攻性惑星撃墜作戦~青き竜胆は、復讐に咲く

作者:柊透胡

「……定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
 眼鏡越しの眼差しも鋭く、集まったケルベロス達を見回す都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)。
「城ヶ島の決戦の際、未知の魔空回廊の探索に向かったケルベロスの方達からの通信を、受信しました」
 魔空回廊の出口は『島根県隠岐島』にあり――何とそこで、攻性植物の拠点を発見したという。
「非常に危険な任務であったと伺っています。彼らの活躍がなければ、大変な事態となっていたでしょう」
 ヘリオライダーがそう断じたのは、この攻性植物の拠点の位置を明らかに出来たタイミングで、攻性植物の方も『竜業合体ドラゴンの到来』を察知していたからだ。
「攻性植物はドラゴンを救うべく、拠点を惑星型に変形。この『攻性惑星』を『隠岐島』から成層圏まで上昇させました。成層圏にて竜十字島の上空迄移動し、到来するドラゴン達の回収を図る模様です」
 ドラゴン達の救助後、攻性植物はそのまま『攻性惑星』で空域を離脱。ドラゴン達の回復を経て、戦力を飛躍的に増大させようとしていると推測されている。
「これらの情報を逸早く入手出来た事で、ギリギリではありますが……移動中の『攻性惑星』に対して、ヘリオンによる強襲が可能となりました」
 ニーズヘッグが全滅した今、攻性植物との合流を阻止出来れば、竜業合体ドラゴンはグラビティ・チェインの枯渇で壊滅状態に陥るだろう。
「攻性植物の惑星型拠点『攻性惑星』についてですが、ヘリオンで接近した上で、多数のケルベロスによる遠距離集中攻撃で撃破は可能です」
 尤も、攻性植物とて、撃墜の可能性は判っているのだろう。『攻性惑星』の表面は対空能力に特化した攻性植物『ウイングスナッチャー』で埋め尽くされており、ヘリオンもおいそれと接近出来ない状態だ。
「ですが、この防空網にも隙はあります」
 攻性惑星の防空網は、攻性植物の聖王女の側近、8体もの有力な攻性植物達が制御している。つまり、彼女らをピンポイントで撃破すれば、ウイングスナッチャーの防空網を一定時間無力化出来るのだ。
「ウイングスナッチャーの防空網は、ヘリオン以上のサイズの物体は完全に撃墜します。しかし、人間くらいの小ささであれば、弾幕を回避して『攻性惑星』に突入する事も不可能ではありません」
 今回の戦いは成層圏――日本の遥か上空となる。ケルベロス達は、ヘリオンで『攻性惑星』の移動ルートの更に上方に先回りし、タイミングを計って直接降下する。
「『攻性惑星』降下後は、即ウイングスナッチャーの群れを『突破』し、敵指揮官を撃破して下さい」
 『攻性惑星』突入時、無数のウイングスナッチャーが『口から粘液の塊のようなものを射出して』来るだろう。
「この粘液には『捕縛、足止め、服破り』の効果があります。弾幕の回避に失敗する程、着地後の劣勢を強いられる事になってしまいます」
 畢竟、極限まで集中力を高めて、ウイングスナッチャーの対空攻撃を回避し続けなければならならない。
「ちなみに……『攻性惑星』の表面では、『攻性惑星』自体の重力によって、地上と同様の行動が可能です。無論、これは敵も同様です」
 本チームの標的は、「青井・竜胆」。ユグドラシル・ウォーで、聖王女殿青の宮を護っていた魔草少女の1人。水色の長い髪と長柄の斧にリンドウの花が美しく咲く、清楚な美少女だ。
「先だって、同胞の魔草少女を2体、殺されたばかりです。恐らく、ケルベロスへの復讐に燃えているでしょう。お気を付け下さい」
 或いはかつて、大阪城の地下で、五色の魔草少女と邂逅した事のあるケルベロスもいるだろう。当時は僅か1チームのケルベロスに圧倒されていた彼女達だが、それから時を経ずして、戦場のエリアを任される迄に成長した。
「聖王女の恩寵があったのかもしれませんが……強敵です。そんな魔草少女を、城ヶ島の戦いで2人も撃破した上で情報を持ち帰った戦果は、非常に大きいと考えます」
 勿論、竜業合体ドラゴンの到達を前に、ニーズヘッグを全滅出来た事も大きかったが――彼らの活躍が無ければ、攻性植物とドラゴンの合流を、見す見す許していたかもしれない。
「ケルベロスの皆さんで掴んだ好機です。速やかに『攻性惑星』を破壊出来るよう、どうぞ宜しくお願い致します」


参加者
城間星・橙乃(歳寒幽香・e16302)
篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)
軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)
浜本・英世(ドクター風・e34862)
朧・遊鬼(火車・e36891)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)

■リプレイ

●成層圏の伏ヘリオン
「攻性惑星、まるっきり要塞っすよねぇ」
 呆れたように呟く篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)。
(「そう言えば、神殿も飛んだっす。戦場が、宇宙に移りつつあるんすかね」)
 思えば遠くに来たもんだ……そんな感慨を覚えながら、懐炉を取り出しふと首を傾げる佐久弥。
「宇宙でカイロって、使えるんすかね?」
 まあ、今回は『成層圏』での戦いだ。気温は、対流圏界面付近では約-56℃前後、中間圏との境の成層圏界面付近では-15℃から0℃になる。高度と共に気温が上昇する理屈は、ここでは割愛する。という訳で、熱源にはなるだろう。効果時間は短そうだが。
(「敵の感知器はよくわかんないっすし……効果あれば儲けもの、で」)
「うわ……誰か取って?」
「お、大丈夫か?」
 グイッと銀髪を引っ張られ、首を竦めるリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)。軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)はマネキン人形の腕に絡んだ髪を解く。意外にも、その手つきは繊細だ。
「デコイ作戦は賛成だが……マネキンでなくても良かったか?」
 浜本・英世(ドクター風・e34862)は、顔を顰めてヘリオン内を見回す。何せ、ヘリオンに詰め込めるだけのマネキン人形を乗せてきたのだ。ケルベロスの居場所も、肩身が狭い所ではない。
「アロアロ、離れないようにね」
 マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)が言うまでもなく、怖がりのシャーマンズゴーストは、ヘリオンの中でもマヒナにぴったり。包み込まれるような感触に、マヒナが紫の双眸を和ませるのも束の間。
(ワタシも魔空回廊、飛び込もうとしたけど飛び込めなかった、から。調査に行った皆の無事を祈るしかできなくて」)
 彼らの奮闘が実を結んだのが、今回の作戦だ。
「……きっと、今度はワタシが頑張る番だから」
「そうだな」
 マヒナの呟きに、朧・遊鬼(火車・e36891)も首肯する。
「仲間が必死になって手に入れた成果を、無駄にしてなるものか……絶対、あれは破壊するぞ」
 果たして、遊鬼が指さすのは攻性惑星。待伏せするヘリオンの下方を往く深緑の表面を、更に黄緑が覆っているのが判る。
 対空攻性植物『ウイングスナッチャー』――よくよく見れば、蔦を捩り合わせた大ガエルの姿と知れた。
 ――――!!
 先に降下した部隊を察知したか、一斉に粘液塊を吐くウイングスナッチャー。攻撃手段こそ有機物だが、正に弾幕。この防空網を突破せねば、攻性惑星の撃墜は叶わない。
 だが、城間星・橙乃(歳寒幽香・e16302)は微笑を浮かべたまま。
「味方の被弾は、自動的に庇うように」
 レスキュードローンに命令を下し、視界確保にゴーグルを装着する。ドローンに戦闘能力は無いが、装甲は硬い。単体でも、デコイとして機能するだろう。
「随分と手厚い歓迎であるな」
 一方、ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)も、不敵の表情を崩さない。
「侵入者に備えた鉄壁の要塞、と褒めたいところだが、我々も対策済みだ」
 アームドフォートとドッキングしたジェットパック・デバイスを展開し、ジークリットは、妹のような同居人を見やる。
「リリ、準備はいいか?」
「勿論、さっさと叩き落とすよ」
 リリエッタも、攻性惑星上昇を目撃した調査隊の1人だ。仲間の暴走の果てに掴んだ好機、決して離さない。
「……何? ジーク」
「いや、別に」
 そのタイミングで、遊鬼のナノナノ、ルーナが取ったファイティングポーズにリリエッタが目を輝かせた件は、見なかった事にして。
「いざ、推して参る」

 目標、攻性惑星――降下開始。

●弾幕をすり抜けて
「よっしゃ! 景気よく行くぜ!」
 気勢を上げた双吉が、勢いよくマネキン人形を落としていく。
 ――――!
 果たして、人形は次々と粘液塊に貫かれる。降下するものは全て攻撃するよう命令されているようだ。
 ヒャッハァァツ!
 アロアロがお呪い代わりに祈りを捧げる中、自らも弾幕に身を投じる軍服眼鏡。先陣を切った双吉に続き、ケルベロス達も次々と降下する。
 ――――!!
 勿論、ウイングスナッチャーの粘液塊は、ケルベロス達も襲う。
 早速、クラッシャー2人はジェットパック・デバイスを展開。デコイ人形に交じり、大運動会で培ったジェットパックの機動で回避を試みるリリエッタ。
 ――――!!
 ジークリットはアイテムポケットからデコイ第2弾、パーカッションボールを大量に投下する。粘液塊の直撃で音もなく潰された物もあったが、時に大音量が響き渡る。幾許かは敵の注意を引けただろうか。
(「これは……」)
 如何せん、敵の弾幕は厚い。仲間をビーム牽引しながら掻い潜る難易度の高さに、思わず唇を噛むジークリット。
 攻撃パターンの把握など分析の暇もない激しい弾幕に、まずは各々回避に専念する。
(「指揮の腕、悪くないのだろぉな」)
 粘液塊の重火力に、内心で唸る遊鬼。はぐれないようルーナをしっかり抱き寄せる。
(「……駄目か」)
 「ウイングスナッチャーから『逃げて』司令官方面へ向かう」という意図で、チェイスアート・デバイスを使えないかと考える英世だが、降下時は寧ろウイングスナッチャーに接近する。流石に『逃亡』という認識は無理がある。
「……っ」
 咄嗟に宙を蹴り、ダブルジャンプで粘液塊を回避する橙乃。羽織りの狐の刺繍も身を翻すよう。リリエッタも、マネキン人形を足場にしてはダブルジャンプの回数を稼ぐ。
 尤も、弾幕は余りに激しく、全てを完全に回避するのは難しい。
 ――――!
 数発喰らったタイミングで、橙乃はメディカルレインを降らせる。弾幕に飛び交うのはヒールグラビティだ。
 自らに分身を重ねた双吉は、ビーム牽引してくれるジークリットにも掛ける。
 グラビティシールドのバリアを張るマヒナとアロアロには、遊鬼が癒しの花弁を撒いた。
 如何せんウイングスナッチャーが多過ぎる。些少の反撃より回復を優先したのは、上手だろう。
「俺は捨てられたモノども率いる敗者達の王。この背を見つめるモノがある限り――再起を誓い、不屈を約さん!!」
 直撃を避けるのが精一杯で、流石に他を庇う余裕はなかった。ジョブレスオーラに続き塵塚怪王の誓約を立てた佐久弥は、弾幕の勢いが弱まっている事に気付く。
「よし、抜けられそうだな」
 高度が下がるにつれ弱まっていった弾幕は、攻性惑星に降り立つと潮引くように止む。
 ……。
 見渡す限りの攻性植物カエルは上を警戒するばかりで、惑星に立つケルベロス達には無関心だ。
「指揮官はあそこだよ」
 ケルベロスの本命も指揮官の方だ。弾幕が止んだ幸い、マヒナはゴッドサイト・デバイスで指揮官の位置を把握する。近い。
「……菫と、桜の仇」
 裾にウイングスナッチャーを従え、丘の上に青き影が立つ。眼差しも険しく駆け寄るケルベロス達を見下ろし、青井・竜胆は長柄の斧を一閃する。

●激突
 ――――!
 ケルベロスらの足下が、音立てて崩れる。
「アロアロ!」
 これまで、マヒナにくっついていたシャーマンズゴーストが、庇うように前に出る。
 前衛を足下から襲ったのは、蠢く根。咄嗟にジークリットを突き飛ばす双吉。根より注がれる激痛に歯を食い縛った。竜胆の根は生薬だが、薬も過ぎれば毒となる。
 複数の被弾を見て取り、すぐさま橙乃は碧雷針を掲げる。
「前は5人で一人前って感じだったが、中々どうして成長期の植物だなオイ!」
 敵の初手は列攻撃。メディックの雷壁の中、毒が浄化された一方でダメージは全快していない。オラトリオヴェールを重ねながら、双吉は確信する。
 青井・竜胆は、クラッシャーだ。
(「今は、誰も守る必要がないから、てか」)
 初対面を思い出す――慇懃ながら無機質だったあの時より、怒りも露な今の方が余程血が通って見える。
「けれどもよォ、こっちだって幾多の戦場で鍛えられているんだぜ!」
 双吉が啖呵を切ると同時、マヒナの狙い澄ましたプラズムキャノンが奔る。その軌跡を、アロアロの神霊撃が追う。
「……仲間が殺されて許せないのは分かるし、それは受け止めるよ。でもね、ワタシだって仲間を暴走させた事やりきれないし怒ってる!」
 その連携は、何れも厄付けに至らなかったが、マヒナが竜胆に1番言いたかった事はまず言えた。
「ワタシはやっぱり、仲間を傷つけられて黙ってる事はできない!」
「私はケルベロスを絶対許さない。ケルベロスは私を絶対許さない。だったら、戦うだけ。今更、言葉は必要かしら?」
「まあ、停戦するんなら聞きもするっすけども、ねぇ……現状、お互いに信用できないっしょう」
 鉄塊剣“以津真天”と“餓者髑髏”を合体させた超重量を構え、佐久弥は重厚無比の一撃を振るう。突き放した口ぶりに、竜胆の眼差しが剣呑を帯びる――グラビティが強いた『怒り』も含んで。
「敵対勢力と最前線で戦う以上、やったやられたは当然あり得る。熱くなるのはいいが、判断を誤らぬようにな」
「……わかってる」
 肩越しにマヒナと応答しながら、英世は怪しい科学謹製のドリル兵器を構える。
(「さて、魔草少女も哀れな存在だが、今回ばかりは気に懸ける余裕も無さそうだ」)
 今は仕事に徹するべく、杭に凍気を纏わせる英世。ジャマーの厄は、掛れば重い。強化も同様で、遊鬼はジークリットに光盾を具現化する。
「ルーナも手伝ってくれ」
 頷いたナノナノは、リリエッタにナノナノばりあ。生憎ハートのバリアはすぐ失せたが、サーヴァントとの戦い方は手数が勝負。強化が行き渡るまで、ヒールを繰り返す算段だ。
「……行ける」
 粘液に汚れたゴーグルは投げ捨てた。幸い、橙乃の雷壁は、粘液塊の厄も含めて竜胆の毒も掃ってくれた。電光石火の蹴りを放つリリエッタ。
「ジーク!」
「ああ!」
 同時、ジークリットも竜胆へ肉薄する。
(「敵の手の内はまだ全部判らないが、それは相手も同じ事」)
 短期決戦に越した事は無い。敵の構造的弱点へ痛撃を見舞う。
「……っ」
 ケルベロスの攻撃は最初から苛烈。対する竜胆は長柄斧に咲く花の魔力を励起する。
 ガキィッ!
 標的は、佐久弥。青く輝く斧が塵塚怪王の守護を抉る。その応酬は、零距離のフレイムグリードだ。
(「先に奪って来たのはそっちだろ、とは言わないっすけど……復讐と言われてもそっか、としか言えないっす」)
 鉄塊剣と長柄斧の刃がギリギリと押し合う。
(「俺は俺の大切な人を守りたいし、奪われたくないから、としか」)
 互いに譲れぬものがあり、どちらかが死ぬまで戦わなければならないならば。やはり、必要なのは言葉ではなく、己を貫き通す刃だ。
 だから、佐久弥は黙って押し返す。敵が僅かに体勢を崩した隙を逃さず、猛攻が殺到する。
「そっちは知らないだろうけど、リリも調査隊の1人だったからね……紫と同じ所に送ってやるよ!」
 気咬弾を叩き付け、リリエッタも挑発。ギリと歯噛みする竜胆だが、跳躍からの大振りは再び佐久弥へ――『怒り』の厄は発動率も高い。斧の破壊力に彼の革鎧はよく耐える。双吉も時に斧撃を阻み、アロアロも標的を分散させんと神霊撃を繰り返す。
 白銀に零れ落ちるは神秘の雫――。
 それでもクラッシャーの武威は重ければ、金盞銀台の甘やかな香りが馥郁と。橙乃が水仙の香りと雫で癒す。足りなければ、双吉が分身の術を重ねる。
「皆、そろそろ行けそう?」
 スターゲイザーで竜胆の足を刈り、マヒナは首を巡らせる。戦闘開始より敵の足止めに専念したマヒナも、メタリックバーストで援護する遊鬼も、サーヴァントを伴う身であれば、エンチャントの付与は不得手な方だ。強敵が相手で攻めあぐねていたかもしれない――これまでは。
「とりあえず開いてみようか――元に戻せはしないけれどね」
 返答代わりに、英世は無数のメスを召喚。手術とは名ばかり、傷口を開き、抉り、麻酔無しに少女を解体せんと。
 ――――!
 苦鳴が轟く。ヘリオンデバイスは、各ポジションの長所を伸ばす。そして、歴戦揃いのケルベロス達が、復讐の突撃を繰り返す魔草少女に負ける謂われない!
「頭上注意、だよ?」
 マヒナがヤシの木の幻影を作り出し、竜胆の頭上にココナッツを落下させるのを合図に、ケルベロスの攻撃が殺到する。
「「「さぁ、お前はもう逃げられ(ない/ないぜ!/んぞ!)」」」
 遊鬼の周囲に残霊が現れ、息の合った攻撃演舞。遊鬼の繰り出す不浄の刃は、斬り付けた竜胆に鬼病を植える。
「風よ……偽りの星を護りし者を打ち倒せ、烈風!」
 ジークリットの剣が重力纏う真空を撃つ。丘を削りながら地を這い、重い風斬り音を上げて青き影を裂く。
「回復は……もう、不要かしら」
 サーヴァント達の攻撃に続き、橙乃が不得手なグラビティブレイクすら敵を抉るとなれば。
「……っ、……あ……」
 満身創痍で、長柄斧を引きずる。それでも、竜胆は得物を振るう。
 ああああ!
 そのダメージを、佐久弥は淡々とジョブレスオーラで癒す。倒れない事こそが己が役目であれば。
「なあ、攻性植物の聖王女とかいう奴はどこだ? 傍にいてもらわないで平気なのかよ? そいつがいなけりゃ大阪の地下で俺らにやられてたのを忘れたか?」
 火花小柄が閃き、炎がジグザグな刃を描く。双吉の言葉も届いていないか、竜胆は視線を彷徨わせる。
「菫、桜……」
「ルー、力を貸して! ――――これで決めるよ、スパイク・バレット!」
 華の絆の下、リリエッタは残霊と巡らせた魔力を以て、魔弾を編む。
 ――――!!
 荊棘の魔弾は竜胆に喰らい付き、その命を刈り取った。

●ドラゴン出現
 青井・竜胆を倒して程なく――高速で接近してきたのは、万能戦艦ケルベロスブレイド。
「ヘリオンではないのか?」
 目を瞠るジークリットだが、ともあれ、脱出が先。ビーム牽引するリリエッタの先導で、急ぎ攻性惑星から飛び立つ。
「ルーナ、しっかり捕まってろ」
「アロアロもね」
 辛うじて離脱が間に合った彼らの視線の先で――ケルベロスブレイドはヘリオンを展開。
 ――――!!
 ケルベロスブレイドの雷撃が、戦艦やヘリオンに搭乗するケルベロス達の遠距離グラビティが迸る。
「崩れるっす!」
 一溜りもなく、破壊された惑星は竜十字島へ崩落していく。
「ん……あれは」
 惑星の一部が、聖なる光で守られているのを認め、眉を顰める双吉。心当たりと言えば……。
「な……ドラゴン、だと」
 だが、次の瞬間、英世の眼前に出現したドラゴンの群れは、ケルベロス達に目もくれず崩落する攻性惑星を喰らいつく。
「もしかして、拙いかしら……」
 恐らくは竜業合体ドラゴンの来襲。無理に無理を重ねた道程でその姿は傷み切っているが、攻性植物を優に上回る脅威の出現に橙乃の頬も引き攣る。
 ――――!!
 再度の一斉砲撃が、一定数のドラゴンが撃破するも。現れたドラゴンが、戦艦に襲い掛かった――。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年2月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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