第三次城ヶ島制圧戦~灘ヶ崎上陸戦

作者:baron

「城ヶ島で行われた『竜牙兵本土上陸阻止戦』は、無事に成功し、竜牙兵の本土上陸を阻止できました。おかげさんで新たな竜牙兵の出現も確認されておらず、状況は安定していますえ」
 ユエ・シャンティエが城ケ島周辺の地図を開いて説明を始めた。
「しかし、よー考えると竜業合体のドラゴンがいつ現れるか判らない状況で、ニーズヘッグを放置するのは危険。そんで色んな方からお話がありまして、今の内に城ケ島を奪還する第三次城ケ島制圧戦が提案された訳ですわ」
 そう言ってユエは地図の周囲に色んなゲーム駒を幾つかまとめ六か所に置くと、それぞれから城ケ島まで筆で矢印を描いたのである。
「色んな手段がありますが都合、六ケ所からの上陸作戦。可能な限りのお人を引き連れて、可能な限りのニーズヘッグを退治するゆう作戦になりますえ」
 大橋からそのまま進軍、船を利用して四か所からの上陸、そしてヘリオンからの降下。
 その六ヶ所全てに可能な限りの援軍を引き連れ、そのまま飽和攻撃で進軍できるところまで攻め入る予定らしい。
 その過程で倒せるだけのニーグヘッグを倒し、調べられることがあればついでに調査するという作戦であった。


「こんルートは対岸の三崎魚港から揚陸艇で、島の北西部にある灘ヶ崎から上陸しますえ」
 船を使うが殆ど直線コース。他の方面と違って高速艇で長時間の移動はしない。
 海の中や島の海岸で待ち構えている敵が居るかもしれないが、周辺の海を回遊する敵とは多分出逢わないと思われる。
 海中を含め正面に居る可能性は非常に高いが、横槍を受ける可能性は低いという所か?
「一番近いんが東部の大橋ですけえ、あちらさんの動きも関わってきますなあ。あとは南部の馬の背洞門から上陸するチームがどっちに移動するんかも影響を与えるかもしれませんわ」
 他にもヘリオンチームの降下先も関わって来るが、基本的には城ケ島の西部域を担当。
 北西から西部全体に戦闘や調査活動を行うらしい。
 見える範囲の敵を次々に倒して言っても良いが、他のチームの動向を確認しておいても損ではないかもしれない。
「改めて敵戦力の確認ですわ。外周部には竜牙兵の残存部隊。まずはそれと戦って上陸になるのが基本コースですわ。戦い方は武器に寄りますけど、変わった武器があっても少数。殆どはいつもの武装やと思います」
 基本的に最初は竜牙兵。もちろんニーズヘッグが海中に隠れている可能性はある。
 とはいえ短距離であるし使用するのが揚陸邸なので、少々の攻撃は気にせずに強引に上陸することになるだろうか。
「その上でニーズヘッグ達を見つけて倒す算段になりますわ。こちらはドラゴンですけ属性によるブレスと格闘攻撃でしょおか」
 こちらも強い事は強いが、基本的には判り易い相手だ。
 最大の能力はもちろん竜牙兵を造る能力だが、そもそもここ最近に生み出された大量の竜牙兵は理由あっての事なので、殆どの場合は戦闘中に増えたりはしないと推測される。
「エインヘリアルや死神ともめとるところですが、逆に言えばあちらさんも介入できんタイミング。どうせドラゴンは無視できませんけ、今の内が城ケ島を奪還するチャンスゆうわけですえ」
 ユエはそう言うと地図や資料を置いて相談し易いように、自身は席を外すのであった。


参加者
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
モモ・ライジング(神薙桃龍・e01721)
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)
千歳緑・豊(喜懼・e09097)
篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)
バラフィール・アルシク(闇を照らす光の翼・e32965)
クロウ・リトルラウンド(ストレイキャリバー・e37937)

■リプレイ


 城ケ島に向かう揚陸艇が唸り始める。
 それはサポーターやサーヴァント込みで総勢二十名を超えるメンバーを問題なく輸送できるサイズをしていた。
「この船も歴戦の猛者だな。大丈夫。まだ頑張れるさ」
 何度も補修された跡を見て揚陸艇に篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)は声をかける。
 ブルルンと唸る大容量のエンジンは戦う機会を得たことを喜んでいるかのようだった。
「頑張る……か。そうだね! 新年始まったばっかりだけど、城ヶ島の大掃除だ!」
 クロウ・リトルラウンド(ストレイキャリバー・e37937)は元気に走り回りたくなった。
 車両すら載せられる道路みたいな床の上に立ち、強烈なエンジン音を聞けばキャリバーの様に飛び出したくなる気持ちも判らなくもない。
「それにしても……どうして城ヶ島を狙うのかしら?」
「ドラゴン達が何度もここを選ぶのは、きっと彼らにとって重要な要素があるんだろうね」
 モモ・ライジング(神薙桃龍・e01721)の疑問にシルディ・ガード(平和への祈り・e05020)が相槌を打った。
 ニーズヘッグの殲滅と島の奪還が今回の大きな目的だが、調査もまた重要な任務である。
「まさか、龍達が卵でも産んでたりしないよな? ……ありそうで怖いな」
「卵……か。さて、女王様には会えるかな?」
 水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)が浮かべる懸念に千歳緑・豊(喜懼・e09097)は僅かに眉を上げた。
 彼はニーズヘッグの祖とでも言うべき個体に、レプリカントではなくダモクレス時代にまみえたことがある。
 個を捨てて種族に尽くすニーズヘッグと、逆に種族を捨てた自身に縁を感じるのだ。
「……今考えるのはよそう。今やるべき事は、私にできる事をやるだけよ」
 あまりにも不明な事が多い。
 モモは首を振りながらチョコを食べて糖分を補給し、水中用の装備を始めとして様々な点検を始める。

 やがてエンジン音はブーンと言う稼働音に変わって揚陸艇が水の上を滑り始めた。
 ヘリオン数機がそれを追い掛け、デバイスに力を送れるギリギリの距離で後ろから追随する。
「少しでも探れると良いね。地図はみんな持った?」
「ああ。可能な限り聞いて回って集めた前回の発見情報なんかも書き込んである」
 シルディが予備の地図を何枚か取り出すと、鬼人は自前で用意した詳細な地図を出す。
 そして鬼人はデバイスを使って揚陸艇に置いて行かれない程度に高度を上げた。
「装具の準備できたぜ。要らねえかもしれねえけどよ」
「助かるっすよ。万が一って可能性がゼロじゃないっすしね。それを何とかできるなら十分かなって」
 比良坂・陸也(化け狸・e28489)が佐久弥の用意した水中行動用の道具をしまい込んだようだ。
 万が一、揚陸艇が沈んだり水中で迎え撃つ必要が出来ても問題ない。
「私は上陸後に少し離れて動きますね」
「……?」
 七奈・七海(旅団管理猫にゃにゃみ・e00308)はシエラ・ヒース(旅人・e28490)が小首を傾げたのでニコリと笑って説明を付け足した。
 笑顔の瞬間に気流で光線を曲げて姿を隠す。
「最初の一手だけでも不意を打てたら儲けものですからね」
「……了解」
 二人がそんなやり取りをしていると、不意に雲行きが怪しく成って来る。
 もちろんこの場合は天候の事ではなく、戦いの予感だ。
「たいへんたいへん! このまま行くと敵と出くわしちゃうよ。数はあんまりいないみたいだけど……」
「ふむ。となると竜牙兵ではなくニーズヘッグだね。イザとなれば空から上陸しよう」
 クロウが展開していたゴットサイトバイスで敵の反応を見つけると、豊はジェットパックデバイスで飛行準備に入る。
 上から見張ってる鬼人も同じ物を用意して居るし、自力で飛べる者も多いので問題ない。
「高円さん。我々は万が一に備えましょう」
 治療役のバラフィール・アルシク(闇を照らす光の翼・e32965)がレスキュードローン・デバイスを稼働させ、巨大な女性ヴァルキュリア像に変化させた。
「了解。まあ何とかなりそうだけどね」
「ああ、必要ない。このままなら三十秒の差で先に上陸できる」
 高円・美里彦(オラトリオのガンスリンガー・en0043)の方は楽観論だが、ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)は相対位置と速度を照らし合わせて不要と言い切った。
「ニーズヘッグはドラゴンに似た姿の人を憎んでるとかいう噂だけど、ワカクサは大丈夫かな?」
「知らん。だが先に殺してしまえば問題あるまい」
 クロウが箱竜というか折り紙みたいなワカクサとおしゃべりしていると、普段は他人を気にしないヴォルフが反応する。
 強烈な殺気を感じているのに、楽しめそうだと薄く笑った。
「ですが注意しておいてくださいね。貴方の帰りを待つ人が居るのでしょう? 私にも大切な家族がいますし、帰りを待つ人達がいるのはいいですよ。ヴォルフさん、前に進んでください。そして無事のご帰還を」
 そんな彼の様子に友人である如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)は忠告とも祈りともつかぬ声をかけた。

 手ごろな岩礁に揚陸艇が乗り上げ、ガコンと音を立てながら扉が開く。
 厚い鉄板で造られた扉はそのまま頑丈な桟橋だ。
『……ギィ?』
「……刀の極意。その名、無拍子。ってね」
 鬼人はデバイスで滑空しながら一番近いニーズヘッグに斬撃を浴びせる。
 地面に足を付けている時だけではなく、あらゆる態勢で放てるように訓練して来た。だからこそこの程度でミスなどありえない。
「つか竜牙兵は大橋の方に行ってるな」
「迎撃させるならニーズヘッグの方が強いから誤差なのかも」
 鬼人が帽子を被り直しながら竜牙兵が居ないことを告げると、シルディは相槌を撃ちながらイザとなればデバイスで通信できると返した。
「このままだと市街地の敵は居なくなるかな? 残ってるのだけ倒せれば一気に南下するチャンスかもっ!」
 シルディはそう言いながら元気よく飛び出し、鉄槌を握り締めてニーズヘッグに飛び出した。
 竜牙兵が居る場合は自分が足止めに回るつもりだったが、全部同じ敵ならば集中した方が早い。
「そういう事ならば効率的に始末していくとしよう。距離の問題でサイズが同じに見えるが右から来る個体が強く、左が少し弱そうだ。勿論左の方が近い」
 ヴォルフは正確に距離とサイズ測ると仲間に伝えつつ詠唱準備に入る。
「Weigern……」
 殺意を込めて敵を睨み、その破壊を精霊に誓う。
 ヴォルフがソレを解き放った時、呪いとなって蝕み始めた。
「なら私の担当はこっちね」
 モモは右に回り込んで目の前の個体共々攻撃を引き付ける事にした。
 まだ時間があるとはいえ瞬殺は難しそうだ。ゆえに連戦の途中で合流されるだろう。
 ならば厄介な敵を受け持つのは盾役である彼女の役目だ。
「まずは動きを止めないとね。動き回られると時間が掛かっちゃうから」
 モモは銃を構えたまま位置を調整すると、撃鉄に掛けた指先の力を入れる。
 黄金の弾が射出され、ニーズヘッグの周囲に衝撃波を発生させた。
「では反対側を担当するっすよ」
 佐久弥はモモが徐々に右に回り込んでいるのを見て、自分は左側を選択する。
 こっちの方が敵が早く来るようだし、白兵戦型の彼は走りながら攻撃できるので問題ない。
 機械を溶かして創り上げた大剣を腕に合体させれば、刃は爪痕の様に地面に痕を残す。そして……。
「動きます! 注意を!」
「っその攻撃は通さない! 誰かこの辺りに居る人に治療を!」
 奇襲を掛けた七海がチェーンで束縛していたが、暴れるように動き始めた。
 佐久弥が合体させた大剣による大質量の攻撃を受けてなお、敵はうねる様に尻尾を振り回して来た。

 歴戦のケルベロス達は即座に治療を行い、あるいは声を掛け合って態勢を整えた。
「アルシクくん。ここは私たちに任せて状況把握と治療を」
「千歳緑さん、了解しました。みなさん無事ですか!?」
 豊は治療役であるバラフィールにその場を任せ、自身は銃を構えて敵を引きつけに掛かった。
「私達なら大丈夫よ。……あら、緋色蜂師団のお友達? あなたが……ええ、ええ、作戦中だものね、集中するわよ。フフフ」
「ゴホン。では、ちょっと派手に行こうか」
 高橋・月子(春風駘蕩たる砲手・e08879) が何かを言いかけた時、豊は親も同然の彼女にみられることを気恥ずかしく思った。
 それを誤魔化すわけでもないが敵を抑えるために、周囲一面に弾丸を撃ち込んだのである。隠密して移動する班があるらしいのでちょうど良いだろう。
「治療班が回復するまで時間稼ぐよー!」
「任せろ! 竜牙兵だろうと竜その物だろうと俺たちは負けない!」
 クロウが箱竜のワカクサを手元に戻して砲撃態勢に移行すると、北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)はキャリバーに乗ったまま突撃!
 高速で斬撃を浴びせつつ、去り際にドリフトを掛けて回転撃を加えたのだ。
「くらえ、熱線! ワカクサ・ランチャーッ!! あ、あとみんなの治療もお願いね!」
 クロウはワカクサに指令を出し、増幅装置に変形させる。
 そして胸部の熱線砲の熱量を増幅させることで、強烈な一撃を放ったのである!
「全員の無事が確認できました。……もう少しお願いします」
「了解! ぬぁあああああああーーーっ!!」
 バラフィールに頼まれ服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)は走り出した。
 何か考えがあるのか、明確な意思を持った瞳と動きである。
 それが示すのは全力全開の解放、真正面から突撃して敵をぶん殴ったのだ。
「冒されぬよう……病魔よ、消え去りなさい」
 バラフィールは自身の翼から羽根の形をした光を仲間に飛ばした。
 それは傷を癒す力を持つと共に加護を与える守護の力!
 盾となり矛となる仲間たちを守る為の力だ。
 この後に追加がやってきたがケルベロス達は囲まれない内に倒すことができた。

 そして市街地に入るまで竜牙兵は見受けられなかった。
 手前にある神社を軽く捜索して何もない事を確認した後、町中に大橋へ向かう竜牙兵の最後尾を発見。
「残ってる連中を蹴散らして、西部を綺麗にしちゃおー!」
「竜牙兵と戦う機会はここまで無かったが、対峙したからには全力で行かせてもらうぞ!」
 クロウが声をかけると計都たち動きの速い者が中心になって突撃隊を造る。
「ですが侮りは禁物です。この後はニーズヘッグを探していく事を考えると、消耗は少なければ少ない方が良いかと」
「なら任してちょうだい。火力はあまりないのだけれど、多少の露払いができる自負はあるわよ」
 バラフィールの忠告に月子は翼をはためかせた。
 障害物を飛行でショートカットし、遠距離から狙撃すれば比較的安全に最後尾に食らいつけるだろう。
「クラッシャーとスナイパーを攻撃に専念させてあげてねっ! それでかなり楽になるから」
 シルディはそういって隠れている仲間に声をかけ優先事項を伝えておいた。
 ある程度東に寄ったこともあり、通信距離と判断して尋ねると確かに大橋の様に集まっていると返事が返って来る。

 そして竜牙兵の方も気が付いたようだが歴戦のケルベロス達が先制。
 実力差もあって数分の内に敵陣が崩れ始めていく。
「トドメ! これで楽になるかしら。早く調査したいところだけど」
 モモが鉄槌を振り下ろし敵側の盾役を削り切ると、戦いは一気に楽になる。
 実力差があるので守られさえしなければ、そう苦労はしないのだ。
「ここからは殲滅戦だね。しかし三十にも満たぬ数で包囲するとは。一騎当千になった気分だよ」
「……これだけ数が多いと範囲攻撃でまとめて攻撃した方が良さそうでしょうか」
 豊が炎で作り上げた猟犬に竜牙兵を捕まえさせていると、地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)は周囲に吹雪で多い打ち倒した。
 敵が雪の壁を乗り越えて来るが……。
「問題ない。この程度の相手なら防ぎきれる。落ち着いて攻撃し続けてくれ」
「はっ。はい。ありがとうございます。頑張りますね……」
 放たれる攻撃をヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)らにカバーしてもらい、夏雪は小さくお礼を言いながら次の敵に雪を降らせていく。
「みんなー! ここが正念場だよ!」
「今を乗り切れば後が楽ですからね。頑張りましょう」
 クロウは無数のミサイルを降り注がせ、エレス・ビルゴドレアム(揺蕩う幻影・e36308)が棍の先に幻影にグラビティで実体を持たせて攻撃。
 攻撃を集中させ何とか反撃しようとした竜牙兵を打ち砕いていった。
「わらわら湧いてるねぇ。面倒だからさっさとやっちゃおー」
 蘇芳・深緋(ダンジョンレア倉庫・e36553)は新手というか、進もうとして進めず戻って来た竜牙兵に唄い始めた。
「響かせよう、キミだけの詩を。まあ終わりの向かうモノガタリなんだけどさ」
 それは島を守る竜が死んでいき、地球に辿り着くまでに干からびる竜の物語。
 ゆく果ては死か、それとも地球を愛して住民となる大逆転の道だろうかと夢見るように歌い上げた。
「敵の圧力が減りましたね。残敵掃討の間に治療を行いましょう。
「デュフフ。お任せあれ、僕と痛銃たちに掛かれば余裕ですぞぉ」
 バラフィールが翼を広げて治療を始めると、風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)は両手に構えた双銃のうち癒しの力を持つ天使の銃を解き放った。
 と書くと格好良いように見えるが、正確に言うと天使っ子銃なので微妙である。
 せめて黙ってキリっとしていれば軍人に見えるかもしれないが、言動で損をするのが錆次郎であった。
「てめえらなんぞに時間を掛けてなんかいらねーんだよ!」
 鬼人は空中から一気に降下すると、地面に降り立つ反動で再びジャンプ。
 すれ違いざまに骨をバラバラに切り裂き、弧を描くような機動で次の敵に向かった。
「そこのグループで最後? なら護衛班はニーズヘッグが居そうな方に向かってもらうけど」
「ああ。もう終わりとはつまらんな」
 シルディが確認するとヴォルフは頷き、ナイフを煌かせて掃討戦に移行する。
 既に戦いを愉しむほどの手応えはなく、シルディが敵前衛に手榴弾を投げ、それに耐えた者をヴォルフは切り刻んでトドメを刺す。
 東に向かう竜牙兵を殲滅したこともあり、一度東進を止めて当初の予定通りに南下する。

 やがて西部中央にある稲荷社を越えて暫くすると、上空からならニーズヘッグを探すまでも無く見つけることができた。
 上陸した灘ヶ崎がそうであったように、西崎の磯や長津路の磯のあちこちでタムロしていたのだ。
 最初は一体・二体ずつ余裕を持って倒していたのだが……。
「次のが来てるからちょっとヤバイかも。最初みたいに時間差で行けそうな気もするけど、もしかしたら挟み撃ちもあるかな」
 何体目かの敵に熱線砲を叩き込んだクロウだが、ちらりとデバイスを見て仲間に忠告を掛けた。
 最初と同じ状況だが、竜は個体差が大きいので倒せるか判り難いのだ。
「こっちはもう少し掛かりそうだなあ。まあ急ぎはするが」
「うーん急ぎたいのにちょっとしたピンチ? 決戦が始まってるらしいけど」
 鬼人が切りつけた刃から霊力を叩き込んでみるがまだ倒せそうになく、シルディは他の地域の報告を入れつつ鉄槌で殴りつけた。
「今のところ脱落しそうな方はおられません。むしろ時間の方が問題ですね」
「海岸線は見た所何もなさそうだし、終わったら直行した方がいいかな。もちろん簡単に調べながら」
 バラフィールは仲間たちを光の羽で守りながらそう語り、豊は弾倉に玉とグラビティを込めながら提案する。
 手ごわいというほどでもないが、時間の経過と連戦での疲労が面倒だった。
「ひとまず目の前の敵ね。こっちの二体は任せといて」
「了解。行ってくるっすよ」
 モモと佐久弥は分担して敵に備えた。
 銃を得意とするモモがその場を受け持ち、白兵戦を得意とする佐久弥が移動して壁役になる。
「こちらも協力しよう。安心しろ。皆の不安は俺が取り除く」
「では私は攻撃を担当しましょう。早く倒せば負担も減りますし」
 ヒエルがその場に残って盾役となり、エレスは幻影の棍で援護する。
「なら私は今の内に治癒をしておきましょう……貴方の進む道に力の加護を!!」
 沙耶は仲間たちの未来を占い必ず勝てると運命を導いた。
 サポートチームが支えてくれたこともあり、盾役たちは持ち場を守り切った。
「赤信号の代わりにどうぞってね!」
 モモは衝撃波を叩き込んでニーズヘッグの突進を止める。
 何人かが便乗して攻撃を叩き込み、二体居る内に片方が苦しそうに唸る。
「さあ奈落に落ちろ」
 そこへヴォルフが稲妻の如き踏み込みで襲い掛かる。
 振るう偃月刀は龍の紋様を血で染め上げまた一頭の龍が地に伏せた。
 だが敵が到着したのもその時だ。
「合流出来るっすか? 合わせるっすよ」
「任せとけ。ヴァジュラ・マハル・サムスカーラーーラジャス」
 佐久弥は新手に対して腕に合体させた大剣の重さに任せて振り回しながら、もう片方の腕を盾の様に構える。そちら側にも合体させた大剣で受け流すためだ。
 彼の頼みを受け、陸也は金剛杵の周辺にまとわせた莫大な雷光と風が嵐の様に荒れ狂った。
 そのスパークと前後して、佐久弥が食いつかれ負傷を追ってしまう。
「……この世界は生と死に満ちている。 歌いましょう。 誰もが歌う、世界を織り成す生命の歌を」
 シエラは万物に宿る魂の歌を唄った。
 地を駆ける獣の力を肉体に宿すように、海を征く魚の力を空を飛ぶ鳥の力を仲間たちに与えて行く。
 時には風の勢いを時には甲羅の堅さを身に与えながら。それらは元来、何処にでもあるが気が付かない物なのだ。
「ふむ。何とかなったかな? 新手が居れば別だが」
 豊は先ほどが分水嶺だと感じた。
 ピンチの時間は過ぎ去り、もはや先を急ぐためにこそ倒す時だと地獄の業火を叩き込む。
「近くじゃないし移動途中に倒していけると思う。そこから先は合流後になりそうかな」
「なら急ぎましょう。合流後を考えれば回復を止めて攻撃にシフトできないのが辛い所ですが」
 クロウは傷ついている個体に衝撃波を浴びせ、バラフィールはその間も治療に専念しつつ援護する為に黒銀のオウガメタルに助力を頼んだ。

 結果として戦いは順調に終わった。
 数が少なく成れば治療の必要もなくなるからだ。
 邪魔する敵を始末しながら調査し、最終決戦に合流するだけである。
「腹には何もなさそうだなあ。後は林の中くらいだが」
「最終決戦の後でいいだろう。戦い損ねるぞ」
 鬼人がニーズヘッグに突き刺した刀を抜いて血をぬぐっていると、ヴォルフは既に興味を無くしたのか死体には関心が無い。
 切り刻むのは殺意ゆえで、別に死体を弄る趣味はないのだ。
「……これなら何とかなりそうっすね」
 佐久弥は周囲にある金属片や残骸を鋼珠の力で引き寄せ、再構成して傷を塞いだ。
 拳を握ったり開いたりしても何事もなさそうに見える。
「こんな所かしら。ついで以上の修復は後ね。時間が無いし」
「そうですね。最低限の治療も終わりましたし先を急ぎましょう」
 モモは地面にグラビティで造った弾丸を撃ち込み、周辺ごと自分や仲間たちを治療する。
 声を掛けられたバラフィールは頷きつつ豊に視線を向けた。
「なぜ城ヶ島なんだろうね。大阪の近くにも島はあるだろうに。この先に待っていると良いのだが」
 豊は敵に忘れ形見が居るなりアイテムがあるなり、何があるのかと考えていたからだ。
 グラビティの回復ができるとか資材があるとか程度ではない様な気がしていた。それならば他の地でも良い筈である。
「今の所、特別っていうような場所はないね。そっちではどうかな?」
「何もドロップしなさそうだねぇ~残念! 変な動きをする奴も居なかったですなあ」
 シルディが軽く周辺を探ってるサポートチームに連絡を入れると、錆次郎から苦笑が帰って来た。
「わははははっ! それでもこの戦い、わしらケルベロスの勝ちじゃ! 鬨を上げい!」
「今はそれで良いんじゃない? 最終決戦終わってから見つかるかもしれないし」
 無明丸はご機嫌に笑い、深緋は気力を移して仲間を回復しながらフォローを入れた。
 城ケ島の敵勢力掃討という任務は無事に果たせたのは間違いが無い。
「それもそうだな。最終戦に遅刻しないように急ごうぜ」
 まだ終わってないが勝利はそう遠い事ではないだろう。
 鬼人は服越しに胸元のロザリオにそっと手を触れ、先を急ぐのであった。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年1月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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