
「最初に出現する敵は、両手にレーザー銃を持つミスター・ガンシューティングです」
 精密かつ素早い射撃を得意とするダモクレスだ。爆弾を設置して範囲攻撃を行ってくることもある。遮蔽物をうまく使って身を隠し、防御力を高めることもできる。
 主に中距離での戦闘を挑んでくるだろう。
「8分後に出現する2体目は、巨大な車輪を身に着けたダモクレス、ミスター・カーレースです」
 近距離で守りを固めながら、炎をまとって戦場を縦横無尽に駆け回り、突撃攻撃をしてくる。
 また、意外と妨害が得意なようで、戦場を走り回ってプレッシャーをかけてきたり、オイルをまき散らして攻撃しにくくしてくることもある。
「そして、さらに8分後に現れる3体目は、ネットワークを介して機械を操ることを得意とするダモクレス、ハルドゥグエルです」
 バニーガールのような見た目をしているが、侮れる相手ではない。
 無線を介して周囲の機械を操り、攻撃させる技を使ってくる。変幻自在の攻撃で、連続して攻撃を仕掛けてくることも多い。複数の機械を操って範囲攻撃も可能だ。
 また、特殊な信号を脳に送り込んで対象のトラウマを呼び起こすこともできる。
 ケルベロスから距離を取って、遠距離から攻撃を仕掛けてくるようだ。
「前の敵を倒しきれないうちに次の敵が現れたら、苦しい戦いになるでしょう。できるだけ短期決戦を意図して動くのが望ましいと考えられます」
 最悪の場合は、制御装置を破壊して撤退してほしいと、芹架は改めて告げた。
「ついにダモクレスとの決着をつけるときが来ました。月遺跡を奪われ、『季節の魔力』を使われたなら、地球のマキナクロス化を止める術はありません」
 遺跡を守り、地球を守れるのは、ケルベロスたちだけなのだ。
 芹架はそう告げて、頭を下げた。


参加者
クロノ・アルザスター(彩雲のサーブルダンサー・e00110)
ペテス・アイティオ(オラトリオのヤバくないほう・e01194)
アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)
ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)
ルーノ・シエラ(月下の独奏会・e02260)
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)

■リプレイ

●月遺跡の守り手
 幾度目かとなる宇宙への道行き。ケルベロスたちは月に存在する遺跡へと降り立つ。
 万能戦艦ケルベロスブレイドが遺跡へ着陸すると、すぐに予知されたダモクレスの出現地点へと向かった。
「また月で戦うことになるとはな」
 グレイン・シュリーフェン(森狼・e02868)は周囲を眺める。
 マスタービーストとの戦いでこの遺跡を訪れた者がいたならば、印象が明らかに変わっていると感じたことだろう。
 禍々しさは消え、どこか荘厳さすら感じさせる機械群。
 これこそが『暗夜の宝石』の本来の姿なのだろう。
「遺跡も地球も、守り通すぜ」
 愛用の[Taurus]が刻まれたゾディアックソードを握って、青年は仲間たちと共に戦場となる一室へ向かって走り出す。
「かはぁー。テーマパークに来たみたいだぜぇ。テンション上がるわねルーノちゃん」
 クロノ・アルザスター(彩雲のサーブルダンサー・e00110)は明るく笑って、隣にいる金髪の女性へと声をかける。
「いやーすんごー。宇宙来るのこれ何回目だっけ。次いつ来れるかわかんないし今回は忘れず写真撮っとこうね」
「もう、クロノ。観光じゃないんだぞ」
 呆れた顔をしてルーノ・シエラ(月下の独奏会・e02260)が応じる。
 きつい言い方はいつも通りだが、慣れない月の重力のためか、どこかその動きはいつもよりぎこちなかった。
「戦いに勝てば、いつだって来れるさ。……多分」
「だね! そのためにも頑張ろうねルーノちゃん」
 言葉を交わして、2人は待機すべき場所へと移動していった。
 敵が出現する時間ももうすぐのはずだ。
「ダモクレスとの最後に近い戦闘か」
 誰にともなく、アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)が呟いた。
「んー、結構長い事闘い続けてきたとは思う。それが終わらせれるなら頑張って終わらせたいな。鈴も、煉も、一緒に頑張ろうね」
 過去の戦いに思いを馳せながら、アリアは友人たちに声をかけた。
「そうですね……。アダム・カドモンとの交渉は決裂ですか……」
 神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)が言葉を発する。彼女の想いは、いくらか複雑そうだった。
「でも、勝てばわたしたちの望みを叶える情報のデータを渡すなんて……レンちゃんの想い自体は届いてたんだね……」
「ああ……そうだな」
 弟の神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)が、姉に相槌を打つ。
(けど、俺たちがうまくやってれば、ここ戦い自体避けられてたはずだ)
 十二創神アダム・カドモンとの交渉に加わっていた1人である煉は、その想いを心から拭い去ることができなかった。
「ケルベロスの総意としてダモクレスは倒すことに決まったんだ。今更どうこういっても始まんねぇよな」
 それを振り切るように、煉は拳を握る。
 謎の機械が並ぶ『暗夜の宝石』の重要地点の1つに、ケルベロスたちは布陣する。
 それぞれの武器を抜き、それぞれの位置につく。
「準備よし! いつでもかかってくるといいよ! 短期決戦! みんな、集中していこうね!」
 ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)はいつ魔空回廊が現れてもいいように、油断なく身構える。
 そして、それは出現した。
「来たよ!」
 警戒を呼びかける言葉が終わる前に、もうケルベロスたちの視線は魔空回廊と、そこから現れる1体の人間型ダモクレスへと向いていた。
 両手に玩具のような光線銃を手にしたダモクレス、ミスター・ガンシューティング。
 アーケードゲームから生まれた敵が持つ銃は、見た目通りの玩具などではない。
「宇宙の行く末を決めるこの戦い、一歩も引くわけにはいかないです! この遺跡も地球も守りきってみせますです!」
 ペテス・アイティオ(オラトリオのヤバくないほう・e01194)の決意を意に介す様子もなく、敵は素早く銃を構えた。
 遺跡の一室に、光が走った。

●ミスター・ガンシューティング
 第1の敵は、素早く謎の機械が置かれた遺跡内を駆け出した。
 敵を追い詰めるべく、味方の前衛たちが動き出す。
「気をつけてね! そいつ、爆弾を置きながら動いてる!」
 ルアは後方から狙いをつけながら仲間へと警告を発する。
 爆発が部屋を揺らしたのはその直後だった。
「僕の仲間はやらせないよ!」
 アリアがルーノと共にとっさに他の前衛をかばう。ドラゴニアンの黒い翼が揺れた。
「動きが早いな。だが、感覚を研ぎ澄ませれば――」
 グレインがオウガメタル粒子を放って、仲間たちの感覚を強化する。
「短期決戦で決めなきゃだけど、焦らずに連携はしていかなきゃね」
「ああ。まずは足止めからだ!」
 蒼い炎を床に走らせ、煉が飛び蹴りを放つ。
「リューちゃん、一緒にみんなを回復してね!」
 ボクスドラゴンのリュガに指示を出しながら、鈴が仲間たちを回復する。
 距離を取るダモクレスの動きに狙いをつけて、ルアは敵の前へ回り込んだ。
「ここを渡すわけには行かないからさ……だから、いまコロスから逃げんなよ!!」
 怒りの咆哮と共に繰り出す拳が、ミスター・ガンシューティングの硬い装甲を突き破って貫いた。
 後方へと倒れこんで、敵は彼の拳を引き抜き、同時に追撃してくる他のケルベロスたちの攻撃を回避しようとする。
「やっぱりキャスターみたいですね。氷漬けにしてやるです!」
 ペテスが時空凍結弾を放った。
「その玩具みたいな銃、吹っ飛ばしちゃうからね!」
 敵の手にした銃を見つめて、クロノも意識を集中する。アリアが放つ石化光線も遺跡の部屋の中を走り抜けた。
(「みんな、ダモクレスの動きにしっかりついて行ってるのね。足手まといにならないように、がんばらなきゃ」)
 ルーノは指輪をはめた指先を強く握りしめる。
 不可視の盾が彼女の身を守る。最初に浴びた爆発で、敵の実力は十分にわかる。それでも、少しでも長く立っていようと、ルーノは改めて自らに言い聞かせる。
 ミスター・ガンシューティングは両手の銃から光線を放ち、常に中距離からケルベロスたちを狙おうと、ところ狭しと戦場を動き回る。
 キャスターである敵はケルベロスたちの攻撃は少なからず回避してくる。
 短期決戦を行おうとする仲間たちにとっては厄介だ。攻撃をかわされ、あるいは命中してもかすり傷だった。
 だが、2分、3分と戦闘時間が経過する間に、ケルベロスたちは少しずつ敵の体力を削り取っていく。
 そして、グレインが用意してきたタイマーの音が、遺跡の一室に響いた。
「あと1分で次の奴が来るぞ!」
 ミスター・ガンシューティングは時間を稼ごうとした。障害物に身を隠そうとする。
「かくれんぼはさせねえぜ」
 グレインは牡牛座の重力を剣に宿し、その遮蔽物を一気に断ち切る。
「ここで決めるぜ、姉ちゃん!」
 煉は敵の側面に回り込む。回避しようとした敵を、鈴がいる方へと追い込む。
「わかったよ、レンちゃん! 力が正義……デウスエクスの考え方……思う所がないとはいえないけれど……」
 右腕に宿る蒼き炎が、敵の向こうで姉の腕が放つ白光と引き合う。
「あなた達の覚悟と正義には全力で応えます」
 そして、2人の声と技が重なる。
「これが俺(わたし)達の絆っ!」
 蒼と白が交差して、その交点にミスター・ガンシューティングはもう動くこともできずにそれを受けた。
「俺らはお前らを倒して、俺らが望む平和な世界を作っていく」
「……やってみろ」
 最期に言葉を残し、ミスター・ガンシューティングの体が砕け散った。
「誇り高き好敵手。お前らのことは忘れない」
 振り向けば、そこに第2の敵が現れる魔空回廊が出現している。
「みんな大丈夫? まだまだ行ける?」
 ルアが仲間たちに問いかける。
 息をつく時間もろくにないまま、ケルベロスたちは次なる敵との戦いに突入した。

●ミスター・カーレース
 第2のダモクレスは、エキゾースト・サウンドと共に魔空回廊から飛び出してきた。
 めちゃくちゃに走り回る敵から、ケルベロスたちは確かに視線を感じる。
 原色の派手な色をした車は、レースゲームの筐体が形となった存在だ。
 そして、ミスター・カーレースは、加速しながらケルベロスたちを容赦なくひき殺そうとしていた。
 前衛の間を駆け巡る敵から、ディフェンダーの2人は再び仲間をかばう。
「休む時間もないのね。さっさと片付けちゃいましょ、クロノ」
「そうね。もう1体が来る前に、倒しちゃいたいわ」
 精神の盾で身を守りながら告げるルーノに、クロノが応じる。レイピアに埋め込んだ七色の宝石が、静かに煌めいた。
 星戦型ダモクレスの1体、ミスター・カーレースは一度停止し、車体をアーマーのように着込んだ人型となってケルベロスたちと対峙する。
 残骸となった仲間へと敵は一瞬視線を向けたが、言葉は発しなかった。
「できたらこいつも、次が来る前に倒しちゃいたいねー。次もよろしくね、鈴ちゃん」
「はい。予想通りディフェンダーみたいですけど、削りきるつもりでがんばりましょう」
 敵の動きを観察しながら、後衛のルアと鈴が言葉を交わす。狙いすましたルアの攻撃が守りを固めたダモクレスを打つ。
「大地に眠る祖霊の魂……今ここに……闇を照らし、 道を示せ!」
 薙ぎ払われた前衛たちへと、鈴が改めて狼の群れのエネルギー体を召喚して支援する。
 リュガもルーノへ属性をインストールして回復していた。
 すでに消耗しているケルベロスたちにとって2戦目は楽な戦いではないが、それは最初から分かっていたことだ。
 走り回り、そしてオイルをまき散らして攻撃してくるダモクレスの攻撃をしのぎながら、ケルベロスたちは戦いを続ける。
「さっきの奴よりは当てやすいみたいだな。つっても、その分硬いんなら厄介なことに違いはねえか」
 狼頭のハンマーを砲へと変化させて、煉が竜砲弾を叩きこむ。
 敵の足を止め、まるでプラスチックのようでありながら、非常に硬いその装甲を削り取って行こうとする。
「今回も力を貸してくれよ、傷つけないための力を」
 グレインは月のエレメントに呼びかけて、癒しのエネルギー球でルーノを包んだ。
 まるで不毛の大地に見える月も、ケルベロスたちへ恩恵を与えてくれる。
 消耗は蓄積し、鈴とリュガだけでは癒やしきれなくなってきた。
 守りを固めながらもミスター・カーレースの攻撃はケルベロスたちへ有効打を積み重ねてきているのだ。

●ハルドゥグエル
 魔空回廊から現れた3体目は、これまでの2体とは印象の違う敵だった。
 なにしろバニーガールだ。もっとも、宙に浮くディスプレイで即座に状況を分析する姿を見れば、それが前の2体同様容易ならざる相手であることはわかる。
「最良ではないけど最悪でもない、というところね」
 どこか嫌な笑みを唇が形作る。
 ミスター・カーレースがハルドゥグエルを守れる位置に立ちつつ、再び車へ変じた。
 2体に増えた敵の攻撃が、ケルベロスたちを傷つけていく。
 もっともカーレースの体力は残り少ないはずだ。敵に回復手段はない。ケルベロスたちは攻撃を集中する。
 弱ったダモクレスが、炎をまとってクロノへと突撃してきた。
「危ない!」
 ルーノが彼女をとっさにかばう。
「ありがと。でも、無理はしないでね、ルーノちゃん!」
「ディフェンダーの仕事をしてるだけよ。心配なんて……あっ!」
 言いかけたルーノの背中を、誤作動した……いや、させられた月の機械から飛び出した光線が貫いた。
 衝撃で意識がかすむ。
(「でも……クロノを守れた……役に立てたよね」)
 倒れる寸前に見えたのは、七色の剣閃。美しく舞うクロノの剣舞だった。
 クロノはルーノが倒れた瞬間、ハルドゥグエルを睨みつけた。
 その視界をカーレースがふさぐ。
「わかってるわ、まずあなたから倒す!」
 七色の軌跡を引いてクロノが剣を振り上げる。
「さぁ、煌めけ彩雲剣この宇宙を七色の光で染めあげろ! クレッシェンドファング!」
 振り下ろしたのか、薙いだか、突いたか。三日月のごとく様を変え、彩雲剣が敵を断つ。
「……あとは頼む」
 そう言い残して、ダモクレスの車輪か止まった。
 残る敵は1体。
「こいつを倒せばステージクリアか。守って帰らなきゃいけねえからな」
 帰るべき場所へ想いを馳せ、グレインは渾身の力で幸運の星を蹴り飛ばす。
 ハルドゥグエルが空中に指先を走らせる。
「気をつけてください! 月が唸ってむぅんとなるです! 機械を操るなんて、なんて奇っ怪なです!」
 狙われたのは、そう警告したペテスだった。
「くだらないダジャレを言えないようにしてあげるわ」
「わたしのDドライブ勝手に見るのやめてです!」
 ボケの花が生えた脳に、電気信号が送り込まれ、見えないはずのものが見えてきた……。
「ペテスさん、しっかりしてください!」
「あっ、ちょうちょ?」
 鈴がパズルから飛ばした蝶がペテスを癒やす。
「やっぱり回復役を先に潰さなきゃダメね」
 その鈴へと、今度は遺跡の機械から電撃が飛んだ。
 アリアがとっさにその前に割り込む。
 浴びた電撃にアリアは顔をしかめるが、すぐに鈴へと笑みを向けた。
「あまり思い詰めすぎない様にね、鈴」
「アリアさん……ありがとうございます」
 反撃とアリアが放つ電撃が、床を伝って敵を痺れさせる。
 その後もハルドゥグエルの攻撃は回復役を狙ってきた。
「女の戦いってやつかな? けど、鈴ちゃんに倒れられちゃ困るんだよね!」
「ああ、姉ちゃんはやらせねぇよ!」
 ルアの拳と煉の蹴りが相次いで敵を打つ。
 クロノが七色の光をまとって舞い、敵の装甲を打ち穿つ。グレインのナイフが敵を切り刻む。
 アリアや鈴が倒れるよりわずかに早く、ハルドゥグエルが限界を迎えた。
「これ以上頭をいじくられる前に終わらせてあげますよ!」
 ペテスは気合を入れながらスマホを取り出した。
「来たれ、降りそそげ、滅びの雨よ!」
 ポチポチと画面をタップする。
 月遺跡の天井を突き破って、無数の無人飛行機がハルドゥグエルへと降り注いだ。
 ダモクレスは空を見上げて息を吐く。
「そう。意志を通すのはケルベロスってわけね……」
 飛行機の雨を浴びながら、ハルドゥグエルはつまらなそうに呟き……無人飛行機の爆発に消えていった。
 3体のダモクレスは滅びた。確認した限り、部屋はともかく機械に被害はないようだ。
「さぁて帰ろっか。次来るときはただの旅行で来たいわねぇ。万能戦艦で」
 ルーノを助け起こしながら、クロノが軽い調子で言う。
「あいきゃんふらーい! ……ってひとっ飛びで帰りたいですね」
 飛行機の雨で開いた穴を見上げてペテスが言った。
 だが、襲撃部隊を撃退しても、いまだ敵には十二創神アダム・カドモンが残っている……。
 遺跡を平和に活用する日は、きっとまだ遠いのだろう。
 倒れたダモクレスたちに視線を送り、ケルベロスたちは次なる戦い――決戦に想いを馳せた。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年6月17日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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