シャイターン襲撃~糸引く者・国分寺編

作者:零風堂

 東京都国分寺市のとある交差点上で、唐突に空間がうねり始める。
 異世界と繋がったその空間から、ゆっくりと十数体の人影が現れた。
「ここが地球か……ったくよぉ」
 その中の一人――タールのような黒いモノで出来た翼を備えた存在が、やや面倒くさそうに口を開く。
「お前らのお陰で、俺らも働く羽目になっちまったじゃねーか、この愚図が!」
 黒き翼の存在が、周囲に控える光の翼の存在……ヴァルキュリアのうち一人の後頭部を足蹴にし、ぐりぐりと踏み躙り始めた。
「……」
 しかし当のヴァルキュリアは虚ろな瞳で宙を見つめ、何の反応も示さない。
「謝れ、今すぐに! 『偉大なるイグニス様の配下、シャイターンのレージュ殿。申し訳ございません』だ!」
「偉大なるイグニス様の配下、シャイターンのレージュ殿。申し訳ございません」
 虚ろな瞳のヴァルキュリアは淡々と、命じられた通りに謝った。
「ケッ、つまらねー連中だぜ。……まぁいい、とっととやるか」
 黒き翼……シャイターンのレージュと呼ばれたその存在は、濁った瞳を微かに細めて手を挙げる。
「イグニス王子に代わり、レージュが命じる。……殺せ。この地に住まう者どもを、とことん派手に殺しまくれ!」
 レージュはそう言い放つと、さも愉快そうに声高く笑い始めた。
 そして命じられたヴァルキュリアたちは、護衛の4人を残して、一斉に飛び出してゆくのだった。

「エインヘリアル勢について、大きな動きがありそうだという情報が入りました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はそう言って、集まったケルベロス達へ、その内容を説明し始めた。
「鎌倉侵略に失敗した第一王子ザイフリートの後任として、新たなエインヘリアルの王子が、地球への侵攻を開始したようなのです」
 再びエインヘリアル勢の侵攻作戦が始まるのだと、聞いていた者たちは表情を硬くする。
「その王子は、ザイフリート配下であったヴァルキュリアたちを何らかの方法で強制的に支配したようで、ヴァルキュリアたちに魔空回廊を使って人間達を虐殺させ、グラビティ・チェインを得ようと画策しているようなのです」
 そこでセリカは言葉を切り、集まった面々に再び視線を巡らせた。
「……皆さんは、東京都国分寺市に向かって下さい。そこに現れ、人々を虐殺しようと暴れるヴァルキュリアに対応しつつ、それを操っている敵……妖精8種族のひとつシャイターンを撃破して欲しいのです」
 新たに侵略を開始した王子は、そのシャイターンを従えているようだとセリカは付け加え、話を続ける。
「皆さんは、シャイターンの撃破を目的に動いていただきます。国分寺市に現れるシャイターンは、護衛として4体のヴァルキュリアを自分の傍に残しつつ、他のヴァルキュリアを暴れさせているようです」
 合わせて5体を同時に相手にすることは、いくら何でも困難と言えるだろう。
「ですが、ヴァルキュリアが苦戦している戦場があれば、2体づつ援軍を派遣するようです。戦況にもよりますが、最初の2体が、3~5分後。次の2体が、7~10分後に派遣されると考えればいいでしょう」
「……つまりはシャイターンが護衛を援軍として派遣し、手薄になった所を襲撃する作戦か」
 ケルベロスの発言に、セリカも頷く。
「指揮官であるシャイターンを撃破する事ができれば、ヴァルキュリアと戦う仲間達も、有利に戦う事が出来るようになると考えられます。どの時点で襲撃をかけるかはお任せしますが、シャイターンを撃破することが、この作戦の目的と言えます。これを確実に達成できるよう、作戦を考えて頂ければと思います」
 セリカはそれから、敵の特徴についても説明を始めた。
「シャイターンは黒いタールの翼と、濁った目を持つ種族で、詳細は不明ですが、炎を用いたグラビティを使用するようです。あと今回のシャイターンはエアシューズを装備しているようなので、そのグラビティも使用可能でしょう。護衛のヴァルキュリアは4体とも妖精弓を装備しており、そのグラビティを使用するようです」
 なかなか大変な戦いになりそうだと、何人かのケルベロスは真剣な表情で話を聞いていた。
「新たに出現した敵……妖精8種族のひとつシャイターン。その力は未知数ですが、ヴァルキュリアを操作して人々を殺害しようとするのならば、それを放っておくことはできません。皆さんで力を合わせてシャイターンを倒し、それを阻止して下さい」
 セリカはそう言ってケルベロス達を激励し、話を終えるのだった。


参加者
レクシア・クーン(ふわり舞う姫紫君子蘭・e00448)
モンジュ・アカザネ(双刃・e04831)
輝戒・斗真(元量産機・e07927)
エフイー・ヨハン(虚空の彼方をも狙い撃つ機人・e08148)
芹沢・響(黒鉄の融合術士・e10525)
風音・和奈(固定制圧砲台・e13744)
ヴィル・フィオン(焔火蛍・e15201)
九音・マルガ(銀が混じった水時計・e17326)

■リプレイ

「チッ、何を手間取ってやがる……お前らも行け」
 黒き翼を備えた妖精・シャイターンは苦々しい顔で指示を出し、護衛に残していた2体のヴァルキュリアを援護に向かわせた。
 東京都国分寺市のとある交差点上で、シャイターンは残った2体のヴァルキュリアを冷ややかな目で見据えながら息を吐く。
「とっとと片付けてくれねーと、俺様も困っちまうなぁ」
 シャイターンはヴァルキュリアたちを嘲笑うかのような口調で、天へと呟く。
「ヴァルキュリアどもは地球の軍勢を前に、全く役に立ちませんでした、って報告しなきゃならねぇ」
 これは気が重いと、シャイターンは下品な笑みと共に言い放った。
 どんなに罵倒されようとも、残ったヴァルキュリアたちはただ静かに、命令の時を待つ機械のように、じっと佇んでいるだけであった。

(「……まだ動いちゃダメ。ここで焦ったら、意味が無いんだ……」)
 風音・和奈(固定制圧砲台・e13744)は交差点から少し離れた自動販売機の陰にしゃがみこみ、その様子を窺っていた。
 出撃してゆくヴァルキュリアたちの無感情な瞳が、心に刺さるように感じられる。
 望まぬ殺戮を強制される苦しみが、その冷徹な表情の下に隠されていると思うと、胸が痛んだ。
「……」
 レクシア・クーン(ふわり舞う姫紫君子蘭・e00448)も息を潜め、ただじっと突入の時を待っている。
 この間にも、他のケルベロスたちがヴァルキュリアたちと戦い、傷付いているに違いない。そう思うとレクシアは、感情の昂りを必死に抑えざるをえなかった。
 ちらりと時計に視線を移せば、まだ1分と経過していないことに愕然とする。
 耐えるのも戦いだと分かってはいるが、仲間たちが傷ついてゆく時間を、ただ何もせずに待つことしかできないという痛みが、レクシアの思考を締め上げた。
 そんな身を斬られるような時の中で輝戒・斗真(元量産機・e07927)も隠密の気流を漂わせながら、物陰から物陰へ移動しつつ、シャイターンに気付かれないよう注意して、その様子を窺ってゆく。

「クズが、まだ片付かねえのか?」
 シャイターンがヴァルキュリアの頬を、乱暴に張った。衝撃でやや揺れつつも、ヴァルキュリアは変わらぬ虚ろな表情で空を見つめている。
「もういい、お前らも行け。俺はお前らの無能さを、イグニス様に報告してやる」
 シャイターンに命じられて、残る2体のヴァルキュリアも援軍に飛び去った。これで残るはシャイターンのみ。
「やれやれ、と……」
 軽く首を左右に振りながら、シャイターンは息を吐いた。
「ヴァルキュリアを引き付けてくださった皆さんのためにも……!」
 背から地獄の炎を噴き、レクシアが駆け上がる!
 加速の勢いを爪先に乗せ、流星の如き鋭さでシャイターンの脇腹を思い切り蹴りつけた。
「っ!? 何だ、貴様ら?」
 弾かれるように下がりながら、シャイターンはケルベロスたちを睨み付ける。
「シャイターン……いけ好かねぇ面をしてやがるぜ」
 エフイー・ヨハン(虚空の彼方をも狙い撃つ機人・e08148)はそんなシャイターンの表情を一瞥し、口元だけで呟いた。
 ほとんど同時に縛霊手の祭壇から紙兵をばら撒き、前衛に守護の霊力を与えてゆく。
「ここまで来るとはな。大した戦力じゃねぇか」
 シャイターンは笑みを浮かべつつ、オルトロスのデザイアが振り下ろしてきた霊剣を腕で受け弾き、押し払った。
「アタシ達だけじゃない、他の班の命運も背負っているんだ。時間はかけてられないよ!」
 和奈は早口でまくしたてながら、武器ケースを起動させる。
「ビーコン展開! 座標補足! 迫撃支援開始!」
 そこから動き始めた迫撃砲がシャイターンを狙い始め、和奈の近く……後衛陣の援護を開始する。
「ヴァルキュリアと戦ってる皆の為に、1秒でも早くケリを付けるぜ!」
 芹沢・響(黒鉄の融合術士・e10525)がシャーマンズカードを天にかざし、冷気を纏った槍騎兵を召喚する。
「ええ、負担してくださる皆さんに報いるために、すぐに決着をつけないといけないっすね」
 九音・マルガ(銀が混じった水時計・e17326)も頷いて、槍騎兵の肩越しに凍結光線を撃ち出した!
 じゅぅぅぅ……。
 焼け石に水を振りかけたかのような、耳障りな音が辺りに響く。
 交差させていた腕を開き、シャイターンは飛び上がって距離を取ろうとした。
「気に入らないな」
 モンジュ・アカザネ(双刃・e04831)がその頭上に、斬霊の刀と共に舞い上がっていた。
「なんだと!?」
 叩き落とすかのように思い切り、モンジュは刃を振り下ろす。直撃を受け、シャイターンは勢いよく落下した。
「やる気なら後悔させてやる……ゆくぞ!」
 地面に手を着き、シャイターンはケルベロスたちを見据えながら、黒き翼を大きく開いた。
 ヴィル・フィオン(焔火蛍・e15201)はその攻防の間にエネルギー球を生み出して、モンジュの攻撃性を高めてゆく。
「ほかの班に負担をかけている以上、手早く倒さないとな」
 斗真がアームズフォートから砲撃を開始する。しかしシャイターンは攻撃を受けても体勢を崩さず、その手に炎を生み出していた。
「カスが……消し飛べ!」
 シャイターンから放たれた灼熱の炎がヴィルを包み、その身を焦がし始める。
「大丈夫? みんなは攻撃に集中だよ!」
 和奈が全身からオーラを凝縮させ、癒しの力に変えてヴィルへと解き放つ。ヴィル自身も喰らった魂の力を己に憑依させ、全身に禍々しい呪紋を浮き上がらせていた。
「……!」
 魔人降臨。狂気の力を拳に握り締めながら、ヴィルはシャイターンを睨み付けた。
「この馬鹿者め」
 斗真は凍結光線を放ちつつ、シャイターンを馬鹿にして逆上させようと試みる。
「ククク……吠えよる吠えよる」
 しかしシャイターンはそんな斗真を嘲笑うように笑みを浮かべ、余裕の表情で攻撃を受けた。
「これまた偉そうな奴が出てきたな。……だが、おつむは底辺のようだ」
 そこを狙ってモンジュが跳ぶ。超加速によって生み出した炎を蹴り出し、シャイターンの顔面へと浴びせかける。
「上に立つ奴の心も知恵もねぇなんて、お粗末すぎるぜ」
 モンジュはそう吐き捨てると、そのまま駆け抜けて間合いを取り直した。
「一気に押し潰すっすよ!」
 マルガがブーステッドシューズの性能をフル稼働させ、ダッシュでシャイターンへと飛び掛かった。
 足元から噴出する炎をそのみぞおちに叩き込むが、同時にマルガも大きく仰け反る。
「あちちっ!」
 敵も交差気味にマルガへと炎を打ち込んできたのだ。衝撃に押され、マルガが地面の上をごろごろ転がる。
「任せときな!」
 エフイーが気を集中させてマルガの傷を癒してゆく。その時間を稼ぐように、デザイアは地獄の瘴気を漂わせていった。
「ククク……踊れ踊れ、貴様らにはそれがお似合いだ」
 シャイターンは瘴気から距離を取りつつ、ケルベロスたちの様子をさも愉快そうに眺めていた。
「何一つとしてあなたの思い通りにはさせたくない……」
 レクシアが信号機の支柱を駆け上がり、一瞬だけ背の地獄を噴出させて空中で静止する。
「……させない!」
 僅かに生まれた虚を突いて、レクシアは急降下! 突き出すように構えたチェーンソー剣で、破鎧の衝撃を叩き込んだ!
「むっ……」
 僅かに生まれたシャイターンの揺らぎ。
 そこへボクスドラゴンの黒彪がブレスを浴びせかけた。
「トラップ発動! なんてね」
 響の召喚した御業の禁縄が、シャイターンを掴むかのように絡みついて動きを止める。ぎりぎりと締め上げられて、僅かに敵の表情が歪んだ。
「この糞共が! もう容赦しねぇ!」
 吼えると同時に縄を振り払い、シャイターンが飛び上がる。そして生み出された激しい砂嵐が、後列を呑み込むように吹き荒れる!
「っ……」
 砂塵が目と肌を覆い、視界と呼吸が奪われる。和奈は激しい砂嵐の中で何とか薄く目を開き、仲間たちへとオラトリオヴェールの光を放った……つもりだった。
「ハハッ、助かったぜ」
「え……?」
 何と癒しの効果を得たのはシャイターンだ。どういうことかとケルベロスたちが認識するより先に、斗真の鎌がエフイーの背を大きく薙ぎ払う。
「ヤベェ、催眠の効果か?」
 エフイーは痛みに耐えながらもStandUpForceの発動を一瞬思案するが、後列には届かない。ならばと全身の闘気を集め、まずは癒し手である和奈の視界をクリアにした。
「こちらは任せて下さい。ガンガンヒールしますよ!」
 ヴィルがエフイーの傷を癒すべく、光球を生み出して投げつける。ケルベロスたちは砂嵐の中で目を凝らしつつ、攻撃を再開した。
「この糸には触れないほうが良いっすよ? ……もう遅いけど」
 マルガの瞳と銀髪が光を帯び、チョーカーに銀の燐光が宿る。すると瞬時に腕がワイヤーとなり、シャイターンを取り囲むべく展開を始めた。
「そりゃ当然だろうよ」
 言いながらシャイターンは身を翻し、巧みに銀糸の間をすり抜けて駆ける。
「行かせねえぜ!」
 迎え撃つはモンジュ。御魂刀『霊呪之唯言』を掲げて構え、ダッシュで向かう。
「氷結の槍騎兵を召喚! いけぇっ!」
 響の声と同時に、モンジュが刀を下げた。そこに突き出された氷の槍が、シャイターンの肩を穿つ!
「な、に……?」
「これが仲間の絆って奴だ。覚えとけ!」
 下げた刀の刃を返し、霊気を込めて斬り上げる。二人の連携にシャイターンが後退った所を、レクシアが狙っていた。
「そこです!」
 バスターライフルから迸る光線が、シャイターンの胸元に命中して魔力の氷を張り付ける。
 恨みの視線を向けるシャイターンを、レクシアは真っ直ぐに見つめ返していた。

「……ったく、しつこい連中、だぜ」
 肩で荒い息をつきながらも、シャイターンは未だケルベロスたちへと敵意を向けていた。
 戦い始めてもう5分ほどか。ケルベロスたちはヴァルキュリアを抑えている仲間たちの事を考え、焦燥を感じながらも武器を振るい、力を尽くしての奮戦を続けていた。
「くっ……」
 斗真は攻撃に押され、民家の壁に激突しながらも身を起こし、アームドフォートの砲口を向ける。
 発射と同時に立ち上がって移動し、少しでも敵の注意を引こうと試みる。
「氷結の槍騎兵と悪戯猫の召喚を除外し、特殊召喚! ぶった斬れ『蒼氷の猫武者』ッ!」
 響の召喚した猫の侍が氷の武具を身に纏い、シャイターンへと飛び掛かる。鬱陶しそうに下がろうとするシャイターンだったが、そこに黒彪がタックルでぶちかましをかけた。
 僅かに敵の動きが乱れた隙を逃さず、猫武者が氷の刃を振り下ろし、シャイターンを胸を大きく切り裂く。
「く、うっ!」
 ダメージが蓄積しているのか、シャイターンには軽口を吐く余裕もない様だ。
「ここで決着を、狙います!」
 赤い瞳に決意を込めて、ヴィルはガントレットを握り締める。その拳に降魔の力を集中させ、牙を立てるかのように正拳を胸へと叩き込む!
「いけすかないシャイターンは、慈悲なくぶちのめしましょう」
 マルガは小さく呟きながら、ケルベロスチェインを周囲へ張り巡らせる。そして身を伏せると同時に一斉に飛び掛からせ、シャイターンの胴を絡め取った。
 はらりと黒髪の中で銀色が揺れる中、マルガは地を蹴って大きく跳び退る。
「おのれ、このゲス共めぇ!」
 ギシギシと軋む鎖の戒めを力ずくでこじ開けながら、シャイターンは手の中に生み出した炎塊を投げ放ってきた。
「おっと、カワイ子ちゃん達に手は出させないぜ」
 エフイーが身を挺して炎を受け止め、その場に踏み留まる。急ぎ和奈が全身のオーラを集中させ、その傷の治療を開始した。
(「アタシだけじゃ回復はきつい……? でも、ここで弱音なんか!」)
 和奈はぐっと唇を噛みしめ、自身を鼓舞する。そして鋭く、シャイターンを睨みつけた。
「一人だけでアタシ達をどうにかできるなんて、思わないことだね!」
「そうだよなぁ? 一人じゃ何にもできねぇんだろ?」
 力を取り戻したエフイーは地面を蹴り、流星の如き軌跡を描きながら蹴りを繰り出す。両腕を交差させてその一撃を受け止めたシャイターンだったが、エフイーの足元で何かが煌めく。
 それはエフイーの脚に掴みかかっていた、デザイアの咥える神剣だった。
 飛び出したデザイアの斬撃がシャイターンの腕を薙ぎ、僅かに揺るがす。
「八重の雲を吹き放ち、遮る瘴霧を吹き払え」
 そしてレクシアが滑り降りるようにシャイターンの背後に降り立ち、風へと呼びかけていた。
 魔力が風を具現化させ、敵の身を捕らえるように吹き荒れる。
「くっ、くそっ……貴様らなんぞに……!」
 もがき呻くシャイターンに向かって、モンジュは静かに口を開いた。
「もう一辺、ゼロからやり直してきな。ケルベロスとの話はそれからだぜ!」
 烈風の中央を駆けるように、炎の蹴りが解き放たれる。
「此所に生まれるは―――科戸の風」
 レクシアが風を操り、その炎を煽り猛らせ、鋭い槍のように一点へと集めてシャイターンへと打ち込んだ。
「ぐぁあああっ!」
 炎に穿たれ、風に四肢を捩り飛ばされ、シャイターンは彼方へと散り消えてゆく。
 その姿を鋭い視線で見送りながら、レクシアは静かに地面に降り立つのだった。

「少し時間が掛かってしまいましたね」
 レクシアは戦いの疲労を体に感じながらも、ヴァルキュリアと戦っているチームの事を心配し、援護に向かってはどうかと提案する。
「戦況が把握できれば良かったっすけど……」
 響の呟きに、一同は首を左右に振った。こちらから携帯電話等で通話を試みるにしても、同じ国分寺市を担当するチームの誰かがそれを承知しているだろうか?
 でなければ向こうの状況が分からぬ以上、通話できる状況にないのか、無音にしていて気付かなかったのか、単に出てくれなかっただけなのかすら分からない。
 援護に向かうにしても、どの場所のどこで戦闘が起きていて、どこに向かうのか、明確に考えている者はここにはいなかった。
「……よし! んじゃ、向こうのチームの様子を見に行こうぜ! ちょっぱやでな!」
 エフイーの言葉に一同は頷き、とりあえず国分寺市周辺を見回りがてら、巡回を始めるのだった。

作者:零風堂 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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