●攻性惑星撃墜作戦
「城ヶ島、未確認の魔空回廊の探索に向かっていたケルベロス達より通信があった」
ケルベロス達を一瞥した雁金・辰砂(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0077)は、その一言から説明を始めた。
彼らの探索により、魔空回廊の出口は『島根県隠岐島』であると判明。
そこに、攻性植物拠点を発見したのだという。
敵陣の只中に飛び込む危険な任務を、彼らは見事に成し遂げた――そして、この機を逃していれば、とてつもない窮地として此方に降り注いだ事だろう。
何故ならば――ケルベロス達が攻性植物拠点を暴いた、まさにその時、攻性植物達が『竜業合体ドラゴンの到来』を察知したからだ。
「攻性植物どもは、ドラゴンの救援のため――惑星型に変形させた拠点『攻性惑星』によって、『隠岐島』から成層圏まで上昇させ……竜十字島の上空まで移動し、ドラゴンどもの回復にあたるつもりらしい」
それが巧くいけば、双方の戦力が拡大する、というわけだ。
いちいち大袈裟な手段をとってくるが、呆れたように辰砂は言い。
「此方も解っているなら、対策も可能という話だ――移動中の攻性植物拠点へ、ヘリオンによる強襲を行う」
ニーズヘッグが全滅した今、攻性植物の合流を阻止すれば――竜業合体ドラゴンは、グラビティ・チェインの枯渇によって壊滅状態となるだろう。
――『攻性惑星』とは、攻性植物拠点が変形したもので、直径一km程度の惑星型の拠点だ。重力さえ備えている。
惑星などと言いつつ、多数のケルベロスによる攻撃で破壊できる事に変わりない。
無論、攻性植物もその危険は認識しており、防衛の策はとっている。『攻性惑星』表面には、対空能力に特化した攻性植物『ウイングスナッチャー』で埋め尽くし、ヘリオンの接近を許さぬようにしているのだ。
だが、これにも付け入る隙はある。
ウイングスナッチャーを制御しているのは、聖王女の側近である八体の有力な攻性植物。これらを撃破できれば、防空網を一定時間無力化する事が出来るのだ。
この防空網は、ヘリオン以上の大きさのものは完全に撃墜できるのだが、人間サイズであれば弾幕を回避し、突入することも可能である。
つまり。
「成層圏にて――『攻性惑星』の移動ルートの上方に先回りし、飛び降りてもらう」
辰砂は薄く笑う。
そして直接、敵指揮官を討て、という任務である。
さて、ヘリオンから飛び降りた後、『攻性惑星』に落下突入するためには――ウイングスナッチャーの攻撃を回避し続けねばならぬ。
「問題の攻撃だが……こいつらは、口から粘液の塊のようなものを射出してくる。これらは身体に纏わり付き、動きを制限してくる上に、こちらの守りも弱めてくる――食らえば食らっただけ、着地後に影響を受けることになるという事だ。そして、貴様らが向かう先は……いや、これは後で話す」
ウイングスナッチャーは蛙のような外見の攻性植物であり、「防空網」と呼ぶに相応しい程、夥しい数が配備されている。
よって、落下時に攻撃を仕掛けて殲滅するような事は無意味だ。
つまり残る手段はひとつ――極限まで集中力を高めて、対空攻撃を回避し続ける事。
攻撃を掻い潜り、『攻性惑星』には重力があり――地上と同様に動けるようだ。
此所まで至れば、ウイングスナッチャーの攻撃対象からは外れるため、それらは脅威にならぬ。
つまり、指揮官のみと戦う事になる。
「この班の標的は『天蓋花の陽・金輪』……光を操る攻性植物で、仲間の攻性植物に光を与え、成長させる力をもっているらしい。そして、何を隠そう、この『攻性惑星』を育てたのも、ウイングスナッチャーを量産し防空網を敷いたのも、この個体だ」
戦闘力は他の指揮官に比べ、やや低いものの――辰砂は、やや鋭い眼差しで、再びケルベロス達を一瞥する。
即ち、天蓋花の陽・金輪が直接制御するウイングスナッチャーの対空攻撃は、他よりも苛烈となるだろう。
回避に向けた心構え――より堅実な、回避のための工夫が必要となるだろう。
「辿り着いてしまえば、貴様らならば問題にはなるまい。だが、辿り着くまでが――厳しい戦いとなるだろう」
されど、成功させねばならぬ。城ヶ島の戦いからの流れを、途切れさせぬ為にも。
最後にそう告げ、彼は説明を終わらせるのだった。
参加者 | |
---|---|
ティアン・バ(やさしいうたも枯れた理想も・e00040) |
大弓・言葉(花冠に棘・e00431) |
キソラ・ライゼ(空の破片・e02771) |
華輪・灯(幻灯の鳥・e04881) |
火倶利・ひなみく(スウィート・e10573) |
七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685) |
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083) |
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948) |
●星
「見て、タカラバコちゃん、お空の上、黒いでしょ? あれは宇宙の色なんだって。私たちもいつか、宇宙を飛び回る日が来るのかなぁ……なんて、そういえばオウガの件でもう飛び回ってたね!」
火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)がミミックを抱き、過去を思い出して朗らかに笑う。
「よし! あとは敵を倒してから考えるんだよ!」
言って、見つめる視線の先では――強烈に、青く、明るく眩しい。宇宙より望む地球は、美しい輝きに満ち――狭間に浮かぶ攻性惑星が強烈な違和感を齎す。
こんな大きなものを作れるのか、と一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)は橙の瞳を、ゆっくり瞬かせた。無論、攻性植物の総力を以て莫大な力を注いできたには違いないだろうが――。
「攻性植物を成長させる能力……取り逃がしたら後々厄介になるね――全力で排除させてもらうよ」
彼女の声音は真摯な色が滲む儘に。星を見つめる視線も、厳しかった。
「攻性惑星なんてすごいこと思いついたね――でも、逃がさないよ!」
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)が意気込めば、勿論だと七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)が同意に頷く。
彼女は、イズナと、ひなみく――頼りになる二人がいて心強いと実感していた。師団で縁を紡ぎ、深い信を置く仲間達。
(「……千梨さんも、ね」)
調査で暴走し、道を繋いだ彼は――直に、帰ってくるだろう。だから。
「だからこそ、ボクたちはここに来た。託された願いに応えるために――そして、ボクたち自身の想いを貫くために!」
そうね――と彼女の呟きを、引き取る声が続いた。
「しっかりばっちり倒しに行くわよー」
大弓・言葉(花冠に棘・e00431)が可憐に、明るく笑う傍らで――熊蜂に似たボクスドラゴン、ぶーちゃんは震えていた。
言葉によれば「ふええカエルっぽいのがいっぱいっス……食べられないっスよね……?」という内心で怯えている――らしい。それでも逃げも隠れもせず、此所にいるのだから、立派である。
意気込む皆を前にデバイスの装着を改めて、
「サテ、頃合いか」
キソラ・ライゼ(空の破片・e02771)の視線に、ティアン・バ(やさしいうたも枯れた理想も・e00040)は――無意識に髪を掻いているキソラへ、軽く目を伏せ、頷く。
「ドラゴンはきらいだ」
竜業合体ドラゴンを癒やす事も。力を与える事も。許しはしない。
「右に同じく」
彼女の、短い言葉に籠めた意思に――今度は彼が頷いた。
そこへ、いよいよですね、と明るい声音が跳ねた。
「牽引飛行でゴー! シアは抱っこですよ」
ウイングキャットのアナスタシアを――もふもふにぐりぐりと顔を埋めてから、確りと抱いて、華輪・灯(幻灯の鳥・e04881)が花と笑う。
「では、お任せします!」
きらきら輝く好奇の色に、キソラは思わず破顔した。
●剋
斯くて、ケルベロス達は無重力と重力圏の狭間にある昊を舞う――基本的には、恒星に向かい、落下する形だ。
落下といっても、闇雲なものではなく。キソラとイズナがジェットパッカーの力で牽引して、方向性を定めている。
後の、道中の問題は。
「うわ、沢山いる……」
ゴッドサイト・デバイス越しに恒星を眺めたアヤメは思わず零す。敵味方を判別するシステムが伝えてくるのは、数え切れない敵影。隙と呼べる空間は存在していなかった。
その報告とほぼ同時、――弾丸が唸り、飛来する。
霧雨が如く細かく、攻撃性を持った弾丸が逃げ場を奪う。
ひなみくと瑪璃瑠が皆の盾にすべく放っていたレスキュードローンが撃たれ、大きく揺らぐ。弾丸が弾かれたかどうか、その行方を追っている余裕はなかった。
僅かに出来た安全圏を見極めるように、キソラは空色の目を細めた。傘すら役に立たぬ土砂降りを、如何に濡れずに駆け抜けるか。
――仲間を牽引する二人を守らんと、灯が羽ばたき推進し、前に出る。
春色ケープに迷彩コートを重ね、華奢な枝に木瓜が咲くアームを添え。
「この春最強の大人可愛いケルベロスコーデです! 牽引飛行も加わってますます無敵な私の翼に――ついて来れますかケロケロさん!」
華やかなアームを放射状に広げた身は、さながら傘と。弾丸に向けて飛翔しながらも、己は直撃せぬよう繰る。
アームを薙ぎ、振り払い。その隙間を皆が抜けられるように。
援軍はタカラバコを乗せたドローン。次の弾丸を受け止めて、彼女の負担を和らげる。軋む音が響く――破壊されるには至らぬだろうが。
「これで切り抜けられるなら……!」
ひなみくの声に、瑪璃瑠が力強く頷いた。
共に駆けるよう、庇い合うように、ドローンは飛行し、弾けた粘液を振り払いながら、道を切り開く。
「ぶーちゃんは振り落とされないようにねー!」
翼を広げ滑空姿勢を維持した言葉が、しがみつくぶーちゃんに告げる。
それでも数えきれぬ礫が、ケルベロス達を絶え間なく襲う。
殊に、前で積極的に凌ぐ灯は、肩にぴしゃりと叩きつけられた弾丸に眉をひそめた。
「うう、結構気持ち悪いです。シアも後でお風呂ですよ」
自分は被弾してない――アナスタシアは全力でイヤイヤと首を振るが、主は弾丸に集中しているため、空しい訴えであった。
グラビティは使えそうだな、裡で囁き、ティアンの指はくじら座をなぞる。
星の輝きを宿した魔力の柱が仲間達を守るように広げるも――。
「数の暴力は、侮れない、か」
白い横顔で囁く。百の禍に、一の癒やし――いずれにせよ、被害を抑える最大の術は、一刻も早く星へ到達することだ。
「こんなので、わたしたちを阻むことはできないからね」
イズナの赤い瞳もまた、道を見定める。
彼らは小さな緑の星へと、意志を持ち落下する。流星の如く、加速しながら。
●奇襲
大地が見える頃にはスナッチャーの攻撃は既に無意味と化していた。長距離に照準を定めた弾丸は、懐に入ってしまえば、獲物を据えることは出来ず、あらぬ方へ飛んでいく。整然と並ぶ敵の姿は、ぞっとするものもあるが――ゆえに、それらの中心で、淡く輝く存在はひどく目立った。
そして、今度はケルベロス達が狙いを定める番――。
「見つけたよ、天蓋花の陽・金輪!」
イズナの声に、少女の形をした攻性植物は驚愕に目を瞠る。それよりも、早く――言葉が流星の煌めきを空に残しながら、翼を畳み、重力を乗せ垂直に落下する。
「わ、わっ!」
彼女の蹴撃は金輪の身体を強か打つ。少女は体勢を崩して、蹌踉めく。
「ぶーちゃんは回復お願いね!」
着地した言葉はすかさず、ぶーちゃんへと指示を出す。
ドローンから飛び降り、噛みつきに向かうタカラバコへ、灯が溌剌とした輝きを差し向けながら。
「なかなか素敵な特技をお持ちのようですが、私達の輝きだって負けませんから!」
高らかに宣言すると、呼応するように、アナスタシアがリングを放つ。
更に、ティアンが清楚に舞い、花弁のオーラを広げ――瑪璃瑠は色違いの黄金の左目を輝かせ、瞳と同じ色をした混沌の水を仲間達へと分け与える。
「生きるんだよ、生かすんだよ。それがボクたち、瑪璃瑠だから!」
道中に受けた呪いを払う、折々の加護の煌めく只中。
退路を断つように、イズナの掲げた黄金の林檎樹が蔓触手を伸ばし、金輪に食らいつけば、凄まじい速さで弧を描き振り下ろされる、錆びた黒の鉄梃。
ひなみくからのオーラを受け取ったキソラは、容赦なく強烈な一撃を、叩き込む。
「成層圏飛行、なかなか面白い趣向だったケド――仕上げにかかろうか」
ふっと笑ったキソラの一撃を、金輪は光を翳して受けとめ、凌ぐ。むむむ、と唸ってはいるが、その力は決して弱くはない。
そんな彼女の傍らに、ぐんと迫るは艶やかな金の髪。
徒手と見せかけたアヤメが、軽やかに駆け、空間を埋め、その傍らに迫っていた。
「これだけのウィングスナッチャーを育てきる能力……厄介だね」
構えた肩や両腕をオウガメタルが包み込み、鋼の拳が金輪を打ち据えて。怒濤の先制攻撃を受けながらも強い敵意を滲ませた相手に、凜と告げる。
「何をおいても排除するべき相手と認識したよ。……斬る」
●断
「聖王女のために、無様に負けるわけにはっ」
咄嗟に体勢を立て直した金輪は、唇を噛みしめ、天蓋と広げた花を輝かせ反撃を放った。粘液の影響を退けきっていないケルベロスにとって、彼女の放った拡散光は、強烈だった。
「めりるちゃん!」
ひなみくの呼びかけに、瑪璃瑠が応じる。
縛霊手から霊力を帯びた紙兵が迸り、ぐるりと仲間達を囲い守れば、美しき混沌が包み、金輪の繰る光を拭う。
「ボクたちとひなみくさんなら癒せぬものなどないんだよ!」
不利からの戦闘は承知。それでいて、先手を取ったものの、彼らは油断も慢心も無かった。
そこからの攻防は、灯を中心としたサーヴァント達による厚い壁、言葉の急所を鋭く抉るような攻撃と、キソラとイズナによる苛烈な追い込み、零さぬアヤメのフォローが加わる。
ティアンは攻守の状態を的確に見極め、癒やし手の仕事を軽減させながら、攻め手への支援を尽くす。
数分も戦えば、形勢はほぼ逆転する。
果たして、追い込まれつつも金輪が選べる道は――自身に、命の光を向けながら、勝ち筋を探る事だった。
「植物らしくさっさと枯れちゃいなさーい!」
炎纏う大鎌を思い切り振りかぶって、言葉がその思考を切断する。腕に赤い筋を走らせながら、転がり退いた金輪に、タカラバコが食らいつく。幾度、躱されようが、果敢と――。
金輪の頭上の天蓋花が光を集めて、強い光を帯び始める。
既に、その攻撃の前兆は把握できている。ぶーちゃんが震えながら、立ち塞がった。
「甘く、鋭く、爽やかに」
灯がグラビティで生成した林檎が、ポンと弾ければ。爽やかな香気と、煌めきが漂う。
それを纏ったアヤメが、金輪の元まで疾駆すると、螺旋を叩き込む。
「そろそろ、追い込む」
「リョーカイ」
ティアンに、キソラが軽く応じる。
飄と風のように躍る彼の背を見つめて、ティアンはしゃらり、鎖を鳴らす。
先に駆ける彼より早く、彼女の鎖は真っ直ぐ伸びて、金輪の身体を搦め、縛る。脚の一つも掬って固定すれば、十分だ。
「さあドウゾ、」
キソラの指先が金輪を指さす。静かに、ひたりと据えるような指先が呼ばうは、それを中心に降る氷雨。核まで沁む、痛みの雨だった。
竜殺しの槍を振り上げ、高々と宙に跳んだイズナが、ぞの頭部を目掛け、一閃を振るう。
「あぐっ」
天蓋花が、半分欠けた。アナスタシアが天を舞い、リングを仕掛けながらその傍らをすり抜け、主の元へと戻る。
「今です、皆さん!」
灯がぽちっと起爆すれば、花の香りを纏う爆風が弾けた。
それを起点に――肉食獣の霊気を宿した光刃を発するアンクを瑪璃瑠が翳すと、先んじて、気咬弾を溜めたひなみくが叫ぶ。
「ドラゴンのところには行かせない! お前たちは此処で墜ちるんだ!!」
抉るようなオーラの弾丸に腹を削られ、伸びた腕に獣の牙が食らいつく。
イズナさん、アンクを握った儘、瑪璃瑠が視線を送れば、応えるような白い輝き。
「わたしのブリーシンガメン……」
イズナを中心に、真円の銀光の環が回り――ぽつりぽつりと炎が灯り、揺らめいた。彼女は燃え盛る七色の炎を片手で差し出すように、放つ。
「――すべて焼き尽くしてあげるから」
「……っ!」
容赦なく、身を包み、焼き焦がす熱に、金輪は光を己の元に集めて、耐える。
それを静かな――ひやりとした声音が、刺す。
「地球は、この星は、大切な人達が、生きていたり、死んだりした星……お前達に吸い上げられる謂れはない」
ティアンは、声を荒らげる事もなく、淡々と告げ。
「ここでこの惑星ごと潰させてもらう――夢のつづきを。いつまでも。いつまでも。」
彼女が結ぶは、悪夢。先の鮮やかな炎環の、再来。
重なった炎上の感覚に、耐えきれず――金輪は、悲鳴をあげて蹲る。
「哀れとは思わない。これはボク……私の使命だから」
シノビとして、低く囁き。
アヤメは翼を広げ――全身が淡い光を纏うと同時、彼女は高く跳んだ。
「白雪に残る足跡、月を隠す叢雲。私の手は、花を散らす氷雨。残る桜もまた散る桜なれば……いざ!」
白翼を羽ばたかせ一息に滑空する。鋭い飛翔で金輪に迫る。アヤメの眼差しは冷静そのものに彼女を貫き――邂逅、衝突の瞬間。
手に集めた螺旋の力をすべて、叩き込む。
炎が消え、血と燐光が散る様は、花の如く。
「ああ、王女様……」
胸を穿たれた金輪は、眩しそうに目を細め、天へと手を伸ばし――落ちた。
●到達
「長居は無用、一斉攻撃が始まる前に、さっさと帰ろか」
キソラが撤退を示唆した時だったか。
「えっ」
誰かが、声をあげた。
とてつもない速度で近づいてくる見慣れぬ何か、巨大な影があった。
それは間違いなく、この攻性惑星を狙っている――戦艦のようなもの。鋭利な、攻撃的な形状をしたそれが何者であるか、ケルベロス達は知らなかったが――味方であると、感覚が知らせる。
それこそ――万能戦艦ケルベロスブレイド。
突如と現れたそれから、凄まじい雷撃が射出され、皆の視界を白く染める――合わせ、ケルベロス達が次々飛び出し、攻撃を仕掛け始めた。
「ええっと、ヘリオンから――だったはずだけど」
イズナが困惑しつつ、笑う。よくよく見れば、当初の予定通りにヘリオン達も集っているのだが、戦艦の登場は強烈な印象を残した。
「使えるものは使わなきゃね」
言葉が丸く収め――などと交わす彼らの身体は既に、星から離れていた。
一斉攻撃によって、星は瞬く間に破壊され――粉々になって落ちていく。
「あれ、大丈夫なんでしょうか」
ダイナミックな光景に、灯が地球に僅かな危惧を見せれば、アヤメが目を眇める。
「多分、燃え尽きると思うけど……あれ、なんか、光ってるような――」
崩れた星の一部が光に包まれている。何事かと、それへと目を凝らそうとした瞬間。
新たなる圧倒的な物量が、忽然と、出現した。
「……何」
静かに、驚きの声を警戒と共に放ったのはティアン。キソラの瞳がそれらを睨めた。
「ドラゴン……!」
ひなみくが驚きに発した。執念の果てに、それらは愈々辿り着いた――数多のドラゴン。竜業合体ドラゴンなのだろう――朽ちた無残な姿でありながら、荘厳なる威風を纏った竜どもが、いた。
だが、それらはケルベロス達には目もくれず。崩れ落ちる星の欠片に飢えた様に食らいついた。
そこへ警告も無く、戦艦の雷が、再び闇昊を引き裂く。
轟いた雷撃は幾つものドラゴンを屠り――然し、宇宙の闇より現れた更なる竜が、戦艦へと躍りかからんとするのであった。
「正念場、だね」
激しい衝突を目の当たりに、瑪璃瑠がそっと囁く。
この戦いは――まだ続くのだ。
作者:黒塚婁 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年2月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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