デスバレス電撃戦~喧騒のレプリカーレ

作者:柚烏

 甦生氷城の制圧と共に、閉ざされていた氷の蕾が花ひらいて、冥府の海へと続く回廊が現れた。その際に聴こえた聖王女の声らしきものは、万能戦艦ケルベロスブレイドの『グラビティ・チェインレーダー』でも確認されていたらしい。
「戦艦を襲った巨大死神も撃破出来たし……制圧に向かっていた皆も、無事に帰還したみたいだね。先ずは、お疲れ様」
 そう言って、エリオット・ワーズワース(白翠のヘリオライダー・en0051)はほんのり表情を和らげてから、これからの作戦についての説明を行う。
 彼が言うには、つい先ほどレーダーの解析が終わり、それを元に予知を行うことで回廊の向こう側――デスバレスと死神の防衛作戦について、色々と情報を得ることが出来たのだと言う。
「これにより、ケルベロスブレイドはデスバレスの回廊を突破し、冥府の海での潜航能力を使って、聖王女エロヒムが囚われている場所を目指すことになる」
 ――目指すは、デスバレス深海層。正に千載一遇のチャンスと言った所だが、それだけに危険も大きい。地上と冥府の海を繋ぐ回廊では、死神の最精鋭軍が防衛にあたっているようなのだ。
「……ヴェロニカの軍勢。それは、撃破された軍団をサルベージして戦い続ける、不死の軍団なんだ」
 主戦力である奈落の兵団――ヴァルキュリア“アビス”は、撃破されるたびに幹部の元で蘇生し、再出撃してくる厄介な敵だ。それだけならまだしも、7体居る軍団の幹部もまた、撃破されてもその場で復活して戦い続けることが出来るのだと、エリオットは言う。
「だから、この幹部が一度でもケルベロスブレイドに取りついてしまえば、甚大な被害を被ってしまう。……これを防ぐには、敵を戦艦に近づけさせないように迎撃するしかない」
 ――無限に蘇生して再出撃する敵の、足止めを行う。何とも厳しく絶望的な戦いになるが、どうにかしてやり遂げて、冥府の海へと向かわねばならない。
「でも、希望は残されている。蘇生儀式を行っている死神――イルカルラ・カラミティを撃破する為のチームが別に編成されるから、そちらが儀式の阻止に成功すれば蘇生は止まる」
 だからそれ迄、何としてでも耐えきって――それから後に反撃に繋げて欲しい。その為には敵をケルベロスブレイドに近づけさせないよう、位置取りに注意しつつ戦うことが重要になるだろう。
「今回、皆に戦って貰う幹部は『軋むスコグル』。ただただ蹂躙する為だけに存在するような、正に狂戦士と言った感じの死神だよ」
 殺す――と言う命令をひたすら実行し続ける彼女は、まるでバグが生じた殺戮機械のよう。ひび割れた肌に笑顔を浮かべたまま、手にした戦鎚ですべてを叩き潰そうと襲い掛かってくる。
「海の途上でケルベロスブレイドが破壊されるようなことがあれば、僕たちには生き延びる術は無い――でも」
 無限に繰り返される生と死の流転に、番犬の牙は必ず終止符を打ってくれるのだと、彼は信じているから。
「行こう、……僕が、皆の翼になるよ」


参加者
相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)
伏見・万(万獣の檻・e02075)
リコリス・セレスティア(凍月花・e03248)
アウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)
レミリア・インタルジア(薔薇の蒼騎士・e22518)
ノチユ・エテルニタ(宙に咲けべば・e22615)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)

■リプレイ

●戦の風
 地上と冥府の海とを繋ぐ、デスバレスの回廊にて待ち受けていたヴェロニカの軍勢。死せること無く進軍してくるアビスの兵団は、神話で描かれる終末の戦を思わせて、知らず伏見・万(万獣の檻・e02075)の咽喉がひりつく。
(「――ちッ」)
 いつしか己の身に宿っていた、地獄の炎が際限なく噴き上がってくるのを、スキットルの中身を強引に流し込んで堪える。ああ――気分良く酔えるのは、まだまだ先の事になりそうだと、デバイスのゴーグルを確かめた所で舌打ちが聞こえた。
「今に始まった話じゃねえが、何で殺したやつが生き返るんだよ」
 どろりと濁った混沌の水の、沸々と滾る様子が手に取るように伝わってくるかのようだった。その身に宿すものは違えど、相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)の力となっているのは、万と同じ――怒り、だ。
「死んだらお終い、がルールだろうに……」
「相馬」
 昔の名残を微かに覗かせ、牙を剥くように顔を歪めた竜人に向けて、ぶっきらぼうに万が呼びかけた所で緊張が和らいだ。
「悪ぃ、……伏見サン」
「おゥ」
 ――色々あったが、今では竜人も立派な社会人なのだ。年長者に最低限の敬意を払うのは勿論のこと、特に万には暴走した姿も見られている。そうして万能戦艦ケルベロスブレイドを背に、一歩前へ足を踏み出す竜人に続いて、アウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)もまた壁となるべく身を踊らせた。
「これより先は通さないわ――」
 漆黒の戦装束を纏い、次々に戦場へと舞い降りてくるヴァルキュリアに対するのは、夜色の契りを交わした永遠の恋人たち。直後、顔のない伴侶――ビハインドのアルベルトが念を籠めて敵の足止めを行えば、アウレリアの四肢に仕込まれた誘導弾が一斉に放たれて、軍団を纏めて戦場に拘束していった。
「先に進みたければ、私達を破壊しつくしてから行きなさい」
 背後の戦艦に近づけさせないよう機械腕も振るいながら、軍勢を押し戻すことを意識して――だが、突出して彼女たちの方へ向かってくるのは、戦乙女たちを率いる幹部の死神のようだ。
(「繰り返される生と死……軋む、スコグル」)
 漆黒の軍団に在って、その紫銀の色彩は殊更浮き上がって見える。やや離れた位置に立つ、リコリス・セレスティア(凍月花・e03248)でも分かるひび割れた少女の器は、サルベージしたダモクレスのものを使っているのだろう。
「――父様。父様。はい、父様」
 同じ言葉を、壊れたように何度も繰り返すその姿に、死神の持つ性をリコリスは思う。それでも――剣の柄をきつく握りしめることで感傷を振り払った彼女は、そのまま切っ先を滑らせて、仲間たちを守護するべく星の聖域を生み出していった。
(「困難な戦いとなるでしょうけれど、力を尽くしましょう」)
 ――冥府の海を潜る艦が此処で墜ちれば、望みは絶たれるのだから。艦内に残った者たちや地球の人々を守る為にも、蘇生が止まるまで何とか耐え抜くしかない。
「ぬぁあああああああ――っ!!」
 景気づけだと言いながら、手始めに強烈な一撃を叩き込んだのは、服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)で。光を纏う彼女の拳が、豪快にアビスの顔面を捉えた瞬間、獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)も戦場に飛び出して守りを固める。
「……不死身の軍団の相手とはね。やってやるわよ」
 鍛錬を重ねた銀子の肉体は、しなやかさと強靭さを併せ持ち――それが更に彼女の女性らしい美を引き立て、見るものを魅了する戦いへ誘っていく。
「技を受ける気概があってこそ、勝利も輝くってものでしょう」
 そう、自身に気合を入れるように強く言い聞かせて、全方位からの構えを取る銀子はヴェロニカ軍に立ち向かっていった。其処へ、からからと加わる無明丸の笑い声には悲愴感の欠片も無く、これが絶望的な戦いであるのだと感じさせないほどだ。
「さぁ、いざ尋常に、勝負ッ!! 気分よく戦えれば、わしは何でも構わんぞ!」
 豪快に唸りを上げる黒鎖は、守護の魔法陣を十重二十重に張り巡らせて、軍団の侵攻に備える力を与えてくれる。そんな無明丸の援護に、軽くフードを揺らして応えたレミリア・インタルジア(薔薇の蒼騎士・e22518)は、高らかに戦輪を鳴らして魔法の霜を辺りに呼んだ。
「長い……戦いになりそうね」
 凍てつくニブルヘイムの領域が、兵たちの足取りを次々に鈍らせていく中で――飛翔するレミリアの氷結輪は、尚もスコグルを氷漬けにしようと冷気の嵐を吐き出していく。
(「私のすべての始まり、きっかけ……死神――」)
 蒼薔薇の耳飾りがちりちりと震えているのは、狂戦士と戦う高揚を抑えきれないからか。今にも叫び出そうとする魂を、何とか抑えようとレミリアが息を吐いた所で――嗤ったままのスコグルと、目が合ったような気がした。
「殺すね。殺すね、殺す殺す殺殺殺」
「……そう」
 ――全てを叩き潰そうと振るわれる大鎚を、臆すること無く迎え撃ち、与えられた痛みに無言で耐える。死に沈むのは怖いとは思わない。レミリアが怖れているのは、もっと別のものだから。
(「嫌だけど――でも、そういう所は似ているみたいね」)
 暗い笑みを浮かべて死神の前に立ち塞がる彼女には、最後の手段を取る覚悟もあるのだろう。だが――と、扇を手に陣形を見出すノチユ・エテルニタ(宙に咲けべば・e22615)は、返す指先で霧を生み出してレミリアの傷を癒していった。
(「……いつかは、殺せるんだ」)
 耐久戦になることは想定済みだ。緊急時の為にドローンも待機させているし、相手の蘇生能力を封じるまで戦線を維持してみせる。氷の魔術が飛び交う中、降り注ぐアビスの槍雨が此方の動揺を誘ってきたが、ノチユはゆるく髪を揺らして星の光を呼んだ。
(「それまで耐え忍ぶくらい、なんてことない」)
 ――漆黒の闇に煌めく星屑が、魔力の柱となって仲間たちに加護を齎す。死んでもすぐに蘇り、永遠に戦い続けるのだとしても、所詮は仮初の不死なのだ。
「死神だろうと――絶対に死ぬ」
 そう、終わりはあると分かっているのだと、静かにノチユは告げた。

●羽織の守護
 スコグルの性格もあるのだろうが、進軍を続ける兵団は前衛に立つものが多く、守りなど考慮せずに此方へ攻め入ってくる。例え殺されたとしても、すぐにスコグルの傍で復活出来るのだと言わんばかりに――瀕死のまま斬りかかってきたヴァルキュリアを見た銀子が、思わず顔を顰めて呟いた。
「死を恐れない相手……って、色々な意味で厄介ね」
 プロレス仕込みの技を繰り出す彼女にとって、戦いには拘りがある。相手との駆け引き、技の応酬により互いに魅力を引き出し、試合を盛り上げてこその勝利なのだ。
 なのに――独楽のように華麗な回転を決めて、鉄爪を勢い良く振るってみせた所で、時が巻き戻ったかのように平然と戦列に加わる相手を見れば、複雑な気持ちにもなると言うもの。
「血が滾る戦いにもならない……しょっぱい所の話じゃないわ」
 今は絶対に勝てないと分かっている以上、敵の撃破に意味は無いのだが、攻撃を続けなければケルベロスブレイドへの侵攻が進んでしまう――特に、配下の復活地点となるスコグルを止めなければ危険と踏んで、姿勢を低くした銀子は一気に組み付きを行っていった。
「来なさい!」
「――突破させるかよ」
 注意を此方へ向けさせた直後、唸りを上げたのは竜人の尾だ。近くに居たアビス共々、大きく纏めて薙ぎ払った所で、定められた未来からの解放を歌うリコリスが軍団の攻め手を封じていく。
(「――決して、死んで欲しくはないから」)
 彼女が望み、守ると決めた人々の中で――ふと。思い浮かんだ顔と名前があったことには、気づかなかった振りをして懐中時計を翳した。
(「いえ、安寧はもう……この手から、とうに」)
 そうして――冥府の海に揺れる月光がメイズへ誘っていくように、リコリスの紡ぐ歌は更に敵群を呪縛して、戦場へ釘づけにしていくのだ。
「倒されても、倒されても起き上がるか。コギトエルゴスム化とも違い、死んでも……となると、」
 とは言え、全ての敵を通さないのは不可能で、無明丸の放つ剣戟陣を突破していくアビスも居た。しかし万能戦艦の名を冠する通り、ケルベロスブレイドにも防衛機構は備わっているのだ。そうして接近した軍団は次々に、雷神砲や骨針の餌食となっていったが、それもすぐにスコグルの近くで復活を遂げる。
「わははははははは! お主らもご苦労なことよな!」
 目の前に現れたアビスに対し、豪快に笑ってみせた無明丸は、すぐさま翼から聖なる光を放ち戦闘を続けていった。そんなこんなで蘇生のサイクルは大体理解したが、それでもケルベロスブレイドの負担は少ない方が良いだろう。
「なら、もういっぱつじゃあ! さぁ! いざ尋常に、勝負ッ!!」
 ならば、やることは普段と変わらない――相手をぶっ飛ばす。思いっきり力を籠めて、思いっきりぶん殴りに行くまでだ。
(「突破されても、敵の数自体は減らねェ……まったく、面倒な戦いもあったもんだ」)
 ――カラン、と。乾いた音を立てて転がるスキットルは、何本目のものだったのか。大分酔いが回っていてもおかしくなかったが、万の思考は冷めていた。
 デバイスにより、消滅と復活を繰り返す敵の位置を把握しつつ、再出撃となったものを巻き込むように殲滅砲を撃つ。やはりスコグルは積極的に前へ出ようとしているようなので、彼女への牽制も忘れない。
(「――……ッ、縁起でもねェ」)
 ふと、抑えきれなかったらと厭な想像をして、無意識の内に浮かんだ言葉に、万は悪態を吐いた。気つけ代わりの酒を煽りながら、竜人や銀子がスコグルの怒りを焚きつけている間に、精々上手く狙い撃ってやろうと幻影を呼ぶ。
「……狩られるのはテメェだ」
 地を這って絡みつく、百の獣影が死神の動きを止めた所で、動いたのは竜人だ。鵺王を操り、念入りにスコグルの大鎚を捌いてから、次の一撃をレミリアへと託す。
(「皆が無事帰る為に、全力を以って」)
 青白い雷光の奔る刃が、嵐のように敵群をなぎ倒していく中で――それでも彼女を狙い、後方から強烈な冷気が吹きつける。皆を守る盾となるなら望む所だが、思った以上にレミリア達が持ちこたえているのは、癒し手であるノチユが皆の状態に気を配ってくれているからだろう。
「僕の役目は、奴等を殺すことじゃない」
 盾となる者たちも、いざと言う時の為に回復の手段を持っているが、危険な状況に陥る前に対処し、変調への耐性も引き上げていく。可能な限り敵を抑え、火力を削ぎ守りを固める――彼らの布陣は完璧と言っていいもので、無限に押し寄せる絶望にも、その魂は少しも曇りはしなかった。
「……殺せる仲間達を、支えることだから」
 ――だから、ノチユは。星を描き、花を散らし、陣をつくる。そうして癒しを届かせていく。
(「――だろ?」)
 共に回復を担うテレビウムは竜人の相棒のようだったが、「おい」とだけ呼ばれていたので名前は知らない。しかし彼も己の役割を黙々とこなしており、賑やかな応援動画によって回復を隅々まで行き届かせてくれる。
「殺す、殺すね。もっと、もっと殺すから」
(「ああ、本当に」)
 だが、軋むスコグルは相変わらず、殺戮の手を止めはしなかった。麻痺漬けになろうが、再び蘇ればいいとでも思っているのだろう――バラ・リュビアの弾丸を四肢に撃ち込むアウレリアは、微かに柳眉を顰めて溜息を吐く。
(「思いの外、不愉快なものね」)
 ――かつての自分の似姿。プログラムの命じるままに殺し壊すのみだった殺戮人形とは、このようなものであったのだと見せつけられるようで。
「……だからこそ、かしら」
 一瞬、視線を交わしたのは、そんな彼女を変えた伴侶の面影。死してなお互いを縛る、妄執にも似た愛情を抱いて、共に守る為の戦いをしようとリロードを行う。
 ――そうして僅かな隙を突かれないよう、強烈な回し蹴りを放ったアウレリアは、不意に気づいた。敵の復活が止まっている。
「この船は、お前達が触れていいものじゃない。未来を求める、いのち達の為の船だ」
 ああ、『いつか』が遂にやって来たのだと、暗灰の炎を燃やすノチユは告げた。
「……希望を、蹂躙されてたまるかよ」

●高くそびえるものの死
 ――復活が止まった最初、死神たちはケルベロスブレイドを撃破したのだと思ったのだろう。迎撃が行えなくなったからこそ、死んで復活するものも居ないのだと。
 そうして総攻撃を指示するべく、悠然とスコグルが歩みを進めようとした時、彼女はもうひとつの可能性に思い至った。
「不可能、不可能、不可能。ある筈がない――」
 カラミティの力が失われた――永遠の生が断たれ、番犬たちによって死の鎖を叩き込まれてしまうのだ、と。
「でも、殺せばいい。先に。先に殺すね、殺す」
 やることは同じだと旋風を呼ぶが、配下のアビスの対応が遅れて、勢いが緩んだ所を一気に突かれた。今までの戦いで積み重なった傷や不調を、彼女たちが癒す間も無く剣兵が倒される。
 ――哀しげな表情で葬送曲を歌うリコリスを見て、ああと納得した。敢えて倒さずに残しておいて、頃合いを見た所で一気に仕留める算段だったのだ。
「さあ! いざと覚悟し往生せい!」
 ぬぅあああああああ――ッッ!! 鬨の声を上げて向かってくる無明丸によって、後衛をかき回そうとしていた槍兵も、瞬く間に吹き飛ばされて消滅する。その中で、せめて一撃をと戦輪を放つアビスも居たが、それも銀子によって阻まれていった。
「くう、まだまだ、そんな心ない攻撃で倒れるつもりないわ……!」
 残る力を振り絞った彼女が、肉体に術紋を刻んで獅子の力を宿す。そうして重いラッシュを叩き込んだ銀子の隣では、アウレリア達が華麗な連携を決めて、背後の射手を撃ち抜いていた。
(「嗚呼、なんと心地良い」)
 互いに痛みに悶え――悦に震え乍ら命を踏み躙ろうかと、レミリアが穿つ雷光は叫ぶかのようだ。スコグルの薔薇飾りが塵に変わっていく光景に、金色の雨を幻視しながら、命で凌ぎ合うと言う事を改めて想う。
(「……なんと、甘美な事か」)
 ――喧嘩に作法などない、と言ったのは万だった。レミリアが引きつけている背後から、容赦無くスコグルを狙い撃ち、そのまま地に叩きつける。
「俺がお前の敵なんじゃない。……お前が、俺の敵なんだ」
「――……ッは、」
 顔を上げたスコグルは、その竜人の言葉を最期まで理解出来なかっただろう。殺す、と口にはしなかったけれど、竜人の裡から溢れる怒りが見えた気がした。
(「差異を分かっているのは、自分だけでいい」)

 ――頭蓋を砕く音と共に、死神の命が断たれて戦が終わる。やがて勝ち鬨を上げる誰かの声が、微かに遠くから聞こえてきた。

作者:柚烏 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年4月19日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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