迎撃、星戦型ダモクレス~暗夜の宝石絶対防衛戦線

作者:ハル


「かねてから行われた投票の結果が出ました。それにより、私達はアダムアダム・カドモン率いるダモクレスとの決戦を行う事が決定しました」
 山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)が告げると、場が一気に静まった。皆が気付いているのだ。この世界を取り巻く大きなうねりが、最高潮に達しようとしている事に。
「出来るものならば、これを最後の戦いとしたいものですね。そのためにも……私達も全力を尽くさねばなりません!」
 意気込む桔梗。ケルベロス達も深く頷き、真剣な様子で桔梗の言に耳を傾ける。
「現在、アダム・カドモンが座上する、惑星級星戦型ダモクレス「惑星マキナクロス」は、亜光速で太陽系に侵攻、太陽系の惑星の機械化を開始しています。まずは火星に到達した模様で、その後は地球を避けて、金星、水星方面に移動して、順次手中に収めるだろう事が予測されています」
 そのアダム・カドモンの行動の目的に関してだが、『機械化した惑星の運行を制御し、グランドクロスを発生させる』事だと予知されている。
「グランドクロスとは、皆さんにとってもなじみ深い『季節の魔力』……その宇宙版であるようです。その魔力を利用し、『暗夜の宝石である月』を再起動させ、地球のマキナクロス化を一気に推し進める腹積もりでしょう」
 ダモクレス軍は、惑星の機械化と平行して、魔空回廊を利用しての月面遺跡内部への転移を画策している。送られてくる部隊は星戦型ダモクレスだ。その力をもって、月遺跡の掌握を行おうとしている。
「皆さん、万能戦艦ケルベロスブレイドで月遺跡に急行し。遺跡の防衛をお願いします!」


「ダモクレス軍の動向を阻止するためにも、月遺跡の制御をこちらで奪ってしまう必要があります。幸いなことに、ダモクレスが狙うだろう複数の防衛地点は、聖王女エロヒムさんの協力によって、予知する事ができています」
 そのため、予知された地点への先回りが可能だ。
 魔空回廊から転移してくる星戦型ダモクレスを迎撃し、月遺跡を守り抜く――それこそが、今作戦の大目的となる。
「敵は、魔空回廊を通じて、星戦型ダモクレスを送り込んできます。また、魔空回廊を使って直接月の内部に転移してくるため、万能戦艦ケルベロスブレイドでの迎撃は行えません」
 桔梗は一呼吸置き、続ける。
「一つの地域に投入されてくるダモクレスは1体だけでなく、3体ずつが予想されます。最初のダモクレスが先回り地点に姿を現してから8分後にもう1体が。更に8分後にはもう1体が魔空回廊から出現します。8分以内に素早く星戦型ダモクレスを撃破する事で各個撃破の形が可能となりますが、逆に手間取れば同時に複数を相手どらなければなりません」
 そのため、勝利が難しい場合には、難しい判断も迫られる。
「それは、遺跡を破壊して撤退する……という判断です。将来的に暗夜の宝石を利用する事が不可能になる可能性が出てくるため、遺跡の破壊はできれば避けたい所ですが……。地球のマキナクロス化を防ぐ事が最優先なので、有事の際はやむを得ないでしょう。その際の判断は、現場の皆さんにお任せします」


「戦場となる場所ですが、月面ビルシャナ大菩薩決戦の現場となった、月面遺跡内部が主戦場となります」
 だが、マスタービーストが改造を加えていた当時とは、内部の雰囲気も少々異なるようで――。
「月面遺跡は本来の姿を取り戻していて、邪悪さ、禍々しさは最早なく、ヴァルハラを想起させる荘厳な雰囲気に包まれているようです。……とはいえ、エネルギーが枯渇しているため、どこか寂しさが漂っていて、機能が停止した不可思議な機械が放置されているようですが」
 桔梗はモニターに表示させていた遺跡の内部情報を、星戦型ダモクレスに切り替える。
「魔空回廊を通じて送り込まれてくるダモクレスは、『ブリュンヒルデ』、『プロミネンス』、『強襲殺戮型『ジェノサイドロイド』の3体となります」
 それぞれが姿を現す順序は、

 最初に『プロミネンス』が。
 その8分後に『ブリュンヒルデ』。
 さらにその8分後に強襲殺戮型『ジェノサイドロイド』が出現すると推察される。

「星戦型ダモクレスは、決戦用に改修を行ったダモクレスです。そのため、戦闘能力に関しても強化されているので、強敵であると思って、油断せずに戦闘に臨んでください。また、3体ともはほぼ同等の力を有しているようです」
 特に戦術姫とも称されるブリュンヒルデは、指揮能力も優れているようだ。ジェノサイドロイドとプロミネンスが彼女の指揮に従うかは不透明だが、それでも合流されれば、より厄介な事になるかもしれない。
「……遂に、遂にダモクレスと雌雄を決する時が来ました。仮に月遺跡をダモクレスに掌握されてしまえば、グランドクロスを用いた宇宙規模の『季節の魔力』により、地球は瞬時にマキナクロス化してしまいます。そうなれば、待っているのは……。だからこそ、厳しい戦いが待っているとしても、勝利するしかないのです! 私は皆さんを信じております!!」


参加者
赤星・緋色(サンプル・e03584)
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)
クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)
レヴィン・ペイルライダー(キャニオンクロウ・e25278)
折平・茜(モノクロームを通って・e25654)

■リプレイ


 かつてと違い、荘厳な雰囲気で満ちる月面遺跡内部。
 割り振られた防衛地点で待ち構えていたケルベロスは、空間の乱れを感じ取った。
「話し合いでどうにかなればと思っていたが、そうも言っていられないみたいだな」
 リーズレット・ヴィッセンシャフト(碧空の世界・e02234)の視線の先。そこには、魔空回廊を通じて姿を現したダモクレスの姿が。その名も、『プロミネンス』。
「ワレワレモ、ソウナレバト願ッテイタ。地球ハ美シク、ソコニ暮ラスレプリカントニハ思ウ所モアル。シカシ、ソノ道ハ潰エタ」
 願うは互いに安寧。しかし、同じ安寧であっても、至るまでの道のりは異なる。
「分かり合えないってつらいね。心を持たないタイプのダモクレスと分かり合えるのかどうか分からないけど」
 告げながら、赤星・緋色(サンプル・e03584)が構える。
「初めから全力で行かせてもらう!!」
 初手はケルベロス――源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)。ケルベロス達に悠長にしているような暇はなく、当然ながらプロミネンスもその事を熟知している。プロミネンスが会話に応じたのを遅延行為と見抜いた瑠璃が、デバイスで霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)と共に飛行し、ドラゴニックスマッシュをプロミネンスの外装に叩きつけた。
「地球が美しい、ですか~。ですがね、自然愛してもマキナクロス化したら無くなるんですよ、名前が熱いダモクレス! 熱いので凍るべし!」
 続けて、裁一が時空凍結弾を放つ。
 クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)が霊力を帯びた紙兵を大量散布し、レヴィン・ペイルライダー(キャニオンクロウ・e25278)が達人の一撃を一閃。
(「これからは、ボクの立ち回りも重要になるんだよ」)
 なにせ、矢継ぎ早の三連戦だ。メディックである七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)の判断が、戦況を大きく左右する場面も出てくるだろう。
「メリー、リル、背中は宜しく頼むよ」
「絶対勝つぞ、メリリル!」
 そんな時だからこそ、瑪璃瑠はレヴィンやリーズレットといった仲間の存在を心強く感じながら、肉食獣の一撃をプロミネンスに喰らわせた。
 リーズレットの束縛魔法が、緋色と折平・茜(モノクロームを通って・e25654)のスターゲイザーが、疾風の如く駆け抜けていく。
「闘争、是非モナシ。ダガ、任務完遂ノタメ、勝負ニ徹サセテモラオウ」
 プロミネンスの抜刀二連撃が纏めて後衛を嬲り、「好きにはやらせないであります!」クリームヒルトとフリズスキャールヴが破鎧衝で応戦し、躊躇なく身を盾とする。
 その一方で、プロミネンスは防備を固める方向にも積極的であり、巨大な盾を構え、ケルベロスの攻撃を紙一重で受け止めていた。
「っ、そう来ると思ってたんだよ!」
「この大一番、困難だからこそ燃えるものがある!」
 だが、これは想定内。瑪璃瑠が混沌の水を後衛全体に浴びせ、暴走時の身体特徴を付与。瑠璃が時空凍結弾を射出する。
「響、頼んだぞ!」
 メディックを狙ってプロミネンスが放ったスピアニードルを、リーズレットの頭から飛び立ったボクスドラゴンの響がガード。
「俺達の凍結攻めの味はどうですか~? その巨盾でも防ぐことはできないでしょう!」
 裁一がサバト服の裏で美形を歪めて嗤い、仲間と協力しつつ、執拗にフロストレーザーなどで【氷】をプロミネンスに与えていく。
「ん~、かったいねー! ま、だからこそ確実に当てて削っていくしかないんだけど! 攻撃は最大の防御だよ!」
 緋色がプロミネンスの連撃を防具で威力を抑えつつ掻い潜り、スナイパーの位置からグラビティブレイクを確実に命中させ、エンチャントを出来る限り破壊する。
「決戦用に改修されているだけあるって事か! それでも、オレ達だって力をつけてるんだよっ!」
「――グッ」
 レヴィンの振るう爆破剣が、仲間が着実に刻んだプロミネンスの外殻の傷を飛躍的に広げる事に成功する。
 リーズレットが、手を休めずに理力を籠めた星型のオーラを蹴り込んだ。
 響が瑠璃に属性を注入する。
 しかしなおもプロミネンスは盾を構え、隙を見ては列攻撃を中心にケルベロスを削り、5分、6分と時間が経過していく。
 彼の敵は、己が役割を熟知しているようだ。
「……覚悟は決めている、という訳ね。でも、それはわたし達も同じ事です!」
 地球のマキナクロス化という事態を前に、形振り等構ってはいられない。茜が降魔の一撃を放つ。
「ここは絶対に死守するであります! プロミネンス……お前達ダモクレスにも言い分はあるでありましょうが、お覚悟を!」
「ソチラコソ、覚悟ヲ!」
 クリームヒルトの重鎧をスピアニードルが貫くも、クリームヒルトは苦痛を噛み殺し、オーラを溜めて踏み止まる。
「――皆様はボクの事は気にせず、先を見据えてプロミネンスとはここで方を付けるであります!」
「時間がない……!。クリームヒルトさん達の負担を減らす意味でも、一気に攻めてプロミネンスを倒すんだよ!」
 クリームヒルトを重ねて癒そうとした瑪璃瑠だが、時間を見て、そして彼女の意思を見て前へ出る。
「任せてくれ! ――死へ導く月の力をここに」
「同胞にいい所を見せようなんて、そんな考えは無駄無駄無駄ァ!」
 瑠璃、裁一、茜。三名の火力手に加え、ケルベロス達の一斉攻撃が、多大と化した斬撃ダメージを伴なってプロミネンスを襲い――。
「ギリギリ間に合ったみたいだねー」
 機能停止するプロミネンスに、息を荒くした緋色が安堵の色を見せる。
「それでー、そっちの子がブリュンヒルデでいいんだよね?」
 そして、息をつく暇もなく、緋色は魔空回廊で送り込まれてきた敵。破壊されたプロミネンスに些かの動揺も見せずにケルベロスを観察する『ブリュンヒルデ』と邂逅した。


 月面遺跡内部では、ブリュンヒルデの操作するファンネルが飛び交い、ケルベロスは全方位から放たれる様々な攻撃に晒されていた。
「私達に退化の受け入れを求めるなど、愚かな選択です。貴方達とてそう。未来に歪みが起きる事が確定しているならば、それに立ち向かうべきでは?」
 ブリュンヒルデはケルベロス達を認めつつも、上位者、あるいは高貴な存在としての視点で、その判断に否を唱える。
「ボクたちは死翼騎士団を、死神を知ってるんだよ。命はなくとも彼らにも心があった。
 だから、ボクたち瑪璃瑠は押し付けられた“歪み”とされる誰かを産まないことを選ぶ!」
 瑪璃瑠達にとっても、その選択は決して簡単なものではなかった。意見が分かれる事もあったが、その上で大事なものを掴もうと誰もが必死で手を伸ばしている。
 瑪璃瑠がクリームヒルトを大自然の護りで癒す。
 裂刀【架愚羅】を手にした瑠璃が血襖斬りを放ち、
「まだ倒れるには早いであります!光よ!」
「助かります!」
 クリームヒルトが負傷の色濃い茜にオーラを集めた。フリズスキャールヴが応援動画を流す。
「紅一点は逆ハーの兆し。次の男を篭絡する前に、爆破すべし!」
 裁一が、嫉妬強奪法であらゆるフラグをへし折るべく、生命力を奪い尽くさんとする。
「プロミネンスの壁を難なく突破するだけの事はある、という事ですか」
 ブリュンヒルデが雷の壁を築くと、ケルベロスも即応して壁を打ち崩すべく奮闘。ジャマーゆえに完全なる打破は困難も、同時にブリュンヒルデの体力を消耗させる。
「ハァァァァッ!!」
 だが、ブリュンヒルデもオールレンジ攻撃を中心にケルベロスのエンチャントを排除し、動きの鈍った隙を見ては雷撃斬で斬り捨てる。
「っ、響!? ……それでも、私も大事な人を守らなければならんからな。引けないんだ! 見えなき鎖よ、汝を束縛せよ」
「フリズスキャールヴ、ご苦労様なのであります!」
 響とフリズスキャールヴが相次いで消失し、リーズレットが黒影縛鎖を張り巡らせる。クリームヒルトは仲間の分まで盾となるべく、強い決意を固めた。
「倒される前に倒すしかないよ! 皆もいこー、勝つために!」
 緋色は仲間を鼓舞し、ブレイクを織り交ぜつつ簒奪者の鎌を投げつける。
(「ブリュンヒルデにもダメージを重ねる事ができているけど、僕達も最初の勢いは維持できていない……!」)
 瑠璃が状況を精査する。彼の分析通り、ケルベロス側もプロミネンス戦時程には順調ではなかった。火力を重視した結果、プロミネンスを多少の余裕を持って撃破まで至らしめたが、時間の経過と共に回復に手を取られる頻度は着実に増えているのだ。
「オレ達なら、全ての敵を撃破仕切れるはずだ!」
 レヴィンはオーパーツを想起させる遺跡内の機械群をチラリと一瞥するも、まだその破壊を考慮には入れていない。苦しくとも、確かな勝算を彼は感じていたから。それでも万が一に備え、全員をチェイスアート・デバイスで繋いでおいているのは彼らしい判断といえるだろう。
「プロミネンスを速攻で撃破した判断は間違ってはいないはずです!」
 茜が、裂帛の叫びを上げてヒール。
「――もうすぐ次のダモクレスが現れる時間だぞ!」
 15分が経過しようとしていた。消耗している中で感じる魔空回廊が開く気配に、リーズレットの背筋が泡立った。
(「絶対に全員で地球に帰るんだ、頼むぜ!」)
 レヴィンが右手のブレスレットに祈りを込め、後衛に防御の力を。
 瑠璃が真っ赤な月の力を解放し、禁忌の巨弾を全力で放つ。
「絶対に、絶対に悔いだけは残さないぞ! ――メリリル、ここからの正念場の私達の背中を任せる! 頼んだからな!」
「頼まれたんだよ! 生きるんだよ、生かすんだよ!」
 リーズレットが凍結光線を発射し、瑪璃瑠が茜を大自然の護りで癒す。
 裁一が時空凍結弾を放ち、クリームヒルトが力を振り絞るように、ブリュンヒルデに痛烈な一撃を見舞った。
「……私は今にも倒れそうな無様な体ではありますが、それでもまだやれる事が残っているようですね……」
 ――その時、ブリュンヒルデが嗤い、気配を感じて振り返ったレヴィンが「なにぃ!?」と叫んだ。
「敵影、確認。ジェノサイド、実行ス!」
 後一息の所で、強襲殺戮型『ジェノサイドロイド』の介入を許したのだ。そして、ジェノサイドロイドのチェーンソー斬りが、クリームヒルトを斬り捨てた。
「護り切れず、申し訳、ありません……! 後は、任せたで、あります……!!」
「ええ、必ず。クリームヒルトは大船に乗った気持ちで、あの悪しきリア充共は俺達にお任せください!」
 苦汁を浮かべて倒れるクリームヒルトに、裁一が笑いかける。
「クリームヒルトさんは頑張って護ってくれて本当にありがとー! いい報告をするためにも、まずはブリュンヒルデを確実に仕留めるよー!」
 緋色が「ひっさーつ!」と気合を込め、武器に纏わせたグラビティチェインをブリュンヒルデに叩き込む。度重なる集中砲火により、最後に的としての役割を果たすブリュンヒルデを見事撃破。
 だが、ジェノサイドロイドの返す刀が、既に限界に達していた茜の意識を刈り取った。


「さ~て、ここまで来れば、もうどっちが先に倒れるかという勝負ですね。リア充共々デストローイ!」
 裁一はドレインスラッシュを放つ。ドレイン攻撃を中心に、一撃でも多くの攻撃をジェノサイドロイドに浴びせる算段だ。
「その上で、僕と裁一が飛行状態にある事は、ジェノサイドロイド……お前に対する大きなアドバンテージになるはずだ!」
 瑠璃が、ドラゴニックスマッシュを叩き込む。
「……ナラバ、一網打尽トスル迄……! 死ネ、ケルベロ――ムッ……!?」
「残念! 命中しなければ意味がないんだよーだ! 対策してきたのだ!」
 ジェノサイドロイドの広域殲滅光線を、緋色が回避する。
「そういう訳だ! ディフェンダーがいなくなったからって、私達を易々と捉えられるとは思わない事だぞっ!」
 リーズレットの束縛魔法が、ジェノサイドロイドの自由を奪う。
「あと少し……あと少しの辛抱なんだよ!」
 瑪璃瑠が裁一をヒールする。
 レヴィンが目にも止まらぬ速さで弾丸を放ち、ジェノサイドロイドの武装の威力を減衰させるべく務めた。
 緋色がフロストレーザーで、三度【氷】の付与を試みる。
「飛べる翼があるのに戦うのに飛べるデバイスに頼る謎の葛藤! 思い知りなさい!」
 しかも現状、それが大いに有効となれば、裁一の葛藤がより謎さを増す。裁一はそれら全てを八つ当たりとして、時空凍結弾を発射する。
「レヴィン、気を付けて!」
 ――と、瑠璃がレヴィンに警告を発する。
 ジェノサイドロイドの様子を伺えば、奴は裁一と瑠璃がデバイスで飛行中の今、後衛に攻め入るための一つの壁となっているレヴィンに標的を定めようとしていた。
 比較的体力の余裕のあるレヴィンを、チェーンソー斬りが襲う。
「来い! 仲間が狙われるより全然いいぜ!」
 威力を減衰しつつも、そこはクラッシャーの一撃。激痛に心身が悲鳴を上げる。
「レヴィンさん……ごめんだよ……っ!」
「……メリー、リル、オレの事なら何も心配はいらないぜ!」
 しかし、クラッシャーや後衛の仲間達も、回復不能ダメージが積み重なり、油断すれば今にも倒れかねない苦境に置かれている。瑪璃瑠も、一刻も早いジェノサイドロイド撃破への生命線たるクラッシャーの回復を優先せざるを得ない。
 だが、全ては勝利のために。
「無駄ナ、足掻キヲ!」
 集中砲火を受けたレヴィンが倒れ、戦線を支える瑪璃瑠が次なる冷酷な殺意の標的となる中――。
「これ以上好きにはやらせないぞ!」
 リーズレットがフォーチュンスターを叩き込む。
 緋色が再び気勢を上げ、川越市で抽出したグラビティチェインを気合と共に解放する。
「グ……グギギギギ……!」
 死力を尽くすケルベロスの攻めにより、ジェノサイドロイドの装甲の隙間から白煙が上がり始めていた。
「リア充な空気は奪って壊す!!君たちの絆、俺が奪いますね!!」
 裁一が生命力を強引に簒奪し、
「――これで、トドメだ!」
 瑠璃の血襖斬りが炸裂し、ジェノサイドロイドに残った最後の命を吸い尽くすのであった。

 予知された地点での移籍防衛を成功という形で終えたケルベロス。
「まだ終わった訳じゃないんだよ。だよね、リズさん?」
 レスキュードローンを用いて、負傷した仲間の収容を終えた瑪璃瑠。
「だな。これからグラドクロスがどうなるか、それ次第だろうな」
 ケルベロスは、今までもいくつもの壁を乗り越えてきた。
 だから今回も必ず。
「帰還して、次の決戦に備えていこー」
 緋色の言う通り、前に進むしかないのだろう。
 皆で共に地球に帰る!
 今はそれが果たせる喜びを、クリームヒルト、レヴィン、茜の顔を見て、鼓動で感じながら……。

作者:ハル 重傷:クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545) レヴィン・ペイルライダー(夢のつづき・e25278) 折平・茜(モノクロームを通って・e25654) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年6月17日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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