ケーキが無料でバイキングだって!?

作者:星垣えん

●絶対に太る宴
 晴れ渡る冬空の下。
 町中にひっそり佇む洋菓子店で、怪しい者たちが蠢いていた。
「ケーキって…………………………すごない?」
「すごいっす!」
「ケーキすごいっす!」
「すーーごいっす!!」
 溜めに溜めた一言を放つのは言うまでもなく鳥である。そしてBOTみたいにスゴイッスって言ってるのはもちろん信者たちである。
 うん、例によってビルシャナさんが布教活動の真っ最中でした。
 しかしただの鳥ではない。今日の鳥さんは一丁前にコックコートを着ていた。真っ白な衣の端々から羽毛がもっさりはみ出てる姿は保健所に見つかれば一発アウトである。
「ケーキはすごい。であるならば…………そのケーキを食いまくれるバイキングはもっとすごくないだろうか!!!」
 そう語る鳥さんの店は――文字通りケーキで溢れていた。
 王道のショートケーキはもちろんのこと、しっとり仕上がったチーズケーキ、ごろっと大きなチョコがちりばめられたマフィン、素朴な風合いのブラウニーや如何にも香ばしいフロランタン、ミルフィーユやモンブラン等々……。
 どこもかしこも、振り向けば配膳台に整列するケーキたちが見えた。
 もうね、見る人が見れば天国ですよ。
「ケーキや! ケーキ祭りやぁ!」
「これを、これを食っていいんですかぁ!?」
 両手でトレーを持ち、ぎらぎらと輝く眼差しをケーキと鳥に交互に向ける信者たち。
 ケーキ食いたさで釣られただろうことが明らかな彼らに、鳥さんはにっこりと微笑んで、左右の手羽で丸を作った。
「お腹いっぱい、食べるといいよ!!」
「やったあああぁぁぁぁーーーーー!!!」
 堰き止めていた水流が流れ出すかのごとく、ケーキバイキングに群がる信者たち。

 あーこれは太る。太るやつですねー。

●ケーキが待ってるんだ
 都内にケーキバイキング推しのビルシャナが現れた。
 だからすぐに現地に向かい、これを倒してきてほしい。
 っつー知らせを笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)から聞かされた鈴城・咲(焔の拳・e56641)は、十秒ぐらい考えてから口をひらいた。
「なるほどつまり今回は……ケーキね!」
「ケーキですよ!」
 うん、ごめん。考えてなかったかもしんない。
「ケーキバイキングなんて素敵ね」
「しかもビルシャナですから無料ですよ! 無料です!!」
 逸りきった表情を見せる咲さんに頼もしい語気で返すねむちゃん。ビルシャナだから無料っていう言い分は意味不明でしかなかったが猟犬たちは何も言わないでおいた。
 そう、ケーキが食べられるのだから。
 ケーキが食べられるなら誰かが多少おかしくても気にならないよね!
「お店には信者の人たちもいますけど、この人たちはほかのスイーツをおすすめすれば目を覚ましてくれるはずです!」
「ケーキを食べ過ぎて飽きてきた頃にすすめるのが良さそうかな?」
「そんな感じで大丈夫だと思います!」
「つまりそれまでは待つ必要があるよね……うん、これはケーキを食べないと!」
 ねむちゃんの返事を得た咲さんが納得したように頷く。
 うん、仕方ないもんね。信者たちが腹を満たすまでは時間があるもんね。
 したらばその間はめっちゃ暇だし、無料ケーキバイキングに興じても無理ないよね。
 猟犬たちは、やるべきことを完全に理解しました。
「さぁ、それじゃみんなでヘリオンに乗ってください! 遅くなったらケーキを食べつくされちゃうかもしれませんからね!」
「せっかくのビルシャナのケーキ……渡すわけにはいかないもんね!」
 善は急げ、とヘリオンへ駆けてゆくねむちゃんと咲さん。
 かくして、猟犬たちはお腹いっぱいケーキを食べられるイベントに向かうのだった。


参加者
シフカ・ヴェルランド(鎖縛の銀狐・e11532)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)
御手塚・秋子(夏白菊・e33779)
朱桜院・梢子(葉桜・e56552)
鈴城・咲(焔の拳・e56641)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
大森・桔梗(カンパネラ・e86036)

■リプレイ

●いざケーキ!
「うおー! ケーキ! ケーキ!」
 店内に響き渡る信者たちの歓呼。
 だが、彼らが暴食に耽ることは許されなかった。
「失礼します」
 店の扉がからん!
 大森・桔梗(カンパネラ・e86036)が、普通に入店してきた。普通に。
「いやあの……」
 申し訳なさそうに来る鳥さん。
 けれど彼が桔梗を退店させる前に、別の影がガバッと飛びついた!
「ビルシャナさん! 会いたかったわー!」
「どわーっ!?」
 朱桜院・梢子(葉桜・e56552)である。
 勢い余った彼女は首に取り付いたままぐるんぐるん大回転。
「最近、貴方のようなビルシャナが出なくて寂しく思っていたの!」
「やめろ目が回るー!」
 梢子に連動してぐいんぐいんする鳥。
 そんな鳥さんの手を桔梗はグッ。
「良い香りがしたので引き寄せられてしまいました。もしかしてパティシエだったりするのですか?」
「それいま訊く!?」
「ただでこんなに大量のけえきを……神様ね! 神様だわ!」
「おまえはまず回るのをやめろォォ!」
「ロールケーキってありますか? コーヒー味が好きなんです」
「その前にこいつを剥がせぇぇ!!」
「だ、大丈夫っすか店長ー!?」
 ツープラトン攻撃を受ける鳥さんに、信者らが駆け寄る。
 その隙に――。
「ケーキバイキングだなんて、私も調査してきた甲斐があった物よね」
「本当に咲さんには感謝なんだよ!」
 鈴城・咲(焔の拳・e56641)と七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)が、しれっと店内に陣取りしていた。
「大きな戦いの前に英気を養うんだよ! 糖分補給も戦いなんだよ!」
「ん、戦い」
 ちょこんと横に座り、瑪璃瑠に頷いたのはリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)。
「たしかバイキングって海賊のことだよね。つまり今日は奪い取ればいいんだね」
「そうね!」
「うん、そうなんだよ!」
 平然と言う勘違いエルフっ娘に咲と瑪璃瑠がにこり。武闘派が過ぎる。
 だがしかし、それは三人に限る話ではない。
「今日は食べるぞー! オシゴトダカラー!」
「テイクアウトの準備は万全ですよ~」
 御手塚・秋子(夏白菊・e33779)とセレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)もやる気満々だった。
 特に秋子の気合はすごい。
「家じゃ怒られるから……だから今しか! 今しか!!」
「よくわかりませんが大変なんですね~」
 ぷるぷると震える秋子の背に、手をポンとやるセレネテアル。
 説明しよう! 秋子さんは健康を気遣う夫によって甘味を制限されているのである! だからこの依頼を受けたことも絶対に内緒なのである!
「今日は遠慮なく食べましょう~。お財布にも優しいですしっ」
「……うん、そうだね!」
 セレネテアルの手を両手で掴む秋子。
 と、食いしん坊が絆を結んでいる横でシフカ・ヴェルランド(鎖縛の銀狐・e11532)はテーブルに着座。スーツの襟元をぴしっと整える。
「戦闘準備完了……では、食べましょうか」
「こいつら……完全に居座る気!」
 店を出る気が全くねえ人たちの眼光に、信者たちが戦慄する。

 とゆー感じで、楽しいケーキバイキングは始まりました。

●ちょっと首をやった鳥さんは調理場に引っこんでます
「わぁ、これが全部手作りなのね。とっても美味しそうだわ!」
「どれから手を付けるか迷うわね!」
 四方を埋め尽くすケーキの園で、右に左にと忙しい咲と梢子。
 その様子を信者は2m離れて眺めていた。
「楽しんでやがるぜ」
「俺たちの分、残るかなあ」
「それはさすがに――」
「まあ、最初は二十個ぐらいにしておきますか」
「ウオォーーイ!!?」
 横を通り過ぎようとしたシフカを、がしっと止める信者。
 彼女は大量のケーキを確保していた。両手で支える丸皿(三十センチ)にはケーキが隙間なく並んでいる。パズルみてーにぎっしり。
「何です?」
「いや色々とオカシイだろ! 量もあれだし皿の大きさとかっ!」
「一度に何個までほは決まってなひと思いまふが」(ケーキを頬張るシフカ)
「話しながら食うなァ!!」
「……」(静かに頬張るシフカ)
「そーゆーことじゃなくてぇ!」
「ていうかもう半分食ってる!?」
 直立不動で頬だけもごもごさせるシフカ(宇宙胃袋)の前に、信者たちは為す術もなかった。彼らにできることと言えばケーキがなくならぬうちにと走り出すことだけ。
 それを遠目に眺めているリリエッタ。
「ん、美味しい」
 ふわっと甘いショートケーキ。その舌触りと美味にちょっぴり感動するリリエッタは続けてパクパクするが、半分ぐらいで手を止めた。
「むぅ、一個まるまる食べてたらお腹がいっぱいになっちゃうね」
 どうしたものか、と考えるリリエッタ。
 せっかくなので全制覇したい彼女だが、残念ながら彼女の胃袋は宇宙ではない。
 すべて完食していたらKO負け必至――となれば。
「やっぱり、半分こ作戦かな」
「半分こ作戦? なら私と分けっこする?」
 呟きに反応したのは、ケーキを持って向かいに座った咲だ。
「いいの? ありがとね、咲」
「いいのよ、私もいろいろ食べたいしね」
 リリエッタと咲が、互いの間にケーキの皿を動かす。
 苺ショートやチョコレートケーキ、モンブラン……いくつもケーキが並ぶさまは彩りあざやか。その中からスフレチーズケーキを二人ははむっ。
「んー。美味しくて素敵!」
 ふわふわの口当たりと濃厚なチーズの味に、思わず頬を押さえる咲。リリエッタも黙々と口に運んで瞬く間に食べつくした。
「ぺろりと食べられちゃうね」
「次は何を食べる? こっちのチョコレートのやつにする?」
「ん、いいよ」
「こっちのケーキも美味しいよー」
 感想を交えて次を選ぶ二人にぬるっと絡んでくる秋子。チョコレートコポーがたっぷり乗ったケーキをもぐもぐしてる女はあからさまに上機嫌です。
「ケーキって何でこんなに幸せになれるんだろ……トクホのお茶いる?」
「普通は紅茶とかだと思うけど……」
「リリも紅茶にしたよ」
「えっ、でもトクホなら太らないよ?」
「そのトクホへの全幅の信頼はどこから……!?」
 咲たちに普通にきょとんとしてる秋子に、思わず横からツッコむセレネテアル。
 すると、秋子はそのセレネテアルを見て目の色を変えた。
「その食べてるものは!」
「これですか~? 苺タルトです~」
 にっこり笑うセレネテアルの両手には、ふんだんなく苺が盛られたタルト。それを口の中いっぱいに頬張っている彼女の顔は秋子に匹敵するほどの至福顔だ。
 しかも同じような表情はさらにふたつ!
「やっぱり今の時期は苺よね! 敷き詰められた苺がつやつやしちゃってもう!」
「美味しくて手が止まらないんだよ!」
 苺タルトをもぐもぐ中の梢子と瑪璃瑠。梢子はタルトを一口含むたびに瞳に星が煌めく勢いだし、瑪璃瑠もそのノリに追随するかのようにはしゃいでいる。
「苺の甘酸っぱさとかすたーどの甘さ、たるとのサクサク感がたまらないわー!」
「コンビネーションってやつだね!」
「い、苺タルトいいなー!」
「このヨーグルトタルトもおすすめですよ~。とても美味しかったです~」
 タルトで盛り上がる梢子、瑪璃瑠、秋子へセレネテアルがすかさずヨーグルトタルトなる逸品をちらつかせる。三人が急いで配膳台に走ったのは言わずもがなだ。
 その姦しさが半端ない光景に、シフォンケーキを食べ終えて紅茶(無糖)で一服してた桔梗はくすりと笑む。
「皆さん、とても楽しんでいますね」
「まあ、ケーキなら仕方ないわ」
 同様の微笑みをこぼすシフカ(むろん皿にはケーキが二十個追加)。
「? そんな話し方でしたか……?」
「何のこと? シフカわからないわ」
「……では気のせいですね。すみません」
 訝しげにしていた桔梗がシフカにぺこり。
 本当はケーキのせいでシフカのキャラはぶっ壊れてるし、桔梗は桔梗でそれに全然気づかないし、ツッコミどころしかない一幕である。ツッコミキャラさえいれば。
 だが、この場にそんな者はいやしない。
 聞こえてくる声といえば――。
「むぃ~☆ 甘くて柔らかくて美味しいんだよー!」
「表面はきゃらめるでこんがり、中はとろとろで濃厚……こんなものまであるなんてやるわね!」
 全力でバイキングってる瑪璃瑠と梢子の歓声とかしかない。雪のように真っ白なレアチーズケーキを味わう瑪璃瑠は今にも飛び跳ねんばかりだし、梢子は黒々したバスクチーズケーキをうっとり顔でむぐむぐしとる。
 桔梗は、がたっと立ち上がった。
「私もチーズケーキシリーズを食べなくては……!」
 そわそわ、とチーズケーキへ向かう桔梗。頭の上に音符マークが見えそうな軽い足取りである。完全に心を奪われちまっている。
 だが、そのとき。
「ケーキの追加だぞぉー」
 調理場から鳥さんがケーキと一緒に出てきた。
「あれはミルフィーユ……!」
 ハッと目を見開いた桔梗の進路が、ふら~っとそちらへ。
 そして、目を輝かせた秋子もダッシュでやってきた。
「あっ、頼んどいたケーキ! ありがとー鳥さん!」
「まったく。結構手間がかかったんだからね!」
 てってこ駆け寄ってきた秋子にツンな応対を見せる鳥。
 彼がてこずったと言うのは、花を模したデコレーションケーキだった。クリームが花の形に意匠され、表面はエディブルフラワーで飾られたそれの迸る春っぽさったら。
「食べるのが惜しくなるなー……」
「ふふっ、そう――」
「いただきまーす!」
「切り替えが早い!」
「あの、私もミルフィーユ取ってもいいですか?」
「それはお好きにどうぞ!」
「一枚ずつ剥がして食べるかを何時も迷うのですが……ま、丸で行っても良いですか」
「それもお好きにどうぞ!?」
 作り手にドヤる暇も与えず花ケーキにかぶりつく秋子。そしてちらちら伺ってきた桔梗にゴーサインを出す鳥さん。
 追加のケーキもすぐなくなっちまったのは言うまでもなかった。

●まだケーキ作ってるので鳥さんは調理場以下略
 宴も進んで数十分。
「ふぅ……食ったな」
「もうつらいかも……」
 信者たちの腹はすっかり膨れていた。
 いい感じの頃合いだ。セレネテアルは持参したクーラーボックスを開けた。
「皆さん、そろそろ口の中が甘過ぎる感じになってきたんじゃないですか~? だったらこのコーヒーゼリーなんかが良いと思いますよ~」
「コーヒーゼリー!」
 椅子でぐったりしてた信者がガバッ。
「コーヒーの香りや苦味、軽い食感はバイキングのシメにも良い感じですよ~!」
「確かに……!」
「一服の清涼剤!」
 満腹で陰っていた信者たちの顔に光が戻る。コーヒーゼリーという一味違ったスイーツに彼らはがっつり食いつていた。
 そこからはもう怒涛だった。
「スイートポテトです。スイートポテトを食べましょう」
「この黄金色は!」
「ケーキが飽きたなら、こういうのもあるわよ?」
「フルーツのフレッシュな香り!」
 シフカの差し出したスイートポテトが、咲が持つ籠に収まるフルーツ盛り合わせが、信者たちの食指を誘う。
「フルーツの自然本来の甘さは健康に良いし、美容にも良い素敵な甘味だと思うわよ」
「みかん……りんご……」
「苺……キウイ……」
 一つひとつ置かれるフルーツに釘付けになる信者。
「ぶっちゃけ人間一人が食べられる量には上限がありますし、種類が豊富とはいえ食べつづければケーキも飽きてしまいます。ですからスイートポテトも食べましょう」
「憎らしいほどの光沢……!」
 大ぶりでツヤツヤのそれを近づければ、信者たちもじりじり寄ってくる。
 そんな彼らの横には――菓子箱を持った桔梗の姿。
「実は私も最近嵌まったのですが、とある和菓子屋の大福餅が人気なんですよ。2Lサイズの苺を贅沢に使用してまして、さらに春限定なんです」
「苺大福だとぅ!?」
「栗どら焼きや桜餅もどうですか」
「ちくしょう! 和のテイストがぁ!」
「リリもこのわらび餅をあげるよ。すごくぷるぷるだよ」
「ああっ! これ見よがしに揺らしてるぅ!」
 微笑で迫りくる桔梗から逃げようとすれば、後ろからはわらび餅の乗った小皿を左右にふりふりするリリエッタが。
 挟撃。あまりにも悪辣な挟撃。
 けれど、攻撃は前後だけではなかった。
「ほーら、お口直しにいかがですか?」
「右からストロベリーサンデーを持った人が!?」
「こっちは手掴みで食べられるどーなつよ!」
「左からドーナツの箱をこれ見よがしに開けてくる人が!?」
 サイドアタックを仕掛けてきたのは秋子と梢子である。
 四方を、四方を完全に抑えられてるよ!
「油で揚げてないから、なんだっけ……へるしー? で太らないそうよ?」
「太らない……だと!」
「苺がたくさんだし、合間に登場するアイスやソースも美味しいよ。トクホのお茶もあるから太らないよ」
「太らない……だと!」
 二人の雑なプレゼンでも容易に揺れる信者の心。
 この有様では、猟犬たちの甘い誘惑に抗いきれるはずもない。
 まして、調理場から飛び出してきた瑪璃瑠の、香ばしいワッフルに勝てるわけがなかった。
「手作りワッフルのおすそ分けなんだよ! お店のオーブンで焼いたばっかりだから、温かくて美味しいんだよー!」
「ワッフル……!」
「え、わっふる!?」
「私も食べる! 食べるー!」
「どうぞなんだよ! チョコにプレーンにメープルにアーモンドとよりどりみどりなんだよー!」
 焼きたてに惹かれて集まる信者たち、梢子、秋子。
「ケーキ好きの皆さんのためにクリームワッフルも用意したんだよ! こっちはレアチーズで、こっちがショコラ、こっちはバニラなんだよー!」
「至れり尽くせりだな!」
「あーこの香ばしさは反則……!」
 ワッフルを食って歓喜にむせる信者たち。
 その姿は、もう完全に落ちていた。陥落していた。
 リリエッタはおもむろにアイテムポケットをひらき、大量の保冷剤を取り出した。
「それじゃあお仕事も終わったし、余ったケーキを確保だよ」
「せっかくですからね~。持って帰っておすそわけしましょう~」
 中身のはけたクーラーボックスをノリノリで用意するセレネテアル。それを見て咲とシフカも配膳台に残っているケーキに視線を移す。
「私もいくつか包もうかしら」
「私もお持ち帰りしたいですね。リリエッタさん、保冷剤分けてもらえます?」
「ん、いいよ」
「あ、ボクも欲しいんだよー!」
「私にも貰えるでしょうか? ロールケーキは確保したくて」
「いっぱいあるからどうぞだよ」
「はっ! 私もお土産たくさん頂かないと!」
 瑪璃瑠が、桔梗がリリエッタに寄って行けば、はたと気づいた梢子もぱたぱたと小走り。
 その背中を、秋子(スイーツ制限中)は羨ましげに眺めるばかり。
「お土産イイナー……私も貰いたかったー!!」
 悲哀の咆哮が響く洋菓子店。
 そうして、猟犬たちの甘い一日は幕を閉じていった。

 ちなみに、鳥さんは調理場から出てきたところでキチッと殺られたので安心して下さい。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年4月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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