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「皆さんが投票してくださったおかげで、アダム・カドモン率いるダモクレスとの決戦を行うことに決まったであります。これを最後の戦いとするためにも、全力を尽くしましょう」
小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が、そんな通達と激励から説明を始める。
「現在、アダム・カドモンが座上する惑星級星戦型ダモクレス『惑星マキナクロス』は、亜光速で太陽系に侵攻、太陽系の惑星の機械化を開始しているであります」
アダム・カドモンの目的は『機械化した惑星の運行を制御し、グランドクロスを発生させる』ことだと予知にて判明している。
「グランドクロスは宇宙版の『季節の魔力』とでも言うべきものでありますから、その魔力で『暗夜の宝石である月』を再起動させ、地球のマキナクロス化を行おうとしてるのでありましょうね」
と、推測するかけら。
また、ダモクレス軍は惑星の機械化と同時に、魔空回廊を利用して月面遺跡の内部へ星戦型ダモクレスを直接転移させ、月遺跡の掌握を目指しているという。
「そこで皆さんには、万能戦艦ケルベロスブレイドで月遺跡に急行し、遺跡の防衛を行っていただきたいのであります」
よろしくお願いします——かけらが笑顔で頭を下げる。
「さて。月遺跡の制御を奪うべくダモクレスが狙うだろう地点は、聖王女エロヒムのご協力によって予知できたであります」
この地点に先回りし、魔空回廊から転移してくる星戦型ダモクレスを迎撃、月遺跡を守り抜くのが今回の作戦の目的となる。
「敵は、魔空回廊を通じて星戦型ダモクレスを送り込んでくるであります」
1つの地域につき投入されるダモクレスは3体。
最初のダモクレスが現れてから8分後にもう1体、加えて8分後にもう1体が魔空回廊から出現する。
「素早く敵を撃破することで各個撃破も可能でありますが、反面、倒すのに手間取れば、複数の敵を同時に相手しなければならないでありますね」
もしも勝利が難しい場合は、遺跡を破壊して撤退する決断も必要になるだろう。
「暗夜の宝石の遺跡の破壊はできれば避けたいありますが、地球のマキナクロス化を防ぐためにはやむを得ないでありましょう」
そんな、万一の場合は破壊することになる月面遺跡については、
「かの大菩薩決戦の時は、マスタービーストが改造を加えていたために無闇矢鱈と禍々しい雰囲気でありましたが、現在の月面遺跡は暗夜の宝石の本来の姿でありますから、荘厳な神殿っぽい雰囲気に驚かれるかもしれませんね」
とかけらが補足した。
ヴァルハラを思わせる荘厳な雰囲気の神殿の中に、エネルギーが枯渇したらしき動かない機械類が放置されているという。
「皆さんに撃破していただきたい星戦型ダモクレスは、『ブラッドベリ』『蒼天のジェノサイダー マックスレア』『プリデウス・ギャルド・デ・パレ』の3体であります」
ブラッドベリは、いかにも研究者然とした痩身の白衣男。
蒼天のジェノサイダー マックスレアは、外装の鮮やかな青と背負った銃火器が特徴的な女性型ダモクレス。
プリデウス・ギャルド・デ・パレは、白馬の下半身に騎士の上半身を乗せたような異様な風体、なおかつ剣のみならずガトリングガンまで備えたフルアーマーダモクレスだ。
「今申し上げた順に出てくるでありますから、戦況次第では3体全てと必ずしも戦えるとは限りません。例の遺跡破壊の決断を迫られる場合もありましょう」
ちなみに、とかけらは付け加える。
「万能戦艦ケルベロスブレイドの最高速度は時速50,000kmであります。一番違い惑星の金星へ移動するのにも数ヶ月かかってしまうため、太陽系の惑星の機械化を止めることは出来ないのであります」
それゆえ、月遺跡をダモクレスに掌握されれば、完成したグランドクロスによる宇宙規模の『季節の魔力』で、地球は瞬時にマキナクロス化し、決戦は敗北となってしまう。
「どうか、月遺跡を守り抜いてくださいませ。遺跡内部での戦いでありますから、万能戦艦ケルベロスブレイドの援護は受けられませんが、皆さんならきっと勝てるでありますよ」
かけらはそう話を締め括って、皆を激励したのだった。
参加者 | |
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シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する悩める人形娘・e00858) |
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542) |
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716) |
霧崎・天音(ラストドラゴンスレイヤー・e18738) |
ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397) |
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402) |
月白・鈴菜(月見草・e37082) |
宮岸・愛純(冗談の通じない男・e41541) |
●
月面遺跡。
星戦型ダモクレスの先鋒、ブラッドベリが魔空回廊から現れるまでに、8人は臨戦態勢を整えていた。
「クックック……惑星直列……コンピュータウィルス神化計画の完成を飾るに相応しいセレモニーではないか」
一方ブラッドベリはケルベロスたちと対峙するなり、個人的な企みをベラベラと喋り始める。
「果たして私の故郷は如何様に変質するのか。粘性の戯言は溝の底に投擲すべきで、兎角、月に吼える獣の真似事を成そう」
この隙を逃す手はないと、ミミックのエイクリィと共に迎え撃つのはユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)。
相変わらず難解な言い回しで月面での戦いに意欲を見せる、虹色の翼と蟹の脚に似た尻尾が特徴的なサキュバスの女性だ。
「私は貴様等の母親で、故に胎帰りを諦め難いのか。おいで――冥王星の名に賭けて」
ユグゴトは『砲撃形態』に変形した脳漿砕きをぶん回して、竜砲弾を発射。
早期撃破すべく正確に射線を通して轟竜砲を撃ち込み、ブラッドベリの動きを鈍らせた。
エイクリィもエクトプラズム製の鈍器を手に勢いよく突撃。ブラッドベリを殴りつけて重い余韻を残した。
「いきなり最後の要で防衛しないとなんてね」
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)は、予め仲間と合わせておいた時計を確認してから、自分もドラゴニックハンマーを振りかぶる。
今回は何より短期決戦が目標なため、日頃ディフェンダーを得意するかぐらも火力を重視してクラッシャーに回っている。
「1体ずつしか来ないのは、魔空回廊に転送制限とかあったんだったかしら?」
そんな疑問を抱きつつも、ドラゴニック・パワーを噴射してハンマーに加速をつけるかぐら。
「まぁ、それだけ1体1体が強いってことなんでしょうけど……」
勢いに乗ってブラッドベリの肩を打ち抜き、全力で叩き潰した。
一方。
「なんだか……私の記憶の奥底に残っている……敵の姿……」
霧崎・天音(ラストドラゴンスレイヤー・e18738)は、無表情ながらもどこか遠い目をして呟いた。
足元まで伸びた赤く豊かな髪が美しい、かつては人型ダモクレス部隊の副隊長だったというレプリカントの少女だ。
「未来を願うのは同じ……だから私は……地球の未来のために戦う……」
天音は昔の同胞と戦う決意も新たに、天音専用エアシューズを履いた足で機敏に跳躍。
光の尾たなびく重い飛び蹴りを炸裂させて、ブラッドベリの機動力を削ぎ落とした。
他方。
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)は、腕時計のアラームが7分おきに3回鳴るようセットされているのを確かめつつ、遺跡の床をしっかと踏み締める。
「結局、最後までアロアロの臆病は治らないね……」
そんな自分の背中へ隠れてふるふると震えているアロアロを宥める声は、穏やかで優しい。
地球の情勢が大きく変わろうとしている今、変わらないやりとりが無意識のうちに安心できるのかもしれない。
「これが、最後の戦いになるのかな……ううん、最後の戦いにしないと、だよね」
そう噛み締めるように呟いて、理力のこもった星型のオーラをブラッドベリへ蹴りつけるマヒナ。
アロアロも懸命に祈りを捧げて、天音の異常耐性を高めている。
「グランドクロス、子供の時に憧れた言葉だが……マキナクロス化は断固として阻止するよ」
すっくと立ち上がるのは、マヒナの側で機械の縁に腰掛けていたピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)。
(「アダム・カドモン、彼はきっと誇り高い。この戦いで手を抜くのは礼を欠くな……」)
いつになく真剣な面持ちで身構えるピジョンの腕を這っていたヤモリ——メタリックチョロが籠手のように広がって展開。
そして鋼の鬼と化した拳を、ピジョンはブラッドベリの腹部へ勢いよく減り込ませ、白衣ごと奴の装甲を貫いた。
テレビウムのマギーもまた、手にした凶器でブラッドベリの四肢を容赦なく切り裂いている。
「グランドクロスが発動したその時、我が長年の研究がようやく日の目を見るのだぁぁ!!」
いかにも狂科学者らしい耳障りな笑い声を上げながら、電脳マキナクロスを召喚するブラッドベリ。
グラビティにより再現されたミニチュアマキナクロスが、反射的にユグゴトを庇ったマギーへ白い凍気を浴びせた。
次第に戦いが激しさを増す中。
「7分経ったよ」
タイムキーパーのマヒナから鋭い声も上がる。
「今回の敵はどう見てもリア充には見えないんだよねえ」
宮岸・愛純(冗談の通じない男・e41541)は、仲間の強化と回復に奔走しつつも悩んでいた。確かに研究一筋っぽいブラッドベリ単体で見ればさもあろうか。
「正直リア充相手でないとやる気しないんだよなあ」
何とも緊張感のない悩みであるが、嫉妬が原動力の愛純にとっては戦意を大幅に左右されるそれはもう重大な関心事だ。
「とりあえずどっかにリア充的要素はあるんだろうたぶん。そう思い込んで殴るか」
そう無理矢理結論づけた愛純は、弱まった地獄の心臓を燃え上がらせて、
「リア充は死ね! きさまがいくら否定しても間違いなく私よりはリア充寄りだ!」
全身から迸る情熱を片手に集中させ、怒りの拳をブラッドベリに叩きつける。
「リア充は悪!! やはり死ね!! 地獄の業火に焼かれて死ね!!」
物理的な破壊力に地獄の業火が上乗せされて、ブラッドベリの顔面を焼き尽くした。
しっと魂はナノナノバリアを展開、念を入れてかぐらを治癒している。
「mefiance……改修程度で治るとは思えませんの」
シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する悩める人形娘・e00858)は、憂いを帯びた表情で溜め息をつく。
最後に投入される筈のプリデウス・ギャルド・デ・パレは、彼女の知る限り、敵味方の区別がつかずに無差別攻撃する欠陥を抱えていたからだ。
「敵味方の入り乱れる戦場にお兄様を投入するなんて、嫌な予感がしますの」
そんな不安を忘れようと首を振り、エクトプラズムを圧縮するシエナ。
装着したヴィオロンテが大きな霊弾を拵えて押し出し、ブラッドベリに真正面からぶち当てた。
「……ダモクレス達はコギトエルゴスム化を捨てればいつかは死ぬ……」
月白・鈴菜(月見草・e37082)は、地球の運命がかかった戦いの中で、静かな声ながら両者の生存競争を嘆いていた。
「……地球側は将来歪みが生じればまたデウスエクス達に虐殺されるかもしれない……」
ケルベロスとして活動するうちに、情緒面がかなり成長したとみえる、彼女の達観である。
「……戦いにもなるわね……」
その一方で、バトルオーラから『物質の時間を凍結する弾丸』を精製する鈴菜。
撃ち出した時空凍結弾がブラッドベリの胸を貫通、心身共に凍てつかせた。
●
次に現れたのは蒼天のジェノサイダー マックスレア。
「故郷が青々かは解せないが。惑星、何処かだったには違いない」
すかさずユグゴトが、醜悪なる母体の偶像を蟹座の形に素早く並べ替える。
「この奇怪な妄想の吐き散らしに付き合い給え」
輝く蟹オーラが光芒となって、マックスレアの胸へ突き刺さった。
エイクリィもぴょんぴょん飛び跳ねてブラッドベリに肉薄。骨だけかと思う細さの足へ鋭い牙を突き立てている。
「できれば立ち位置を判断したいけど、構わず火力を重視した方がいいかしら?」
かぐらはマックスレアの動きを注視しつつ、ゾディアックソードを構えてじりじりとブラッドベリへ距離を詰めるのも忘れない。
達人の域に到った剣戟がブラッドベリへ襲いかかり、肩口をバッサリ切り裂くと同時に凍らせた。
「たとえ私がやられ……電脳マキナ……バックアップ……本星に」
それが、ブラッドベリの最期の言葉だった。
「こうなるんだろうなってことは、分かってた。ワタシが不死に抵抗を覚えるのと一緒で、ダモクレスも不死を捨てたくないの分かるもの」
マヒナはふと複雑そうな顔になって、砲撃形態のハンマーを握る手にも力がこもる。
「でも……結局は戦うしかないのってなんだかもやもやする……」
尽きぬ懊悩を振り切るようにぶっ放した竜砲弾がマックスレアの銀の翼を打ち砕き、体力を削るのみならず奴の平衡感覚をも失わせた。
「目には目を。蒼には蒼を、かな」
ピジョンは予め儀式魔術を済ませておいたブルーアゲート・ナイフを閃かせる。
殺傷力の増したザラザラした刃が卓越したナイフ捌きによって空を切り、マックスレアの外装を刺し貫いた。
マギーもピンクの画面から眩い閃光を照射、鬱陶しいほどの点滅でマックスレアの神経を逆撫でする。
「侵入者を排除する」
マックスレアは抑揚のない音声を響かせるや、全身に仕込まれた砲口の照準を定めて、一斉砲撃を仕掛けてきた。
ババババババ——!!
実弾レーザー織り交ぜた光と炎の雨が、前衛陣を煙で覆い、断続的な激痛を与える。
「……戦力の逐次投入は非合理的……」
と、予定通りに転送されてきたマックスレアを見やって、眉を顰めるのは鈴菜。
「ヘリオライダーの予知を知らないにしても……地球へ近付けばその分反撃される危険性も上がるのは分かるでしょうに……」
そう不思議がる間にも、鈴菜は素早く竜語魔法を詠唱。
「ダモクレス達にも案外余裕はないのかしら……?」
掌から放たれた『ドラゴンの幻影』が、マックスレアを焼き捨てんばかりの勢いで燃え上がらせた。
「14分経ったわ」
次はかぐらがアラームの作動を伝える。
「……再びあのような惨事が引き起こされるのだけは……それだけは避けねばなりませんの」
シエナはヴィオロンテに支えさせたバスターライフルからゼログラビトンを撃ち出す。
大きなエネルギー光弾がマックスレアの全身を飲み込み、銃火器のグラビティを中和して、弱体化させた。
「ああ、そういえばこれまではあんなリア充やこんなリア充と戦って……」
と、殆どは自ら激化させたリア充との抗争の数々を思い返すのは愛純。
「あれ? あんまり勝ててないような気がするのは気のせい? まあいいや」
一人で墓穴もといボケつつもマックスレアを殴りつけ、しっかり己が『属性』を爆発させて追い打ちをかけていた。何の属性かは言わずもがな。
しっと魂はしっと魂で、せっせとハート光線をぶっ放し、マックスレアの腹に風穴を開けてやろうと必死である。
「どんなに追い詰められても負けない……私はヒトの世界を守る」
天音は、両腕のパイルバンカーから螺旋力をジェット噴射し、それを推進力がわりに飛び上がる。
そのまま錐揉み回転を強めてマックスレアへ突撃、自らの拳で奴の装甲を抉り抜き、ついにトドメを刺した。
●
戦闘開始から16分。プリデウス・ギャルド・デ・パレが現れた時、一行はまたも2体同時に相手どらねばならない可能性がなくなって安堵した。
だが、先の敵たちを素早く撃破するために相当神経を使った自覚もある。
回復もそつなくこなしているものの、連戦の疲労は決して肉体ばかりではない——まだまだ油断はできないと再び気を引き締める8人。
「Question……お兄様、敵と味方の区別はついていますの?」
元ダモクレスだったシエナの出自が偲ばれる呼び方で、プリデウスを心配するシエナ。
——ブォンッ! ズドドドドド……!!
しかし、闇雲に剣を振り回すプリデウスに妹の言葉は届かず、ひたすらガトリングガンから実弾を乱射し、後衛陣に火傷を負わせている。
「星に乗って移動すれば中の人の消耗は少ないでしょうけど、実際に来るまで思いもしなかったわ……」
まさしく現在侵攻中の惑星マキナクロスについて、想定外だと呟くのはかぐら。
そんな驚きと危機感を集中力に変えて精神を極限まで統一、プリデウスを直接触れることなく爆破して大ダメージを与えた。
「貴様の物語を否定する」
次いでユグゴトがプリデウスの存在を『否定』し、証明を混濁させる。
混濁させられた『もの』は自身の在り方をも見失い、攻撃の回避すら放棄せざるを得ない。
エイクリィも両刃の剣をエクトプラズムで拵えて、プリデウスの前脚へ果敢に斬りかかっている。
(「戦う結末でも、マキナクロスの人を奪ったりはしない……これ以上の破壊は私は望んでない……」)
地獄の炎に染みついたデウスエクスの犠牲者たちの憎しみの炎で右脚を燃え上がらせるのは天音。
恨みの力は天音の足を勝手に動かし、無数の炎の刃に変じてプリデウスの胴へ続々と突き刺さった。
「今で21分だよ。あと少し頑張ろう……!」
マヒナは手慣れた様子でヤシの木の幻影を顕現。プリデウスの頭上高くから、景気良く連続でココナッツを落とした。
——ゴッ! ゴスッ! 痛そうな音が遺跡内に鈍く響き渡る。
アロアロはその音にびくつきながらも、非物質化した爪を振るってプリデウスの白い腿を力いっぱい引っ掻いている。
「ごめんね、僕も君らと同じように負けるわけにはいかないんだよ!」
と、気迫充分に断言するのはピジョン。
そして昂る精神を限界以上に集中させると、プリデウスの大剣と右腕を一気に爆破した。
マギーは仲間を応援する動画を流し、瞬く間にシエナの怪我を治した。
「よしよし、攻撃は最大の防御。それはリア充相手でもそれ以外でも同じだあね」
燃える拳に一撃必殺の気合を込め、全身全霊をかけて振り下ろすのは愛純。
しっと魂も何度目かのナノナノばりあを張って、しっかりと戦線の維持に努めていた。
「……ケルベロスを滅ぼすのなら、必然的に彼も殺すのでしょう……?」
鈴菜はいつになく感情を剥き出しにした啖呵と共に、構えた掌からドラゴニックミラージュを放つ。
「……貴方達にどんな理由があるとしても……彼を傷付けようとするのなら私の敵よ……!」
ドラゴンの幻影がプリデウスを襲い、その巨体を赤々とした炎が舐めるように包み込んで焼き尽くした。
「プリデウスお兄様……機能停止させられる覚悟はおありですの?」
どことなく寂しさの滲んだ声で呟くと、空高く飛び上がるのはシエナ。
脚力のない主の代わりに、懸命に地面を蹴っているヴィオロンテが甲斐甲斐しい。
「Sans doute……理性と同じで全くおありにならないんでしょうね」
美しい虹を纏ったフェアリーブーツによる急降下蹴りを浴びせて、プリデウスの息の根を止めた。
ドスーーン……!
停まったら死ぬマグロの如く、ひたすら暴れ続けていたプリデウス・ギャルド・デ・パレは、声にならぬ断末魔が最後、地面へ横倒れになって二度と動くことはなかった。
月遺跡の一角を無傷で守り切った8人は、ダモクレス3体の遺骸を残し、早々に帰還する。
それぞれの敵にかけた時間は、ブラッドベリが10分強、マックスレアが8分前後——同時に相手どっていた乱戦が2分ほど——、プリデウスがおよそ12分。綿密な戦術を立てていた8人の堅実な勝利といえよう。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年6月17日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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