ヒーリングバレンタイン2021~緑香る白樺チョコ

作者:質種剰

●ビターなミニチュアウッド
「皆さんのご活躍により、2020年のバレンタインから今までにも、前はミッション地域となっていた多くの地域の奪還に成功しているてあります」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が、うきうきと嬉しそうに説明を始める。
「ですので、今年もこれらの取り戻した地域の復興も兼ねて、バレンタインのプレゼントを一緒に作りませんか?」
 解放したミッション地域には住民がまず居ないのだが、引越しを考えている人などが下見に来ていたり、ミッション地域周辺の住民が見学に来る事は充分あるという。
「そんな一般の方にもご参加頂けるようなイベントにすれば、解放したミッション地域のイメージアップにもなるかと思うでありますよ♪」
 かけらは笑顔で補足した。
「皆さんにヒールして頂きたい場所は、長野県は諏訪市の観光地や住宅街であります♪」
 諏訪市では、ずっと死神『渡し守』が幽霊船から魚類型死神を放出していたせいで、地域住民は奴らの恐怖に脅かされ、避難を余儀なくされてきた。
「ですので、諏訪市が無事に解放された事を記念して、みんなで『白樺チョコ』を作りましょう~チョコレートを、長野県の木であり富士見高原の名物でもある白樺に見立てるであります♪」
 抹茶チョコやピスタチオチョコで青々と繁った白樺の緑を、ホワイトチョコやプラチナチョコで白樺の枝や幹を再現してはどうか——という話らしい。
 拘るなら、あらかじめ白樺の枝などをクッキーで作ったところへ、抹茶チョコやパウダーで葉を細かくコーティングするのも一興だろう。
「なんて、最近わたくし自身が抹茶チョコや抹茶パウダーのビターな苦味にハマっておりまして。あの濃い緑色で木々の繁りを再現したらさぞ綺麗だろうなぁと思った次第であります」
 と、照れ笑いするかけら。
「皆さんには、観光地や住宅街などをヒールで修復して頂いた後に、特設イベント会場にて白樺チョコ作りを楽しんで頂けたらと思います」
 白樺チョコ作りのモデルとして使える白樺を映した写真集や白樺の盆栽(提供:ガイバーン)などは、イベント会場に沢山用意してあるそうだ。
 もちろん、バレンタイン用のチョコならば、白樺チョコ以外でも好きに作って構わない。
「それでは、皆さんのご参加を楽しみにお待ち致しております。素敵なバレンタインのプレゼントができますように♪」
 注意事項は未成年者とドワーフの飲酒喫煙の禁止のみである。


■リプレイ


「白樺チョコを使ったミニチュアか……上手くできると良いんだが……」
「白樺チョコ……手先不器用だが頑張ろう」
 自信なさそうなジョニーの側で静かに気合を入れるシャイン。
 ジョニーが真剣に取り組むのはミニチュアのログハウス作り。
 シャインも慎重に作業を進め、ウッドチェアの脇に緑の白樺チョコ生い茂るミニチュアのお庭ができていく。
(「不恰好だけど……喜んでくれるといいなぁ」)
(「……私の想いが伝わるといいのだけど……」)
 相手の喜ぶ顔を思い浮かべ、心を込めて丁寧に作る2人。
「シャイン……これ、俺が作ったんだ……受け取ってくれるかな?」
 小さなチョコ丸太の家は、所々欠けたものの、随所に工夫を凝らしてあり可愛らしい。
『愛する貴女と何時迄も一緒に』
 妻へのメッセージも添えてある。
「これ……私が作ったのだが……受け取ってもらえる?」
 一方の庭はビターチョコの2人掛けウッドチェアに、ホワイトチョコの白樺と抹茶チョコとパウダーの緑が鮮やかだ。
 夫へのカードには、
『いつまでも恋人のように過ごしましょ』
 チョコを渡す瞬間、緊張で胸が一杯になるジョニーだが、
「……ふふ」
 互いに緊張していたことにシャインがクスリと笑ったのをきっかけに、ようやく緊張が解れて微笑み合う。
「ありがとう」
 嬉しそうな妻が少女のような笑顔で頬へキスすると、
「こちらこそ」
 夫も安堵の表情で優しくお返しするのだった。

「4人で異なるヒールの仕方をしてみるのもいいかもね!」
 それは、果乃の提案から始まった。
「全員でヒールするのかー」
 兄の瞬斗が楽しそうに頷く。
「家族みんなでヒールって面白いわね!」
 兄妹の母、優璃も声を弾ませた。
「そうだな。僕は代わりにヴァイトにかけてもらうとするか」
 歳より若く見られる巧も父親らしい貫禄で鷹揚に頷く。
「じゃあ僕はサイバネティックさに植物的な要素を混ぜてみた感じでやってみよう!」
 そして、我先にと張り切って建造物のヒールに着手するのは瞬斗。
 一方、果乃は優璃と一緒にぐるぐる回っている。
「わぁ、いっぱいできたわね!」
 女性陣が歓声をあげる先には、カラフルな水晶の歯車らしきパーツで修復されたコテージの姿。
 隣のバンガローは虹を基調としたファンシーな雰囲気に、宝石もたくさんあしらわれてとても豪華だ。
「うん、いい感じにヒールできたんじゃないかな」
 巧が再建された建物を見やって納得顔で頷く。
「ファンタジー感溢れる魔術的な感じかな? 皆の異なる雰囲気が全面に出ながら、それでいて調和し合っているようにも見えるね」
 続いてはみんなでシェアするためのチョコレート作り。
 果乃は、青いチョコで渦を描いた丸いブロンド生チョコの土台へ、ロリポップみたいに球形のケーキから飛び出た苺やメロン味の白樺チョコの柄を、プスプス軽快に突き刺していく。
「はい、これでできあがり!」
「ママだって負けないわよ~」
 優璃は2種類の白樺チョコに感謝のメッセージを人数分書いてから、それを内向きに並べてハート型を作っている。
「さあ、こんなものかな」
 その傍ら、幾重にも束ねた太い白樺チョコをコーティングして1本の大きな棒状へと合体させるのは巧。
「果乃、お母さん、お父さんも、みんな頑張ってるなー」
 そう感心する瞬斗も、青とオレンジの白樺チョコを輪っかに成形、チョコムースで覆ったケーキへ飾りつけている。
 側面にはウェーブ模様を描いてチョコクリームを搾り、上から粉砂糖を振る芸の細かさだ。
「みんな、私の家族になってくれてありがとう」
「色々あったけど、家族みんなに、ありがとう」
 万巻の思いを吐露する優璃と巧にとって。
「お兄ちゃん、ママ、パパ、いつもありがとう」
「ありがとう。どれもおいしいね」
 果乃と瞬斗がこうして笑顔でいてくれるのが、何より幸せに違いない。
 ちなみに4人が作ったチョコは、果乃によって小檻へも差し入れされたそうな。


「死神に支配されてた土地か……解放されて何よりだ」
 ルナティックヒールで恙く修復を終えたのは煉。
 リシアと共に小檻へ挨拶も済ませ、いよいよチョコ作りというところで、何やら盆栽を前に唸っている。
「盆栽には疎いんだよな……こう、見どころみてぇなポイントってあるのか?」
「ふむ。枝の曲げ具合が自然なら大抵美しいと思うがのう」
 ガイバーンから助言をもらった煉は、チョコを幹がうねっているように組み上げ、抹茶チョコを振りかけていく。
 それはまるで某積み木タワー崩しのような不安定さで、隣のリシアは別の意味でドキドキしたものだ。
 そんなリシアはリシアで、
「渋い抹茶と甘いホワイトチョコならきっと良い感じに合わさってくれるはず」
 煉へあげる本命チョコを順調に作っていた。
「おお、これぞ芸術って感じじゃね?」
 そうと知らない煉は、興奮した面持ちで完成品を見せようとして、
「なぁ、リシアどうおも……」
「煉くん、ん……」
「んむっ!」
 いきなり白樺チョコを咥えたリシアにそれを口移しされた。
「んっ……甘い……」
 とはいえ、それで慌てる煉ではなく、喉を鳴らしてチョコを飲み込む。
「なんだ? リシア。サキュバスの血が騒いじまったか?」
 仕方ねぇ奴だなと頭を撫で、さらには返事を聞くより早くぎゅっと抱きしめる様は嬉しそうで。
「煉くん……もっと」
 リシアも遠慮なく彼に抱きつき、豊かな胸を押しつけて誘惑することができた。
「ああ、愛してる。好きだぜリシア」
 久しぶりのイチャイチャとあってか、2人とも内心ドキドキしながらも周りの目を気にせず愉しむのだった。

「酷い状態でしたが、ちゃんとヒールできて良かったです♪」
 人が住む為には基礎も重要ですしね—— そうおっとり笑いかけるのは蒼香。
「ええ、しっかりヒールできて良かったです」
 カイムも穏やかに恋人へ微笑み返す。
「前は宝石チョコでしたが、今回は白樺ですね」
 準備万端と張り切る蒼香だが、どれだけしっかりエプロンを巻いても121cmSカップの爆乳が下のセーターごと持ち上げて自己主張していた。
「1年が経つのは早いですね」
 そんな色気と包容力たっぷりなエプロン姿へカイムはドキドキしつつも、普段のコートの上からエプロンを着けた。
「せっかくですし、抹茶チョコを立てて白樺感を出しましょう」
 と、早速食べやすい長さの抹茶チョコへホワイトチョコを纏わせ、木に見えるよう立てていく蒼香。
 カイムも白樺の白い皮をホワイトチョコで表現し、枝葉は抹茶パウダーを塗して作った。
 だが。
「そろそろ冷えましたかね?」
 冷蔵庫へチョコを取りにいこうとしたカイムが案の定何かに躓いて、やっぱり蒼香を押し倒してしまった。
 そして、エプロンの上からではあるものの、カイムの両手は蒼香の胸を鷲掴んでいた。
「あ……ごごごごめんなさ」
「気にしなくて大丈夫ですよ、バレンタインはこれからですしね♪」
 また、狼狽えるカイムを蒼香がにっこり笑顔で宥めるものだから。
「バレンタインはこれから……」
 カイムもつい流されて、そのままSカップを揉み続けてしまうのだった。

「うんうん、抹茶ちょこれいとの苦みって美味しいわよねぇ……」
 と、小檻が洩らした感想に深く頷き共感するのは梢子。
「かけらさん、白樺ちょこれいとくださらない?」
 お返しは私の秘蔵の春画を……言いかけた梢子の袖を、葉介がくいくい引っ張る。
「え? 何よ葉介……へえぇ、私の手作りのお菓子を食べたいの? 勇気あるわねぇ」
 生前私が作ったお粥食べて余計具合悪くしたの忘れたのかしら——ころころ面白そうに笑う梢子。
 ちなみにその時できたのは、お粥の柔らかさはどこへやら、がちがちになったお米の塊。困惑した葉介が固まるのも止むなし。
「まあいいわ。……ええと、まずはちょこれいとを溶かすのよね!」
 一念発起する梢子だが、板チョコを刻まず直火にかける時点で不安は尽きない。
「変ねぇなかなか溶けない……あらやだ焦げちゃったわ。水足せばいいかしら」
 まるでカレー鍋を焦がしたような気楽さで、梢子のチョコ作りはますます迷走するのだった。

「諏訪湖のこのあたりを開放してすぐの時だったよね、一度全面が凍ったの!」
「ほんとタイミング良かったであります」
「今年はもしかして行けるかも! って思ったんだけどね~」
 また今年の冬があるよね、と張り切るのはシルディ。
「御神渡りは見れなかったけど、次の観測までにばっちりキレイにして、みんなに見てもらいたいからね」
 友だちのオウガメタルにオウガ粒子を撒き散らして貰いつつ、自分も商業地帯のヒールに勤しんだ。
 その後は、
「白樺ってどーんっと大きな木のイメージしかなかったけど、こういう小さいのもあるんだね!」
「葉も幹も華奢じゃろう」
「小さいと黒い枝が造り物みたいで可愛いね~」
 会場でガイバーンと白樺盆栽談義を楽しんでいた。

「私の手元には去年採取した最高のハーブがある!」
 絶華は変わらず自信満々で、カカオ濃度極まった漢方チョコをこさえる。
「滋養強壮に良い白きくらげを細かくして振りかければ……白樺っぽく見せつつ体に圧倒的なパワーを宿すスペシャルなチョコの完成だ!」
 白きくらげも恐いが、ハーブと称した邪神植物トソースこそ一番の脅威。
「是から戦いは激しくなる故に! 我がチョコの圧倒的なパワーを体に宿し! 戦いに臨んで欲しい!」
 余計なお世話と言いたいのを堪えて逃げ出そうとするガイバーンだが、到底叶わず、
「さぁ感じ取れ! 体から溢れる宇宙を! 今お前はあの戦艦より先に宇宙と触れ合っているのだ!!!!」
 無理矢理チョコを突っ込まれて、絶華の高笑いをBGMに意識が遠のくのだった。

「素敵な時間を舐るべきだ。舞台でくるくる踊る役者が如く」
 ユグゴトは小檻を誘ってチョコ作りに挑む。
「嗚呼。大人っぽくビターなのも悪くないが。仔共の為に甘い貌も不可欠だろう」
 先に仕上げたのは毒々しいほど色彩豊かな白樺チョコ。 見た目のポップさと中身の甘さが子ども用ということか。
「お子様方? もお喜びになりそなカラフルさでありますね」
 一方。小さな白樺チョコはシンプルな佇まいで、甘さもほんのり感じられる程度。
 こちらが夫用の『本命』チョコだとか。
「折角だ。味見してくれ給えよ。もしも味が悪かったら教えてほしい。蜂蜜酒にも合うと好いが」
「では遠慮なく~お返しにこちらをどうぞ」
 味見という名の交換も達成して、ユグゴトは和気藹々と互いの試作チョコを楽しむのだった。

「さてさて、張り切ってヒールと行きましょう~」
 後のお楽しみもある事だし……と意気込むのはかぐら。
 いざチョコを作る段階になると、比較的簡単な工程のチョコクッキーに挑戦したようだ。
 棒状のバタークッキーにホワイトチョコをコーティングし、抹茶チョコでストライプを描いていく。
 だが、思った以上に細かな作業も多く、
「ちょっと慣れが必要かしら?」
 パットを冷蔵庫へ仕舞った頃には疲労に襲われたりもした。
「2人に味見をお願いしてもいいかしら」
 そして、いざ完成品を手にかぐらが声をかけたのはガイバーンたち。
「勿論じゃ」
「交換でありますね~♪」
 無事、密かな願い通り作る側と食べる側、両方に回れたかぐらだった。


「うむ! 郷に入っては郷に従うのも良いが、やはり余は余なりに作ろう」
 トートが丁寧に四角錐の型から作るのはピラミッドチョコ。
「ある意味コラボレーションよな」
 元より甘党で料理上手な彼は、白樺チョコも器用に作ってピラミッドの周りへ突き刺して生やした。
「あ、ついでにエジプシャンマウの形の猫チョコも」
 実にノリノリの王様である。
「いただきま……わ、相当甘いであります」
「甘い物は実に良い。疲れにもいいし脳の活性化にも良いのだ」
 チョコを交換した小檻の感想を聞き、胸を張るトート。
「かけらのチョコも美味しく頂くとしよう。当然かけら自身もな」
 ふふん、と笑って巨乳の渓に顔を埋める彼は何とも幸せそうだ。

「かけらさんが抹茶チョコにハマっているなら抹茶チョコ中心で作りましょうか」
「わ~い」
 そんな和やかな会話の間にも奏星は相変わらず器用に作業をこなして、
「これからもよろしくお願いしますね」
「こちらこそ」
 宣言通り小檻へ抹茶白樺チョコを振る舞っている。
 そして小檻が抹茶白樺チョコへ気を取られている隙に、奏星の両手はすんなりと服の中へ侵入、直に胸やお尻を揉み始めた。
「だめ、もうこれ以上されたら」
「これでもセーブしてますよ。本当ならかけらさんの胸にチョコを塗って」
「不衛生! でも、チョコ製の下着があるとか聞いたような」
 セクハラがあろうと無かろうと結局尾籠な話で盛り上がる2人だ。

「ルイスも精巧な白樺チョコとか作ってはどうじゃ?」
「……やっべ、材料とか全然用意してなかったわ……」
 盆栽と白樺チョコの撮影に没頭していたルイスは、ガイバーンに指摘されてようやくチョコ作りに思い至っ——、
「ま、いっか。その辺に落ちてる木の棒でも渡しとこ」
 ——てなかった。
「あ、これでいいや」
 と適当に拾った太い枝を渡そうとしたところで、勿論マリオンがキレた。
「てめー! 『すげー頑張って白樺チョコ作りました!』みたいな顔で、その辺に落ちてた木の棒持ってくんのやめろ! しかも今、お姉ちゃんの目の前で拾ったやろが!」
「あ、バレた?」
「『あ、これでいいや』って思いっきり口に出てたぞ! 隠す気ゼロか!」
 今日も姉弟漫才のキレは健在。
「押し付けられた木の棒で尻ぶっ叩くぞコノヤロー!」
 そしてこれがファッショナブル姉弟の姉、美貌の聖女様の御言葉である。
「にしても『フランスパン並みの大きな薪型』がしれっと提案されてるの、ほんま笑う」
 勿論マリオンが幾ら青筋立てたところでルイスに効くはずもなく、
「うちの姉ちゃんとかが『これでも喰らいやがれ!』と振り回して暴れる用ですかな? ぶふー」
 と間接的に姉を馬鹿にして笑う余裕っぷり。
「お姉ちゃんがそれ作ったとして、顔面とかに喰らわされるのは、お前だからな?」
「えぇ~この人大丈夫? カルシウム足りて無くない?」
「ルイス殿、帝王様へのホワイトデーはカルシウムたっぷり骨チョコとか雄っぱいミルクチョコになさいませ」
 ララ乳の血のバレンタインは来月まで続きそうだ。

 諏訪大社へ一目散に向かったルーシィドは、常々無表情のリリエッタと対照的に、何故だかやたら張り切っている。
「なんでしたら四社ともすべてヒールしますわ!」
 自らレスキュードローンデバイスでお社からお社へと飛び回り、一所懸命に修復していた。
 というのも。
「わたくしの本命は、下社春宮にある縁結びの杉の木!」
 そう。ルーシィドの目的は二又に分かれた杉の木へ参詣すること。
(「リリちゃんとの縁が、ずっと交わったまま途切れませんように」)
 だから御神木に祈りを籠めて、真剣にヒールしているのだ。
 一方、恋人と協力して修復作業に勤しむリリエッタも、
(「ルーのお願いが叶いますように」)
 自ずから彼女を思いやって、こちらも真面目に祈りを捧げていた。
 そんなこんなでチョコ作り。
 リリエッタは本物そっくりな白樺チョコを作るべく、白樺の盆栽をじっくりと観察。穴が開きそうな勢いである。
 その甲斐あってか、本人曰くの料理が苦手とは思えぬほど盆栽そっくりな、盆栽白樺チョコが完成。
「ルー、いつもありがとう。これからもリリと仲良くしてくれると嬉しいよ」
 中でも一番出来が良かったものを、恋人へプレゼントするリリエッタ。
「リリちゃん、こちらこそですわ」
 お返しに、とルーシィドが差し出したのは白樺チョコを添えたブラウニー。
 モチーフは勿論あの二又の杉の木で、ブラウニーの天辺には可愛らしいハートの砂糖菓子が乗っていた。

「チョコ作りはとても楽しみなのですけど、まずは町のヒールですね」
 瑠璃音はそう呟くと、諏訪大社を丁寧に修復していく。
「うん、しっかりヒールしないとね」
 ツカサもお参りがてらと言いつつ、彼女の気持ちを汲んで重点的にヒールを施す。
 ヒールが終わったらいよいよチョコ作りだ。
「チョコとか作った事がないから、上手くできるかな……」
 今回は瑠璃音ちゃんに頼りっきりになりそうだね、と屈託なく笑うツカサ。
「白樺チョコ……いわゆる巻きチョコですね」
 一方、薄く板状にしたチョコを白黒重ねて、くるりくるりと筒状に巻く瑠璃音。
 そんな瑠璃音の器用な手つきを見様見真似で、ツカサも何とか、細長くシンプルな白樺チョコを完成させた。
「上手に作れたか、瑠璃音ちゃん味見してくれる?」
 などとツカサがチョコの先端を差し出すものだから、瑠璃音は素直にあーんと口を開けて咥えた。
 まさか、逆側からぱくっと咥えられるとも知らずに。
 所謂棒チョコゲームである。
 びっくりして目を白黒させ、頬は真っ赤に紅潮する瑠璃音。
 それでも味見をやめないのはただ従順なばかりでもなく……。
 ツカサは少しずつ近づいてくる恋人の可愛い顔を存分に眺めて、一緒に完食する。
 唇が触れ合って、瑠璃音が軽く目を閉じる。
「うん、ちゃんと甘くできたみたいだね」
 充分に余韻を楽しんでから、僅かに唇を離してにっこり笑うツカサ。
「もう、ツカサさんは悪戯大好きなんですから」
 照れ隠しに口を尖らせる瑠璃音の目は潤んでいた。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年2月13日
難度:易しい
参加:23人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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