LEDランタンは輝かない！

■リプレイ

●都内某所
「ＬＥＤランタンって、結構最新技術かと思ってたけど、それでも使われない事ってあるのね。何か理由がありそうだけど……。資料には何も書かれていないようね」
　姫神・メイ（見習い探偵・e67439）は仲間達と共に、ダモクレスの存在が確認された物置にやってきた。
　そこには、まだ人が住んでいたため、きちんと事情を話した上で、一時的に避難してもらう事にした。
　最初は相手も半信半疑であったが、ＬＥＤランタンの話をすると、『あ、あれね。あー、あれかー。まー、そうなるわな』と言った感じで、何故か素直に応じてくれた。
　そこに何か深い意味があるような気もしたが、その事について相手は何も答えなかった。
「やっぱり、非常用のアイテムだったから、出番が無かったのかな？　それなら、良い事だと思うけど、ＬＥＤランタンからすれば、そうでもなかったのかな？」
　ティフ・スピュメイダー（セントールの零式忍者・e86764）がＬＥＤランタンの気持ちを考え、不思議そうに首を傾げた。
　おそらく、ＬＥＤランタンは自分の出番が来る事を、ずっと待っていたのだろう。
　だが、出番が来るどころか、存在すらも忘れられてしまったため、その怒りと苦しみと悲しみが残留思念と化し、小型の蜘蛛型ダモクレスを呼び寄せてしまったのかも知れない。
「便利な物なのに出番が無いのは可哀そうね。きっと、誰かの役に立ちたかったはずだから……」
　天月・悠姫（導きの月夜・e67360）が何やら察した様子で、悲しげな気持ちになった。
「ＬＥＤィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　次の瞬間、ダモクレスと化したＬＥＤランタンが耳障りな機械音を響かせ、物置を破壊するようにして、ケルベロスの前に現れた。
　それと同時に、ダモクレスが七色の光を放ち、一瞬にして辺りをパーティ会場に変えた。
　そこに何の意味が分かるのか分からないが、ノリノリな曲と共に近隣住民達が現れても違和感がないほど派手だった。
「何あれ、エモい。……と言うか、あれだったら、非常時じゃなくても使えるよね？　しかも、持ち運びが出来るから、いつでも、どこでも、パーティ気分が味わえるし」
　それを目の当たりにした山科・ことほ（幸を祈りし寿ぎの・e85678）が、瞳をランランと輝かせた。
　しかし、そう思うのは、ごく一部。
　七色に輝く時点で、非常用としては適しておらず、必要性すら感じる事が出来なかった。
　おそらく、それは持ち主も、同じだったはず。
　買った後で、その事実に気づき、黒歴史として物置に封印していたのだろう。
　そう思えてしまうほど、いままでバラバラに散らばっていてピースが合わったような錯覚に襲われた。
「まあ、確かに、綺麗な光だけど……。非常用としては、ちょっと……ね」
　六星・蛍火（武装研究者・e36015）が、気まずい様子で汗を流した。
　この時点で、制作者側の意図が分からず、困惑気味。
　もしかすると、非常時だからこそ、陽気に楽しくパーティタイム的なノリだったのかも知れないが、まわりの人間が止めなかった時点で、会社の行く末まで心配になってしまうレベルであった。
「それでも、明るさ的には、合格……でいいのじゃろうか？　いや、これは認めては駄目なモノでは……。でも、まわりを明るくするという意味では、間違ってないのかのぅ……」
　ミミ・フリージア（たたかうひめさま・e34679）が答えに困った様子で、ダモクレスに視線を送った。
　何やらツッコミどころが満載ではあるものの、ダモクレスと化した影響と考えれば、納得する事が出来た。
　だが、持ち主の反応を見る限り、元からこういう仕様だったのだろう。
　そう考えると、何やら悲しい気持ちになってしまったが、ダモクレスと化した以上、倒す以外の選択肢が存在していなかった。

●ダモクレス
「ＬＥＤィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　そんな空気を察したのか、ダモクレスが苛立ちを隠せない様子で、凄まじい光と共に、超強力なビームを放ってきた。
　そのビームは七色の光が螺旋状に混ざり合い、まるで巨大な歯磨き粉のようにも見えた。
　それがあまりにもシュールに思えたため、みんな微妙な気持ちになっていたが、近くにあった物干し台が壊れた事で、そのビームが見た目に反して危険なモノだと認識した。
「えっ？　嘘！？　ひょっとして、あのまま避けなかったら、死んでいたった事？」
　それを目の当たりにしたことほが、気まずい様子で汗を流した。
　ライドキャリバーの藍も寸前の所で、ダモクレスの放ったビームを避けたものの、一歩間違えばスクラップになっていた可能性が高かった。
　幸い、ギリギリのところで気づいたおかげで、かすり傷で済んでものの、自らの死を確信してしまうほどヒヤっとしたため、生きている心地がしていないようである。
「凄く綺麗な光だけど、危険なモノなら、壊さないとね」
　その間に、ティフが自分自身に言い聞かせながら、ダモクレスの死角に回り込み、絶空斬を仕掛け、空の霊力を帯びた攻性植物で斬りつけた。
「ＬＥＤィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　その途端、ダモクレスが悲鳴にも似た機械音を響かせ、ティフから逃げるようにして飛び退いた。
「やれやれ、話し合いで済むのであれば良かったんじゃがのぅ。こうなってしまうと、破壊するとか道は無いか。……とはいえ、あまりモノを壊すのは、良くないと思うのじゃが……。ダモクレスと化した以上、やるしかないのかのぅ……」
　ミミが複雑な気持ちになりながら、テレビウムの菜の花姫に合図を送った。
　その気持ちに応えるようにして、菜の花姫がテラビフラッシュを仕掛け、ダモクレスを牽制した。
　それと同時に、ミミが縛霊撃を仕掛け、ダモクレスを殴りつけるのと同時に、網状の霊力を放射し、動きを封じ込めた。
「ラァァァァァァァァァァァァァァンタァァァァァァァァァァァァン！」
　その事に驚いたダモクレスが必死に抵抗したものの、網状の霊力が絡まっているせいで、身動きが取れなくなっていた。
「さぁ、行くわよ、月影。サポートは任せたからね」
　その隙をつくようにして、蛍火がボクスドラゴンの月影と連携を取るようにして、ダモクレスを取り囲んだ。
　それに合わせて、月影が属性インストールを使い、自らの属性を蛍火に注入した。
「ＬＥＤィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　即座にダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ビームをチャージし始めた。
　その影響でビームの発射口が七色に輝き、その光が流れるようにして、ダモクレスのボディを彩った。
　そこに何の意味があるのか分からないが、繁華街にいるような錯覚を覚えるほど、ド派手な印象を受けた。
「エクトプラズムよ、敵の動きを止めてしまいなさい！」
　続いて、悠姫がプラズムキャノンを撃ち込み、エクトプラズムを圧縮し、大きな霊弾を作って、ダモクレスにブチ当てた。
「ラァァァァァァァンタァァァァァァァァァァァァァン」
　その一撃を喰らったダモクレスが尻餅をつき、七色に輝くビームを空に向かって解き放った。
　それが、まるで花火のように飛び散り、七色に輝く光の雨となって、辺りに降り注いだ。
「少し勿体ない気もするけど、壊してしまいましょうか。見た目に反して、随分の破壊力があるようだしね」
　その間に、メイが一気に間合いを詰め、スターゲイザーを仕掛けて、ビームの発射口を破壊した。
「ＬＥＤィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　次の瞬間、ダモクレスが怒り狂った様子で、ＬＥＤランタン型のアームを振り回した。
　それはランタンには必要がないほど煌びやかで、無駄な光であった。
「どうして使われなかったのか、何となくわかる気がするわね」
　メイが血装刺突法を仕掛け、染み付いた血を硬化させ、槍の如く鋭くした包帯でダモクレスを攻撃した。
「ラァァァァァァァァァァァァァァァァンタァァァァァァァァァァン！」
　それでも、ダモクレスはまったく怯んでおらず、耳障りな機械音を響かせながら、メイに向かって勢いよく拳を振り下ろした。
　間一髪で、その攻撃を避ける事が出来たものの、土が抉れて舞い上がり、雨の如く降り注いだ。
「わたし達を甘く見過ぎたようね。この弾丸で、その身を石に変えてあげるわ！」
　それに合わせて、悠姫がガジェットガンを発動させ、ガジェットを拳銃形態に変形させ、ダモクレスに魔導石化弾を撃ち込んだ。
「Ｌ、Ｌ、Ｌ、Ｌ・Ｅ・Ｄ！」
　それと同時に、ダモクレスの身体が石化し、アームの関節部分が動かなくなった。
　しかし、ダモクレスは最後の悪あがきとばかりに、怒り狂った様子で耳障りな機械音を響かせ、LEDランタン型のミサイルを飛ばしてきた。
　地面に落下したミサイルは、次々と爆発し、家の屋根を破壊し、窓を粉々にした。
　その影響で今にも崩れそうな勢いで、ガタガタと家が悲鳴を上げていた。
「こ、このままだと、さすがに家が持たないね。だから、ここで何とかしておかないと……！」
　ことほが色々な意味で危機感を覚えつつ、迷宮の妖怪桜（サクラ・オブ・ラビリンス）を発動させ、大地の癒しの力に混じる負の感情をガス抜きのように拾い上げ、桜の枝の形に変えてダモクレスを包囲した。
「弱点を見抜いたわ、この一撃を受けなさい！」
　その隙をつくようにして、蛍火が破鎧衝を仕掛け、高速演算で敵の構造的弱点を見抜き、痛烈な一撃を繰り出した。
「ＬＥＤィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　その一撃を喰らったダモクレスが、断末魔にも似た機械音を響かせ、激しく体を震わせた。
　だが、ミサイルが発射される事はなく、七色の光を放ちながら、ダモクレスのボディが弾け飛んだ。
「何とかダモクレスを倒す事が出来たけど、非常用のランタンが無くなっちゃったから、ここのおうちの人と一緒に新しいのを探しに行こうかな？　でも、物置の中にあると、いざと言うとき困っちゃうから、おうちの中で保管したほうがいいかもね？」
　その途端、ティフが冷静になって、先程避難した持ち主の気持ちを考えた。
　もしかすると、その必要はないと言われるかも知れないが、その時は、その時。
　ダモクレスと化してしまったとは言え、ＬＥＤランタンを壊してしまった事は間違いないため、何らかのお詫びをしたいようである。
「それでは買い物ついでに何処かで美味いものでも食べぬか？　戦って腹が減っているのでのぅ。このまま家に帰るのも何じゃし、いいところを知っているのであれば、ついていくぞ？　ちなみに希望は、甘いものじゃ」
　そう言ってミミが腹の虫と相談しつつ、頭の中に甘い食べ物を思い浮かべるのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2021年1月9日 難度：普通 参加：6人 結果：成功！
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