●
竜が荒れ狂っている。
逆巻き、海から天に立ち上る幾つもの竜巻は、まさに神話存在を彷彿とさせた。
海もまた荒れ狂っている。生じた大波は高層ビルすら飲み込むほどに巨大なものになっているし、渦は世界そのものすら飲み込む虚無空間を思わせた。
時刻は昼。が、辺りは昏い。
その様は世界の終わりを思わせた。神々の黄昏を想起させる不気味な光景である。
その世界のただ中。《甦生氷城》ヒューム・ヴィダベレブングがあった。そしてーー。
その奥。異形の姿があった。
禍々しい形状のバイクにまたがったそれは髑髏の顔をもっていた。漆黒のマントは邪悪な意思をもつかのように翻っている。
「我を畏れ、称えよ!」
冥府の底から響くような声で、髑髏の顔の異形は叫んだ。
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「皆さんのおかげでザルバルク大洪水の阻止に成功しました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がいった。喜びべきことであるはずなのだが、しかしセリカの秀麗な顔は暗鬱な色に染まっている。
けれど、とセリカは続けた。
「死神最後の拠点である兵庫県鎧駅沖の《甦生氷城》ヒューム・ヴィダベレブングで異変が発生している事が確認されました。鎧駅沖の《甦生氷城》から半径数キロメートルに及ぶ範囲に巨大な竜巻が複数あらわれ、大荒れに荒れているのです」
この竜巻は海水では無く、ザルバルクで作られており、その内部には多くの死神の軍勢が巻き込まれ、制御を失っているようであった。現在は制御を失っているが、膨大な数のザルバルクと死神の軍勢が出てきているのは間違いなく、放置することはできない。
が、問題が一つ。ザルバルクの大竜巻は、近づくだけでもかなり危険な代物であったのだ。
「けれど、私たちには万能戦艦ケルベロスブレイドがあります。万能戦艦ケルベロスブレイドには『ザルバルク剣化波動』があり、ザルバルクの無力化が可能。『ザルバルク剣化波動』の範囲が半径八キロメートルあるので、ザルバルクの大竜巻を完全に無効化することができるでしょう」
現在の《甦生氷城》周辺は、ザルバルク大洪水を阻止され行き場を失ったザルバルクが暴走している状況といえた。この状況を逆利用すれば、ケルベロスブレイドがデスバレスに突入する突入口とする事が可能だろう。
「この危険性に気付いたのか、【死神拠点を守る軍師少女】クー・フロストは、《甦生氷城》の回廊を閉鎖して使用不能するべく儀式を開始したようなのです。この儀式が完成する前に、《甦生氷城》に突入して、クー・フロストを撃破してください」
そう告げると、セリカは五体の魔将の名をあげた。
ティリア・ユグドラ、ノイシュ・ラ・ヴァンシュタイン、デッド・デスブロイラー、エントツュッケントゼーラフ、リオン・ルフィールの五体である。
「おそらく彼らが立ちはだかるでしょう。彼ら魔将をたおさなけれクー・フロストにまでたどり着けません」
突入するチームは六。このチームが相手どるのはデッド・デスブロイラーであった。
「バイクを駈り、戦場を蹂躙する髑髏の王。武器は巨大な槍です」
セリカは告げた。そしてケルベロスたちに信頼の光のにじむ眼差しをむけた。
「デスバレス大洪水を阻止したことで、デスバレスへの逆侵攻のチャンスがまわってきました。待ち受けているのは強大な敵。けれど皆さんならやってくれると信じています」
参加者 | |
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叢雲・蓮(無常迅速・e00144) |
立花・恵(翠の流星・e01060) |
斉賀・京司(不出来な子供・e02252) |
リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506) |
ステイン・カツオ(砕拳・e04948) |
軋峰・双吉(黒液双翼・e21069) |
ドゥマ・ゲヘナ(獄卒・e33669) |
ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755) |
●
うっ、という呻き声は誰があげたものであったか。
《甦生氷城》ヒューム・ヴィダベレブング内。凄絶の殺気がケルベロスたちに吹きつけている。
ケルベロスたちの前に、バイクにまたがった髑髏の異形の姿があった。髑髏の王たる、魔将デッド・デスブロイラーである。
「ここは私たちに任せて先にいけ」
シュシュで鮮やかな蒼髪をポニーテールに結わえた女が他のチームのケルベロスにむかっていった。鋭い眼光の持ち主で、手練れであることをうかがわせる女である。名をリィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)といった。
「馬鹿が。おとなしく行かせると思うか」
嘲るようにいうと、デッド・デスブロイラーはあごをしゃくってみせた。するとデスナイトたちが展開した。
「厄介だな」
立花・恵(翠の流星・e01060)が顔をしかめた。が、すぐにその美しい顔に不敵な笑みを浮かべると、同じように美麗な顔立ちの少年なに目を転じた。
「頼むぜ、叢雲」
「わかったのだ」
美少年ーー叢雲・蓮(無常迅速・e00144)はヘリオンデバイスを起動させた。仲間を牽引し、空に翔け上がる。
「ボクたちが道を切り開くのだ!」
蓮の刃が閃き、美しい光流を描いた。一体のデスナイトを吹き飛ばす。その隙間めがけ、他のチームが駆け出した。
すると別のデスナイトが襲いかかった。巨大な鎌が疾り、鮮血がしぶく。駆けるケルベロスのーーいや。
鮮血をしぶかせたのは他チームのケルベロスではなかった。浅黒い肌の小柄の女である。名をステイン・カツオ(砕拳・e04948)といった。
「仲間に手は出させねえぜ」
ニヤリとするステインの目から光が噴出、デスナイトを撃ち抜いた。
「させるか!」
他チームのケルベロスにデスナイトが追いすがる様を見いだし、黒髪を翻して艶やかな男が躍りかかった。名を斉賀・京司(不出来な子供・e02252)というその男は、何者も避け得ぬ鋭すぎる一撃でデスナイトを撫で斬りにする。さらにはライドキャリバーーーラハブが弾丸をばらまいた。
が、まだ数体のデスナイトは健在だ。彼らが投擲した大鎌が前衛のリィンと蓮を切り裂く。
のみならず他チームのケルベロスにも大鎌は唸り飛んでいた。その前に立ちはだかったのはドゥマ・ゲヘナ(獄卒・e33669)である。
大鎌がドゥマを切り裂いた。が、かまわずドゥマは身を旋回、加速させた一撃をデスナイトにぶちこんだ。
「生と死のサイクルを狂わす死神を名乗る不死者ども、お前らが死ぬ時が来たぞ」
「まだいるようだな」
凶猛そうな面つきの男が、猛禽を思わせる鋭い目で戦場を眺めた。そして、ふん、と鼻を鳴らした。
「邪魔なんだよ、お前らは」
男ーー軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)の翼から漆黒の風が吹いた。
いや、それはただの風ではない。黒く見えたのは粒子状になったブラックスライムであった。漆黒の砂嵐がデスナイトを飲み込む。
「たいしたものだな」
感嘆したのはリィンであった。黒い旋風に飲み込まれたデスナイトが同士討ちを始めている。
刹那、蒼氷色の翼を翻らせてリィンが跳んだ。他チームのケルベロスの背めがけて迫る大鎌を、牡羊座の紋様の刃に刻んだ長剣ではじく。
次の瞬間、そのリィンの背が割れた。デスナイトの一撃である。
が、さらに次の瞬間、そのデスナイトが吹き飛んだ。蹴り飛ばした反動を利用し、空で回転。地に降り立った恵はニヤリとした。
「さあて。雑魚の掃除も終わりそうだな」
「その前に」
少女が白羊星剣を手にした。
美しい少女である。気品のある顔立ちは深窓の令嬢を思わせた。
「すべての傷を私が払います」
少女が地に白羊星剣で癒しの紋様を描いた。
彼女の名はベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755) 。心を引き裂かれても魔導を極めんとする魔女であった。
●
どれほど時がたったか。
その地に、すでにデスナイトの姿はなかった。あるのは八人のケルベロスと異形の姿だけである。
「ーー役立たずのクズどもめ」
ぐしゃりとデスナイトの骸の欠片を黒いバイクで踏みつぶし、デッド・デスブロイラーが忌々しそうに吐き捨てた。
「きさま」
恵が針の視線で睨みつけた。
「命をかけて戦った仲間になんて真似しやがる」
「仲間だと?」
くつくつと髑髏の王は嗤った。
「このようなクズどもが仲間でなどあるものか。番犬ども!」
デッド・デスブロイラーの深淵めいた眼窩の奥、陰火のごとき光が煌めいた。
「我を畏れ、称えよ!」
冥府の底から響くような声で、髑髏の王は叫んだ。
「畏れてたまるかよ!」
ステインが叫び返した。憤怒と嫌悪を露にして。
「今、ぶちのめしてやる!」
「できるか、小娘」
嗤いつつ、髑髏の王は槍を投げた。
来る、と身構えるケルベロスたちであるが、髑髏の王の攻撃は速すぎ、そして鋭すぎるた。旋風と化した槍が避け得ぬケルベロスたちを薙ぐ。
次の瞬間、ベルローズが動いた。
「死神の城の骸骨騎士ですか。バイクって時点で、一気に世紀末寄りになっちゃうのは……まあ、目を瞑りましょう」
冷静に告げるベルローズの目が光った。彼女にのみ見えるこの地の惨劇の記憶から魔力を抽出。それをどす黒いオーラとして仲間の武器にベルローズはやどらせた。
刹那だ。光が空を貫いて疾った。
髑髏の王の肩がじゅうと灼けている。光に撃たれたのだ。
髑髏の王がぎろりと睨み上げた。するとステインがニンマリと笑った。
「いったろう。ぶちのめしてやるってな」
「やったな、小娘」
歯を軋らせた髑髏の王の足下の地がはじかた。弾丸がばらまかれたのだ。
「おおっと。もう少しおとなしくしていてもらうぜ」
硝煙をT&W-M5'キャッツアウェイクの銃口から立ち上らせた恵が嘲るように口の端をつりあげた。
「そうはいかん」
黒いバイクを旋回、髑髏の王はアクセルをふかせた。マントを翻らせて疾走する。
「テメェ等の城でバイク乗り回すかよっ! ワイルドが過ぎんだろオイ!?」
呆れたように呻き、しかしすぐに双吉はニヤリとした。
「が、まあ叩きおとしてやれはいいか。バイクがなきゃあ、ゴツい髑髏野郎だ!」
バスターライフルで黒いバイクをポイント。双吉は撃った。唸り飛ぶ魔法光が黒いバイクではじける。
「ぬっ」
一瞬黒いバイクがよろけたが、すぐ髑髏の王が立て直した。再び疾走に移る。
「速いのだ」
普段は子供のようなのだが、戦闘となると冷静になる蓮が黒いバイクを目で追った。
黒いバイクの疾走速度はおよそ六百キロ。亜音速である。いかなケルベロスでも捉えることは困難だ。とーー。
蓮は気がついた。髑髏の王を追うバイクがあることに。ドゥマだ。
「俺はドゥマ・ゲヘナ。不死者を砕き、地の獄に繋ぐため顕れた獄卒だ! 同じバイクで勝負してやる!」
ドゥマは親指をたててみせた。地獄をふかせて接近。加速させたハンマーーー鉄槌を叩きつけた。
さすがにたまらず髑髏の王の身がゆらいだ。が、まだ倒れない。
「なら、これはどうだ」
疾走する黒いバイクを追うリィンの目がキラリと光った。
次の瞬間だ。黒いバイクが爆発した。
爆圧にバイクが横転。ややあって、その傍らにふわりと髑髏の王が降り立った。
「何をした?」
髑髏の王がケルベロスたちを睨みつけた。無論、彼はリィンが爆破能力者であることを知らない。
「態勢をたてなおさせるわけにはいかん。悪いが圧し入らせて貰う!」
京司の手の中でカチリと音たててパズルが開いた。
瞬間、秘められた謎は解放された。それは雷竜と変じ、京司の敵を撃つべく疾った。
「ぬうん!」
咄嗟に髑髏の王は槍を振った。超高圧の紫電をはじく。
が、続いて放たれた蓮の一撃は避け得なった。呪いをのせた剣閃が髑髏の王を薙ぐ。
「バイクのないお前はボクの速さの敵じゃないのだぜ」
蓮はニッと笑った。
●
「やってくれる、番犬ごときが!」
忌々しげに罵ると、髑髏の王は再び槍を投擲した。光の渦が空裂いて疾る。
ブーメランのように戻ってきたそれを髑髏の王がひっ掴んだ時、空に真紅の花が開いた。ケルベロスがしぶかせた鮮血だ。
凄まじい破壊力であった。が、ベルローズに迷いはない。地に魔方陣を描いて傷ついた者を癒す。
ベルローズに感謝の意を示してから、蓮は怒りを稲妻に変えて放った。
「効かぬ!」
髑髏の王が槍ではじいた。世界が一瞬青白く染まる。
その明暗をつくようにドゥマが身を旋回させて鉄槌を振りおろした。加速させたそれを、しかし髑髏の王は槍で受け止めた。がこん、と髑髏の王の足下の地が陥没する。
「俺はイグニスに会って転生について訊きたい。その邪魔をするヤツはなんであろうがブッ飛ばすぜ!」
叫ぶなり、双吉は禍々しく光るナイフを閃かせた。現れたのは髑髏の顔をもつ死神だ。
「なにっ!」
髑髏の王が狼狽した。生まれた一瞬の隙。それを見逃すリィンではなかった。空の霊力を纏った切っ先で髑髏の王を貫く。
続いて攻撃に出ようとし、しかしステインは思いとどまった。
彼女には盾としての役割がある。体力をある程度まで維持しておく必要があった。
「次はぶちのめしてやるから待ってろ」
ステインは自らを癒した。すると恵がニヤリとした。
「なら俺がいくぜ。後がつかえてるんだ。さっさと片付けさせてもらう」
恵の目が黄金光を放った。次の瞬間、髑髏の王が爆炎に包まれた。彼もまた爆破能力者であったのだ。
「ここが幽世なら」
想像よりも美しくはないな。
爆炎を槍で薙ぎ払った髑髏の王めがけ、京司は槍と化した粘塊を疾らせた。がーー。
槍は髑髏の王をかすめて過ぎた。髑髏の王が槍ではじいたのである。くかか、と髑髏の王が嗤った。
「図に乗るな、番犬ども」
●
「図に乗ってやがるのは、どっちだ!」
ステインは炎を放った。いや、ステインが放ったのではない。彼女が召喚した超越存在ーー御業が放ったのである。
炎は凝縮され、弾丸と変じた。すると髑髏の王は槍ではじいた。彼の斜め後方上空で小太陽が生じた。
「くかか。番犬、吠えてその程度か」
「黙れ。貴様こそ吠えるな!」
リィンの目が蒼く光った。氷の刃の煌めきだ。
リィンは両手の拳をがちりと打ち合わせた。
「戯れの時間は、此処で終わりだぁッ!」
リィンが跳んだ。迎え撃つ髑髏の王が本能的にかまえる。悽愴のリィンの鬼気を感得したゆえだ。
「この世に形を得た悲しみの欠片達よ、我と共に舞い踊れ!悲しみを全て束ねた欠片、悪意断ち切る一刀に変えここで貫く! ……全てを零に!」
リィンの拳と足が目に見えぬ速さで動いた。氷の刃をのせたその拳撃蹴撃には一撃で戦車くらいなら叩きつぶせるほどの威力が込められている。
そのすべてを、あろうことか髑髏の王は槍ですべてはじいてのけた。が、リィンの最後の一撃のみは避け得なかった。氷の刃を合わせて練成させた大太刀が髑髏の王を貫く。
たまらず髑髏の王は跳び退った。それを追って恵が闘気をたわめた。地を蹴り砕いて一瞬で肉薄する。
「逃がすかよ、外道! 一撃をッ! ぶっ放す!」
恵は銃口を髑髏の王に押しつけた。零距離射撃。これでは逃れようがなかった。
トリガーをしぼり、恵は弾丸を髑髏の王の体内にぶち込んだ。
一瞬後、恵が跳んで離脱。直後、髑髏の王体内の弾丸が爆発した。
「くあっ」
黒血と瘴気を身から噴出させつつ、髑髏の王は苦悶した。
「ーーやってくれたな、番犬ども。髑髏の王の身体に傷をつけた罪、貴様らの命で償ってもらうぞ!」
髑髏の王の身体から漆黒の炎が立ち上った。視覚化された凄絶の殺気である。
その時、ラハブが弾丸をばらまいた。が、髑髏の王は平然と受け止めた。
「ーー健気なものよ。主を守ろうとしているのか。しかし、無駄だ」
髑髏の王は槍を放った。旋回する光流がケルベロスの前衛に迫る。
唯一動き得たのはステインであった。前に出て槍を受け止める。
が、髑髏の王の渾身の一撃を受け止めきれるはずもなかった。槍はステインの肉体を容赦なく切り裂いた。
「くっ」
鮮血にまみれ、ステインは昏倒しかけた。即死しなかったのは、わずかでも回復していたおかげである。が、もはや動けない。
「もう回復はいらないぜ。それよりもやつをぶちのめしてくれ」
治癒しようとするベルローズをステインが止めた。ベルローズがうなずく。
髑髏の王をはっしと睨み据えるベルローズ。死者を冒涜した彼の行動が彼女の脳裏をよぎっている。
「許すわけにはいきません」
ベルローズの朱唇が呪を唱えた。恐るべき禁断の呪を。
不穏な気配を感得し、はじかれたように髑髏の王が跳び退った。が、遅い。髑髏の王の脇腹がごっそりとえぐれた。ベルローズが生み出した虚無の空間が喰らったのである。
「常世にも、幽世にもお前はいらない」
嫌悪に顔をさかめ、死にたがりの男は掌を開いた。そこから噴出した粘塊が鋼の硬度と槍の鋭さをもって髑髏の王を貫く。その様はピンでとめられた毒蛾を思わせた。
●
「死んで、生と死のサイクルの中に入るが良い」
ドゥマが襲いかかった。生死のサイクルを重視する彼にとっては不倶戴天の敵といっていい死神にむかって。
空よりつかみだした巨大な銀のショベルをドゥマが叩きつけた。散る火花は髑髏の王の槍が発したものだ。
かまわずドゥマは空間そのものを埋葬した。ゲヘナの炎が辺りを席巻する。とどめのショベルの一撃は、しかし髑髏の王にまたもや防がれた。
「やるな。俺の死の沈黙を防いだのはお前が初めてだ」
「ぬかせ、番犬が!」
二人は跳んで離れた。
空にあるドゥマの傍らを、その時、一人の男が走り抜けた。双吉である。
双吉の手の火花小柄が火を噴いた。閃いたのは稲妻の形に変じた炎刃である。
その攻撃を見逃すような髑髏の王ではなかった。が、受け止めるには双吉の一撃は鋭すぎた。槍をかわした炎刃が髑髏の王を薙ぐ。
「ううぬ」
呻く髑髏の王は、するすると迫る蓮の姿を見とめた。反射的に繰り出された槍の一撃は、しかし蓮の頭上を流れすぎている。
まるで獲物を狙う肉食獣のように異様に低い姿勢のまま髑髏の王の懐に飛び込むと、蓮は抜刀した。
肆式抜刀『和修吉』。
捌式抜刀の中でも最も危険であると忌避された抜刀術である。さすがの髑髏の王もかわせるものではない。
「ば、馬鹿な。この魔将デッド・デスブロイラーが……髑髏の王が敗れるというのか」
神速の銀光が空間に亀裂を刻んだ後、髑髏の首が宙を舞った。
●
「……終わったようだな」
T&W-M5'キャッツアウェイクをジャグってからホルスターにおさめ、恵は仲間がむかった先に目を転じた。
「いくか」
リィンがいった。何か力になれるかもしれない。
ステインをデバイスにベルローズがのせたことを確認し、傷ついたケルベロスは駆け出していった。
作者:紫村雪乃 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年4月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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