攻性植物の残党は拠点である『攻性惑星』と共に竜十字島を目指してくるも、ケルベロス達の活躍によって惑星の対空能力を喪失させた。
急遽派遣が決まった『万能戦艦ケルベロスブレイド』が各機能を担う機体を含む多数のヘリオンを搭載して戦場に到着すると、ケルベロス達を乗せて飛び立つヘリオン部隊。砲撃とグラビティの一斉攻撃にて攻性惑星の撃墜に成功した。
ヘリオン部隊が攻性惑星にいるケルベロス達を救出すれば、その後は惑星の破片が竜十字島へと降り注ぐところを眺めることになるのだろうか?
しかし……宇宙を渡っていたはずのドラゴンの本隊は突如として戦場に現れた。
サーシャ・ライロット(黒魔のヘリオライダー・en0141)がヘリオンの操縦は乱さずにドラゴン達の出現に眉根を寄せる。
「ついにお出ましか!」
ドラゴンの軍団がまるで瞬間移動してきたかのように見えたのは、光を超える摩訶不思議な速度でやってきたからだ。やはり先遣隊と同様でグラビティ・チェインの枯渇に陥っており、崩壊する攻性惑星の破片に目をつけてきた。
ケルベロスブレイドが砲撃で一部のドラゴンを撃破し、戦艦の前面に『分解式魔導障壁』という巨大なバリアを張って反撃を防ぐ。
生じた爆風の被害も無いとはいえ、サーシャは操縦桿を強く握り締めた。
(「……大丈夫だと解っても恐ろしいものね」)
バリアには遠距離攻撃が通用しない以上、直接攻撃を仕かけてくる可能性もある。そうすると今度はケルベロスブレイドが撃墜されてしまう。
(「弱気になっている場合ではなかったな」)
爆風の中で愛機を巧みに操りながら、攻性惑星を脱出中のケルベロス達の救出をヘリオン部隊と行ってケルベロスブレイドに着艦する。
ケルベロスブレイドは慎重にドラゴンの軍団との距離を取って成層圏より再度砲撃した。防御体勢を整えてきた敵の守りはさすがに固い。お互いに攻めきれず、完全に膠着状態となった。
このままでは埒が明かないと動き出す、超高速飛翔が可能な11体のドラゴン。
敵の行動さえ定まれば話は早く……サーシャが凛とした大きな声で艦内のケルベロス達に呼びかけてくる。
「君達! 本隊を離れてグラビティ・チェインの確保に向かうつもりのドラゴン達がいるようだ!」
ドラゴンの軍団はグラビティ・チェインを激しく消耗しており、ケルベロスブレイドとの戦闘を極力避けたいのだろう。
「日本の各都市を襲撃しようとしているドラゴンは11体だ。奴らはヘリオンよりも速く、急行した矢先に別の街に移られる。ジェットパックデバイスが届かない高度から市街地を攻撃されると先回りの意味も無いな」
ドラゴンに人々を虐殺されてしまうと、グラビティ・チェインの略奪で力を取り戻されて犠牲者が連鎖的に増加していくことになりかねない。
「だがケルベロスブレイドの飛行速度はドラゴン達を凌ぐ。そこで奴らを追い抜き、同じ速度で射出させる『小剣型艦載機群』を足場にして戦ってもらいたい。来てくれる者は……」
ふとケルベロスブレイドの加速を感じ取ったケルベロス達は、サーシャに促されるまでもなくヘリオンに搭乗していった。
サーシャが発進準備を済ませて皆に説明を続けてくる。
「君達は北海道の函館を狙おうとしている『七罪竜クイリナリス』を追う」
全長2メートルある小剣型艦載機群の上で、風速800メートルの暴風雨に晒されるのは大変だが。いかなる環境でも100パーセントの力で戦える……それがケルベロスだ。
「ヘリオンに残る私は置いていかれるな。もちろん、デバイスは発動されるぞ。奴を撃破したら合流するのを待っていてくれ」
戦闘の制限時間は皆とクイリナリスが函館に辿り着くまでの15分程度。
「クイリナリスは全身に無数の邪眼を持つドラゴンだ。瘴気を吐いて守護を打ち消したり、邪眼で光線を放って動きを抑えたりする呪いが得意だぞ」
爪にも何らかの呪いが宿っていて、その爪を噛めば回復の力に転じる。
「自らに呪いをかけて他の呪力を払拭することもできるらしい。強化と弱体化に対処する立ち回り方で嫌な敵になりそうだな」
短時間で作戦を立てて出撃に備えるケルベロス達。
サーシャがヘリオンの射出される瞬間に振り向いてくる。
「函館の平和は君達に託すぞ!」
先程味わった恐怖を取り払うように不敵な笑みを浮かべてきたサーシャの横顔に見送られ、皆は『小剣型艦載機群』で空を駆けていくのだった。
参加者 | |
---|---|
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132) |
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414) |
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664) |
ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706) |
相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889) |
伏見・万(万獣の檻・e02075) |
小車・ひさぎ(恋するみたいなキャラメリゼ・e05366) |
八久弦・紫々彦(雪映しの雅客・e40443) |
●超速の世界
人数分以上を射出された小剣型艦載機に乗り、暴風の中で『七罪竜クイリナリス』と並ぶケルベロス達。ゴーグルとレインコートを着用し、不安定な足場で戦うための用意はしてきた。追いついてしまえば奴を見失う心配は無いだろう。
前線にて攻撃の要となるジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)と、水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)がそれぞれ別々の理由から心の中で愚痴る。
(「ゴーグルがねェよりマシだとはいえ、この雨風……クッソ面倒くせェ!」)
(「宇宙から帰ってきたら、今度は地球で追いかけっこ、か。ちょっとは休む暇が欲しいもんだぜ」)
クイリナリスは無数の邪眼で皆を睨みつけてきた。
敵を前にして、相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)が腰に下げている髑髏の仮面に手を伸ばす。だが装着はしない。その動作は過去の名残。
(「緑眼でもねえくせに嫉妬とか言い出してんなよ、高が知れるぜ」)
クイリナリスが激しく嫉妬する姉も都市を襲撃しようと別行動中らしいが……。
(「ドラゴン共が随分とお早いお着きじゃないの。もっとゆっくり、姉妹仲良く宇宙旅行してればよかったのに」)
そんな風に思ったのは小剣型艦載機群の後尾にいる小車・ひさぎ(恋するみたいなキャラメリゼ・e05366)だった。
ひさぎと同じく攻めの後衛である伏見・万(万獣の檻・e02075)が、獲物に牙を剥く狼のごとく笑う。
(「その喉笛、食いちぎってやらァ」)
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)は髪を左右でシニョンに纏めてオルトロス『リキ』と戦闘に臨んでおり、前哨戦の先を見据えて嘆息した。
(「コレが本陣やのぉて、今回の奴らは先陣なんよね……」)
仲間を援護する朔耶に対し、リキや竜人と彼のテレビウム『マンデリン』が担うのは仲間の盾になることだ。
クイリナリスは狂ったように邪眼をギョロギョロとさせて鬼人達に光線を浴びせてきた。鬼人にかけられたのは不意に脱力する呪い。他の者達にかかった呪いは別だが、呪詛の影響を受けると体の動きが鈍るだろう。
暴風をものともせず、鬼人とジョーイがジャンプしてクイリナリスに斬りかかる。『ジェットパック・デバイス』は小剣型艦載機に着地する際の補助にはなってくれた。
竜人は教会の鐘にも変形できるオウガメタル『オーナメント・ベル』のオウガ粒子を放出させて自分達の感覚を刺激した。鋭い目でマンデリンを見やる。
(「おい」)
元より促されるまでもない仕事人気質で、マンデリンが画面に応援動画を流してジョーイを蝕む呪いを解く。
(「そんじゃ……暴れるか」)
万はクイリナリスの真下に来た小剣型艦載機に移ると、ドラゴニックハンマーを『砲撃形態』に変形させて竜砲弾を盛大にぶっ放した。
(「さて、食い止めるぞ」)
クイリナリスと距離を一定で保ちつつ、新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)が呪言を刻まれた黒曜石の石板を生み出す。
(「理解せよ。それは汝の死が刻まれているのだ」)
読むだけで死を招くという石板を見せつけてクイリナリスの治癒力を深く封じ込めた。回復に特化した敵を抑える重要な役割だ。
朔耶も前衛陣にオウガ粒子を放ち、リキが退魔神器でクイリナリスの左腕を斬る。
八久弦・紫々彦(雪映しの雅客・e40443)が連続でカラフルな爆発を起こして一気に前衛陣の士気を高めた。
(「まずは態勢を整えるところからだ」)
戦闘は始まったばかりで実に落ち着いている。
挨拶代わりに、ひさぎが銃弾の雨でクイリナリスを牽制した。
皆に何か嫉妬するような念を込めて赤黒い瘴気を前衛陣に振り撒いてくるクイリナリス。皆が得た力の大半を掻き消し、ジョーイの斬撃を避ける。
万が簒奪者の鎌を回転させてクイリナリスの横っ腹に投げつけた。暴風に乱されないでしっかりと手元に戻ってくる大鎌を、勢い余って小剣型艦載機から滑り落ちないように気をつけて回収する。
(「案外、普通に戦えるもんだなァ」)
紫々彦の攻撃までも回避したクイリナリスは、竜語魔法を唱えて邪眼を血走らせた。傷の具合で察するに治療は捗らなかったはずなのに嘲笑してくる。ある程度の解呪には成功したのだろうか。
鬼人がクイリナリスの気を引けないものかと思案する。
(「そういや、こいつって意思疎通、できるんだろうか?」)
しかし、数秒前のクイリナリスの様子を思い返して……すぐに諦めた。良業物である愛用の斬霊刀の『越後守国儔』を非物質化させ、敵に飛びかかって霊体を破壊する斬撃を見舞う。
持つと斬りたい衝動に駆られる危うい日本刀の『魅剣働衡』を構え、ジョーイは鬼神のごときオーラを身に纏わせた。総合的な能力はクイリナリスに分があるものの、フィジカルに関しては劣っているわけではない。
(「一発デケェの行くからしっかり受け止めろよ?」)
小剣型艦載機よりクイリナリスへと強引に接敵していき、先祖代々に伝わる家宝の冥刀で最大威力のグラビティをぶちかます。
●一進一退
竜人が光の蝶にてジョーイの第六感を呼び覚ます。恭平はクイリナリスの治癒力を再封印し、敵の頭にルーンアックスを叩き込む紫々彦。朔耶が中衛陣にオウガ粒子を散布する。
クイリナリスは怪談に登場する怨霊のような無表情で呪われた爪の先端を噛み、深い意味は無く竜人をじっと見つめてきた。回復力の低下を呪いの力によって補い、封印の一部なども解除されてしまった。
ふと苦笑いするひさぎ。
(「呪いの乗った爪に嫉妬深い……ふふ、他人とは思えないんよ」)
それはそれとして、後続の仲間達のために息を合わせてくれた鬼人の攻撃直後に動く。
ひさぎは風に煽られた炎のトライバルが印象的なウエスタンブーツの『Wind & Fire』に流星の煌めきと重力を宿した。クイリナリスの後頭部に飛び蹴りを炸裂させると、幾つかの小剣型艦載機を経由で後退していく。
真っ白な毛並で尻尾に青い炎を灯すオルトロスのリキが、颯爽と小剣型艦載機から跳んだ。口に咥えた刀のような退魔神器でクイリナリスの右腕に裂傷を与える。
クイリナリスの光線が前衛陣に撃たれれば、ジョーイに飛びついて庇った。窮屈になった小剣型艦載機の上で彼に感謝されるように軽く背中を叩かれた後、隣の小剣型艦載機に飛び移る。
竜人は数字形のピースで構成されたガネーシャパズル『戯画』より怒れる女神カーリーの幻影を生み出した。
(「俺がお前の敵なんじゃない。お前が、俺の敵なんだ」)
幻影に惑わされたクイリナリスが怒りのままに自分へと爪で狙ってくれば……してやったりだ。
暴風にも負けない力強さで、恭平が精神操作によってケルベロスチェインをクイリナリスの左腕に伸ばして絡みつかせた。
(「縛れ」)
そう念じられた鎖がクイリナリスの左腕をきつく締め上げていく。
クイリナリスは右手の爪で竜人を引き裂いてきた。それは彼の期待通りだったが、やはり呪いを上乗せされた爪撃の負荷は計り知れない。
鬼人が空の霊力を帯びさせた『越後守国儔』を敵に振るって右腕の傷を斬り広げる。
怖い話の類が大の苦手だったりするジョーイは、数分前にクイリナリスに気味悪く凝視されなくて若干安堵していた。
(「ったく……」)
心底面倒な奴だと思いながら、クイリナリスの左腕の腱に『魅剣働衡』で緩やかな弧を描く斬撃をくらわせる。攻撃後はさっさと側の小剣型艦載機に降り立った。
竜人がワイルドの力を蒼い焔として具現化させる。
(「コイツは随分な悪食だぜ」)
蒼焔はクイリナリスの顔面に被弾すると、その部分を中心にして熱を貪り猛った。焼かれるよりも熱を奪われることに多大なる苦痛を与えていく。
悶絶するクイリナリスに竜砲弾を撃ち込む万。
(「冷たき炎よ」)
竜人とは対照的な熱を持たない『水晶の炎』を、恭平はネクロオーブから作り出した。燃やすためのものではない不思議な炎を投げつけてクイリナリスの腹部を切り刻む。
朔耶が出身の里で星霊と呼ばれていた半透明の『御業』を召喚した。
(「星霊よ……さぁ、謳ってごらん」)
爪の傷が目立つ竜人に、星霊は癒しの能力を発揮した。次第に増幅されていった効果によって彼の傷をみるみるとふさいでいく。
●執念の呪竜
ひさぎが残像を伴う斬撃でクイリナリスを攻撃する。
最初から攻撃対象を絞っているのか、クイリナリスは前衛陣にあの厄介な瘴気を撒き散らしてきた。
竜人がジョーイの近くにある小剣型艦載機に飛び乗る。
(「お前の思い通りにはさせねぇぜ」)
サーヴァント使いゆえに体力的な不利もあり、消耗した上で瘴気を引き受けるのは負担がでかい。それでも、ジョーイの加護を消させるわけにはいかなかった。
恭平が今度はクイリナリスの右腕にケルベロスチェインを展開していく。
現在の戦況を踏まえ、紫々彦は唯一庇うチャンスがあった竜人の判断を分析した。
(「最善の選択だろう」)
とある冬の獣を討ち取ったルーンアックス『玄帝』を振りかざし、高々と跳躍してクイリナリスの邪眼の1つを叩き潰す。
ひさぎが簒奪者の鎌の刃に『虚』の力を纏わせて大きく跳んだ。クイリナリスの右翼を斬って傷口から生命力を簒奪すると、絶好のタイミングで飛んできた小剣型艦載機へと華麗に着地を決める。
(「この足場にも慣れてきたかな?」)
あえて竜人を攻撃せず、クイリナリスは爪を噛み出した。どうやら、時間を稼ぐつもりで回復と解呪を優先させたようだ。
ジョーイが研ぎ澄まされた神経でクイリナリスの一挙手一投足を予測する。
(「しゃあねェ、振り出しだ」)
小剣型艦載機より瞬時に距離を詰め、卓越した剣技でクイリナリスの邪眼に傷をつける。
マンデリンは大事をとって竜人に応援動画を再生した。
時間は……そろそろ8分を過ぎようとしている。
(「まだ焦る時間じゃない」)
そう思いながらも緊迫した状況を味わうかのように、紫々彦は無意識で僅かに口角を上げた。堂々とした立ち居振る舞いは崩さずに、『玄帝』を横薙ぎに振ってクイリナリスの腹部に強烈な一撃を加える。
今一度自身に呪術をかけることにより、ヒールの及ぶ範囲で迎撃態勢をほぼ万全にしてきたクイリナリス。
万が小剣型艦載機を移動するついでにエアシューズのローラを摩擦させる。
(「しぶとい奴だぜ」)
摩擦で発生した炎を蹴りと共にクイリナリスにぶつけた。
恭平が見切られないように間を空けた封印術をクイリナリスにかける。
暴風雨というある意味丁度いい環境で、ひさぎはレインコートに付着していた雨露を指で拭った。
(「函館には行かせないんよ」)
ゴーグル越しに射手の目でクイリナリスを捉え、水の礫を撃って機動力を損なわせる。
クイリナリスが凶爪で竜人の意識を刈り取ってきた。彼の倒れ込んだ小剣型艦載機が失速して戦場外に離れていく。
10分経過で可能な限り総攻撃に交じることになっている朔耶が、『魔法の矢』をクイリナリスの邪眼に目がけて発射する。
竜人の分まで仕事を果たそうと、マンデリンは身体を張って邪悪な光線から鬼人を守った。
鬼人がある者から思いと願いを受け継いだ日本刀の『堀川国広』の切っ先をクイリナリスに向ける。
(「力を借りるぜ」)
一歩踏み込むように別の小剣型艦載機に飛び乗り、クイリナリスの顔に接近して邪眼を断った。
●嵐の中の決着
万が獣の幻影をクイリナリスに噛みつかせる。
吹き荒れる暴風を無視するような猛吹雪によって、紫々彦はクイリナリスを雪に包み込んだ。
(「雪しまき、影は遠く音も失せ」)
クイリナリスの尻尾に纏わりついた雪が作用し、その身体に蓄積している呪縛を一層浸透させていく。
クイリナリスの爪で屠られてしまったリキを目にしたジョーイが、皆に檄を飛ばそうと強面の顔をさらに険しくする。
(「ここが正念場だッ! なりふり構わず畳み掛けんぞ!」)
反撃の狼煙を上げるように精神を極限まで集中してクイリナリスの爆破を行った。
発破をかけたジョーイに応えるため、ファミリアロッド『Porte』の杖頭に触れる朔耶。
(「ポテさん、気張ってこうな」)
杖に変身させているコキンメフクロウ『ポルテ』に心で語りかけ、クイリナリスに何十発という魔法の矢を一斉に解き放つ。
クイリナリスが前衛陣に瘴気を吐きかけてきたが、ジョーイは力押しで敵を斬り伏せてやった。
恭平が縦横無尽にケルベロスチェインを操ってクイリナリスを翻弄する。
(「受けてみよ」)
凄まじい達人技をもって隙を作らせ、クイリナリスの左肩に鋭利な鎖の先端を突き刺した。敵は確実に命の灯火を縮めているはずだろう。
こちらの戦力を減らすため、クイリナリスは爪でマンデリンに止めを刺してきた。
(「そろそろ時間だな」)
もうじき15分となるにもかかわらず……紫々彦が余裕のあるように笑みを浮かべる。それはあくまで好戦的な面を覗かせただけだった。小剣型艦載機より思い切り跳び上がって『玄帝』にて重い一撃をクイリナリスの右肩に命中させる。
ひさぎは残像を伴いながら小剣型艦載機を飛び回り、クイリナリスの全身を素早く斬り裂いていった。
(「もう少しとちゃう?」)
クイリナリスの状態を見極めたひさぎの結論に間違いはない。
最後の最後で爪の呪力を吸収したクイリナリス。残り1分を耐え切るか、皆に仕留められるかの勝負を挑んできたのだ。
奥義を繰り出すべく、鬼人が『堀川国広』を手にクイリナリスへと肉迫した。
(「……刀の極意。その名、無拍子」)
躱せない究極の一振りによって、クイリナリスを堪らず仰け反らせる。
万は己の奥に潜む黒き禍竜の頭部を模す巨大な幻影を創造した。
(「喰い千切れ!」)
禍竜がクイリナリスの首に噛みつき、圧倒的な顎の力で牙を食い込ませて致命傷を負わせる。
空中で暴れ回って高度を下げたクイリナリスは……海に落下寸前に完全消滅した。
小剣型艦載機が急激に減速して止まる。函館方面に目を凝らしてみると海岸線が見えた。長期戦になったおかげでヘリオンのお迎えは随分と遅くなるかもしれない。
恭平が振り返ってクイリナリスが滅びた辺りの海を見下ろす。
(「嫉妬では勝てんよ、なぜなら自らが及ばないことを認めているからだ」)
鬼人は婚約者に貰った手作りのロザリオに手を当てて、無事に終わることができたと祈りを捧げた。
「…………」
小剣型艦載機で進んできた方向から、何故か心地悪く感じる風が吹いてくる。
すでに次の大きな戦いがケルベロス達を待ち受けているのだった。
作者:森高兼 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年2月26日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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