●回廊出現
ヴォルヴァ・ヴォルドン(ドワーフのヘリオライダー・en0093)は朗報が3つあると皆に言う。《甦生氷城》ヒューム・ヴィダベレブングの制圧に向かったケルベロス達が無事に帰還していること、巨大死神の撃破がなされたことだ。
「3つめは《甦生氷城》を制圧したことでデスバレスへの突入口が開かれたことだ」
《甦生氷城》で戦っていたケルベロス達から、聖王女エロヒムの声を聴いたという報告があったが、同じものを『グラビティ・チェインレーダー』で確認し、解析を行っている。
この解析情報を元に、強化された予知能力により、突入口の向こう側、デスバレスの情報及び、死神の防衛作戦について情報を得る事が出来たのだ。
「千載一遇の好機といったところか。万能戦艦ケルベロスブレイドは、デスバレス回廊を突破し、冥府の海潜航能力を使って、聖王女エロヒムが囚われていると思われる『デスバレス深海層』を目指すことになる。どのような状況になるとしても危険な任務になるが、死神との決着をつける為にも、皆の力を貸してほしい」
ヴォルヴァは表情を引き締める。
「皆に頼みたいのは、敵の主力であるヴェロニカ軍団がケルベロスブレイドに接近し到達することを阻止することだ」
ヴェロニカ軍団とは死神の最精鋭軍の1つだ。
「撃破されてもサルヴェージして戦い続けるやっかいな不死の者たちでな。更に、「七大審問官」を従える「イルカルラ・カラミティ」の力により、その不死性が強化され、撃破された軍勢がすぐに蘇生して再出撃してくるのだ。残機なしのぶっこわれ具合だ」
ヴォルヴァはゲームに例えて肩をすくめる。ヴァルキュリア“アビス”たちは撃破されるたびに、ヴェロニカ軍の幹部の元で蘇生されて再出撃してくるのだ。
「これだけでも十分に厄介だが、7体いるヴェロニカ軍の幹部は『撃破されたその場で蘇生されて再出撃』する。もし一度でもケルベロスブレイドに取りつかれれば、甚大な被害を被る、だから、どうしても7体をケルベロスブレイドに近づけさせないように迎撃しなければならないのだ」
ヴォルヴァの表情は厳しく硬い。
「チートまがいの敵を足止めする厳しい戦いになるが、なんとしてもやり遂げて欲しい」
「もちろん、勝機はある。この迎撃と同時に、イルカルラ・カラミティを撃破する為のチームが編成されている」
ヴォルヴァは笑みを浮かべ両手を広げた。
「このチームは強化型ケルベロス大砲を利用して、ヴェロニカ軍団を飛び越えイルカルラ・カラミティの儀式場に突入する手はずになっている。彼らがイルカルラを撃破するか、儀式を破壊できれば、敵の蘇生と再出撃が止まる筈だ。きっとやり遂げてくれると信じ、それまで敵を足止め、攻勢の力を温存し、そして敵を倒して欲しい」
指を繰りつつヴォルヴァは言う。
「皆に対処して欲しいのは嗤うヴァルファズル。幹部たちの中では父を名乗る黒い槍、獣の脚とふざけた仮面をつけた黒衣の死神だ。死神のくせに獣のような脚を持つ。そして奴が率いるアビス達だ」
攻撃方法は槍を使った高速の回転斬撃、獣化した脚から繰り出される高速の斬撃、そして怨霊弾だ。ヴァルキュリア“アビス”たちは弓を使い、遠隔攻撃に特化している。
「死んでも蘇るせいか敵が攻め急ぐことはなく、娘と称する幹部を呼ぶこともない。娘たちがかりそめの父に加勢することもなく、ゆっくりと真綿で首を絞めるかのように迫ってくるだろう。まぁ時間稼ぎのしたいこちらとしても困りはしないがな」
どちらかというと軽装備の後衛、女性を攻撃対象とし全員が一人に集中攻撃をするだろう。
「こやつは何時いかなる時も誰の父でもあったことはない。尊大なふりをしてすべての戦死者の父たる我をあがめよ、などと言うかもしれぬがこちらから笑ってやるがいい」
ヴォルヴァはニコッと外見に合った屈託のない笑みを浮かべた。
参加者 | |
---|---|
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399) |
シェスティン・オーストレーム(無窮のアスクレピオス・e02527) |
マロン・ビネガー(六花流転・e17169) |
マイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289) |
篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558) |
ルベウス・アルマンド(紅い宝石の魔術師・e27820) |
死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807) |
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615) |
●死の海より
回廊の出現はケルベロス達にとって好機だとすれば、死神たちにとってもケルベロスブレイドを攻略する契機であった。
「見えました。前衛横一列に弓を構えたアビスが5人。中央後方に黒衣の……ヴァルファズルです」
新緑を映す瞳で敵影を捉えたマロン・ビネガー(六花流転・e17169)が仲間に伝える。淡い色の髪はショートヘアになっていて、ケルベロスコートに身を包み頭身も高い。
「やっと出てきたね。じゃ、ラーシュもお願い。今回も頑張ろうね」
マイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)は気負う様子も表面上は見せず、ボクスドラゴンのラーシュとともにマロンより前に出る。マイヤもマロン同様、帽子や大きめの外套でボーイッシュな雰囲気だ。
「では、予定通り迎え撃つとしますか……」
死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)は血の色しか連想することが出来ない紅い瞳を真正面に向ける。さらりと闇色の髪が背からなびいている。
敵の行軍はゆっくりで少しも距離が縮まらない。
「この場を支配した気でいるのか」
マイヤの後ろ髪が帽子から少しだけはみ出しているのを見つめていたソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)だが、その先へと焦点を合わせる。視界には敵の首魁であるヴァルファズル、そしてヴァルキュリア“アビス”の数が……足りない。
「あれはぜってぇスカしたいけ好かねぇヤロウって決まってるっすから、ボコっやるしかないっす」
アームドアーム・デバイスを展開させつつ篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)は軽い口調ながらも憤慨した様子で持論を展開する。誰からも異論は出ない。
「倒しても蘇生しちゃうんだよね。でも、食い止めなきゃいけない、よね」
フルフェイスの兜や外套で顔や特徴的なピンク色の髪を隠したガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)も前衛の位置をとりつつ言う。今の恰好に合わせるかのように声もワントーン落としている。
「……大丈夫。私は、私たちは出来る」
ピジョンブラッドを思わせる紅玉の瞳を昏く輝かせてルベウス・アルマンド(紅い宝石の魔術師・e27820)は言う。魅惑的な髪も羽根も今の服装では隠れてばかりだが、瞳だけはその魅力も含めて隠せてはない。
「そろそろ双方ともに射的に入り、ます。皆さま、よろしく、お願いし、ます」
ゆっくりとした口調ながらきっぱりとシェスティン・オーストレーム(無窮のアスクレピオス・e02527)が言う。それが合図であったかのように、前方の敵から攻撃が開始された。
回廊内を淡い光の弧を描いた矢が飛来する。
「矢の数は3です。数が敵の数と合いません」
「やっぱり合わないか」
素早く回廊の天底を走る矢の軌跡を捉えたマロンが手をかざす。縛霊手から巨大な発光弾を敵へと発射しつつ冷静に警告し、違和感のあったソロも声を合わせる。交差する光の奔流の先には3体のアビス、そして発光弾と交差し飛来する矢の先には小柄なルベウスの姿がある。
「お荷物になるつもりはないわ」
いつものルベウスならば身につけないだろう服装だが、それでケルベロスの動きが封じられるわけもない。1つめの追尾する矢をギリギリで交わす。だが、すぐに2番目の矢が肉薄し回避する暇はない。
「あっ」
ルベウスの視界にマイヤと彼女の頼もしき相棒、ラーシュの姿があった。2つ目、3つ目の矢はマイヤとラーシュが身を挺して庇ってくれる。
「わたしとラーシュが絶対に守るよ。だから安心してよね、ルベウス」
マイヤもラーシュも矢を受けているがダメージはほんの僅かだ。
「はい、ありがとう」
「ラーシュ、回復をお願い。わたしは……」
ルベウスの謝意に笑みを浮かべ、マイヤはラーシュに自分の回復を頼むと弓を放ってきたアビスの一人にパズルから放たれたカーリー神の幻影を強く送り出す。
「本当に、不死身ってやつですか? それなら命尽きるまで……怒りの炎に焼かれるか……試してあげますよ」
表情は少しも変えないまま優しい声音で刃蓙理もまた、手にしたパズルからカーリー神の幻影を敵へと放つ。放ちながらも僅かに疑念が表情に浮かび上がる。
「もう2人はどこでしょう?」
ヴァルキュリア“アビス”の数が足りないのだ。後方まで目を凝らそうとした刃蓙理後は、予兆のような何かを感じて身構える。
「何か……来ます」
刃蓙理の声よりも素早く佐久弥が動く。敵の最奥、黒衣の男が槍から攻撃を放っていた。その長く禍々しい闇に染まった槍は回廊の天底で幾筋にも別かれ正確にルベウスを、そして同じ後衛に位置取りしていたシェスティンへと向かって降り注いでくる。
「させないっす」
大きく身体を開いた佐久弥がシェスティンの前に立ちはだかり、一条の攻撃さえ通さない。同じくルベウスへはガートルードが射線を遮る。
「どうやら狙われちゃったみたいだね」
ガートルードは背後のルベウスへと優しい視線を送ると、自分が身につけていた無骨な兜をワイルド化した左手で無造作に脱ぎ捨てる。その間にもシェスティンの無事を確認した佐久弥が全身から無数のミサイルを射程に入ったヴァルキュリア“アビス”に向かって発射した。ほぼ同時に佐久弥に庇われて無傷であったシェスティンは手にしたケルベロスチェインをディフェンダー達の足元で展開させる。チェインが描く魔方陣がその場で戦う佐久弥やガートルード、そしてマイヤや刃蓙理の傷を癒やし、防御の力を強化する。優しい慈愛の瞳が遠くに立つ『戦死者たちの父』を僭称する男を見つめ、首を横に振る。あれは、あれはシェスティンが想う『父』ではない。
「そんな遠くからちまちま攻撃を続けるつもりっすか?」
「女を利用して偉くなったつもりの小者と、それに利用されるだけの死神になんか……私は、私たちは絶対に負けはしない!」
佐久弥の声に続いて華やかなピンク色の髪をなびかせガートルードも、どキッパリと言い切った。彼女の手にしたパズルからも幻影のカーリー神を残るヴァルキュリアへと向かって放つ。
「怒りの効果、これで今いるヴァルキュリアには入ってるね」
ガートルードは同じカーリーレイジを使うマイヤと刃蓙理に声を掛けた。
「騒がしいぞ。吾が新たなる娘の列に加えてやらんと選定をしているというに」
ヴァルファズルは仮面に隠されていない口の広角をあげ、笑みのような皺を刻む。
「私は捨て石、いつ倒れても構わないけど、やる事はやらなくては、ね」
敵の集中攻撃を浴びながらも仲間の助力で無傷のルベウスは漆黒の太陽をこの場に喚び、ヴァルキュリア“アビス”達へと漆黒の光を浴びせかける。
「あの者に矢を集中せい。いと強き娘かを測るのだ」
ヴァルファズルの言葉通り、機械的にヴァルキュリア“アビス”が矢を放つ動作に入る。しかし3体のアビスのうち矢を放つことが出来たのはただ1人だ。その矢はふらつきながらガートルードへと命中した。
「あんまり痛くない。もうアビスの攻撃は無視でもいいかな?」
ふふんと笑う。
「アビス達はもう自由に動けません。次はセントール族を目指して残念な方向に突き進んだあなたです」
マロンの淡く儚い水色の翼から放たれる光がヴァルファズルの原罪を焼き、処断の隙が作られる。光に焼かれてもヴァルファズルには余裕がある。
「なるほど。地球人の娘もいいがオラトリオの娘がもう1人いてもいい」
ほくそ笑む。会話は全く噛み合っていない。
「へんてこなおじさんの話はもういいよ」
マイヤの武器から物質の『時』を止める弾丸が放たれる。同時にラーシュも同じヴァルキュリア“アビス”へと体当たりを慣行する。がっくりと力を失って倒れるアビス。立ち上がろうとして立ち上がれない。
「一体斃してみますか……」
刃蓙理はどこからともなく出現した塵芥を舞い上げ、それはもがき続けるヴァルキュリア“アビス”で収束し爆発を起こす。
「死灰復然……くらって……泣いとけ」
灰黒い爆発が消えればそこにはヴァルキュリア“アビス”の姿はなく……ヴァルファズルの足元からゆらりと幽鬼のように立ち上がる。
「タイムラグなく甦ってくるのか。便利なような厄介なような」
感心しているのか呆れているのか、端正で硬質なソロの美貌にわずかな表情が浮かぶがすぐに引き締まった相貌になる。
「バッドステータスも消えているみたいだし、生かさず殺さず動かさず、しかない」
胡蝶の髪飾りに彩られた美髪をなびかせ、身体の前面を敵に向けその全身から無数のミサイルを発射する。それらが命中する直線にヴァルファズルの足元にもう2体のヴァルキュリア“アビス”がうずくまる姿勢で出現した。
「これがあの娘たちの蘇生と再出撃?」
瞬間移動の様に出現したヴァルキュリア“アビス”達にガートルードは驚きの声をあげ、その言葉通り甦った敵が攻撃態勢を取る。
「役立たず共め。休んでいる暇はないぞ」
無慈悲な『父』の侮蔑をはらんだ声が死に戻った彼女たちを叱責する。しかし、戻った直後にソロの攻撃に巻き込まれたヴァルキュリア“アビス”達はろくに動けない。
「仕方がない」
ゆっくりとした所作で腕を広げると、ヴァルファズルは周囲から負の想念をかき集め、闇色の弾丸に変えて打ち出してくる。それは真っ直ぐガートルードめがけて飛び、彼女の間近で爆発する。闇が空間を侵食するように広がってゆく。
「狙いを私に変えてきたのね……もしかして単純なの?」
傷はそれほど深くない。ガートルードは小声でつぶやく。後衛でスナイパーのルベウスが狙われるより前衛でディフェンダーの自分が敵の標的になるほうがずっといい。けれど、マイヤと相棒のラーシュ、刃蓙理と佐久弥まで傷ついてしまう。
「大丈夫っすよ! こんなのかすり傷っすから。フラグにもならないっすよ」
強がった味方が真っ先に倒される、なんて古臭いフラグも佐久弥は平然とたたき折る覚悟がある。背中には守るべき人がいるのだ。
「俺は今も頑張るっす。でも、明日から、もっともっと頑張るっすよ!」
佐久弥の誓いは深く熱い思いを別の力に変える。即座にヴァルファズルの足元から熱々の溶岩が噴出し赤く熱い柱を作る。
「……って、毒っすか?」
攻撃のために動いたとたん、佐久弥の全身を毒がめぐる。ヴァルファズルの攻撃が密かに忍ばせた負の置き土産だ。しかし間髪入れずに前衛たちの目の前に峻烈にして刹那なる雷の障壁が展開し消えてゆく。同時に皆の傷も毒もぬぐわれている。
「大丈夫、です。みなさんの事は、わたしが、守ります」
仲間の状態異常は報告を受けるまでもなくシェスティンが完璧に治してゆく。見た目は『機巧騎士Argo』の姿なので一瞬誰だかわからなくなる瞬間もあるが、シェスティンの行動は変わらない。
「父親面して虐待? 何時代にいるつもり?」
ヴァルファズルを守る前衛の一角となっているヴァルキュリア“アビス”へとガートルードが接近し、力強い筋力から繰り出される高速の斬撃を叩き付ける。一瞬で真っ二つにされたヴァルキュリア“アビス”は叫びも上げずに引き裂かれ消え、そしてヴァルファズルのあ足元に復活する。
「強すぎちゃったけど、まぁいいかな」
小首を傾げたガートルード。足止めは出来なかったけれど、後退させることはてきている。結果として一人だけ突出している状態となったヴァルキュリア“アビス”の立つ場所から『魔法の霜』が凍てつく空気とともに出現し、足、そして脛から腿へと動きを止める。
「死んで蘇生しても、しなくてもいいわ」
最後は同じなのだから、という思いは言葉にならず、ただルベウスの胸元がその名の通り、紅玉のように淡く光る。
●綻びは滅び
どれほど時間が経ったのだろう。ヴァルキュリア“アビス”たちはヴァルファズルの指示通りに突撃し、幾度かはケルベロスたちを突破してケルベロスブレイドに迫るもすぐに死に戻ってくる。幾度となく繰り返される敵の蘇生。わかっていた通り、きりがない。
しかし、ぱたりとヴァルキュリア“アビス”がヴァルファズル近くに出現しなくなった。緒戦のように姿を消していたアビスも死に戻る様子がない。
「仮説を証明するには実験しかないなら、もう一度斃して倒してみますか……」
刃蓙理が大地のチェーンソー剣を振りかぶり、気負いもなくすんなりと防具ごと熱した包丁でバターを切るかのようにあっさりアビスが2つになる。その身体は倒れ、そして倒れたまま動かない。
「ば、馬鹿な! まさかカラミティが撃破されたとでもいうのか? それとも……」
「ケルベロスに倒された者はコギトエルゴスムになることなく死亡する。死神なら誰よりもよく知っているでしょう?」
初めて狼狽しうつむくヴァルファズルに優しく刃蓙理が聞く。
「……少し調子に乗りすぎたな? これからお前に裁きを下す! 判決――死刑! 鮫の一噛み、喰らってみるか?」
鮫が描かれた無数のミサイルが無軌道にも思える弧を描く。
「ソロ、ラーシュと一緒に敵を殲滅、だよ」
「マイヤ!」
以心伝心、ソロとマイヤ、そしてラーシュの動きが同期する。敵対する者の命を喰らう地獄の炎弾がミサイルと渦をなし、そしてラーシュが突進する。
「う、わあああっ」
初めてヴァルファズルが悲鳴をあげ、すぐ側にいたヴァルキュリア“アビス”を左手で引き寄せ盾とする。悲し気にもがいてアビスが倒れた。
「こうなれば、吾の力でケルベロスブレイドに……」
突然、ヴァルファズルが疾走し始める。ずれかかった仮面の下の目が見るのはケルベロスたちの遥か後方、ケルベロスブレイドだ。
「可愛い音符が通過します!」
純白のタクトを取り出したマロンが回廊の虚空へと向けて一振りする。一瞬の熱情、魔法の音階、ありとあらゆく楽譜に描かれたモノ達が元気よく降り注いでくる。
「きゃあっ」
ヴァルファズルを守るように前に出たヴァルキュリア“アビス”は全身を燃え上がらせて倒れてゆく。
「逃がさないっすよ」
「ゴスペル・ドッグファイトを、発令。アルゴノーツ・システム起動、リンクスタートします……Standby ready」
佐久弥は巨大な鉄塊剣を軽く御して重厚無比の一撃をヴァルファズルの脳天へと振り下ろす。同時にシェスティンにしか制御できないドローンたちが合体してヴァルファズルに襲い掛かる。それでもヴァルファズルがまだ前に進んだとき、後方のケルベロスブレイドから古の雷神が放つ神罰であるかのような砲撃がヴァルファズルを直撃した。
「嘘だ、吾が……」
ヴァルファズルは動けない。死を嗤う者が死に近づいている。
「報いを……その身で受けろ!」
ガートルードはグラビティ・チェインを破壊力にしてダマスカスブレードで叩き付ける。槍が落ち、仮面がはがれる。
「終わったわね」
ルベウスの言葉通り、不遜に死を嗤う男は死に追いつかれた。
作者:神南深紅 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年4月19日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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