●ヒーリングバレンタイン2021~大自然に囲まれて
「みんな、いつも色々とありがとうなの! みんなの大活躍のお陰で沢山の所が無事に解放されたの! とっても感謝してるの!」
笑顔でケルベロス達に話しかける、ミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)。
「それでね、取り戻した地域の復興も兼ねてバレンタインのチョコレートを作ってみませんかって事なの! ミーミアがお願いしたいのは小笠原諸島、母島なの! 小笠原諸島の母島と言えば『日本で一番遠い島』と言われていて、そして世界自然遺産!! みんなの力で傷んでしまった自然をヒールして、また、沢山の人が自然と触れ合える場所にして欲しいの! 島の人達も、日本の人達も、世界の人達も、みんな喜ぶの!」
ミーミアはくるりと回る。
「重点的にお願いしたいのは……やっぱり海辺かなって思うの。美しい自然の素敵な海岸や海辺をヒールして取り戻して欲しいの。そして、チョコレートのイベントでは、やっぱり自然あふれる母島をイメージして、鳥さんとかお花とかイルカさんとかクジラさんとかの可愛いチョコレートを作って、また、色々な人達が遊びに来たいって思えるものに出来たらって思うのよ! 大きくても良いし、一口サイズなんかでも可愛いと思うの。思い切って新しいお土産案なんかも良いかもしれないの! でも、大事なのは真心なの。みんなの、優しい気持ちを沢山込めて素敵な一日にしましょうなの!」
●ヒーリングバレンタイン2021~大自然に囲まれて
ここは、小笠原諸島母島。ケルベロス達の活躍により解放された地域の一つだ。
バレンタインである本日、母島の復興を願いヒールとチョコレート作りを行うのだ。
「初めての海はどう、カリン?」
「……うん、楽しい」
優しく微笑む那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)の言葉に、カリン・ボールドオネスティ(セレナーデは終わらない・e86659)も嬉しそうに笑みを返す。
カリンにとって海は初めての経験ばかりだ。潮風の匂い、素足から感じる踏みしめる砂、そしてくるぶしを洗う海の波の感覚……水着姿の全身で感じる海は全て新鮮で、そのどれもが楽しく感じる。そう感じられるのは、きっと摩琴やマイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)、シル・ウィンディア(鳳翼の精霊姫・e00695)と一緒に過ごしているからだろう。皆が一緒であれば、初めての経験も楽しく鮮やかに彩られるのだ。
「水着姿のカリンを見ていると、海で泳ぎたくなるなあ。夏にまた来て、皆で泳ぎたいね!」
「うん、それ良いね!」
マイヤの言葉に摩琴も頷く。それに、シルも笑顔で頷いた。
「じゃあ、次に来る時にもっと素敵な海岸に戻っている様に……この地に精霊の祝福を——」
「ボクも……この土地のエクトプラズムの記憶をキュアウィンドに乗せて」
シルは風精の力を、摩琴も癒しの力を海辺へと向かって贈る。もう、二度と踏みにじられない様に、美しい海へと蘇る様に……そう願いを込めて。
「私が日本に来たばかりの頃と比べたら、デウスエクスから取り戻せた地域も大分増えて……誰もが夢見た平和な世界がすぐ近くまで来ているのかしら」
「まだデウスエクスの手から解放されていない場所はあるが、確かな一歩で取り戻していこう」
アリッサム・ウォーレス(花獄の巫竜・e36664)は、来日した頃に想いを馳せつつ今までの事を振り返り、それにフィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)が頷く。『平和』という言葉が、もうすぐ近くまで来ている事を改めて感じる。
「夏になったら、フィストさんやお屋敷の皆さんと一緒にこの辺りに海水浴に来てみたいです」
「そうだな。海水浴なら水着を新調するべきか……。ん? ほら、あそこに綺麗な貝殻が落ちているぞ」
「本当ですね、凄く綺麗です……」
ヒールして歩く海辺。その色は鮮やかで……未来もそんな色で彩られている様に感じてしまう時間だった。
「小笠原といえばカタツムリ……は、一般的ではないのかな」
「カタツムリ、ですか?」
千歳緑・豊(喜懼・e09097)の言葉に、バラフィール・アルシク(闇を照らす光の翼・e32965)は聞き返す。
「小笠原諸島には多種多様な固有種のカタツムリが生息しているんだよ。他にも……」
ヒールをしながら豊が教えてくれるのは、小笠原諸島の美しい自然の事。自然が沢山残っていて、貴重な固有種のカタツムリ等、色々な生き物がいる事や自然の美しさ……その美しさを出来うる限り戻る様にとバラフィールのヒールにも力が入る。固有種のカタツムリ達も、これからも長く元気に生き続けられるように、と。
「青い海に大自然……!」
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)は、母島の景色に目を輝かせる。
「故郷を思い出すな、島の人達がまた幸せに暮らせるように、たくさんの人が来られるように……」
目に入って来る景色はマヒナの故郷に似ている。その懐かしさと共に思わず滅んでしまった故郷を思い出してしまって一度目を伏せたが、ゆっくりと首を振り相棒であるシャーマンズゴーストのアロアロに微笑みかける。
「ヒール頑張らなくちゃね、アロアロ」
アロアロもマヒナの心中を察して、頷く。
「ホヌ、力を貸して」
マヒナは神の使い、幸運の運び手として愛されているウミガメ……ホヌの幻影を呼び出し、母島の海を癒していく。母島にもホヌ……アオウミガメが産卵に来る。彼等が安心して産卵する事が出来る浜辺が戻る事を祈りながら……。
九条・カイム(漂泊の青い羽・e44637)のヒールは、レクイエムと手向け花だ。コールサックに殺された犠牲者や、第四王女レリ達、その傘下に入る為に人としての命を捨てた女性達に贈るもの。『寂寞の調べ』と沢山の花を舞わせてて、祈りを捧げる。
「……どうか、安らかに……」
ミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)や他のケルベロス達も海辺のヒールを完了させてから、チョコレート作りに入る。
海の生き物をテーマにチョコレート作りをするのは、ウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)とリュシエンヌ・ウルヴェーラ(陽だまり・e61400)夫妻。
「海の生き物を作るのはいいけど、難しそうじゃないか?」
ウリルの言葉に、リュシエンヌは得意げに微笑む。
「実はルル……ひみつ道具持ってきたの♪」
リュシエンヌのひみつ道具はシリコン製のチョコレート型だ。
「これならイルカさんやウミガメさん、海月さんも海星さんも……シャチさんだって楽勝♪」
「……へえ、シリコン型なんてものがあるのか。なるほど、確かにこれは秘密道具だな」
リュシエンヌが用意してきた様々なシリコン製のチョコレート型の一つを手に取りつつ、ウリルは眺める。色々な形があるので、彼女が言う通り、色々な海の動物も簡単に作る事が出来る。間違いなく秘密道具だ。
リュシエンヌは、溶かしたダークチョコレートにウリルの好きなラム酒を加えて、それをイルカ等の型に流して固めていく。
「……」
チョコレート作りを手伝っていたウリルは、チョコレートの中に貝殻の形をしたものがある事に気が付いた。それを見て、とある事を閃く。そして、リュシエンヌに気が付かれない様にこっそりと閃きを形にしていった。
「海のお友達チョコ、完成!」
冷やして固まったものを型から外し、イルカやウミガメ等の海のお友達チョコレートの完成だ。リュシエンヌは満足げに微笑む。
しかし、リュシエンヌが夫のウリルに贈るのは海の生き物のチョコレートではない。一緒に作った真っ赤なラズベリーのハートのチョコレートだ。やはりバレンタイン。最初は、自分のハートを食べて欲しいと思うから。
「うりるさん、あーん♪」
リュシエンヌから差し出された赤いハートのチョコレートをウリルはぱくりと口にする。ラズベリーとチョコレートの甘さと彼女の想いを感じて嬉しさが広がった。
「ルル」
次はウリルの番だ。後ろ手に隠していた貝殻のチョコレートを恭しく差し出す。二枚の貝を合わせたチョコレートの中には、真珠に見立てたキャンディで作られたチョコレートの指輪が光っていた。
「俺からも君へ。チョコのリングをもらってくれる?」
「……ありがとう、うりるさん」
感動で倒れそうになりつつも、ウリルが作ったチョコレートの指輪を幸せ一杯の笑顔で大切に受け取る。温かい心の指輪がリュシエンヌの指に嵌まったのだった。
シル、マイヤ、摩琴、カリンは、四人で力を合わせて作る『小笠原の海の中』だ。
マドレーヌ型を使って貝殻のチョコレートを作るのはシル。使うチョコレートも色々だ。ブラック、ホワイト、ストロベリー……他にも色々な色を使って色々な彩りの貝殻を作っていく。
「じゃーん! ほら、海のお星様!」
マイヤがチョコレートを皆に披露する。真っ赤なルビーチョコレートで作ったヒトデだ。色合い的にもアクセントになる、言葉通りの海の星。
摩琴はチョコレートシュークリームで岩やサンゴを作り上げる。
最後は皆で飾り付け。料理が苦手なカリンはここからが本番だ。
「カリン、これをいい感じに配置してくれる?」
「うん、分かった……これをここに、こっちは……」
摩琴は自らが作ったチョコレートシュークリームの岩やサンゴの配置をカリンにお願いする。渡されたシュークリームを、カリンは色々と考えつつ並べていった。そこに、シルの色とりどりな貝殻とマイヤの真っ赤なヒトデが飾り付けられると色合いが綺麗でよく映える。
「よし、海の波と泡はホイップクリームとキャンディで表現しよう。カリン、ここの飾りを押さえてもらっても良い?」
「ええ。ふふ、これは大作になりそうな予感……」
「マイヤ、波はこっちからが良さそうだよ」
「うん、分かった。ありがとね、摩琴!」
絞り袋に入れたホイップクリームを片手にやる気満々なマイヤ。カリンにも手伝って貰いつつ全体を摩琴に見て貰いながら、ホイップクリームで波の飾り付けをしていく。後はみんなでバランスを考えつつ飾り付けを調整したり、キャンディを飾り付けたり……。
「最後はチンアナゴ!」
仕上げに、マイヤがホワイトチョコレートのチンアナゴを、にゅっと立ててジオラマ風チョコレートの完成だ。
「わーい、完成だーっ♪ 写真も撮ろうよっ♪」
「うんうん、記念のお写真撮ろう!」
「記念写真さんせい!」
「写真……そうね、心だけじゃなく形にも残しておきましょう」
シルの提案に、皆、賛成する。完成した一つの作品とも言えるチョコレートを何枚もの写真に収めた。
しかし、写真に収めていると余計に思うのだが……。
「ほんとに食べるのもったいないよね……」
「食べるのもったいないけど食べたいー」
しみじみ言うシルに、マイヤが同意しつつ笑う。
「確かに食べるの勿体ないかも? でも、みんなで食べるならいいよね♪」
「うん、そうだね!」
「みんなで作ったから絶対美味しいよね♪」
「……うん、美味しいと思う」
笑顔の摩琴の言葉に、シル、マイヤ、カリンも笑う。四人でチョコレートを作った思い出も、その味もきっと忘れられない物になるだろう。そして、夏にはみんなでまた遊びに来て、本物の海の中を見たい……そんな未来に想いを馳せるのだった。
アリッサムとフィストもチョコレート作りに励む。アリッサムは島を彩る可愛らしい花、フィストは二枚貝と巻貝のチョコレートを作る。
「それと……ホワイトチョコレートでシロイルカを作ろう。この綺麗な海に、きっと合う」
「成程、ホワイトチョコレートでシロイルカは名案です」
フィストのシロイルカにアリッサムは微笑む。
そして、完成したチョコレートを互いに味見しあって、その優しい甘さに二人で微笑みあうのだった。
豊が作るチョコレートは、やはりカタツムリ。小笠原に固有種が多いカタツムリだ。ミルクチョコレートの葉っぱの上に、ダークチョコレートでカタツムリを作って、葉の上にココアパウダーで泥を再現すれば、かなり良い物になると思う。木の葉はともかく、カタツムリ本体は自作する他ないだろう。太めのチョコペンで殻を作り、これをニードルで削って……と力を入れていく。チョコレート作りというより段々とジオラマ制作の方向に行きつつあるのだが、やはり作るからには本格的に……となってしまう。
バラフィールのチョコレートは海の生き物。小笠原のクマノミは橙ではなく黒という事で、ミルクチョコレートとホワイトチョコレートを使ってクマノミチョコレートを完成させる。プレッツェルに苺チョコレートをまぶしてサンゴ礁も作り、そこにチョコレートのクマノミを隠れさせた。そして、周囲をソーダゼリーで飾り付けて完成だ。
完成したチョコレートを互いに見て、二人はその出来栄えを称えあう。
「アルシク君のチョコレートは華やかで素敵だね」
「千歳緑さんのカタツムリも本格的で凄いです……! 私は……海は今まで馴染みが無かったので……海の中にいるように見えるでしょうか?」
「ああ、海の中でって感じだよ。海は馴染みが無い……それなら折角素敵な場所に来たんだ、後で海をゆっくり散策しようか」
「はい、勿論です……! ……こんな風にプライベートで海に来ることがあるなんて思いもしませんでした。……ご一緒できて、その……嬉しい、です」
「私もアルシク君と一緒に来る事が出来て嬉しいよ」
豊の散策の誘いに、少し顔を赤くして照れるバラフィール。そんな彼女に豊は優しく微笑むのだった。
マヒナが作るのはアオウミガメをイメージしたカメの形のチョコレート。ハワイでもホヌはお馴染みのモチーフだ。本物サイズは流石に難しいので手のひらに乗る子ガメサイズと、それより一回りくらい大きい両手サイズを作る。食べた人が楽しい気持ちになれたら……そんな想いを籠めて。
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)は、海岸のヒールをした時に見つけた綺麗な貝殻を洗って型取り用樹脂で貝殻の型を幾つか作り、お手製の貝殻の型を用意する。それから、ビターチョコとホワイトチョコ、ビターチョコとバナナチョコ、ホワイトチョコとバナナチョコ、ホワイトチョコとイチゴチョコの組み合わせで綺麗なマーブル模様を作ると、それを貝殻型に流し込んで冷やして固める。それを繰り返して、マーブル模様の貝殻チョコレートを沢山作り、島の浜辺を再現させた。
「お、美味しそうな貝殻が一杯なの。こんな貝殻チョコが一杯の浜辺があったら、ミーミア、そこで暮らしたいかもしれないの……」
何だかとんでもない発言が聞こえてくる。見ると、すぐ傍に目をキラキラさせたミーミアが居た。
「みなさんと一緒に頂こうかと思っていたので、ミーミアさんも良ければ……」
「勿論、頂くの!!」
元気のいい返事が返って来た。もう、既に幸せそうな顔をしている。
「そういえば、ミーミアさんは何のチョコを?」
「ミーミアはね、ハハジマメグロっていう鳥さんを作ってるの。母島にしかいない鳥さんなの。沢山作ってみんなに配るの!」
そう言って見せるのは丸っこいメジロに似た鳥のチョコレート。頭部は黄色で目の周りには黒い模様付きだ。
「何だか食べるのが勿体ない感じ……」
「大丈夫、また作れば良いの! 次はもっと可愛くて美味しいチョコに進化させるのよ!」
ミーミアらしい返答に、ガートルードは思わず笑ってしまうのだった。
「母島の自然をテーマにしたチョコか。……ワダンノキとかどうだろう?」
チョコペンを手に頭を捻っているのはカイム。ワダンノキは小笠原の固有種で木本化したキク科植物であり世界的にも非常に珍しい植物だ。しかし、これを描く、しかもチョコペンで、となると……。
「相当な腕前が無いと無理そうだな……」
謎の図形が出来上がってしまった。やはり題材が難しすぎたようだ。
「……他だとイルカにクジラ、後はこの辺にしか生息していないハハジマメグロとかかな。……本物、見られるかな?」
「ミーミアもね、ハハジマメグロ、見たいって思ってるの!」
カイムが本物の生き物に想いを馳せていると、にゅっとオラトリオの少女が現れた。
「折角、素敵な所に来たんだから色々と見て回れると良いなって思うの。もし良かったら、カイムちゃんも一緒に見て回りましょうなの!」
一人で見て回るのも良いかもしれないけれど、色々と探したりするのであれば道連れがいた方が見つけやすいかもしれない。
「そうだ! ガードルードちゃんとマヒナちゃんも母島を一緒に見て回りましょうなの!」
気が付けば、ミーミアはガートルードやマヒナも誘いに行っている。何やら賑やかな事になりそうだ。
死者を偲び、慰霊に訪れた旨が大きいカイムだが、今を生きる身としては故人の分も色々な物を見て感じていく事も大切だろう。それも、手向け花の一つになるだろうから。
美しい自然が溢れる母島。この場所が癒され、元の多くの生命満ち溢れる島に戻る様に……そして誰もがそれを楽しめる日が早く来るように……。バレンタインの甘いチョコレートと共に優しく温かな一日を——。
作者:白鳥美鳥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年2月13日
難度:易しい
参加:13人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 0
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