全自動洗濯機は回らない!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 全自動洗濯機が捨てられたのは、町外れにあるゴミ捨て場であった。
 捨てられた理由は、洗濯槽が傾き、エラーが多発したため。
 毎回、洗濯容量を超えて、洗濯をしていたため、洗濯槽が傾き、エラーが頻発したようだ。
 だが、洗濯容量を守っていれば、洗濯槽が傾く事もなかった。
 大量の洗濯物を押し込むような事をしなければ、ここまで酷い事にはならなかった。
 そんな考えが全自動洗濯機の中でグルグルと回り、残留思念となって辺りに漂った。
 その思いに引き寄せられるようにして現れたのは、小型の蜘蛛型ダモクレスであった。
 小型のダモクレスは全自動洗濯機を見上げ、機械的なヒールを掛けた。
「ゼ・ン・ジ・ド・ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した全自動洗濯機が、耳障りな機械音を響かせながら、街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「雪城・バニラ(氷絶華・e33425)さんが危惧していた通り、都内某所にあるゴミ捨て場で、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にあるゴミ捨て場。
 この場所に捨てられていた全自動洗濯機が、ダモクレスと化すようである。
「ダモクレスと化すのは、全自動洗濯機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていった。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスと化した全自動洗濯機は、まわりに捨てられていた廃棄家電を取り込み、ロボットのような姿になっているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)
六星・蛍火(武装研究者・e36015)
姫神・メイ(見習い探偵・e67439)
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)
霧矢・朱音(医療機兵・e86105)
 

■リプレイ

●都内某所
「まさか、私が危惧していたダモクレスが本当に出て来るとは、びっくりね。まぁ、事前に被害が出る前に倒せるなら、倒しておきましょうか」
 雪城・バニラ(氷絶華・e33425)はセリカから貰った資料に目を通した後、ダモクレスの出現が予知されたゴミ捨て場を目指して、仲間達と一緒に歩いていた。
 問題のゴミ捨て場が近づくにつれ、独特なニオイが纏わりついてきた。
 それは咳き込むほどのニオイであったが、挫ける事なく、それを掻き分けるようにして、ゴミ捨て場の前までやってきた。
 そこには作業着姿の男達がおり、トラックの荷台から廃棄家電を下ろしている最中だった。
「……チッ!」
 だが、バニラ達の存在に気付くと、気まずそうにしながら舌打ちし、廃棄家電をトラックに積み直し、何も言わずに去っていった。
「……ん?」
 その事に違和感を覚えつつ、バニラが殺界形成を発動させ、一般人が近づいてこないように対策を施した。
「それにしても、洗濯機は正しく扱わないと、危ない物になっちゃうのね。人のミスによって捨てられたのは、ちょっと哀れな気もするけど……」
 霧矢・朱音(医療機兵・e86105)が複雑な気持ちになりつつ、どこか遠くを見つめていた。
 ある意味、説明書を見ておけば、起こらなかった悲劇。
 しかし、説明書を読まなくても、大丈夫。
 洗濯機なら説明書を見なくても分かる。
 そんな軽い気持ちが最悪の事態を招き、このような結果に繋がってしまったのかも知れない。
「まぁ、大家族とかは面倒がって洗濯物を一気に詰め込むってケースも多いけど……。それでも、ちゃんと家電製品の説明書は読むべきだとは思うわね。だからと言って、ダモクレスとなり人を襲っていい理由にはならないけど……」
 姫神・メイ(見習い探偵・e67439)が、自分なりの考えを述べた。
 それだけ、全自動洗濯機にとっては、ショックな出来事だったのだろう。
 その原因が自分ではなく、相手にあったため、余計に腹立たしかったのかも知れない。
「……とは言え、家電製品は、どんなに高性能な物でも正しく使わないと、すぐ壊れちゃう、一つの教訓になったわね」
 静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)が、警戒した様子で辺りを見回した。
「セ・ン・タ・ク・キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した全自動洗濯機が、産声にも似た機械音を響かせ、ゴミの中からムックリと姿を現した。
 ダモクレスは、まわりに捨てられていた廃棄家電を取り込み、ロボットのような姿になっており、殺気立った様子でケルベロス達の前に降り立った。
「どうやら、私達を敵だと思い込んでいるようね。洗濯容量を守らなかった事が原因で故障したのだから、人間を恨む気持ちはわかるけど、私達を敵視するのは間違いね」
 六星・蛍火(武装研究者・e36015)が鋭い殺気を感じ取り、困った様子で溜息を洩らした。
 この様子では、ダモクレスと化した事で、全自動洗濯機だった頃の記憶が改ざんされ、すべての元凶がケルベロス達だと思い込んでいるのだろう。
 完全に、その記憶が本物だと思い込んでいるのか、何から何まで鵜呑みにしているようだった。
「ゼ・ン・ジ・ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、胸元からビームを放ってきた。
 そのビームはグルグルと激しく回転しながら、物凄いスピードでケルベロス達に迫ってきた。
「……雪の属性よ。その大自然を巡る力よ、仲間を護る盾となりなさい」
 すぐさま、依鈴がエナジープロテクションを発動させ、雪属性の盾を作り上げる事で、ダモクレスのビームを防ごうとした。
「セ・ン・タ・ク・キィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 だが、ダモクレスのビームは、強力ッ!
 そのため、雪属性の盾を木っ端微塵に破壊しそうな勢いで、ガリガリと削って弾け飛んだ。
「ゼ・ン・ジ・ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 それを目の当たりにしたダモクレスが、再びビームを放つため、エネルギーをチャージし始めた。
「そう何度もビームを撃てると思ったら、大間違いよ。既に、あなたの弱点は見抜いているのだから……!」
 その事に気づいたバニラが破鎧衝を繰り出し、高速演算で構造的弱点を見抜き、痛烈な一撃を放つ事で、ダモクレスの装甲を破壊した。
「ゼ、ゼ、ゼ、ゼッ!」
 その事に危機感を覚えたダモクレスが、滑るようにして後ろに下がった。
「私達から逃げる事は不可能よ。これで、真っ二つに叩き割ってあげるわ!」
 そこに追い打ちを掛けるようにして、朱音がルーンディバイドでルーンを発動させ、光り輝く呪力と共に斧を振り下ろした。
「ゼ・ン・ジ・ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その一撃を食らったダモクレスが、真っ黒なオイルを垂れ流し、ヨロめくようにして崩れ落ちた。
「さぁ、行くわよ、月影。共に頑張りましょう!」
 その流れに乗るようにして、蛍火がボクスドラゴンの月影に声をかけ、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
 その気持ちに応えるようにして、月影がダモクレスの攻撃を警戒しつつ、勢いよく飛び上がった。
「セ・ン・タァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 それに気づいたダモクレスが月影を狙って、螺旋状のビームを発射した。
「……!」
 即座に、月影が横に逸れ、ダモクレスが放ったビームを避けた。
「一体、どこを見ているの。……私は、ここよ」
 その隙をつくようにして、メイがスターゲイザーを仕掛け、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「ク・キィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その拍子にダモクレスがバランスを崩し、ブロック塀にぶつかって、耳障りな機械音を響かせた。
「黒の弾丸よ、敵を侵食してしまいなさい!」
 次の瞬間、バニラがダモクレスに狙いを定め、死角から黒影弾を撃ち込んだ。
「セン、セン、センンンンンンンンンンン!」
 その影響でダモクレスの身体が侵食され、悲鳴にも似た機械音が響き渡った。
「タァァァァァァァァァァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……!」
 しかし、痛みや苦しみよりも、憎しみの方が勝っていたらしく、その気持ちをバネにして、狂ったように拳を振り回した。
 それが熱を帯びた衝撃波となって、ケルベロス達に襲いかかった。
「光の蝶よ、仲間の感覚を覚醒させなさい」
 すぐさま、依鈴がヒーリングパピヨンを発動させ、パズルから光の蝶を出現させ、仲間の第六感を呼び覚ました。
「タッキィィィィィィィィィィィィィィィィィィ」
 その事に気づいたダモクレスが、吠えるようにしながら耳障りな機械音を響かせ、抉り込むようにしてパンチを繰り出してきた。
「なかなか強力なパンチのようだけど、この一撃を防ぐ事が出来るかしら?」
 それを迎え撃つようにして、蛍火が達人の一撃を繰り出した。
 その途端、互いの力がぶつかり合って、それが衝撃となって辺りに散った。
「随分と熱くなっているようだけど、洗濯した後は、乾かさなきゃね」
 その隙をつくようにして、メイがグラインドファイアを放ち、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「この炎で、焼き尽くしてあげるわ! 何もかも……!」
 そこに追い打ちを掛けるようにして、朱音もグラインドファイアを放った。
「ゼ・ン・ジ・ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 そのため、ダモクレスは全く抵抗する事が出来ず、全身を炎に包まれながら、悲鳴にも似た機械音を響き渡った。
「セ・ン・タッキィィィィィィィィィィィィィィィ」
 それでも、ダモクレスは諦めておらず、最後の悪足搔きとばかりに、全自動洗濯機型のミサイルを発射した。
 それは全自動洗濯機を模したモノで、アスファルトの地面に落下するたび、ドシンドシンと音を立て、ガタガタと音を響かせながら爆発し、大量の破片を撒き散らした。
「……大丈夫? すぐに回復するからね!」
 その破片を避けながら、蛍火がヒールドローンを発動させ、小型治療無人機(ドローン)の群れを操って仲間を警護した。
 それに合わせて、月影が属性インストールを使い、自らの属性を蛍火に注入した。
「ゼ、ゼ、ゼェェェェェェェェェェェェェェ!」
 その間に、ダモクレスがミサイルの装填を終え、再び耳障りな機械音を響かせて、次々と発射していった。
「……そろそろ諦めなさい。あなたに勝ち目はないわ。私達に勝負を挑んだ時から、それは決まっていた事よ」
 バニラがダモクレスの死角に回り込み、クリスタライズシュートを放った。
 それと同時に射出した氷結輪がダモクレスを切り裂き、強烈な冷気でミサイルの発射口を凍りつかせた。
「ジ・ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 だが、ダモクレスは諦めていなかった。
 再びミサイルを発射するため、全力全開ッ!
 その気持ちに反して、ミサイルは発射される事なく暴発し、真っ黒な煙が上がっていった。
「何をやったところで、私の眼は、欺けないわよ……」
 次の瞬間、メイが【探偵の眼力(タンテイノガンリキ)】を発動させ、探偵の経験によって培われた鋭い視線を飛ばし、ダモクレスを畏怖させて動きを封じ込めた。
「だから終わりにしましょう、この一撃で……!」
 それに合わせて、朱音がファミリアシュートを発動させ、杖をリスの姿に戻した上で、魔力を籠めて射出した。
「ゼ、ゼ、ゼ、ゼ・ン・ジ・ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
 それと同時に魔力の塊と化したリスが、ダモクレスの身体を貫いた。
「セ・ン・タ・ク・キィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その一撃を食らったダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、大爆発してガラクタの山と化した。
「何とか倒す事が出来たけど、元の戻すのは大変そうね。とにかく、みんなで協力して、元通りにしましょうか」
 そう言って依鈴が深い溜息を漏らした後、ヒールを使って辺りを修復するのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年5月3日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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