迎撃、星戦型ダモクレス～暗夜に降る雷雨

■リプレイ

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　チームを編成したケルベロス達は次々と月面遺跡内部へ突入していく。どうやら、内部では普通に呼吸はできるようだ。
「なるほど、あの時の戦いから見違えるようだな」
　ヴィクトル・ヴェルマン（ネズミ機兵・e44135）は以前、ビルシャナとの決戦の際に訪れた時から雰囲気が大きく変わったことに気付く。修理屋であるヴィクトルはこの場で機械の修理ができないことを残念がっていた。
　それもそのはず、今度はダモクレスとの決戦に臨まねばならないからだ。
「ダモクレス共も、飽くまで己が信じた道を進むというわけか……」
「和解が望めぬというのならば、最後の最後まで戦うしかあるまい」
　アデレード・ヴェルンシュタイン（愛と正義の告死天使・e24828）が小さく頭を振ると、カタリーナ・シュナイダー（断罪者の痕・e20661）は守るべき機械を背にして意を決する。
「我々が滅びるか、奴らが滅びるか、その日が来るまでこの戦いは続く」
　一方、円城・キアリ（傷だらけの仔猫・e09214）は、超神機アダム・カドモンの意見を受け容れたいと考えていたのだが。
「……ここで戦うダモクレスたちを殺す覚悟は、決めてきたわ。でも――ダモクレスという種族を滅ぼさない覚悟も決めてきたのよ」
　いつか、彼らとも歩める未来があると、信じるキアリと同意見のケルベロスは少なくないだろう。
　とはいえ、ダモクレスは全面交戦の構え。
　キアリも交戦に備え、途轍もなく長いストール状のジェットパックデバイスを首に巻き、風を孕んで飛翔する。
　他のメンバーも戦いの為に手早く準備を進める。
　例えば、霧鷹・ユーリ（鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284）はマインドウィスパーを使って仲間と通信会話ができる環境を整えていた。
　また、そのユーリやリーゼン・トラ（さすらいのヤンキードクター・e03420）、中条・竜矢（蒼き悠久の幻影竜・e32186）は自らの時計などを使ってタイマーをセットする。
　目安となるのは戦闘開始から６、７、１５分後。事前情報から、増援となる敵の出現タイミングを考え、仲間内で決めたタイミングだ。
　早速、魔空回廊を通じて目の前に現れるダモクレス。
「さあ、始めましょう」
　実験機I型……オラージュ・イグルーは下半身の機械触手を広げて身構える。後続が来るまでの時間稼ぎといったところだろう。
「所詮はダモクレス時代の私の試作機。進化系たる私（と数の暴力）の敵ではない！！」
　仲間と同じくタイマー、アラームをセットするテンペスタ・シェイクスピア（究極レプリカントキック・e00991）は後続も含め、自分の姉妹機ともいえる存在を目にして討伐に強い気概を見せる。
「正義と正義がぶつかったのならば、後は武をもって真の正義を決めるのみ！」
「Vallop(ぶちのめせ）！」
　アデレード、ヴィクトルが敵を前にして、早速攻撃を開始するのである。

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　ケルベロスが背にする遺跡の機械を、攻め入るダモクレスらから防衛することが今回の任務。
　３体襲い来る実験機シリーズ、雷雨を意味する「オラージュ」を全て撃破すれば良し。最悪、打ち漏らすことがあれば機械の破壊はやむなしだが、できればそれを避けたいという状況である。
「我らは……我らが正義……即ち地球を護るためにただ、武器を振るうのみよ！」
　先手をとったアデレードが砲撃形態とした竜槌から弾丸を撃ち込み、早速イグルーの動きを止めようとする。次は殺神ウィルスをと準備を進める。
　ただ、やはり相手はデウスエクス。すぐさま前方へと機械触手を打ち付けると同時に電流を放出してくる。広域破壊にふさわしい技だ。
「防御は任せてください！　最後まで守って見せます！」
　仲間へと声がけする竜矢は前線の仲間と共に受け止め、耐えきって見せる。そして、すぐさま竜矢は自前の竜槌で、やはり敵めがけて弾丸を叩き込む。
「支援してやっからな」
　また、仲間が攻撃されれば、リーゼンがすかさず独自のグラビティ「再生理威全斗路駆恩新弗」で、癒しの力を込めたリーゼントから光の針を拡散放出する。
「その刃、地を斬り、海を斬り、空を斬り……竜をも、天の星すらも裂いて、この世に斬れぬものは無し。仮初めなれど――刮目して見よ！」
　刻々で時間経過を把握するキアリは、オルトロスのアロンが神器の剣で切りかかるのに合わせ、自らの手刀に幻影で再現した英雄王シグムンドの愛剣バルムンクで切りかかる。
　多少機械触手が切り払われても、イグルーは守りを固めて自己修復してしまう。
「我らの底意地、死ぬほど思い知らせてやる」
　そいつ目掛け、飛翔するカタリーナがフロストレーザーを浴びせかけて。
「ドッカン大砲ーー！」
　続けざまにユーリの放つ轟砲が凍った箇所に炸裂し、イグルーは僅かに体勢を乱しかけていた。
　メンバー達の攻撃が続く中、態勢が整ったイグルーはベースプロテクションで身を守る。
「これぞ我が必殺！！　トンファーキック！！」
　それを見たテンペスタは無駄に洗練された無駄のない無駄な動きで翠の光を放ちながら前蹴りを叩き込む。
　イグルーの機械触手に乱れが生じたところで、ヴィクトルがその間隙を狙ってガジェットより素早く弾丸を浴びせかける。
　機械触手の根本へと入る亀裂。さすがにイグルーも顔を顰めていたようだった。

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　その後、全力を尽くし、ケルベロスらはイグルーの撃破を目指す。
　ただ、相手は防御、支援に特化したタイプ。なかなかにその護りは崩れない。
　そこで、次々に鳴り響くメンバーのアラーム。６分を知らせる合図だ。
「後２分です！　一気に畳み掛けましょう！」
　ユーリが仲間へと呼びかけ、再び守りを固めようとしていたイグルーの姿に妖精靴でステップを踏んで。
「スゥゥパァァァ、鬼天竺鼠ァァァッ！　キィィィィィィィック！！」
　星型のオーラを打ち込まれたイグルーはその場に踏みとどまるが、ダメージは小さくない様子。
　ちらりと後ろを振り返るイグルーは、後続の仲間を待っていたのは間違いない。
　じっと守りを固めながらも、電流触手を展開するイグルー。
　そいつを倒すべく、さらに７分のアラームが鳴り響く中、テンペスタは凍気を纏わせた両足のパイルを打ち込み、ダモクレスとしての命までも凍り付かせ、穿たんとする。
　その一撃を受けてもなお倒れぬイグルーが小さく笑う。
　刹那開いた魔空回廊から現れた新たなオラージュ、グレイシャー。
「――任務を開始します」
　早速、腕の冷却兵装を突き出したオラージュが放つ凍気は前方に氷壁を展開し、その場にいた者を氷に包み込んでしまう勢いだ。
　アデレードや竜矢は仲間を守るべく冷却攻撃に耐えきって見せるが、体を覆ってしまう氷はかなり鬱陶しく、放置していれば追撃で大ダメージを受けてしまう。
「安心しな、俺が支えるぜ！」
　ただ、後方からリーゼンが笑みを浮かべたことで、アデレードはイグルーの撃破に注力し、攻撃パターンを変えて簒奪者の鎌を振るった斬撃から地獄の炎弾を飛ばす。
「竜を持って敵を制す……」
　同時に、ドラゴンの因子を開放する竜矢はガントレットとなっている結晶体をドラゴンの頭部へと変形させ、イグルーの体へと喰らいつかせる。
　その合間、攻撃を続ける彼らの凍傷を診たリーゼンは、再び光の針を飛ばして治療に当たっていた。
　アロンが神器の剣で切りかかったのに合わせ、キアリが両手の螺旋手裏剣を高速回転させて生み出した２つの大竜巻を前方へと放つと、イグルーは機械触手を前面へと壁のように展開して食い止めるが、さすがに機械触手が痛み、かなり先が千切れてしまっていたようだ。
　ガジェットを大型のバスターライフルめいた銃に変形させたヴィクトルがその内部に高圧電流を生み出して。
「こいつはビリっとくるぞ？」
　ヴィクトルが撃ち出した雷撃はイグルーの体へと駆け巡り、回路をショートさせてしまう。
　続け、カタリーナが頭上からアームドフォートの主砲を叩き込んだ。
　確実に仕留めたとカタリーナも疑わない。
「機能、停止……します」
　全ての機械触手の動きが止まり、イグルーもまたうな垂れるように体を地面へと倒してしまうのだった。

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　仲間が倒れても、グレイシャーはさほど大きな反応を見せることなく、この場を駆け回りながら氷の銃弾をケルベロスへと撃ち込んでくる。
「――シュート」
　その狙いは的確。仲間が狙われるとわかれば、アデレードはすぐさま身を張って弾丸を防ぐ。
　相手は先程のイグルーよりも素早い。とにかく相手の足を止めようと、アデレードは砲弾を発射する。
　少しでも動きが鈍れば、チームの火力となるキアリやカタリーナが全力でグレイシャーを叩く。
（「次は……」）
　威力を重視し、グラビティを選ぶキアリはアロンが躍りかかる間に、手刀へと模倣、再現したバルムンクでさながら氷の如く突き刺す威圧感をもって迫るグレイシャーに切りかかっていく。
　キアリが離れれば、すぐさまカタリーナが奇襲する。
　彼女も、前線に繰り出されるダモクレスの攻撃に傷ついてはいたが、意にも介さず前に出た。
（「登場から３分で撃破を目指していたが……」）
　カタリーナは先程のイグルーの耐久度から見て、グレイシャーはそれよりは早く倒せるだろうと推察する。
　その為に、先程のように凍結光線で相手を凍らせる他、もう一つ相手を弱体化させる為に瞬きする間にカタリーナは炸裂弾を叩き込んで敵の装甲を砕く。
　敵の体の入った亀裂は、スナイパーにとって非常に狙いやすい的だ。
　テンペスタは仲間の援護を受けつつ試作機……姉とも呼べる存在に攻め入る。
　敵に攻撃の暇を感じさせず、テンペスタは回し蹴りを打ち込む。
　間違いなくクリーンヒット。相手の体に痺れも駆け巡ったはずだとテンペスタは視認した。
「――回路ショート……代替回路で対応します」
　グレンシャーはケルベロスから距離をとり、腕の銃口をこちらに向けて。
「ブレイク」
　連射される冷却弾。威力もさることながら、多少の強化、防壁など消し飛ばす。
　弾丸を使い分けるグレイシャーは強い。
　コンスタントに攻撃を刻むケルベロスだが、その動きを完全に止めることができず。
「ヤバいですよぅ！　ここで仕留めないと、援軍がきます！」
　またもなり出すメンバーのアラームに、ユーリは危機感を募らせる。
　次の敵は火力特化。強敵デウスエクス２体を相手にすれば、必ず倒れる者が出る。
　竜矢は敵の冷却弾に耐え、敵を倒すべくドラゴンの頭部を繰り出す。
　２度目とあり、竜矢も体への負担を多分に感じるが、これしきで怯んではいられない。
　一方、ドラゴンに噛みつかれるグライシャーはかなり苦しんでいる。
　そこで、ユーリの放つ轟竜砲を受け、体勢を崩したグレイシャーへ、ヴィクトルが大型のバスターライフルへと変形させたガジェットの引き金を引く。
「トドメだ」
　直後、ヴィクトルの放った電撃に焼かれるグレイシャー。
「――任務、遂行、フカ、ノウ……」
　顔の仮面が割れ、膝が崩れ落ちて動かなくなるダモクレス。
　しかしながら、現れた魔空回廊が動き出したことで、リーゼンは手早く仲間の傷を癒やして。
　キアリの懐中時計が震え、光を放った直後、最後のオラージュ、両足が刃となったヘアが出現したのだった。

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　これまでのオラージュと違い、最も人間味を感じさせる姿をしたヘア。
　グレイジャーも色気を感じさせる姿だったが、チャーミングなバニーガールの容姿をしたヘアは一味違った魅力を感じさせる。
「――アタシのダンスに酔いしれなさい」
　それまでのオラージュと違い、流暢な言葉遣いのヘアは刃状になった足で軽やかなダンスを舞い踊りながら切りかかり、前線のメンバーを惑わす。
　思考が乱される仲間達の姿に、リーゼンがすぐさまゾディアックソードを手にして地面に守護星座を描く。
「しっかりしやがれ！」
　リーゼンの喝が飛ぶが、確実に皆を正気に戻すとはいかず、アデレードもしばし気力を撃ち出して仲間の回復に当たる。
「――まだまだ、これからよ」
　気を良くしたヘアは、華麗な足捌きを見せつける。
　カタリーナは最速討伐と同様に、最悪の展開も想定して戦ってはいたが、すでに敵は２体倒れている。
「このまま、押し切らせてもらおう」
　飛翔するカタリーナはこれまでと同じく、氷結、服破りと攻め立て、一気にアームドフォートの主砲を……発射する。
　連弾を浴びた敵は特化した素早さを攻撃へと転化して襲い来るタイプ。
「なら、守りは大した事ないはず！」
　そう察したユーリは強い理力を込め、星型をオーラを打ち込む。
　ユーリに続いて、テンペスタが襲い掛かる。
　最新機としての矜持があるテンペスタとしても、足技は自身も得意とするところ。
「蹴り特化の実験機……負けるわけにはいかない！」
「ふうん、どれだけ進歩したのか見てあげるわ」
　しばし、テンペスタとヘアは互いを蹴りつけ合い、その性能を確かめ合う。
　デウスエクスとしてのタフさ、攻撃力などは差として大きいが、テンペスタが繰り出す電光石火の一撃は確実にヘアの体へと叩き込まれて。
　その最中もヘアはソードダンスでこちらを惑わす。
　ヴィクトルがガジェットでの銃撃の合間、前線の仲間へと蒸気を噴射して回復役が異常を振り払うことによる回復補佐へ。
　敵も決死の覚悟でこの戦いに臨んでいるが、ケルベロスとしても地球の命運がかかっているだけに一歩も引かない。
　正気を取り戻す竜矢がなかなか止まらぬヘアへとバスタービームを放射すれば、ヘアも見定めた彼へと刃の脚で大きく蹴り上げる。
　そのダメージは大きく、竜矢の目の色が赤く変わる。
「…………っ」
　ただ、ヘアとて傷は深く、顔を引きつらせて苦しそうにしている。
　回転しながら切りかかるオルトロスに敵が気を引いていたその隙に、ストールを舞わせたキアリは再度両腕へと再現した刃で機械の体を切り刻む。
「いつか、あなた達と共に歩めることを願っているわ」
「――そう、ね」
　言葉少なに、ヘアは崩れ去り、その場で機能を停止したのだった。

　全てのオラージュを倒したケルベロス。これで、この月面遺跡が利用されることはなくなり、機械を破壊することもなくなった。
　他の場所はどうなっているだろうかと、ケルベロス達は状況を確認すべく、この場を後にしていく。
　これから、ダモクレスとの共存を望むキアリ。そして、最後まで戦うことを選択した姉妹機を見下ろすテンペスタ。
　傷つきはしていたが、五体満足であったメンバー達は自力でその場を後にしていくのだった。

作者：なちゅい	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2021年6月17日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 4／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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