ヌクヌクこたつの危険な誘惑！

■リプレイ

●都内某所
「以前から、こたつ型のダモクレスが出てくるのではないかと危惧していたけど、それが現実のものになるなんて……。それでも、まだ被害が出ていない以上、手を打つ事が出来るわ。最悪の事態を招く前に、みんなで倒してしまいましょうか」
　リサ・フローディア（メリュジーヌのブラックウィザード・e86488）は複雑な気持ちになりながら、ダモクレスの存在が確認されたゴミ捨て場にやってきた。
　この場所は元々空き地であったが、いつの頃からか家電が捨てられるようになったらしい。
　そのため、まるでパズルのように大量の家電が積み上げられており、いつ崩れ落ちてもおかしくないような状態になっていた。
「……私、知ってますわっ！　冬にお部屋にあると、とても快適で眠くなるというお話ですの。何だか話を聞いているだけで、魅力的に思えてしまうので、出来れば試してみたいものですわ」
　そんな中、霧城・ちさ（夢見るお嬢様・e18388）が、電気こたつを利用している自分の姿を思い浮かべ、ウットリとした表情を浮かべた。
　だが、いまは依頼中。
　危うく電気こたつに魅了され、何処か遠くの世界に旅立ってしまいそうになっていたが、ギリギリの所で踏み止まった。
　それでも、『ちょっとくらいなら大丈夫かも』と言う気持ちが脳裏に過ったため、ブンブンと首を振って何とか我に返る事が出来た。
「確かに、コタツはいつまでも入っておきたいわよね。だからと言ってダメ人間とまでは悪い言われようだわね。これじゃ、このダモクレスも、とばっちりを受けたようなもの」
　霧矢・朱音（医療機兵・e86105）が、不満げな表情を浮かべた。
　実際に、問題があったのは、電気こたつではなく、利用した者達。
　彼らがすべての責任を、電気こたつに押しつけなければ、問題にならなかった事である。
「まあ、何時までも入っていたい気分になるから、何となく気持ちは分かるけど、その事を非難されてダメ人間製造マシーンと言われたのは不憫なものね」
　六星・蛍火（武装研究者・e36015）が、同情した様子で口を開いた。
　おそらく、電気こたつ側に、悪意はない。
　ただ、相手をヌクヌクにしたいという一心で、全力を尽くしていたのかも知れない。
　そう考えると、電気こたつが憐れに思えてしまうのだが、ダモクレスと化す事が分かっている以上、放っておく訳にはいかなかった。
「皆をヌクヌクしてあげたい、その気持ちは素晴らしい物だと思うわ。だからと言って、人々に危害を加えてしまったら本末転倒だね。危ないダモクレスは、さっさと倒してしまわないと……」
　青凪・六花（暖かい氷の心・e83746）が色々な意味で危機感を覚えつつ、仲間達の作業を手伝った。
　例え、電気こたつ側に人々を傷つける気持ちが無かったとしても、ダモクレスと化してしまった場合は関係ない。
　すべての思いが怒りに変換され、その矛先がケルベロスや、罪のない人々に向けられる。
「これは存在してはイケナイものだ、と言われて悲しい気持ちは分かるけど……。それでも、人々に危害を加えちゃだめものね」
　シルフィア・フレイ（黒き閃光・e85488）が悲しげな表情を浮かべ、キープアウトテープを貼った。
　ただし、電気こたつ自身は、人々を傷つけるため、再び動きたかった訳ではない。
　その思いを小型の蜘蛛型ダモクレスに利用されてしまっただけではあるが、倒す事以外に止めようがないため、仕方のない事だった。
「デ・ン・キ・コ・タ・ツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　次の瞬間、ダモクレスと化した電気こたつが、耳障りな機械音を響かせ、ゴミの山から顔を出した。
　それは機械で出来たカタツムリ。
　その上、無駄に電飾がピカピカしていたため、電気こたつの要素がほとんどなくなっていた。
　だが、ダモクレスと化した電気こたつにとっては、些細な事であったらしく、まったく気にしていないようだった。
「さぁ、行くわよ月影。一緒に頑張りましょう！」
　すぐさま、蛍火がボクスドラゴンの月影に声を掛けつつ、ダモクレスに達人の一撃を繰り出した。
　それに合わせて、月影が蛍火を援護するため、ダモクレスの死角に回り込んだ。
「デ・ン・キィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　その事に気づいたダモクレスが、耳障りな機械音を響かせながら、凍りついた身体をヌクヌクさせ、相手をダメ人間にするビームを放ってきた。
　それは一見すると、単なるビーム。
　だが、当たると危険。
　あっと言う間に、ダメ人間が出来上がり。
　そう警告されていたビームであった。
　ただし、実際には喰らってみなければ、どうなるのか分からないシロモノ。
　例え、当たったとしても、それほど被害が出ない可能性もあった。
　だからと言って、わざわざ当たる訳にはいかない。
　どんな効果があるか分からない以上、なるべく当たらないようにするのが、身のためであった。
「雷鳴の蒼螺子よ、その雷の属性による盾を展開しなさい！」
　即座にリサがエナジープロテクションを発動させ、ダモクレスが放ったビームを防いだ。
　そのおかげで誰もビームを喰らう事がなかったものの、辺りがヌクヌクして、だんだん眠くなってきた。
　それがビームの効果なのか、ただ単に眠いだけなのか分からないが、戦いの事など忘れて、のんべんだらりんとしたい衝動に襲われた。
「これ以上、ビームを撃たせる訳にはいかないから、これで動きを封じてあげるわ！」
　その事に危機感を覚えた朱音が、ダモクレスの死角に回り込み、スターゲイザーを炸裂させた。
「後ろ足での飛び蹴りを、食らえー！」
　それに合わせて、シルフィアもスターゲイザーを仕掛け、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「コ・タ・ツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　続けざまに攻撃を喰らった事で、ダモクレスはバランスを保つ事が出来ず、横に倒れ込んだ。
　それでも、エネルギーのチャージを止める事無く、今にもビームを放ちそうな勢いで、発射口が不気味に輝いた。
「……残念でしたわね。そのビームを撃つ事は不可能ですわ」
　その事に気づいたちさが、戦術超鋼拳でダモクレスに殴りかかり、ビームの発射口を破壊した。
　それに合わせて、ウイングキャットのエクレアがキャットリングを放ち、ダモクレスを牽制した。
「デ、デ、デ・ン・キィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　それでも、ダモクレスは諦めておらず、こたつの中から無数のアームを伸ばし、ケルベロス達を引きずり込もうとした。
　だが、そのアームは機械化した寄生虫の如く不気味なシロモノ。
　そのため、アームと言うよりも、機械化した触手に近い感じであった。
「見た目からして、危険な感じがするんだけど……。絶対に危険なヤツよね？　だから、それ以上近づかないで……！」
　シルフィアが嫌悪感をあらわにしながら、ドラゴンサンダーを仕掛け、竜を象った稲妻を放ち、ダモクレスを痺れさせた。
「コ、コ、コ・タ・ツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　その途端、ダモクレスが悲鳴にも似た機械音を響かせたものの、コタツから伸びたアームは、まったく影響を受けておらず、ウネウネと蠢いていた。
　それが原因で、余計に寄生虫のような印象を受けたため、ケルベロス達の警戒心が爆発的に膨らんだ。
「よほど、こたつの中に引きずり込みたいようね。でも、お断り。それ以上、近づくのであれば、容赦はしないわねよ」
　六花がダモクレスに対して警告した後、轟竜砲でハンマーを砲撃形態に変形させ、ダモクレスにブチ当てた。
「オーラの弾丸よ、敵に喰らい付きなさい！」
　そこに追い打ちをかけるようにして、蛍火が気咬弾でオーラの弾丸を放ち、ダモクレスに食らいつかせた。
「コ、コ・タ・ツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　その途端、ダモクレスが悲鳴のような機械音を響かせ、蜜柑型のミサイルをぶっ放した。
　それは、何処からどう見ても、蜜柑。
　一見すると無害そのものであったが、それは見た目だけ。
　アスファルトの地面に落下した途端、大爆発して大量の破片が弾け飛んだ。
「大丈夫よ、落ち着いていればすぐに傷は治るから」
　すぐさま、リサが鎮めの風を発動させ、仲間達の傷を癒していった。
「デ・ン・キィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　だが、ダモクレスの攻撃は、終わらない。
　即座にミカン型ミサイルの装填を終え、再びケルベロス達を狙って解き放った。
　それが雨の如く降り注ぎ、次々と爆発して、大量の破片を撒き散らした。
「そう何度も撃たれると厄介ね。これで凍結してあげるわ」
　その破片を避けるようにして、六花がダモクレスの死角に回りつつ、アイスエイジインパクトを仕掛け、ミサイルの発射口を凍結させた。
「コ、コ、コ・タ・ツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　それでも、ダモクレスは諦めていなかった。
　強引にミサイルを発射しようとして……暴発した。
「デ、デ・ン……キィ……」
　しかし、ダモクレスは理解できない。
　何が起こったのか分からず、現実を受け入れようとしなかった。
　そのため、まったく動けなくなって……固まった。
　おそらく、ダモクレスにとっては、ありえない事だったのだろう。
　本来であれば、発射されているはずのミサイルが、自分自身を傷つけたのだから無理もない。
「これで真っ二つにしてあげるわ」
　その隙をつくようにして、朱音がルーンディバイドを仕掛け、ダモクレスを真っ二つに切り裂き、破壊した。
「コ・タ・ツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　次の瞬間、ダモクレスが断末魔にも似た機械音を響かせ、まわりのモノを巻き込みながら爆発し、完全に機能を停止させた。
「このゴミ捨て場はダモクレスが再度狙う可能性がありそうですわね。しっかり綺麗にしておきましょうか」
　そして、ちさ達は辺りをヒールで修復した後、仲間達と力を合わせて、ゴミの掃除をするのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2021年4月23日 難度：普通 参加：6人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 1／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 1
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