魔導神殿改造作戦~大改造、千刃の宮!

作者:雷紋寺音弥

●その名はSETUBUN!
「招集に応じてくれ感謝……と、今日は固い挨拶は止めにしておこうか」
 その日、ケルベロス達の前に現れたクロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は、いつもとは異なる雰囲気で話を切り出した。どうやら、デウスエクス出現の報ではなく、何か別の事情があるようだが。
「ここ最近のお前達の活躍で、世界中の人々が、そう遠くない未来に全てのデウスエクスを撃破できると確信しているぞ。思えば、人類の歴史は連中との戦いの歴史でもあったからな。それに終止符が打たれ、真の意味で平和な世界を取り戻せるとなれば、これは正に人類史……いや、この宇宙の歴史において最大の偉業かもしれない」
 東京で行われた大運動会の影響もあり、世界の人々は日本の文化にも詳しくなった。そんな彼らは、デウスエクスを撃破して平和を取り戻す願いを込めて、全世界一斉に『節分』の儀式を『SETUBUN』と名を改め行おうと盛り上がっているらしい。
「節分は、鬼を払い福を招くための儀式だ。そういう意味では、確かに今の状況にぴったりなのかもしれないが……問題なのは、その儀式で生じる季節の魔力だな」
 毎年、ハロウィンの日になるとドリームイーターが季節の魔力を狙って暗躍していたことからも、この力がデウスエクスにとって魅力的なパワーソースと成り得るのは間違いない。ましてや、今年の『SETUBUN』は世界規模の一大イベントだ。生じる季節の魔力も生半可な量ではなく、それを死神勢力などに奪われれば、大変なことになるかもしれない。
「そういうわけで、お前達の力で、この膨大な量の魔力を使い切ってもらいたい。丁度、この魔力を使い切らせるのに、うってつけの代物が手に入っているからな」
 先のアスガルド・ウォーで獲得した魔導神殿。それこそが、季節の魔力を使い切らせる鍵だとクロートはケルベロス達に告げた。要は、魔導神殿を再起動させることで、その膨大な魔力を一度に消費させようという作戦だ。
「全ての魔導神殿をブレイザブリクのようにケルベロス側で利用できれば、その戦力は非常に大きなものになるはずだ。それも、ただ再起動させるだけじゃない。世界規模の季節の魔力を以てすれば、お前達の願いを叶える形で魔導神殿を改造する事すら可能だぞ」
 入手できたとはいえ、まだまだ謎も多く、おまけに機能も完全に復旧させられていない魔導神殿の数々。現状、ヴァルハラ大空洞から移動させる事ができていない『死者の泉』の扱いなども合わせて、この季節の魔力で解決法を探せるかもしれない。
 クロートの話では、世界中の節分の儀式は、日本時間に合わせて一斉に行われるとのことである。国によっては早朝や深夜からのスタートになるが、人類史上初の盛大な祭りなので、細かいことは気にしたら負けだ。
「お前達は、それぞれの魔導神殿で節分の儀式を行う事で、世界中からの季節の魔力を束ねてくれ。その魔力で魔導神殿を願いを伝え、望む形で再起動を行えばいい」
 魔導神殿の所在地は、ヴァルハラ大空洞に、双魚宮『死者の泉』、天蝎宮『エーリューズニル』、『スキーズブラズニル』、獅子宮『フリズスキャルヴ』の4宮殿が置かれている。また、東京焦土地帯には磨羯宮『ブレイザブリク』が、鎌倉市には金牛宮『ビルスキルニル』が、仙台市には双児宮『ギンヌンガガプ』が、それぞれバラバラに存在している。
 なお、東京焦土地帯の奥地には、ホーフンド王子が立てこもる、白羊宮『ステュクス』も残っています。それらの宮殿の中で、今回向かってもらいたい場所は、磨羯宮『ブレイザブリク』であるとクロートは告げた。
「お前達も知っての通り、ブレイザブリクは東京焦土地帯を無数の剣で埋め尽くすことで、ザルバルクの発生を抑えてもいた場所だ。一般人が迂闊に足を踏み入れれば、瞬く間に剣へと変えられてしまう場所だったが……今では、その力も停止しているから、誰が入っても問題はないぜ」
 東京焦土地帯の周辺に人は住んでいないが、必要とあらば、一般人を近くの町から招くことも可能である。ケルベロスが護衛すれば東京都民を招待できるはずなので、何か面白いイベントを思いついたら、彼らを呼んでみるのも一興だ。
「祭りを楽しんだ後は、宮殿をどのような形に改造するのか願うのを忘れないでくれ。別に、個々人で願いが異なっていても構わない。むしろ、可能性を増やすためにも、願いの種類は多い方がいい」
 とにかく巨大な魔導神殿。たったひとつの願いだけで小さく纏まるくらいなら、むしろ全部の願いを乗せて再起動させた方が、面白いことになりそうだ。
 最後にそれだけ言って、クロートはケルベロス達を、磨羯宮『ブレイザブリク』へと送り届けるべくヘリオンを起動させた。


■リプレイ

●ザ・エクストリーム豆まき!
 魔導神殿をケルベロス達でコントロールできるようにすべく、突如として企画された『SETUBUN』の儀式。豆まきの形を成していれば、後はお好きにグローバル……というわけで、無国籍エクストリーム豆まきの始まりだ!!
「節分と言ったら豆まきですよね! さあ、節分の季節の魔力、思い切って発散してやりましょう!」
 鬼の面を被って升の山盛り豆を握り締め、ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)は旅団の仲間目掛けて豆を投げる。無論、ただの豆まきではない。どちらが鬼かも決めることなく、唐突に始まったのは問答無用の豆まきサバイバル!
「……ってことで思いっきり!! 豆をぶつけ合う勝負ですオラー!!」
 何回当たったら負けとか、そういったルールは存在しない。ただ、自分にぶつけられた豆は食べねばならないという、シンプルかつ食いしん坊な決まりのみ!
「やるわね! でも、こっちだって負けてないわよ……とりゃー!」
 お返しとばかりに、ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)は豆の詰まった水風船を投げ付ける。当然、それだけでは単なる風船玉なのだが、それを狙ってパチンコで豆を飛ばして射抜けば、周囲に豆がクラスター爆弾の如く撒き散らされる。
「ひゃぁっ! アイタタタっ……なーんてね!」
 まあ、所詮は豆なので、直撃を食らったミリムにもダメージなどないのだが。問題は、この散らばった豆を全て自分の胃に収めねばならないことだろうか。
「むぅ、ミリム達がえくすとりーむ豆撒きしてる? 当たった数だけ食べないとダメなルール?」
 そんな彼女達の様子を見て、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)が首を傾げた。変なところで真面目な彼女は、ルールを自分なりに解釈し。
(「SETUBUNで食べていい豆の数は年齢までらしいから、リリは不利かも?」)
 集中砲火を食らっては堪らないと、豆を鉄砲に詰めて反撃開始! 周囲の剣を利用して跳弾させ、相手の口の中へ直接シュートだ!
「……はぐっ!? やったわね!!」
 跳ね返った豆が口の中に飛び込み、ローレライは驚きながらもそれを飲み込んだ。だが、年の数しか食べられないのが残念だと思いつつ、他の面々の様子を見てみると。
「えぇっ!? 投げてないで、自分から食べてる!?」
 なんと、帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)が投げるのもそこそこに、歳の数以上の豆をほうばっている光景が飛び込んで来た。
「食べているんじゃありません! 自分のお腹の中に全力で撒いているんです!」
 いや、さすがにそれは、無理があるような……。というか、先程から食べることしかしていないから、もう升の中に豆がない。
「……すみません、豆の補充をお願いします……」
 ほら見ろ、だから言わんこっちゃない。もっとも、やはり豆を投げることよりも食べる方に魅力があるのか、ミリムもローレライもついに我慢の限界に!
「物足りないから、年齢の数以上食べちゃうわよ! いっただきまーす!」
「……って食べる事に集中しますか! 歳の数以上に豆食べちゃいますか!?」
 もはや、節分のルールなど関係ない。エクストリーム豆まきは早々にして、豆の大食い大会に変わってしまったのであった。

●豆だけを撒くに非ず!
 節分といえば豆を撒くものだが、地方によっては様式も少しだけ変わって来る。
「節分かー……。そういや、俺の地元じゃお菓子まきやってたな」
 幼き日の記憶を思い出しつつ、栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)は呟いた。豆や菓子だけでなく、百円玉とか十円玉といった硬貨を投げる祭りもあるのだ。
「まあ、お菓子まきですって? 豆よりそっちの方が楽しそうだわ、やりましょう!」
 そんな話を聞いて、乗り気になったのは朱桜院・梢子(葉桜・e56552)だ。何故か事前に大量の菓子が用意されていたので、後はそれを招待した都民に投げて欲しいと。
「あのさ梢子姉、こういうのは普通年長者がまくと思うんだけど……?」
「あら? だって理弥は甘いもの苦手でしょう? あ、私はお菓子用意したからおひねりは理弥が出すのよ。一万からでどうかしら?」
 有無を言わさず、投げる掛かりを理弥に押し付けた。なお、おひねりまで理弥のポケットマネーで用意させようとする辺り、したたかというか、何というか……。
「確かに俺甘いの苦手だけどさ……って、いやいやおひねり一万は高すぎだろ!? せめて五百円までだろ! ってか俺が出すのか!?」
 済し崩し的に、大金を払うことになってしまった理弥。こうなったら、もうヤケクソだ! 用意された菓子袋の中に万札を丸めて詰め込むと、手当たり次第に投げまくる。
「よ~し、行くぞ……って、なんだこりゃ? チョコやマシュマロは分かるけど、みかんなんて投げたら潰れるだろ!?」
 投擲すること考慮していない梢子のチョイスに、しばし固まる理弥。なお、梢子は子ども達に混ざって自らも菓子や万札をゲットしようと、果敢に身を乗り出している。
「おい梢子姉、大人なんだからぐいぐい出てくんな!」
 我先にと菓子をねだる子ども達の波も相俟って、豆まき会場は大盛況! 季節の魔力も存分に高まったのだが……それに反して理弥の財布は、悲しい程にまでスッカラカンになってしまった。

●豆まきする者、この指とまれ!
 東京焦土地帯。足を踏み入れるだけで死神に食われるか、あるいは肉体が剣と化し死亡する禁則地。
「ここに来るのも何度目になるかなー。でも、今度こそ平和な場所にしたい……」
 大地に突き刺さる剣の山を見上げ、霧崎・天音(星の導きを・e18738)は呟いた。そんな場所も、今となっては都民を招待できるほどに、落ち付いてくれたのは感慨深い。
「さて、到着したな。それでは、今一度確認じゃ」
 集まった人々を前に、端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)が念を押すようにして告げた。
 今回の豆まき、鬼はケルベロスで市民が豆を投げる役。鬼は豆を当てられることなく逃げ切ったら価値で、投げる側は鬼に豆を当てたら勝ちというシンプルなルール。
「そこら辺の剣で万が一がないように、民草の皆は走らないこと! 剣には近寄らないこと! 神様っぽいわしとのお約束じゃ!」
 ついでに、鬼役のケルベロス達は護衛の役割を兼ねているのも忘れないように告げ、いざ豆まきバトルスタートだ!
「それっ! みんな、攻撃を集中させるんだ!」
「相手がケルベロスでも、豆まきだったら負けないぞ!」
 実際にグラビティを飛ばして戦うわけではないので、一般市民達にも勝機のある戦い。無論、ケルベロス達は身体能力も極めて高いので、そう簡単には豆に当たることもないのだが。
「普段は壁として当たりに行く方だけれど、出来るだけかわしてみるっていうのも悪くないね。……まあ、あまり意固地になり過ぎなくてもいいか」
 飛んで来る豆を余裕で避けながら、ティユ・キューブ(虹星・e21021)は考えた。確かに、ケルベロスの力を以てすれば、こんな豆を避けるのは造作もないことだが……それでは、ゲームとして成り立たない。
 適当にあしらったところで、敢えて豆に当たってゲームオーバー。身体能力を控え目にしたとはいえ、相手と互角の土俵で負けたのであれば悔いはない。
「さあ、少し休憩いたしませんか? 我が財団から、食料を支援させていただきますわ」
 豆まきが終わったところで、アンジェリカ・ディマンシュ(清廉なる魔弾使いの令嬢・e86610)が様々な料理を並べて言った。節分といえば恵方巻。今年の恵方は南南東。皆で同じ方角を向いたら、願いを込めて料理を堪能しよう。
(「さて……豆まきも無事に終わりましたし、後は願いをどうするかですわね……」)
 恵方巻を食べながら、アンジェリカは周囲の剣を見回しつつ心の中で呟いた。願わくは、これらの剣が人類を守るための、ケルベロスの刃にならんことを、と。

●豆に願いを?
 旅団の子ども達を引き連れて、ベルベット・フロー(紅蓮嬢・e29652)はヴォイド・フェイス(クレイジーフェイト・e05857)と共に、ブレイザブリクを訪れた。
「今日は豆撒き遠足だよー。迷子に気を付けるように! お義母さんとの約束よ!」
「「「はーい!!」」」
 元気よく手を上げて答える子ども達。何故か、ヴォイドもその中に混ざっていたが、それはそれ。
「ほーらヴォィドさんはこっち! さあ、考えてきたお願い事を叫びながら鬼に豆をぶつけよーう!」
 ヴォイドを強引に引っ張り出して鬼役とし、ベルベットは子ども達をけしかける。願うは、『僕達の考えたさいきょーのブレイザブリク』だ。こういう時、子どもの創造力というものは、時として凄い奇跡を起こしてくれるものだから。
「鬼役、俺様一人!? ベルヴィはこっちじゃネェの!?」
 一方、たった一人で鬼をやる羽目になったヴォイドは、慌てて頭を抱え逃げ出した。角の生えたアフロなウィッグを装着して逃げるが、子ども達は容赦がない。
「うぇっ!? 黒縁の眼鏡は? ……って、逃げ切れ俺様!」
 残念ながら、今回の鬼はヴォイドだけ。逃げ出そうにも逃げ切れず、瞬く間に集中砲火でフルボッコ!
 そんな中、子どもの一人が豆を投げながら、何気なく自分の願いを呟いた。
「……ヴォイドがお義父さんになってくれたらなぁ」
 それは、身寄りのない孤児達の、心の叫びだったのかもしれない。もっとも、彼らの父親になるということは、そう簡単なことではないわけで。
「Hey、俺様をお義父さんって呼ぶんじゃネェ、オーライ? パパorダディならOKだ」
 いや、そっちはいいのかよ! 何故に呼び方に拘るのかは不明だったが、とりあえず彼らの願いは、ブレイザブリクの力がなくても無事に叶えてあげられそうだ。

●全員纏めて、鬼は外!
 節分の祭りも盛り上がってきたところで、そこかしこで繰り広げられる豆まき大会。
「節分の主役といったらやっぱ鬼っしょ、鬼! 悪役がいてこそヒーローが映えるものだし?」
「そういうことなら、俺も鬼役をやるぜ! 筋肉には自信があるからな!!」
 盛山・ぴえり(超電波系アイドルぴえりん・e20641)や相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)は、自ら鬼役となって豆を受ける。虎柄パンツにパンチパーマのウィッグなど、なかなかどうして決まっているが。
「わるいごはいねーがー!! ……って、ぎゃー、やめてやめてやめてギブギブギブ!!」
 マッスルポーズを決める泰地を余所に、何故かぴえりにだけ集中砲火! まあ、こういう場合、強そうな相手は後回しになるのがお約束。
「さあ、こっちだよ! 鬼さんこちら……って、今はボクが鬼なんだっけ?」
 同じく、鬼役を買って出たホムラ・ヘレノイア(シャドウエルフの降魔拳士・e03172)は、ライドキャリバーで逃げ回る。その隣では、影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)もまた素早さを生かして鬼役を務めているが、二人とも怪我だけはさせないよう、細心の注意を払うことも忘れていない。
「節分……日本のイベントとして話には聞いていたっすが、これを大々的にやるのも不思議な感じっす。でも、ハロウィンに代わる季節の魔力の使用に、なにより世界規模で行える平和に近づいたイベント、楽しむっすよー!」
 この際、悪いものは全て追い払ってしまおうと、セット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)は豆を投げる側に回って叫んだ。そんな彼に合わせる形で、レリエル・ヒューゲット(小さな星・e08713)もまた豆を投げていたが。
「節分! 私も豆を投げますよ!」
 何故か、彼女が投げているのは大豆ではなく殻つき落花生。その一方で、ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)と共に豆を投げているテレビウムのマギーは、何故かピジョンに豆をぶつけている。
「ハハハ、僕は鬼じゃないんだけどな」
 まあ、楽しみ方は人それぞれなので、とやかく言うのも野暮だろう。やがて、人々の間に広まった想いは季節の魔力として集まって行き……それは魔導宮殿を通して、ケルベロス達の力となる。

●ケルベロスブレイド
 祭りの喧噪もたけなわに、高まった季節の魔力がブレイザブリクへと注がれる。焦土地帯に突き刺さる無数の剣は、それぞれが眩く輝いて大地より抜け、飛翔しながら一カ所へと集まって行く。
「あれは……」
「どうやら、始まったみたいだな」
 見上げるホムラと泰地。二人の願った通りに剣は輝き、そのまま1本の剣へと融合して行く。ある剣は二つに分かれて他の剣と組み合わさり、また別の剣は複雑な変形を経て盾の如き防壁となり……それらが全て集まることで、巨大な剣の形を成して行く。
「剣が変形して合体しているっすよ!」
「……あれ、そのまま使えるんですかね?」
 剣の融合を願ったセットや翔が見上げる中、巨大な剣が大地に降り立った。柄の部分には小さな扉がついており、それを開けて中に入ると、様々な部屋が広がっていた。
「食糧庫に調理室まである。なかなか、快適な場所になっているね」
「それに……まさか、本当にお菓子を大量生産できる装置まで置かれているなんて!」
 剣の姿からは想像もできない施設を発見し、ピジョンや梢子は目を輝かせて喜んだ。勿論、他にも様々な機能があるのだろうが、今は調べている余裕もなく。
「……っ! なんだ?」
「剣が……引き寄せられている?」
 突如として浮遊を開始すると、剣は東京焦土地帯の中央を目指して進んで行った。そこには既に姿を変えたヴァルハラの神殿群が、丸い毛玉を中心に集まっており。
「なんだ、あの毛玉……うわっ!?」
 毛玉と化した白羊宮を中心に、骨と化した天蝎宮が骨格となり、そこへ他の宮殿が合体して行く。気が付けば、魔導神殿群は全てが合体し、巨大な宇宙船へと変化していた。
「この船にも名前が必要ですわね。わたくし達ケルベロスに宿る剣、それがどのようなものであれ、ケルベロスと地球に住む我らの仲間の希望となるように」
 合体した魔導神殿群の中で、アンジェリカが静かに目を瞑り、そして続けた。
「それが仮に名付けるとしたら『ケルベロスブレイド』に託す願いですわ」
 あまねく力を一つに束ね、人々を守る刃と成す。ケルベロス達の剣を冠する名前こそ、それに最も相応しいものだと。
「ケルベロス……ブレイド?」
「ん、いいんじゃないかな?」
 かくして、ヴァルハラ神殿群が合体して完成した戦艦は、これより『ケルベロスブレイド』と呼ばれることになった。
 心に刃を持ち、力無き人々の盾となって戦って来たケルベロス達。これまでも、そしてこれからも、それは変わらない。そんな願いを込めて、あまねく人類の脅威から、人々を守りぬくために。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年2月2日
難度:易しい
参加:19人
結果:成功!
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