とあるバラ園では、春バラが見頃を迎えていた。
バラの優しい香りに包まれ、様々な色のバラが華やかに咲き誇っている。
癒しを求めて、訪れる来園者は多い。
そんなバラ園から数百メートル以上離れた、建物の裏側では、電化製品が不法投棄されていた。
徘徊していた小型ダモクレスが選んだのは、チェーンソー。
機械的なヒールで作り変えられ、巨大なチェーンソーと化し、両側にはタイヤが組み込まれて。
『ひゃっほー! 向こうに、バラが沢山有るっぽいぞー! 木も草も花も切りたい! 切りまくりたいんだー!』
タイヤがギュルギュルと音を立て、次の瞬間、猛スピードで走り出す。
約10メートルほどの巨大チェーンソーは、バラ園を目指して爆走した。
「バラ園のバラは、色んな種類が有って、素敵ですね。まだ蕾で、これから咲くバラも有りますし、楽しみです。……バラ園なのですが、ダモクレスになった巨大チェーンソーに襲われる、という事件を予知しました。予知の段階なので、被害は出ていませんが、放置すれば、バラも来園者さんも無事では済まなくなります」
その前に現場に向かい、ダモクレスを撃破して欲しい。
と、いうのが今回の依頼だ。
幸いにも、ダモクレスの進行ルートに、一般人は居ない。
進行ルートとバラ園との間が、戦場となるだろう。
バラ園は戦場から離れているので、よほどの遠距離攻撃さえしなければ、無事で済む。
「皆さんにしか頼めない事です。どうか、宜しくお願いします。……終わった後は、バラ園に行ってみたらどうでしょうか? 休憩スペースも有りますし、今しか咲かないバラも多いみたいですよ」
参加者 | |
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霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479) |
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524) |
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815) |
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641) |
湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324) |
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690) |
香月・渚(群青聖女・e35380) |
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384) |
●
降下して到着した場所は、バラ園から離れた広い場所。
一般人も居らず、静まり返っている。
「何か髪の青薔薇が行けと言っていたようで来ました」
そう呟く、オラトリオの如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)の髪には、青いバラが美しく咲いている。
沙耶が言い終えた直後、遠くのほうから聞こえて来る、タイヤとチェーンソーの音。
音は一気に大きくなり、猛スピードで迫って来たのは、巨大なチェーンソー。
バラ園への進路を妨害するように、位置取っているケルベロス達に気付いて、タイヤは急停止。
『ちょっと! 退いてよー! 僕は向こうに有るっぽい、沢山のバラを切りまくりたいんだから!』
不満そうな声が、チェーンソーから響いて来る。
「ダモクレスって、どこにも現れるんだね……出所を問い詰めたいけど、バラ園と、楽しみに来た人を傷つけるのは許さないよ!!」
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)は、素早く武器を構えて。
(「バラ園だけにチェーンソーで薔薇をバラバラに? なんて思うのは、私だけじゃないんでしょうね」)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)は思案してから、敵を改めて見る。
「というか……聞きはしましたけど大きさ10mって、シンプルにでっか!?」
思わず、驚きの声を上げてしまう、ミリム。
「うちの旅団、ツリーハウスなんでガーデニングめいたことは割とするんですよね。たまに誘引方向以外へ行っちゃったり、単純に伸びすぎるつるバラがあるけど……」
『それどこに有るの? 切っていいー?』
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)の言葉の途中で、敵は興味津々とばかりに尋ねて来る。
「適切に剪定してくれる分には、いいやつだと思います。AI搭載型で安心! ってうたい文句で、家電へ再改造できたらいいのにね」
明らかに、適切では無く、バラバラに切り刻むであろう敵を前に、右院は苦笑して。
(「薔薇園かぁ、ボクも薔薇は好きだから薔薇園はきちんと守ってあげたくなるよね。今しか咲かない薔薇と言うのも興味深いね」)
(「春薔薇の見頃でもありますし、私も綺麗な薔薇は好きですので楽しみですね」)
香月・渚(群青聖女・e35380)と、タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)はバラ園の有る方向へ視線を向け、考える。
(「ともあれ、薔薇園を荒らそうとするダモクレスは退治しないといけませんね」)
思案を続けて、戦闘態勢に入る、タキオン。
「遠距離攻撃を使用する場合、バラ園以外の方向へ……というか、ダモクレスにしっかり当てるよう努力します」
「なるべくなら、激しい遠距離攻撃は多用しない様に注意したいですね」
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)の言葉に頷き、自分もそのつもりだと言葉にする、湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)。
『あれれ? 良く見たら、髪に花がついてる人が4人も居るぞー! その花、切りたい! 僕は人を切りたいわけじゃないから、どうやって切ろうかなー?』
緊張感の無い、緩すぎる敵。
だがバラ園や植物にとっては、恐怖の存在でしか無い。
「同胞同然である薔薇が咲き誇る所を荒らすのは許しません!!」
武器を構え、ここから先へは決して行かせまい、と。立ち塞がる、沙耶。
「うん、沙耶さんの花は青い薔薇だから同胞は護りたいよね。沙耶さん、いこう」
「はい、共に行きましょう」
瑠璃の言葉に、沙耶は頷いて。
裁一は2人の様子からリア充さを感じ取り、リア充を爆破したい気持ちを、なんとか抑えていた。
●
どうやって切ろうか、と。
敵が思案している隙を狙い、ミリムは緩やかに弧を描き、斬撃を放つ。
「ドローンの群れよ、仲間を警護せよ!」
前衛陣の仲間を警護させようと、ドローンの群れを操る、タキオン。
「行くよドラちゃん、頼りにしているからね!」
渚はドラちゃんに声を掛け、敵の攻撃が来ない内に、味方の背後へカラフルな爆発を発生させて。
「さぁ、皆頑張ろうね!」
掛け声と共に、クラッシャー達の士気を高める。
麻亜弥は後衛側から跳躍し、それに合わせるように裁一が惨殺サバトの刀身に、敵のトラウマを映して。
煌めく飛び蹴りが叩き込まれると同時に、具現化したトラウマで敵にダメージを与える、麻亜弥と裁一。
『もう! 怒ったぞー!』
自分が捨てられる場面を具現化された敵は、トラウマが消えた途端に、怒り出す。
巨大なチェーンソーが振り下ろされる直前、飛び出した右院が、水の霊気を帯びた武器で刺突を繰り出す。
同じ箇所への連続の刺突により、チェーンソーのほうが押し返された。
(「良かった……上手く防げたね」)
実は気が弱い右院は、胸中でほっと安堵していた。
「速攻で撃破しましょう。……意志を貫き通す為の力を!!」
「ディフェンダーの沙耶さんに手は出させないよ!! 全力で行くよ!!」
強い意志の力を剣にし、沙耶は斬撃を繰り出して。
バラ園の盾になろう、という、沙耶の強い想いを感じ取り、瑠璃は沙耶を護る為に剣を振るう。
敵の一撃を上手く受け流し、ミリムは体勢を整え。
幻の薔薇が舞う、華麗な剣戟を繰り出し、敵にダメージを与えて。
敵からの攻撃によるダメージは、渚とドラちゃん、そしてタキオンがこまめに治癒し、万全の状態を保つ。
「ここに機械を錆びさせる薬があります。THE・注入!」
リア充に対する八つ当たりから生まれた、暗殺術を繰り出し、敵に怪しい薬物を投与する、裁一。
パラライズの効果が加わり、思うように攻撃が出来ない敵。
沙耶と瑠璃は息を合わせて連携し合い、強力な一撃を叩き込み。
敵にバッドステータスが蓄積されたのを見計らい、右院は威力重視の攻撃に切り替えて。
麻亜弥は見切られぬよう、グラビティを上手く使い分けている。
「裂き咲き散れ!」
幻の薔薇が消えぬ内に、使い捨ての剣へ緋色の闘気を纏わせて。
「牡丹と薔薇……なんて洒落てみましょうか?」
ミリムは、複雑な緋色の牡丹を描く斬撃で、敵を斬り刻む。
「逆にバラバラにしてやりましょう」
連携した右院は攻撃を叩き込み、タキオンは回復とサポートに徹する。
「援護するよ!」
渚はドラちゃんに回復を任せ、味方の強化を続け。
「海の暴君よ、その牙で敵を食い散らせ……」
刻み目の有る暗器を袖から引き出し、敵を切り刻むと共に傷口を広げ、深いダメージを与える、麻亜弥。
「自然破壊は! 攻性植物相手だけにしてほしいもんですね!」
回復しづらい形状に敵を斬り刻む、裁一。
「速攻で決着を付けたいよね」
「完全な機能停止を行ないましょう」
瑠璃と沙耶がそれぞれ、高威力のダメージを敵に食らわせ。
「そろそろ仕留める頃合いでしょうか」
チェーンソーの動きが停止したのを確認し、ミリムは納刀状態から一瞬にして抜刀。
敵をあっという間に斬り捨てれば、敵は霧散し、消滅した。
●
(「春薔薇の見頃ですか、もうそんな季節なのですね。折角ですし、私も薔薇を眺めてみたいです」)
麻亜弥はバラ園の有る方向へ、視線を向ける。
戦闘の痕跡を出来るだけ片付けて消し、バラ園へと向かうメンバー。
「この薔薇園に、どんな色の薔薇があるのか楽しみですね」
タキオンは、バラによって鮮やかな色彩で彩られた、園内を見回し。
「やはり此処の薔薇は綺麗ですね、心が癒されます」
バラの香りも心地よく、満足そうな、タキオン。
「戦ったら疲れちゃったなぁ」
仲良しの渚が呟くと、タキオンは渚のほうへ振り向いて。
「休憩スペースでのんびりとしましょうか」
「そうだね、のんびりと薔薇を眺めつつ休んでおこう!」
渚はタキオンの提案を受け、休憩スペースへ向かう。
「色んな薔薇があるよね。ここまで手入れした方の愛情が窺えるよ」
「そうですね、これだけ鮮やかに咲き誇るには相当の手間がかかります。見事なものです」
瑠璃と沙耶は寄り添い合い、華やかに咲き誇るバラたちを眺めて。
「青薔薇の嘗ての花ことばの通り、最初は瑠璃と再会できるなんて思ってもみなかったですよ。こうして寄り添っているのも、青薔薇の奇跡かもですね」
沙耶はほんの少し、瑠璃に体重を預けるようにして、もっと寄り添い。
「そうだね、沙耶さんの青い薔薇の花ことばは前は、叶わぬ願い、だったらしいけど今は、願いは叶う、とか希望らしい。ここで寄り添ってバラを見れるのに感謝しないと」
そんな沙耶をしっかりと受け止め、瑠璃は優しげな微笑みを浮かべ。
「リア充爆破すべし……」
仲の良い4人のやり取りを見て、裁一は思わず、一言呟き。
「ここにはどんな種類の薔薇があるのか、ひとつひとつ撮影していきましょう。ネームプレートと、薔薇を交互に撮影すれば、後からカメラロールで見てわかりやすいかな……?」
バラを撮影していた右院が、裁一の存在に気付く。
右院は基本的に人見知りだが、裁一のことは闘技場で見知っている為、リラックスモードで話し掛け。
「訪れた記念を思い出に、あとは珍しい花との出会いがあれば嬉しいな、と思ったんですよね」
「出会い……右院もリア充派ですか~」
右院の言葉を聞き、もうなんでもリア充に見えるのか、裁一は右院にじりじりと近づいて。
その迫力に、たじたじの、右院。
「裁一さん、見て下さい。こちらの薔薇も色とりどりで綺麗ですね。今しか咲かない薔薇と言うのも、とても楽しみですね」
麻亜弥が裁一の服をグイグイと引っ張り、右院を助ける。
「ほぅほぅ、これだけ色が並んでると壮観、綺麗ですね~」
麻亜弥の事を基本的に子供として見ている裁一は、親や兄のような対応をして。
麻亜弥も裁一に対しては恋愛感情は無く、単純な団長と団員の関係だ。
「これでも黄色い薔薇を持っているので、薔薇には親近感が少しは……」
オラトリオの裁一の髪には、“嫉妬”の花言葉を持つ、黄色のバラが咲いている。
「色々な薔薇を眺めて、楽しめます。裁一さんにも、いつかこの様な綺麗な薔薇を贈るような、素敵な女性に出会えることを祈ってますよ」
「リア充から余裕の表情で言われた! 矢張り麻亜弥も爆破しなくては……」
麻亜弥の表情が、そう見えてしまう程、色んな意味で重症な裁一。
「人知れず退治するのも、悪くは無いですね」
ミリムは春バラの美しい光景や香りを堪能した後、茶屋に寄り。
バラを取り扱ったデザートに舌鼓を打ち、茶屋からバラを眺め、休息を満喫していた。
作者:芦原クロ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年5月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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