ミッション破壊作戦~再びの安息を

作者:寅杜柳

●ヘリポートにて
「さあミッション破壊作戦の時間だよ! 屍隷兵に侵略された地域を解放する為に力を振るってくれないかい?」
 威勢よく声を上げる雨河・知香(白熊ヘリオライダー・en0259)にケルベロス達が集まってくる。
「うん、有難う! さて、今回皆にやってきてほしいのは屍隷兵のミッション地域の強襲型魔空回廊の破壊だ。ジグラット・ウォーで新たな『グラディウス』を得てから破壊作戦を迅速に行えるようになった流れで、残っているミッション地域も潰して奪還しようってことだ。皆も知っての通りグラディウスはこんな感じの兵器で通常の武器としては使えない」
 そう言いながら知香はヘリオンから長さ70cmほどの小剣をケルベロス達の人数分取り出して手渡した。
「けれど『強襲型魔空回廊』を破壊することができる、今回の作戦に必須な兵器だ。一回使ってもグラビティ・チェインを吸収すれば再使用できるから、なるべくは使い捨てにせず回収してきてほしい」
 そして知香の説明はグラディウスの使用方法と機能についてにさしかかる。
「それでグラディウスは使用者がグラビティを高める事で威力を増す。ケルベロス達が極限までグラビティを高めた状態で使えば強襲型魔空回廊さえも一撃で砕く事もできるぐらいにね」
 もし破壊できなかった場合でも魔空回廊にダメージは蓄積するから、決して無駄にはならないはずだ、そう白熊のヘリオライダーは言って。
「強襲型魔空回廊があるのはミッション地域の中枢だ。徒歩とかの方法だと大量のデウスエクス達が妨害してくるだろうから辿り着くのは難しくて危険も大きい。だからヘリオンで上空から降下して叩き込むのが一番確実だろう。そして強襲型魔空回廊の周囲はドーム型のバリア……半径は30mだね。魔空回廊を囲んでいるバリアにグラディウスを触れさせれば効果は発揮されるから、降下しながらでも十分に当てられる。そして更に、グラディウスはその力を発揮する時にグラディウスを所持していない者を無差別で襲う雷光と爆炎、そして煙幕を発生させる。強襲型魔空回廊の防衛を行っている精鋭であろうとそれら全てを防ぐことはできないから、光や煙の影響を受けていない皆はその生じた隙を狙ってグラディウスを回収、撤退する流れになるだろう」
 だけれどそう上手い話ばかりじゃないからね、と知香は続ける。
「グラディウスの効果発動で護衛部隊のある程度は無力化できる。けれど完全に無力化はできない……つまり、撤退を阻む強敵との戦闘自体は免れないんだ。大混乱の中、連携を取ってくることはないだろうから混乱している間にどうにか強敵を撃破し撤退する……時間がかかりすぎると混乱も収まって、無力化した敵達が態勢を整え包囲されてしまう可能性も十分あるから撃破する速度はとても大事だ」
 万が一そんな状況に陥ってしまった場合は降伏するか、あるいは最終手段を使うか――どちらも考えたくはないからそんな状況にならないよう頑張ってほしいと、白熊のヘリオライダーは言う。
「攻め込む屍隷兵のミッション地域は皆に決めて欲しい。地域によって特色も様々だからそれを参考にするのもいいかもしれないね」
 そこまで説明した知香は言葉を切る。
「ヘリオンデバイスがあるとは言っても戦いの場は敵地だ。魔空回廊の破壊は大事だけどそれよりも無事に帰ってくることが大切だ。だからしっかり準備整えて任務を果たして帰還してきてくれ」
 それじゃ頼んだよ! と知香は明るく締め括る。そしてヘリオンへと乗り込み、ケルベロス達を屍隷兵に占領された地へと導くのであった。


参加者
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
紺崎・英賀(自称普通のケルベロス・e29007)
岡崎・真幸(花想鳥・e30330)
帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)
青沢・屏(守夜人・e64449)
 

■リプレイ

●屍の地に向かう
 山口県岩国市。
 突如出現した異形の屍隷兵達に侵略された地を目指し、一機のヘリオンが空を征く。
 ヘリオン内には五人のケルベロス、地上を見下ろす紺崎・英賀(自称普通のケルベロス・e29007)は服の裏のスペースに収めたグラディウスの感触を服の上から確かめつつ、入念に最終確認を行っている。
 その隣で帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)は窓より随分と痛んだ街並みを見下ろしながら撤退経路を頭の中に描いている。
「剣豪ゆかりの地を屍隷兵の刀と人々の血で汚そうなんて無礼千万です!」
 ウェアライダーの尾の毛並を逆立て怒りを見せるのはミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)。
 魂なき骸に心無い剣に技もへったくれもないと、そんな彼女の言に同意するように頷き、静かにグラディウスを握りしめる青年は青沢・屏(守夜人・e64449)。
 彼の最も古い記憶は炎燃え盛る街と拾った二丁のリボルバー。それ以前の記憶を失いながら、何故か胸に宿る悪への怒りの炎はこの地を解放する事をこそ望む。
 ボクスドラゴンのチビを傍らに、オラトリオの岡崎・真幸(花想鳥・e30330)は家族と共にこの地を旅行した話を昔していた学生時代の同級生の事ををふと思い出していた。
 砂金探しに岩国基地の祭りの航空機のパフォーマンス、錦帯橋に大きな白蛇に、そして佐々木小次郎の像。
 そんなありふれた話を単なる自慢と当時は聞き流していたが、暫くして彼自身も実際に見て体験する機会があった。この地での多くの体験は、子や孫世代にも体験させてやりたい程に素晴らしく、当時素直に受け止めなかった己を恥じた。
(「あいつは、浪漫や非日常的な楽しさ、感動を共有したかったんだろう」)
 単なる自慢ではなかった、かつての同級生の気持ちも今の真幸なら理解できる。

 そして、ヘリオンは魔空回廊上空へと至り五人が降下を開始する。
 服の裏に収納した短剣を取り出し、握りしめながら英賀は思う。
 かつて手を汚す事を強いた者への復讐――とうに成し遂げたそれは、彼が人生の全てだと思う程に重要な事だった。
 けれども今の彼はもっと人生を楽しみたいと思えるようになっていて、だからこそ何かの目標や成し遂げたい事が沢山あっただろうこの地の人々の生活が破壊された事に憤りを感じる。
「定められた命を持つ者の人生の尊さは、屍隷兵には分からないよねっ!」
 そして屏も叫ぶ。
「記憶のない私でも、他人の死体を弄ぶ事はなんと冒涜的で罪深い行為であるかを知っています!」
 デウスエクスの襲撃で犠牲になった人々もいるだろう。そんな行為を創造した存在に行わせる残酷さに屏の胸の怒りの炎は燃え上がり。
「だから、死者たちの悲しみも、痛みも! ここで終わらせる!」
 死者への安寧、それを一心に願いグラビティが高められていく。
「ここを襲う屍隷兵は、生前、誇り高い立派な剣士だったのでしょう」
 屍隷兵はその性質から元になった屍がある。彼らに対し、想い馳せる翔の言葉は敵への憎悪でなく元になった人々への敬意。
 彼らの剣を意志のない唯の殺戮道具にする非道な行い――魔空回廊が近づくにつれ、翔の言葉が熱を帯びていく。
「死者の冒涜にもほどがあんぞ! 道具として永遠にこき使われるくらいなら、俺の手で眠らせてやる!」
「……というか木偶の坊如きが! ジャパニーズ剣術舐めんじゃねぇぞゴルァ!!」
 熱く叫ぶ仲間達につられ、ミリムも令嬢らしくない荒っぽい言葉遣いで叫ぶ。
 剣に所縁のある地でデウスエクス、それも屍を元に産み出された悲しき存在に無茶苦茶にされるのも今日までだ。
 想いの叫び、それらはグラディウスに込められたグラビティと刀身の輝きを高めていく。
 そんな仲間達の中、真幸とチビは静かに意志と力を練り上げる。
 ――この地での体験を伝え、未来に残したい。今いる者だけでなく未来の世代にも。
 だからこそ奪還する、それが仏頂面のまま静かに真幸が込める想い。
「……岩国を返せ」
 ケルベロス達の想いと叫び、それらにより五なる光の短剣の輝きは臨界に達し、
「誇りあるこの地域を此処を愛する人達の居所を返せぇえええ!!」
「お前らが一つ命を奪ったならその人生分の罪を償え!」
「貫け! グラディウス!」
 言葉と共にグラディウスがケルベロス達の手より離れ、爆音と閃光が周囲を満たす――。

●三剣の屍剣士
 そして、爆発的な光と音が過ぎ去った後には魔空回廊は影も形もなく消失していた。
 音と閃光が溢れた間に着地を済ませたケルベロス達はグラディウスを回収しつつ服の裏やベルト等に収納、固定し即座に次の行動に移る。
 第一目標は達成、なれば後は撤退するのみだ。
 翔とミリムが周囲を見渡し上空より確認していた退路への道を探す中、屏は靴のデバイスの機能を起動し仲間達をビームで繋ぐ。
 ――見せろ。
 地獄の底から響くような抑揚のない声。即座に反応したケルベロス達が振り向いた先にはツギハギだらけの全身に両腕には二刀、背に生やした歪な三本目の腕は大太刀を握る異形の屍隷兵。
(「関節を外すなら……いやちょっとこれホラーで直視できないな……」)
 剣士の悍ましき装いに英賀は少しだけ後ずさり。けれど同時に冷徹な思考でどう解体し打倒すかを既に算段している。
 真幸も僅かに顔を顰めている。剣豪所縁のこの地の想い出を冒涜し、害する屍隷兵への嫌悪が滲み出ていた。
「じゃ、次の仕事にかかりましょう。……邪魔なやつを蹴飛ばしてね」
 言うや否や、屏が禍々しい形状のナイフを抜いて剣士の屍隷兵に飛び込む。動きの起こりすらない彼の卓越した技量による動きに剣士は対応できない。
 その身に浸透するような一撃を受けた剣士に二つの追撃が襲い掛かる。空よりは翔の流星の飛び蹴り、そして身を低くし背のジェットパッカーで加速するミリムが剣士の足元を弧月の軌跡で斬らんとする。
 しかし剣士は空よりの襲撃を背の太刀で受け傾けて受け流し、足元を狙う刃を両腕の刀を上手く操り抑え込むと、奇妙な角度に体を捩じらせ三人を振り払う。
 同時、剣士の周囲の地面に手裏剣が数本投擲され、十字架の如き形に規則正しく突き立てられる。
「見せてほしいのかい? ちょうどいい技があるよ」
 英賀が挑発的に口にし術を発動すれば、彼の過去の業は呪いとして敵対者の屍隷兵の意識に映し出される。
 本来見せる為の技ではなく、見せない内に殺す技。それは屍隷兵の隙を確かに捉えたが、効果範囲が広いせいか本来意図する足止めは成らない。
 何もなかったかのように剣士はその三刀を目にも止まらぬ速度で振るうが、チビが庇い斬撃を受け止める。
 深々と切り裂かれたがチビの闘志は健在、即座に自身に属性をインストールし傷を癒すと、重ねて異界の古代語が真幸の口より歌うように紡がれる。聞き取り辛く意味も理解できないその歌は治癒の術、チビの負傷は瞬く間に塞がっていく。
 さらに屏が妖精の靴に力を集中、屍隷兵に星型のオーラを蹴り込むと同時、更に距離を詰めたミリムが不浄のスライム纏う手を突き出して、スライムがぶわっと広がり屍隷兵へと喰らいつく。
 全身を包まれた屍隷兵は背の太刀で斬り払うが、そこに翔が精神を集中し頭部を起爆しその体を弾き飛ばす。
 しかし、屍隷兵は即座に体勢を立て直すと隙の無い歩法で距離を詰め、ミリムに向け背の大太刀を唐竹割に振るう。
 そこに機械腕のデバイスを装着した英賀が割込み二振りのナイフを交差させその交点で太刀の強烈な一撃を受け止めガキンと大きな音が響いた。
 熟練の彼でもこの重い一撃に両手が痺れるが、何とか力を斜めに逸らし直撃を防ぐ。そしてくるりと回転し剣士の胴に片方のナイフを押し込み真上に切り上げれば、やや黒ずんだ血がぱっと英賀に降りかかり傷を癒す。
 そしてチビの属性インストールと真幸が身に纏う青きオウガメタルの粒子が前衛の感覚を活性化させつつその傷を癒していく。

 そして数合、屍隷兵とケルベロス達が交錯する。
 呼吸を合わせたミリムと翔の連撃が屍隷兵を捉えんとするも、剣士は後退しそれらを回避。
 今回のケルベロス達は火力重視の構成、しかし確実に当て崩していく手段にやや欠けている。長期戦になる前に叩き伏せる算段であったが、その火力も当たらねば効果はない。
 背後の大太刀が振るわれ放たれた真空波が翔に襲い掛かるがそれをチビが阻み、そして入れ替わりに屏が飛び込み変形したナイフを振るい、傷口を抉り斬り開きその周囲の呪縛をも増幅する。
 そしてチビの傷口は属性インストールと主である真幸の歌による治療も重ねられすぐさま問題ない程度まで回復。
「まだまだぁ!」
 当たらぬ攻撃にやや焦りを感じつつミリムが気合を入れ緩やかな弧を描く斬撃を剣士に見舞う。
 その刃を屍隷兵は回避しようとするが、そこに翔が飛び込み流星の飛び蹴りを喰らわせ妨害、ミリムの日本刀が正確に屍隷兵の足の腱を斬り裂いた。
 だが屍隷兵は平然と立ち上がると構えを取り呼吸を整えるかのような所作を行い、その傷を癒す。
 回復され時間を喰われてしまっては周囲の混乱も収まってしまう――だから、速やかな撃破を。
 ケルベロス達と屍隷兵の剣士の戦いは激しさを増していった。

●刃を掻い潜り
 裂帛の気合と共に翔が槌にグラビティ・チェインを込め、剣士の構えを砕くように槌の重量を叩き付け、更にチビのタックルが重なる。
 その二撃をまともに受けた屍隷兵は呼吸を乱し、研ぎ澄まされた刃の如き空気が霧散する。
 だが即座の反撃――三連斬を割り込んだ英賀が防ぎ、その傷を真幸が癒す。
 屍隷兵の攻撃は一人しか狙えないが破壊力はかなりの物。チビと真幸の懸命の回復で癒せるダメージは即座に回復されるが、それでも癒しきれぬダメージは重なってくる。
「風槍よ! 穿て!」
 ミリムの眼前に描かれた紋章は女王騎士、突撃槍が如き風槍が剣士の手足五か所を貫き後方に押し返せば、そこは十字架を描いた手裏剣に囲われた領域。
「これは僕が誰かに見せた悪夢……」
 再び英賀が自身の業を呪いとして敵の意識に叩き込む。屍より創り出された剣士は恐ろしき呪いに怯みはしない、けれどその足取りは僅かに鈍る。
 その間隙を見逃さず、屏が災厄の概念を込めた改造弾『タイムエクスパンド』をリボルバー銃に込め、剣士に照準を合わせる。
「永遠なる時間の流れに潜伏している災厄よ、この私の呼びかけに答えよ! 目の前の敵を喰らう!」
 狙うは傷口、屍隷兵の総身を覆う呪縛を加速させる為に。
「ディザスタァ・バスター!」
 青年の叫びと共に放たれた弾丸は剣士の足に着弾、そしてその命中した一点の時間が加速させて一気に傷とその身を覆う呪縛を膨れ上がらせる。
 突然増幅された呪縛に感覚が追い付かないのかよろめく剣士、そこに活性化された感覚を以てミリムが超重の竜槌を振り上げ、咆哮のような音と共に振り下ろし屍隷兵の背の腕を凍らせ強烈な衝撃を叩き込む。
 屍隷兵は三刀重ねその直撃を防ぐが、浸透する衝撃はその体を駆け巡る。
 だが行動停止には届かない。剣士の三刀の反撃が恐ろしい勢いで次々に襲い掛かる。庇いに入った英賀がナイフと機械腕を駆使し阻むがその勢いは苛烈。けれど消耗した彼に後方からの癒しの歌が飛んでくる。
(「これなら自分を犠牲にせずに済みそうだ」)
 英賀は内心思いつつナイフを屍隷兵に軽く振るいながら一旦距離を取る。
 そして入れ替わりに飛び込んできたのは翔。動きを縛るのは十分、迎撃の為振るわれる三刀を彼は達人の技量ですり抜け懐に潜り込むと、至近距離から槌をコンパクトに振るい剣士の胴に叩き付ける。
 更に女王騎士の風槍の群れが屍隷兵を刺し貫く。火力強化のデバイスの恩恵を受けた二人の攻撃の威力は当たったなら凄まじい破壊力となる。
 呻き声をあげながら、剣士は背の大太刀を振るい風槍をすり抜けるように真空波を飛ばす。狙われたミリム、しかしそこにチビが飛び込み庇った。
 だがこれまでに重なったダメージに箱竜はついに倒れ姿が消えてしまう。
 僅かに眉を顰める真幸、しかし既に剣士の方も傷は随分重なっている。なれば最後まで役割を全うせんと、真幸は薄青のオウガ粒子を前衛に展開し支援を行う。
 ――この屍隷兵の剣士は強力で、姿も直視するには辛い。
「でもB級ホラーだ。解体して僕好みのサイズにしてやるよ」
 だが戦う内に慣れてくるもの。三連斬を凌ぎ切った英賀は屍隷兵の背後に踏み込むと、変形させたナイフを振るい背の腕を肘の部分で斬り飛ばす。
 まずはその悪趣味な三本目、と冷たく呟く彼に続いたのは翔。
 彼の両手足、そして槌には限界まで纏った混沌の力――水平方向へのジェット加速で刀の間合いの内に一息に潜り込み、無呼吸の連撃を見舞う。
 その勢いは敵対者が一息すら吐けぬ程苛烈、
「てめぇがくたばるまで、この攻撃は止まねーよ!」
 力強く一撃を振るい顎を真下から槌で突き上げる。まともな存在ならこれで倒れていただろう一撃、けれど剣士は既に死したる身故か、呻き声をあげながら立ち上がる。
 あと一押し――尚も倒れぬ屍隷兵の前に立ちミリムが日本刀を納刀し、居合の構えをとる。
 その構えに屍隷兵の動きが一瞬止まる。業を見極めんとする一人の剣士であるかのように。
 一閃――霊魂に終焉を齎す日本刀が、三刀の剣士の脇下から逆の肩口へと奔り抜けその呪われし存在に終止符を打った。

●死地より戻りて
「それでは早く離脱しましょう」
 屍隷兵の剣士との交戦を終え、デバイスのビームを仲間に繋げたミリムが促す。
 そして翔が見出していた撤退経路に、五人は屏の靴のデバイスの補助も受けながら撤退を開始する。
 混乱から復帰しつつある屍隷兵の気配を感じながら、屏はぽつりと呟く。
「……私の働きはどうでしたか?」
「屏君、真面目だよね……」
 意表を突かれたように英賀が言うが屏にとっては重要なこと。記憶がなく他人との関りもやや苦手、だからこそ間違いを犯していないか不安になのだ。
「うん、凄く助かってるよ」
 積極的に意見を出し役割も十分果たしていた屏、そう英賀は軽く笑んで率直に伝えた。
「……魔空回廊破壊を成し遂げ、そして全員がこうして脱出できています。これ以上の仕事はそうないのでは?」
 誰か一人欠けていればこのような結果に得られなかっただろう、そう翔も言いミリムもうんうんと頷く。
 撤退しながらふと、真幸は空を見上げる。
 あの日、青空に鮮やかに描かれていた航空機のパフォーマンス――この地を奪還できたなら、それを次世代に見せるという願いは叶うだろう。
 彼自身に子供の予定はないけれども、未来に何かを繋げる助けはできる。

 ――死に満ちた地からケルベロス達が帰還する。魔空回廊の破壊と、全員揃っての帰還という成果と共に。

作者:寅杜柳 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年5月6日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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