怪しさと、胡散臭さを売りにして

■リプレイ

●都内某所
「まさか私の危惧していたダモクレスが本当に現れるとは驚きですね。……とはいえ、まだ何も起こっていません。いまなら、まだ間に合います。何も起こっていない、いまならば……」
　綾崎・玲奈（アヤカシの剣・e46163）は事前に配られた地図を参考にしつつ、仲間達と共にダモクレスの存在が確認された研究所にやってきた。
　その研究所では、怪しげな研究が行われていたらしく、色々と悪い噂が広まっていたようである。
　元々裏通りにあるためか、よほどの事が無い限り、通るような場所ではなく、辺りにはまったく人気が無かった。
　そのおかげで、誰にも怪しまれる事なく、研究所の中に入る事が出来た。
　研究所の中はカビと埃が入り混じったようなニオイが充満しており、ランプを照らすと大量に舞った埃が明かりに反射して、不気味な光を放っていた。
「ええ、そうですね。何やら胡散臭い研究が行われていたようですし、何か被害が出る前にダモクレスを破壊してしまいましょう」
　そんな中、ミント・ハーバルガーデン（眠れる薔薇姫・e05471）が、事前に配られた資料に目を通した。
　資料を見る限り、研究所で行われていたのは、怪しげな実験の類。
　放射能を無毒化する研究や、身体能力を驚異的にアップさせる研究なども行われていたようだが、どれも空想の産物で実現には至らなかったようである。
「それにしても……一体、何処から資金が出ていたんでしょうね？　もう少し調べてみたら、面白い事が分かりそうだけど……」
　リサ・フローディア（メリュジーヌのブラックウィザード・e86488）がハンズフリーで辺りを照らしながら、研究所の廊下を歩いていった。
　廊下には今までの研究成果が張り出されていたものの、どれもそれっぽく見せているだけで、中身のない内容ばかりであった。
　それが何を意味しているのか分からないが、頑張って研究をしているように見せている感じであった。
「まあ、それを知ったところで、わらわ達にはどうしようも出来ない事じゃしな。幸い人はおらぬ廃墟のようじゃし、誰かを襲う前に片づけるのじゃ」
　ミミ・フリージア（たたかうひめさま・e34679）が自分自身に気合を入れ、力強い足取りで歩き出した。
　ダモクレスと化した電子顕微鏡があるのは、廊下の突き当たり。
　その扉の入り口にはバイオハザードマークが表示されており、いかにも危険な研究がされているような感じであった。
　しかし、その割には感染対策などがきちんとされておらず、まるで映画か何かのセットのような印象を受けた。
「……ええ、そうしましょうか。おそらく、ここで行われていた研究は、どれも形だけ。何処からか資金を得るため、研究をしているフリをしていただけのようですしね」
　タキオン・リンデンバウム（知識の探究者・e18641）が何やら察した様子で、バイオハザードマークが表示されている扉を睨んだ。
「デンシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　次の瞬間、ダモクレスと化した電子顕微鏡が、耳障りな機械音を響かせ、扉を突き破って姿を現した。
　ダモクレスは電子顕微鏡がロボットのようになって姿をしており、まるで特撮モノに出てきそうな感じであった。
「見た感じ、随分と高性能だったようね。それを怪しい研究に使うなんて……。何だか勿体ない気がするわね」
　天月・悠姫（導きの月夜・e67360）が複雑な気持ちになりつつ、ダモクレスと間合いを取った。
「ケンビキョウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、不自然に拡大された細胞の映像がビームとなって放たれた。

●ダモクレス
「自然の中に流れる属性の魔力よ、その力を貸し与え給え」
　すぐさま、リサがエナジープロテクションを発動させ、自然属性の盾でダモクレスの放ったビームを防いだ。
　だが、映像までは防ぐ事が出来ず、ほんの一瞬ヒヤッとした。
　幸い、映像自体に殺傷能力はなく、視覚的に気持ちが悪い程度であった。
　それでも、嫌な気持ちになった事は間違いなかったため、生きた心地はしなかった。
「人々の命を脅かすダモクレス！　貴様の思い通りにはさせん！　ここから先は通さん！　貴様の相手は俺達だ！」
　その間に、灰山・恭介（地球人のブレイズキャリバー・e40079）が覚悟を決めた様子で、ダモクレスの前に陣取った。
「デンシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　その途端、ダモクレスが恭介を威嚇するようにして、重低音で耳障りな機械音を響かせた。
　おそらく、ダモクレスの本能的に、ケルベロス達が敵である事を理解しているのだろう。
　恭介の挑発に乗って、殺意を剥き出しにしながら、攻撃を仕掛けるタイミングを窺っているようだった。
「前回の戦いで多少は戻ったが……全盛期には程遠いな。今回も調子を戻すのに使わせて貰うか。今回のヤツは、ある程度殴っても耐えれるやつならいいんだが……」
　そんな空気を察した流水・破神（治療方法は物理・e23364）がカラフルな爆発を発生させ、爆風を背にした仲間の士気を高めた。
「デンシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　しかし、ダモクレスは全く怯んでおらず、狂ったようにビームを放ってきた。
　そのビームには、先程とは異なる細胞が映し出されていたものの、不自然に拡大縮小を繰り返していたため、それが何なのかは分からなかった。
「さぁ、行きますよネオン。サポートは任せましたからね」
　即座に玲奈はボクスドラゴンのネオンに合図を送り、ギリギリのところでビームを避けた。
　それに合わせて、ネオンが属性インストールを使い、自らの属性を玲奈に注入した。
「何となく壊すのは、もったいない気がするのじゃが、やっつけねばのぅ。せっかくだから、わらわのぬいぐるみと、遊んでもらうかのぅ」
　その間に、ミミがテレビウムの菜の花姫と連携を取りつつ、一気に距離を縮めていった。
「……！」
　次の瞬間、菜の花姫がテレビフラッシュを仕掛け、ダモクレスを牽制すると、その隙をつくようにして、ミミが『まーちゃん押しつぶすのじゃ！（マーチャンオシツブスノジャ）』を発動させ、大きな猫のぬいぐるみを呼び出し、ダモクレスに突撃させた。
「デンシケンビキョウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　その一撃を喰らったダモクレスがバランスを崩し、近くの壁に激突した。
　それでも、ダモクレスの戦意は衰えておらず、再びビームを発射するため、エネルギーをチャージし始めた。
「さすがに、それを撃たせる訳にはいきませんね」
　その事に気づいたタキオンがスターゲイザーを仕掛け、ビームの発射口を破壊した。
「デ、デ、デンシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　それと同時に、ダモクレスが真っ黒な煙を上げて怒り狂い、電子顕微鏡型のアームを狂ったように振り回した。
　それはまるで大きな駄々っ子のようであったものの、まわりにあったモノが壊れて、あっと言う間に幾つもガラクタの山が出来上がった。
「……前回といい、今回といい、なんでコイツら叫んでるんだ？　うるさくしねえと生きてられねえのかよ、クソが」
　破神が苛立ちを隠せない様子で、ダモクレスの攻撃を避けつつ、注意を引いた。
「ケンビキョウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　ダモクレスは、その事実に気づかぬまま、耳障りな機械音を響かせ、ジリジリと距離を縮めてきた。
　その機械音から感じられるのは、恨みと怒りと苦しみだった。
　だからと言って、可愛そうとは思えず、代わりに破壊騒動が膨らんだ。
　それはダモクレス同様に危険な感情であったものの、まるで暴れ馬を乗りこなすようにして、自らの力に変えた。
「この呪詛で、その身を汚染してあげますよ！」
　その間に、玲奈が素早い身のこなしで、一気に距離を縮め、ダモクレスのボディを刺し貫くと、刃から伝わる呪詛で魂を汚染した。
「デンシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　その途端、ダモクレスが苦しみ、八つ当たり気味に辺りのモノを壊しながら、耳障りな機械音を響かせた。
「エクトプラズムよ、敵の動きを止めてしまいなさい！」
　その隙をつくようにして、悠姫がプラズムキャノンを仕掛け、圧縮したエクトプラズムで作った大きな霊弾を放ち、ダモクレスを足止めした。
「……！」
　そのため、ダモクレスは誰も殴る事が出来ず、左アームを振り上げたまま動けなくなった。
「……言ったはずだ。これ以上、先には進ませないと……。それでも、進みたいのであれば、ここで破壊される覚悟があるという事だ。ならば、その望みをかなえてやろう。ここでスクラップにしてやる！」
　それと同時に、恭介が月光斬を繰り出し、緩やかな弧を描く斬撃で、ダモクレスの左アームを斬り落とした。
「せっかくですから、もう片方も破壊してしまいましょうか」
　それに合わせて、タキオンがドリルアームを仕掛け、ダモクレスの右アームに風穴を開けた。
「デンシィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　それでも、ダモクレスは諦めておらず、右アームを力強く振り上げた。
　その拍子に、右アームが悲鳴にも似た音を響かせ、床にドシンと落下した。
「……自分の力を過信し過ぎたようですね」
「それじゃ、後は……焼いてしまいましょうか」
　そこに追い打ちをかけるようにして、ミントがグラインドファイアを仕掛け、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「ケンビキョウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　しかし、ダモクレスは全身炎に包まれながら、耳障りな機械音を響かせ、電子顕微鏡型のミサイルを飛ばし、辺りにあった壁や床を吹き飛ばした。
　その破片が鋭い刃となって、ケルベロス達の皮膚を切り裂き、真っ赤に染まったまま、壁に突き刺さった。
「大丈夫よ、落ち着いて……、すぐに回復するからね」
　そんな中、リサが仲間達を励ましながら、鎮めの風を発動させた。
　幸い、仲間達の傷は浅く、治療も適切だったため、大事に至る事はなかった。
「……とは言え、そう何度もミサイルを撃たれると面倒な事になりそうですね。ただでさえ、先程の爆発で空が見やすくなってますし……。これ以上、冷気が入ってくる前に……、もっと冷やしてしまいましょうか」
　ミントが半ばヤケになりつつ、イガルカストライクで雪さえも退く凍気を杭（パイル）に纏わせ、ダモクレスに突き刺した。
　その影響で、ダモクレスのボディが凍り付き、ミサイルを発射する事が出来なくなった。
「その身を、石に変えてあげるわよ！」
　続いて、悠姫がガジェットを拳銃形態に変形させ、魔導石化弾を発射した。
「デンシィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　次の瞬間、魔導石化弾がダモクレスの脚部が命中し、みるみるうちに石化した。
「今回も殴って黙らせるが……適度にはもてよ。リハビリの為にもよ」
　そり間に、破神がスピニングドワーフを仕掛け、高速で身体を回転させながら、ダモクレスに突撃した。
「ケンビキョウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　即座に、ダモクレスが真正面から体当たりを仕掛けてきたが、破神の攻撃を防ぎ切る事が出来ず、大量の破片が飛び散った。
　そこに追い打ちをかけるようにして、恭介が我流剣技・地獄炎葬剣一閃（ガリュウケンギ・ジゴクエンソウケンイッセン）を発動させ、最大まで燃え上がらせた地獄の炎を剣に纏わせ、ダモクレスを切り伏せた。
「デンシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　その途端、ダモクレスが悲鳴にも似た耳障りな機械音を響かせ、大爆発を起こして完全に機能を停止させた。
「それにしても、電子顕微鏡というのは、本来は小さなモノを見るヤツじゃろ？　それがここまで奇怪な存在になったのには、何か理由がありそうじゃが……。それを知る機会は失われてしまったという事じゃろうかのう」
　ミミが複雑な気持ちになりながら、ダモクレスだったモノを見下ろした。
　ダモクレスの元になった電子顕微鏡は、完全に壊れてしまっていたが、いくつか存在しないはずのパーツが増えているようだった。
「何か手掛かりが……と思っていたんだが……」
　そのパーツを恭介が拾い上げ、マジマジと見つめた。
　だが、特に異常はない。
　単なる追加のパーツ。
　それでも、何か手掛かりになるようなモノがないか、ダモクレスだったモノを調べ始めた。
　しかし、いくら調べても、それ以上の情報を得る事が出来なかった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2021年1月8日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 3
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