シャイターン襲撃~なみだ

作者:彩取

●襲撃
 神奈川県、相模原市。
 その都市にある魔空回廊より、複数のヴァルキュリアが現れた。
 四方に散会した内の一部隊が舞い降りたのは、人々の暮らす住宅街。
 彼女達は己が力を、槍を振るい、人々の命を奪い始めた。
 まさに、虐殺という言葉が相応しい。悲鳴をあげる者も、震える者も誰もが殺され、住宅街は人々の血で染め上げられた。しかし、流されたのは、人々の血だけではない。
 それを目の当たりにした青年は、涙を流しながら絶叫した。
「なんで……なんでお前らが泣いてるんだよ! この人殺し!!」
 瞬間、青年の心臓に槍が突き刺さる。
 引き抜かれた穂先から滴り落ちたのは、絶命した青年の血。
 そして、沈黙する乙女達の瞳からも、赤い血の涙が流れ続けていた――。

●なみだ
 佳境に入った城ケ島ドラゴン勢力との戦い。
 しかし、エインヘリアルに関する件でも、大きな動きが確認された。
 鎌倉攻防戦で失脚した第一王子ザイフリート。彼の後任として、新たな王子が地球への侵攻を開始したのだ。エインヘリアル側は、ザイフリート配下であったヴァルキュリアを何らかの方法で強制的に従え、魔空回廊を利用した人間達の虐殺を画策している。
「全ては、グラビティ・チェインを得る為にです」
 ジルダ・ゼニス(レプリカントのヘリオライダー・en0029)はそう告げると、予知で判明した殺戮現場の一つ、神奈川県相模原市について説明を続けた。

 今回は、都市で暴れるヴァルキュリアに対処しつつ、シャイターンを撃破する必要がある。シャイターンというのは妖精八種族の一つで、ヴァルキュリアを従えている敵だ。
「そちらは別の部隊が殲滅に向かいます。皆さんの相手は、ヴァルキュリアです」
 ヴァルキュリア達には、とある命令が下されている。
 虐殺を邪魔する者が出た場合、先に邪魔者の排除を優先しろという命令だ。つまり、ケルベロスが戦いを挑めば、ヴァルキュリアが住民を襲う事はない。
「シャイターンが健在の内は、彼女達は迷いもなく皆さんを殺そうとします」
 ヴァルキュリアの洗脳は強固だ。
 もし、シャイターン撃破に向かったケルベロスがシャイターンを撃破した後ならば、その洗脳にも何らかの隙が生まれるかもしれないが、現在明確な情報はない。確かなのは、ケルベロスが敗北すれば、予知された虐殺が現実となるという事だ。
「そうなる前に、彼女達を撃破する必要があるでしょう」
 ヴァルキュリアの数は三体。全員が槍を持っていて、状況によっては更にもう一体のヴァルキュリアが援軍としてやって来る場合もある。それも踏まえて戦いに挑んで欲しい。
「人々を守るには、皆さんの力が必要です。そして――」
 ヴァルキュリア達が、虐殺を行う前に止めて欲しい。
 役目とはかけ離れた虐殺、見境なく命を奪う事を、彼女達も望んではいないだろう。
「意に適った行為であれば、血の涙など流さないと思いますから」


参加者
三和・悠仁(憎悪の種・e00349)
メロゥ・イシュヴァラリア(宵歩きのシュガーレディ・e00551)
彩看・転夏(弱虫こむし・e00566)
レヒト・ヨル(沼地の蛇・e00618)
スプーキー・ドリズル(亡霊・e01608)
ルードヴィヒ・フォントルロイ(キングフィッシャー・e03455)
尾割・弌(戦場の白鴉・e07856)
ジルカ・ゼルカ(ショコラブルース・e14673)

■リプレイ

●襲撃
 神奈川県、相模原市の住宅街。
 舞い降りる乙女達を目視しながら到着したケルベロス達。
 対し、乙女達は静かに、槍の穂先を一同に向けた。
(「――来る!」)
 前置きなど必要ない。
 そう宣告するかの如く放たれた槍の突撃。標的となったのは尾割・弌(戦場の白鴉・e07856)の相棒――ミミックのヘンペルを含む五人の前衛陣だった。
 威力減衰が発生しない、戦乙女側からすれば効率の良い列攻撃。
 唯一初撃を免れたのは、スプーキー・ドリズル(亡霊・e01608)に庇われたメロゥ・イシュヴァラリア(宵歩きのシュガーレディ・e00551)ただ一人。続けて同じ技を重ねた銀髪の乙女と、己を鼓舞した栗色の乙女。その内、三和・悠仁(憎悪の種・e00349)は迷わず金髪の個体へと直進した。
「――っ、好きにはさせない!」
 地獄の炎を纏った悠仁の鉄塊剣。
 それが渾身の力で振り下ろされた直後、スプーキーは不銹鋼の刀身で弧を描き、メロゥは火力を高めた栗色の乙女に向け、水晶剣を解き放った。一方、後方より舞い降りたのは、霊力を帯びた彩看・転夏(弱虫こむし・e00566)の紙兵。
「わ、わた……みな……ささえ……なり、ます」
 街の人々も、仲間も守ってみせる。
 そう囁く転夏の隣で射出されたのは、魔力の籠った小動物。
 自らの杖――チデを黒栗鼠の姿に戻し敵へと放った、ルードヴィヒ・フォントルロイ(キングフィッシャー・e03455)の一撃だ。
「――虐殺は止める。させやしないよ、絶対」
 ルードヴィヒの言葉に、弌は敵を見据えて思いを馳せた。
 虐殺という言葉に浮かぶのは、思い出したくはない過日の記憶。
 嘗て穿たれた胸の傷痕は、この瞬間も疼き続けている。
「って、悠長に考えてる場合じゃねえな!」
 しかし、故に我武者羅に、皆を守る事だけを考え役目を果たす。槍の如く伸ばしたブラックスライムを差し向けた弌に続き、燃え盛る火玉を敵陣へと放ったジルカ・ゼルカ(ショコラブルース・e14673)。
 その瞳に映るのは、凪いだ表情の乙女達だ。
「折角キレーな顔してるのにね。――うん、ツラいよね」
 彼女達の境遇を知ればこそ、より強まる悲痛の色。
 理不尽に力で捻じ伏せられ、道具と化したヴァルキュリア。
 彼女達の為にも、ジルカはキッと前を向き、
「……だから決めた、その檻、ぶっ壊すね?」
 瞬間、戦場の空に無数の刀剣が現れた。
 招き手たるレヒト・ヨル(沼地の蛇・e00618)の視線は、手中にある御守りの元。
 レヒトがそれを懐に仕舞うと同時に、斬撃音が戦場に響き渡った。その一撃を浴び、再び槍を構えた乙女達の白い頬には――、
「……本当に、赤い」
 血色の涙が、ただ静かに流れていた。

●報せ
 序盤、優勢を維持したのはケルベロス達だ。
 火力に勝る敵の列攻撃。その減衰が得られなかった点を差し引いても、八人と一体による連携や役割配分は、良き循環をもたらしていた。
 徐々に消耗はしていくが、それは敵も同じである。
 しかし、何故だろう。
 メロゥは、不意に胸元に手を添えた。
「――胸がざわざわするわ。こんな感覚は初めて」
 輪郭のぼやけたもどかしさが、奥底で燻るかのよう。
 その不安からか、自ずとある人の顔を脳裏に浮かべ、右の掌に力を込めたメロゥ。その時、レヒトは細長い腕を伸ばし、少女が分かるように左腕を後ろへ引いた。
「余所見。ちゃんと見なよ」
 どうせ他の奴の事でも考えているのだろう。
 そう告げるかの如く、眉を顰めたレヒトの忠告に、
「……言われなくても、わかっているわ」
 見透かしたような彼から目を逸らし、メロゥは唇を噛み締め、前を見据えた。
 その言葉に、小さな溜息を落とすレヒト。それは感情の吐露ではなく、足許に蠢く無数の蛇影への合図となった。
「余り俺の手を煩わせないでよ」
 瞬間、素早く地を這い、敵に絡みつく無数の蛇。
 持続する毒の効果は、浄化術を持たない乙女達の身体を包み込んだ。
 一同の目的。その一つが、ヴァルキュリアの説得だ。
 シャイターンを撃破した後であれば、好機が訪れるかもしれない。
 故に、別部隊から援軍が来る事も厭わない。こちらが敵を引き受ける事でシャイターン撃破が早まるなら、それはそれで都合が良い。
 勿論、説得を重視する余り、不意を突かれては堪らない。
 それを念頭に、弌は警戒を怠らず攻守を切り替え立ち回った。
 医者として、前に出るのは主義ではない。しかし、
「また失うのは御免だからな。誰かが傷つくってんなら――」
 この身が人を守る要となり、道が開けるのなら、
「鷺を鴉にしてでも戦ってやらぁ!」
 その決意と共に、一撃を浴びてなお広げられた鴉の大翼。
 脳裏に嘗ての絶望を描きながら形成された弌の翼は、敵の自由を奪う力となって、金髪の乙女へと放たれた。しかし、弌達の集中攻撃に気が付いた乙女達も、必ず誰かが治癒へと回り、粘り強い応戦を続けている。
 その間も血の涙は流れ続け、悠仁は堪らずに思いを馳せた。
(「……どうして、泣いているんだ」)
 悠仁にとって、デウスエクスは憎しみの対象だ。
 仲間を皆殺しにされた記憶。あの時抉った目と、気を失う程の苦痛。
 何より今、奴らへの憎悪と復讐が、生きる原動力であるというのに、
(「デウスエクスが、苦しんでいるとでもいうのか……?」)
 ならば、この恨みは。この痛みは、この憎しみは、
「……俺の、この思いは、何処に――」
 一体、何処にやればいいのだろう。
 蠢く葛藤。揺らぐ炎。
 だが、ここは戦場だ。
 己が手順となれば、力を撃ち放つのみ。
「――堕ちろ」
 あらゆる感情と仕込んだ暗器の全てが、血肉の暴風と化す一撃。
 そうして悠仁が殺神を繰り出し、スプーキーが続こうとしたその瞬間――、

「……第一陣が立ったようだ。さて、何処に来るか」
 戦場に響いた、アラーム音。
 それはシャイターン強襲班、こはるからの着信音だ。
 音から判断するに、最初の援軍が出た合図である。戦闘開始から未だ五分程。この一陣が相模原にいる四班の内、何処へ来るかは分からない。そして、
「仮に来た場合、四対九――厳しくなる事だけは確かだな」
 そう告げ応戦するスプーキーに対し、ジルカがぽつりと言葉を重ねた。
「でも、出来ればあのお姉さんたち、殺したくないな」
 涙を流すヴァルキュリア達。
 彼女達は、悲しいから涙を流している。
 役目を逸脱して人の命を奪う事。それを、悲しいと思えるなら、
「……案外さぁ、殴られたら」
 手を取り合える可能性を、すぐに諦めたくなんてない。
「――目が覚めるんじゃないかな……!」
 瞬間、ジルカは金髪の乙女に手加減攻撃を繰り出した。これを続けて戦闘不能となれば良し。命さえあれば、シャイターン撃破後に説得出来るかもしれない。
 その為には、最後まで立ち続ける力が必要だ。
「みな……さ、わた……し、支え……ます」
 人の多い所も、ふれあいも苦手な転夏。
 しかし、人の事が嫌いなのではない。出来る限り、仲間を支えたい。
「だ、から……が……ばり、ます」
 前髪に隠れた瞳、そこにある決意の色こそ見えなくとも、転夏の放つ治癒の力は、前線を支える大きな柱となっていた。そして、ヴァルキュリア達にも手が届くのなら――そう考える転夏の隣で治癒を重ねたルードヴィヒは、仲間達の姿に呟いた。
「皆優しいなぁ……僕は、考えられないや」
 帽子を深く被り直し、表情を隠して彼は思う。
 助けられなかった大切な人と、救済の可能性が残る敵。そこには、笑顔で受け止めるには余りある思いがある。それでも、今は優しい仲間達が傷付き、屈する事なきように。
「……その為に頑張るだけ、だな」
 そう自らに告げ、不意に空を仰いだルードヴィヒ。 
 藍の瞳が捉えたのは、陽光を遮る流れ雲。
 そして大剣を構えて空を舞う援軍、ヴァルキュリアの姿だった。

●なみだ
 守護星座の加護を得た乙女達。
 援軍の乙女が揮うゾディアックソードは、一同が与えた呪縛の数々を、持続的に浄化する力をもたらした。だが最大の問題は、攻撃の要となった彼女が繰り出す火力である。
 盾役からの鼓舞が重なり、その火力は何よりの猛威と化した。
 対し、その効果を砕く為に、メロゥは水晶剣を、スプーキーは竜爪撃で応戦した。だが連続使用での命中は至難、故に両者は交互に放ったが、砕き切れる物ではなかった。
 転夏とルードヴィヒは戦線維持で治癒から外れる訳にはいかず、度重なる攻撃により、次第に傷は蓄積されていった。
 それでも、悠仁は絶えず前進した。
 治癒を仲間に託し、火力の担い手として立ち続ける。
(「とにかく、まずは一人だけでも……!」)
 瞬間、悠仁の致命傷を避けた一撃を受け、金髪の乙女が崩れ落ちた。
 まずは一体。しかし、次の瞬間――、
「――三和!」
 スプーキーが駆けるより先に、悠仁を襲った重力の斬撃。
 視界が歪み、意識に霞がかかる中、悠仁はどさりと倒れ込んだ。
 だが、一同に悔しさを噛み締める時間ははない。
「ま、に……あ……て」
「意に適ってない割に、狙いに来てるよね……!」
 転夏とルードヴィヒは、より傷の深いスプーキーとメロゥに癒しの力を。
 それで足りなければと、行使される各々の治癒術。しかし、火力の要である悠仁が倒れた今、常に攻撃を行えているのは全体の半数以下。そして、もう一人分の火力を削ごうと、乙女達は矛先をメロゥに定めた。
「――っ……!!」
 一気に攻めかかる乙女達。
 その連撃を浴び、メロゥの膝から力が抜けていく。
「メ、メロだって……まだ、っ」
 それでも、懸命に放たれたウイルスカプセルには、立ち止まる事をよしとしないメロゥの意志が窺えた。だが直後に一撃を受け、芝生の上に伏したメロゥ。瞬間、盾役だけが残された前列で、スプーキーは銃口を敵へと向けた。
「Shoot the Meteor!」
 彗星の如く戦場を翔ける、紫煙の尾を引くその弾丸。
 対し、乙女達はスプーキーを次なる標的に、治癒も織り交ぜて立ち回った。
 集中攻撃で各個撃破を狙う。それは今、両者に共通する方針だ。スプーキーが狙われたのは、他者への治癒量を踏まえての判断だろう。
(「先程再び八千沢からのコールがあった――であれば既に」)
 援軍の第二陣も飛び立ち、シャイターン殲滅の戦いも始まった事だろう。故にもう一度、仲間の勝利を知らせる着信が響いた時、乙女達にも何らかの変化が生じる筈だ。 
 それまで倒れる訳にはいかない。しかし、
「スプーキー!!」
 誰かが己の名を呼ぶ中で、男の脚からも力が消えた。
 その光景に口を強く噤んだ後、指先にくちづけを乗せて囁くジルカ。
「……お姉さんたちだってサ、止めたいよね。だから泣いてるんでしょ?」
 誰だって、思うよう、自由に生きたい。
 どうして、それを邪魔するのか。
 何故彼女達に、救済の可能性を断たせようとするのか。
 それがもどかしく、苦しくて、
「答えられない、よね。苛々するよねー―本当に!」
 儘ならない思いがジルカの心を掻き乱す中、青い鳥の如く空舞う光の欠片が、乙女達を包み囚えていく。幾度浄化されても、自分が為せる限りを尽くす。そう戦うジルカの後方、ルードヴィヒは魔術切開を行使しながら言った。
「僕も攻撃出来るならしたいけど……それは、皆に頼むね」
 仲間の三人が倒され、残る敵の数は三人。
 この状況で、ルードヴィヒに攻撃に加わる余力はない。
「わた、……たち、手は……まだ、と……どき、ます」
 そして、転夏もこの現状に思う。前列に被害が出た今、後列にも剣の力が向き始めた。だからこそ、治癒の術を決して止めない。そこに、再び影の斬撃を繰り出し、敵の麻痺を増やすレヒト。本当なら前列に出て応戦を――しかし、射手として立つ今の技の精度、そして傷の具合を踏まえた上で、レヒトは後列で戦い続けた。
 その苛立ちは、先程の比ではないだろう。
 メロゥが前で倒れているのに、近寄る事さえかなわない。
 それでも、少女の――仲間達の意識がある内に、この激戦に終止符を。
「本当に、世話が焼ける――」
 既に、レヒトの蛇の如き瞳が見つめる乙女達は、救済の対象ではなく討伐すべき敵である。その最中、呪縛を放ち続けるジルカを狙い、矛先を定めた乙女達。
 そこに、弌が立ちはだかった。
「――悪ぃな。今日は特に、しぶとく喰らいつくって決めてんだよ!」
 全てを防ぎきる盾には、誰もなれない。
 それでも、一度でも多く仲間の為に。
 強い決意と、仲間を思い抗う弌。そこに、星宿る剣が落とされた。
 足元が震える程の斬撃。それに僅差で押し切られ、力なく崩れる弌。そうして、残るヘンペルが後方への盾となり、前列が完全に崩れさろうとした、その時である。

「やめなさい! これは――こんなものは私達の戦いではない!」
 栗色のヴァルキュリアが、突然声を荒らげた。
 直後、ジルカの元に注がれたのは、乙女による鼓舞の光。
 すると、乙女達は意識が混乱する中、互いに攻撃をし合い、僅かに意識が戻った瞬間にはケルベロス達へと治癒を送り届けた。
 激戦の中、コール音にも気づけなかったが、襲撃班がシャイターンを撃破したのだろう。そう察した瞬間、レヒトは苛立ちを抑えながら告げた。
「……泣けばいいってものじゃない。さっさと目、覚ましなよ」
 そんな色の涙に染まっては、何も見えない。
 真実も、現実も、この現状が、誰の手による物かさえ。
 その光景に目を見開く乙女に対し、ジルカと転夏も思いを伝えた。
「おねーさん達も頑張ってよ。自分の在り方は、自分で決めていいんだって」
「お願……です、頑張……て、くだ……い」
 だからどうかこの声を受け取って。
 理不尽な洗脳から、意思を取り戻して欲しい。
 すると程なく、涙を流し続けていた銀髪と黒髪の乙女の動きがぴたりと止まり、彼女達は凪いだ表情のまま、新たな指令を受け取ったかのように、戦場から撤退した。
 一方、手加減攻撃で撃破した金髪と、声を荒らげた栗色の乙女。洗脳から解放された彼女達は唇を噛み締めながら、一同を見て呟いた。
「――すまない」
 その一言を残し、先の二人とは別の方向へと飛び立とうとする乙女達。
 対し、ルードヴィヒは固い声色で断じた。
「戦場はここだけじゃない、皆戦ってるんだ。意に適わないなら、自分達でも抗えよ」
 敵からの恩と、己の使命。
 どちらがより重かろうと、人の命に勝るものなど、ない。
 故に誰かが傷付く事は悔しく、歯痒い。
 沸き立つ熱を喉元に押し込めて紡がれた声に、眉を潜めて去りゆく二人の乙女。
 それでも、この瞬間得た安堵もあった。倒れた四人の容態に関してである。
 この激戦を終え、程なく四人は自らの力で起き上る事が出来た。
 それは懸命な治癒と、互いを思いやる行為の数々。
 その結果もたらされた、二人の乙女を説得した事以上の成果に他ならないのだ。

作者:彩取 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 4/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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