●都内某所
超強力な電撃殺虫機があった。
近づく虫は、すべて瞬殺。
それが蚊であっても、蛾であっても、容赦なし。
例え、敵意がなくとも、悪意がなくとも、近づくだけで、即電殺。
だが、あまりにも強力過ぎた。
その威力が災いして、まわりに悪影響を及ぼすほどに……。
それが原因で洗濯物が焼けたり、火傷を負ったり、トラブルが多かったようである。
そのため、返品の山が相次ぎ、倉庫の中がいっぱいになった。
それでも電撃殺虫機の心は、殺意に満ちていた。
殺りたい。
もっと、殺りたい。
近づくモノすべてを電殺したい。
そんな気持ちに引き寄せられたのか、その場所に小型の蜘蛛型ダモクレスが現れた。
小型蜘蛛型ダモクレスは、カサカサと音を立てながら、電撃殺虫機の中に入り込んだ。
「デンゲキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した電撃殺虫機が、耳障りな機械音を響かせ、街に繰り出すのであった。
●セリカからの依頼
「綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)さんが危惧していた通り、都内某所にある倉庫で、ダモクレスの発生が確認されました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある倉庫。
ここに保管されていた電撃殺虫機が、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、電撃殺虫機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスは電撃殺虫機がロボットになったような姿をしており、耳障りな機械音を響かせながら、ケルベロス達に襲い掛かってくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462) |
ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184) |
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400) |
雪城・バニラ(氷絶華・e33425) |
九竜・紅風(血桜散華・e45405) |
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163) |
天月・悠姫(導きの月夜・e67360) |
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488) |
●都内某所
「どうやら、ここのようね。何やら異様な感じがするけど、大丈夫……かしら」
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)は仲間達と共に、ダモクレスの存在が確認された倉庫にやってきた。
倉庫のまわりには、電撃殺虫機が設置されており、蟲の死骸が山のようになっていた。
それだけ強力なモノだったようだが、色々な意味で改善点が多く、使用には適していない印象を受けた。
おそらく、メーカー側は電殺能力を特化させる事ばかり考え、他の事まで気が回らなかったのだろう。
それが仇となって、色々なトラブルの原因になってしまった可能性が高かった。
念のため、雪城・バニラ(氷絶華・e33425)が殺界形成を使って、人払いをしたおかげもあってか、辺りに人影はないものの、倉庫から異様な気配が漂っているせいで、気を抜く事の出来ない状況である事に変わりはなかった。
「こ、これって……いきなり電気がバチバチって来たりしませんよね?」
バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)が、心配した様子で電撃殺虫機に視線を送った。
どうやら、電撃殺虫機はソーラー充電によって動くようになっているらしく、少し近づいただけでもバチバチっと来そうな勢いであった。
「なるべく近づかない方がいいと思いますよ。蚊だけでなく、蛾まで退治していたようですし……。近づく者には容赦が無かったようですしね」
ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)が、警戒心をあらわにした。
資料を見る限り、近づく者はすべて、敵。
例え、相手が誰であっても、躊躇う事なく電殺するため、それが害虫であるか否かは、些細な問題だったようである。
「害虫を殺してくれるのは構わんが、無害な虫まで殺すのはやり過ぎだな。即電殺も度が過ぎると人に危害を加える恐れもあるから、こうなったのも……運命か」
九竜・紅風(血桜散華・e45405)が納得した様子で、倉庫に近づいていった。
倉庫の入り口には鍵が掛かっていたものの、あらかじめ鍵を借りておいたため、特にトラブルもなく中に入る事が出来た。
「確かに、近づくモノを無差別に即電殺するのは、可哀そうな気がしますね」
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)が複雑な気持ちになりつつ、倉庫の中に足を踏み入れた。
倉庫の中には、沢山の段ボールが積まれており、天井に達しそうな勢いだった。
「……とは言え、私は虫が苦手だから、電撃殺虫機はありがたいわね。もう少し威力が弱かった方がよかったとは思うけれど……」
バニラが複雑な気持ちになりながら、事前に配られた資料に目を通した。
資料を見る限り、それまで出されていた電撃殺虫機は、蚊を殺す程度の殺傷能力しかなく、人に当たったとしても静電気が走った程度の痛みしかなかったようである。
しかし、それでは使い物にならないという意見が多かったため、次第に威力を高めていき、今の殺傷力になったようだ。
それを有難がる客もいたようだが、実際には声が大きいだけで、極少数。
本来、相手にすべき筈の客を無視して、殺傷力を高めてしまったため、売り上げには繋がらなかったようである。
「確かに、害虫を電殺してくれるのはありがたいけど、何事にも強力過ぎると人体にも被害を及ぼす危険があるものね」
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が少しずつ間合いを取りながら、ダモクレスの出現に備えた。
それと同時に、天井近くにあったダンボールが激しく揺れ、両手足が飛び出して、足元にあったダンボールを圧し潰した。
「デンサツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した電撃殺虫機が現れ、耳障りな機械音を響かせながら、ケルベロス達を見下ろした。
その姿は、まるで機械で出来た忍者であった。
●ダモクレス
「……ようやく現れたわね。虫を殺すだけでなく、人に火傷を負わせ、その上ダモクレスと化してしまったのだから、こっちも容赦しないわよ!」
すぐさま、綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)が仲間達と連携を取りつつ、ダモクレスのまわりを囲んだ。
「デンゲキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それを迎え撃つようにして、ダモクレスが凄まじい電撃と共に放ってきた。
そのビームは亀裂の如く不規則な動きをしつつ、ケルベロス達に迫ってきた。
「全部防ぎ切る保証はないけど……やるしかないわね」
リサが覚悟を決めた様子で、エナジープロテクションを発動させ、自然属性の盾でダモクレスの放ったビームをガードした。
その途端、自然属性の盾で防ぐ事の出来なかった電撃が、無数の刃物となってリサに襲い掛かった。
しかし、リサはまったく怯んでおらず、まっすぐダモクレスを見つめていた。
「デ、デ、デンゲキィィィィィィィィィィィイ!」
その視線に危機感を覚えたダモクレスが、再びビームを放つため、エネルギーをチャージし始めた。
「さぁ行くぞ、疾風丸。頼りにしているぞ!」
紅風がテレビウムの疾風丸に声を掛け、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
それに合わせて、疾風丸が応援動画で、紅風を応援する動画を流した。
「さぁ、行きますよ、ネオン、サポートは任せましたからね!」
同じように玲奈もボクスドラゴンのネオンに声を掛け、属性インストールで支援を受けた。
「デンサツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
その間にダモクレスがエネルギーのチャージを終え、準備万端とばかりにビームを放ってきた。
「……そう簡単に撃たせませんよ!」
その事に気づいたルピナスがビームの射程外まで離れ、そのまま死角に回り込むようにして、半透明の御業でダモクレスを鷲掴みにした。
「デ、デンゲキィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その拍子に、ダモクレスが暴れたものの、動きを封じ込まれているせいで、まったく身動きが取れなかった。
それでも、意地になって身体を動かそうとしていたが、その拍子に関節部分が悲鳴を上げた。
「そんな事をしても、無駄ですよ」
その隙をつくようにして、綴が旋刃脚を仕掛け、ダモクレスの装甲を剥ぎ取った。
それ同時に装甲の下から現れたのは、電撃殺虫機型のアームであった。
「デンゲキィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、電撃殺虫機型のアームを振り回し、バチバチと電撃を放ってきた。
「これは、ちょっと厄介ね」
その事に危機感を覚えた悠姫が、プラズムキャノンを放って、ダモクレスを牽制した。
「デンゲキィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!」
だが、ダモクレスは全く怯んでおらず、苛立ちを隠せない様子で、自らが操る電撃を手足の如く操りながら、ケルベロス達に攻撃を仕掛けてきた。
「大丈夫よ。この程度のダメージなら、すべて癒す事が出来るから……」
リサが仲間達に声を掛けながら、鎮めの風を発動させた。
その間も、ダモクレスが電撃を放ってきたため、身体がビリビリと痺れているものの、リサは全く怯まなかった。
「だったら、迷う事はないわね。何かあったら、頼むわよ」
その思いを無駄にしないため、バニラが黒影弾を放って、影の弾丸を撃ち込んだ。
「デンゲキィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その途端、ダモクレスの身体が侵食され、耳障りな機械音が辺りに響いた。
「近づく事が出来ないのなら、このまま動きを封じ込めるだけですしね」
それに合わせて、バジルが猟犬縛鎖で鎖を伸ばし、ダモクレスを締め上げた。
「デ、デ、デ、デンゲキィィィィィィィィィィ!」
その拍子に自分の身体に電撃が走り、ダモクレスがビクビクと身体を震わせた後、真っ黒な煙を上げた。
「……相手が悪かったわね。このまま石に変えてあげるわ」
すぐさま、悠姫がガジェットガンを発動させ、魔導石化弾をダモクレスに撃ち込んだ。
「デンサツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
その一撃を喰らったダモクレスが怒り狂った様子で、電撃殺虫機型のミサイルをぶっ放した。
それが雨の如く降り注ぎ、爆発したのと同時に、雷の如く勢いで電撃が解き放たれた。
「真に自由なる力よ、仲間を癒してあげて下さい!」
即座に、綴がジョブレスオーラを発動させ、傷ついた仲間を真に自由なる者のオーラで包み、癒しの時間を提供した。
「このナイフをご覧なさい。貴方のトラウマを想起させてあげます」
それに合わせて、ルピナスが惨劇の鏡像を仕掛け、ナイフの刀身にダモクレスが忘れたいと思っているトラウマを映し、それを具現化させた。
それはダモクレスの元となった電撃殺虫機を返品した者達。
みんな体の何処かに火傷をしており、怒り狂った様子で、ダモクレスを罵った。
「デンゲキィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その言葉に反論するようにして、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせながら殺気の塊と化し、再びミサイルを発射しようとした。
「オーラの弾丸よ。敵に喰らい付きなさい!」
その事に気づいたバジルが気咬弾を放って、オーラの弾丸をダモクレスに食らいつかせた。
「弱点を見抜いたわ。この一撃を食らいなさい!」
続いて、バニラが破鎧衝を仕掛け、高速演算でダモクレスの構造的弱点を見抜き、痛烈な一撃でコア部分を守っていた装甲を破壊した。
「デ、デ、デンゲキィィィィィィィィィィィ!」
その事に動揺したダモクレスが、危機感を覚えて飛び退いた。
「……もう手遅れだ。その身体、爆破してやろう!」
そこに追い打ちをかけるようにして、紅風が遠隔爆破を仕掛け、ダモクレスのコア部分に貼り付けた見えない爆弾を爆発させた。
「サッチュウキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスが断末魔にも似た機械音を響かせ、完全に機能を停止させて動かなくなった。
「一時は、どうなるかと思いましたが、何とか倒す事が出来ましたね」
玲奈がホッとした様子で、ダモクレスだったモノを見た。
ダモクレスなりに、誰かの役に立とうとしたのかも知れないが、戦っている間に感じたのは、敵意と殺意であった。
そして、ケルベロス達はヒールで辺りを修復した後、倉庫を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年1月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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