電動ドリルが吠える時

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 電動ドリル……それは漢のロマン。
 例え、すべてを失うような事があったとしても、電動ドリルがあれば何とかなる。
 そう思ってしまう程、夢とロマンの詰まった電動ドリルがあった。
 だが、工事現場で求められているのは、見た目の格好良さではなく、性能であった。
 そのため、電動ドリルは使われる事なく、倉庫の中で深い眠りにつく事になった。
 しかし、電動ドリルは眠る事を拒絶し、自らの力を示すようにして、まわりの者に呼び掛けた。
 ……我を求めよ。
 力が欲しくば、我を使え、と……。
 だが、その呼びかけに応えて、電動ドリルの前に現れたのは、小型の蜘蛛型ダモクレスであった。
 小型の蜘蛛型ダモクレスは電動ドリルを見上げ、機械的なヒールを掛けた。
「ドリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィル!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した電動ドリルが、耳障りな機械音を響かせ、壁を突き破って街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「鹿目・きらり(医師見習い・e45161)さんが危惧していた通り、都内某所にある倉庫でダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある倉庫。
 この倉庫にある電動ドリルが、ダモクレスと化してしまうようである。
「ダモクレスと化すのは、電動ドリルです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていった。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスと化した電動ドリルは、ロボットのような姿をしているようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
鹿目・きらり(医師見習い・e45161)
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)
シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)
 

■リプレイ

●都内某所
「どうやら、この場所で電動ドリルのダモクレスが確認されたようですね。少し前から嫌な予感はしていましたが……。他人事とは思えないので、何か被害が出る前に倒してしまいましょうか」
 鹿目・きらり(医師見習い・e45161)は仲間達と共に、ダモクレスの存在が確認された倉庫にやってきた。
 その倉庫があるのは、人通りの少ない路地裏にあった。
 空気が淀んでネットリとしており、纏わりついてくるような感覚が、ケルベロス達に襲いかかった。
 それは決して心地よいモノではなく、嫌悪する類のモノだった。
 そのため、何か特別な用事でもなければ、近づく事さえないような場所であった。
 それでも、念のためキープアウトテープを貼って、一般人が入ってこないようにした。
「やっぱり、電動ドリルは、漢のロマンだよね。僕もドリルに憧れた事があったなぁ」
 そんな中、四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、どこか遠くを見つめた。
 ……みんな大好き電動ドリル。
 ドリル一本あればイイ。
 それが合言葉になって、世界制覇が出来る程、ドリルには夢とロマンがあった。
 おそらく、問題になった電動ドリルを購入した者も、見た目の格好良さに心を奪われたのだろう。
 事前に配られた資料にも、電動ドリルの写真が添付されていたのだが、思わずグッと来てしまう程、格好いいデザインであった。
 その分、実用的ではなく、作業には向かなかったようである。
 もしかすると、デザインにこだわってしまったせいで、使いやすさや性能等を度外視してしまった可能性が高かった。
「私は男じゃないけど、カッコいい物には憧れがあるわ。でも、人々に被害が出てしまうなら、事前に倒しておかないとね」
 シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488)が、警戒した様子で倉庫の中に足を踏み入れた。
 倉庫の中は独特なニオイに包まれており、沢山のダンボールが山積みになっていた。
 そこには返品されたモノや、仕事で使っているモノなどが無造作に積まれており、色々な意味で心配になってしまうレベルであった。
「電動ドリルって、そこまで素晴らしい物かしら? 見た目の格好良さより、性能の方が大事ってのは同意だけど……」
 静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)が、自分なりの考えを述べた。
 それは電動ドリルを全否定する言葉であり、死刑宣告にも等しい言葉であった。
「デ、デ、デ、デェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
 その言葉を否定するようにして、ダモクレスと化した電動ドリルが、耳障りな機械音を響かせ、ケルベロス達の前に現れた。
 ダモクレスはロボットのような姿をしており、ケルベロス達を威嚇するようにして、両腕の電動ドリルをフル回転させていた。
「お、大きい……」
 それを目の当たりにしたミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)が服を脱いで全裸になると、愛用のTバックハイレグレオタードに着替えた。
「ド、ドリ……?」
 その途端、ダモクレスが動揺した様子で、警戒心をあらわにした。
 この状況で全裸になる事自体、あり得ないため、頭の中がハテナマークでいっぱいになっていた。
 それでも、何とか理解しようとしているのか、色々な可能性を導き出し、そこから答えを得ようとした。
 だが、どれも理解の範囲外であったため、真っ黒な煙がボンと噴き出した。
「ルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 それが恐怖となってダモクレスの心を支配しようとしていたため、半ばパニックに陥りながら、ドリル状のビームを放ってきた。
 そのビームが激しく音を立てながら高速で回転すると、ケルベロス達に次々と襲い掛かってきた。
 しかも、ダモクレスが休む事無く、次々とビームを放ってきたため、ケルベロス達は物陰に隠れて身を守る事しか出来なかった。
「あんっ……そのまま、動かして……私のナカを耕して……!」
 そんな中、ミスラがガニ股ポーズのまま、ダモクレスが放ったビームを受け止め、歓喜の声を響かせた。
 それは完全に自殺行為であったが、ミスラは悲鳴をあげるどころか、その感覚に酔いしれているようだった。
「デ、デ、デ……」
 そのため、ダモクレスは混乱した。
 ビームを避けようとした訳でもなければ、身を守ろうとした訳でもない。
 自らビームに当たる事自体、あり得ない事だった。
 その事が引き金となって、ダモクレスの頭の中に沢山のハテナマークが湧き始め、身も心も支配されそうになった。
「癒しのオーラよ、仲間を助けてあげてね!」
 その間に、シルフィアが気力溜めを使い、ミスラの傷を治療した。
 だが、ミスラはビームの余韻を楽しみ、その刺激に酔いしれている様子であった。
「さぁ、行きますよ、サターン。一気に攻めに向かいましょう」
 一方、きらりはウイングキャットのサターンと連携を取りつつ、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
「ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その事に気づいたダモクレスが、再びビームを放たれてきた。
 すぐさま、ミスラがビームを喰らい、再び甘い声を響かせた。
「ド、ド、ド……」
 その事でダモクレスが激しくショックを受け、ドン引きした様子で後ろに下がった。
 そもそも、あのビームは痛いはず。
 そのため、悲鳴を上げる事があっても、歓喜の声を上げる事はない……はず。
 しかし、自分では確かめようがない。
 だからと言って、ケルベロス達をアテにしても、ビームに当たってくれる保証はない。
 その事でダモクレスが眩暈にも似た感覚に襲われ、激しく身体をグラつかせた。
「一体、どこを見ているの? 私達は、ここよ!」
 その隙をつくようにして、依鈴がスターゲイザーを繰り出し、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「……!」
 その途端、ダモクレスが我に返った様子で、ブンブンと激しく頭を振った。
 それでも、色々と引っかかる事はあるが、いまは戦闘中。
 考えるよりも、動く。
 そうしなければ、機能が停止してしまうのは、時間の問題であった。
「さっきと雰囲気が変わったね。だったら、早く倒した方がいいかな」
 その事に危機感を覚えた司がスターゲイザーを放ち、ダモクレスを蹴り飛ばして転倒させた。
「デンドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、両腕のドリルをフル回転させ、ケルベロス達に襲いかかってきた。
 もう考えている暇はない。
 とにかく、攻撃。
 邪魔なモノは、壊すのみ!
 その事で頭の中を埋め尽くし、雑念を跡形もなく消し去ろうとした。
「この刺激は、また違った気持ちよさが……んくっ!」
 すぐさま、ミスラがダモクレスのドリルを迎え入れ、何度も絶頂しながら、無我夢中で求め始めた。
「ド、ド、ド……」
 その事に違和感を覚えたダモクレスが、恐怖に身体を震わせ、必要以上に距離を取った。
 そもそも、ドリルは気持ちイイモノではない。
 それなのに……何故!
 途端に、沢山のハテナマークが墓の下から蘇り、唸り声を上げて頭の中で暴れ始めた。
 こうなると、考えている暇などない。
 答えは出ているが、納得は出来ない。
 そんな状況に陥り、ダモクレスが再び真っ黒な煙を上げた。
「いくら考えたところで無駄だと思うけど……」
 そんな空気を察した司がグラインドファイアを放ち、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「リィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その事でダモクレスが半ばヤケになりながら、真っ赤な炎に包まれたまま、狂ったようにドリルを振り回した。
 おそらく、そうする事で、必死に迷いを振り払おうとしているのだろう。
 ここまで来ると、哀れに思えてくるが、ダモクレスにかける情けはない。
「何だかシャレにならない事になっているような気が……」
 即座に、シルフィアが気力溜めを使い、癒しのオーラで仲間の傷を癒した。
「とにかく、みんなを回復させておきましょう」
 それに合わせて、きらりがボディヒーリングを使い、エクトプラズムで疑似肉体を作って、仲間達の外傷を塞いだ。
「ルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その事に気づいたダモクレスが、ケモノにも似た機械音を響かせ、ケルベロス達に襲いかかってきた。
 こうなってしまうと、考えるよりも先に、身体が動いてしまうのか、ダモクレスに迷いはなかった。
 迷いがないというよりも、目の前のモノを排除しなければ、自分の身が危ない事を理解してしまったのだろう。
 そのため、どんなに傷ついても、途中で立ち止まる事はなかった。
「それ以上、先には進ませないわ」
 その行く手を阻むようにして、依鈴がクリスタルファイアを放ち、幻想的な水晶の炎で、ダモクレスの身体切り裂いた。
「デンドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、ダモクレスが悲鳴に似た機械音を響かせながら、ドリル型のミサイルを発射した。
 そのミサイルがグルグルと回転しながら、倉庫の天井や壁を突き破り、次々と爆発音を響かせた。
「あひいぃ!! ドリルプレイ、激し過ぎて……癖になっちゃいます!!」
 だが、ミスラの反応は、ダモクレスの理解を超えていた。
 おそらく、特別な訓練(?)を受けたミスラだから出来る芸当。
 致命傷を負うか、負わないか、ギリギリのところで受け止め、それを快楽へと変えているのだろう。
 それは奇跡であり、芸術であり、喜劇でもあった。
 しかし、ダモクレスに抗う術はない。
 ……ただ受け入れるのみ。
「大丈夫だよ、すぐに回復するね」
 その間に、司が気力溜めを使い、即座に状態異常を消し去った。
「デ、デ、デ、デ・ン・ド・ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その間に、ダモクレスがミサイルを装填し、耳障りな機械音を響かせて、発射しようとした。
 何やら悟りを開いたような感じになっているが、実際には諦めてしまっているだけなのかも知れない。
「そう簡単にミサイルが撃てると思ったら、大間違いよ」
 次の瞬間、依鈴が絶空斬を繰り出し、ダモクレスの装甲を破壊し、無防備なコア部分をあらわにした。
「ド、ド、ド……」
 その影響でダモクレスはミサイルを発射する事が出来なくなり、動揺した様子で激しく体を揺らした。
「狙いは外しません、食らいなさい!」
 それに合わせて、きらりがホーリースナイプを発動させ、聖なる力を自らの身体に宿し、ビーム状のエネルギーを一斉に放って、ダモクレスを撃ち抜いた。
「リィィ……ル……!」
 その一撃を食らったダモクレスが小刻みに身体を震わせ、崩れ落ちるようにして動かなくなった。
「何だかホッとしているようにも見えたけど……気のせいかな? まあ、とにかく、みんなお疲れ様♪」
 そう言ってシルフィアが、仲間達に声を掛けるのだった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年6月5日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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