第三次城ヶ島制圧戦~城ヶ島大橋の死闘

作者:のずみりん

「『竜牙兵本土上陸阻止戦』は完遂された! 今こそ城ヶ島を再び取り戻す時だ」
 リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は集まったケルベロスたちへ、快哉と共に巨大な城ヶ島の拡大地図を広げて見せた。
「『ユグドラシル・ウォー』で撤退したドラゴンたちが城ヶ島を占拠してから半年……阻止作戦の結果、新たな竜牙兵の出現は確認されず、状況は安定してきている。マークやピジョン……作戦に参加したケルベロスからの声通り、ここが一気に攻め込み元凶たるニーズヘッグを打倒するチャンスだ」
 現状は維持されていると言え、竜業合体ドラゴンは何時現れるかわからない。生贄となるニーズヘッグたちをこのまま放置するのは将来の危険に他ならない。
「城ヶ島内部にはまだ多数の竜牙兵が残存していると推測されるが、今の我々にはヘリオンデバイスもある。空地共同の飽和攻撃で一気に侵攻すれば中枢まで切り込み、ニーズヘッグたちを討ち果たせるはずだ」
 作戦と状況を説明しながらリリエが指し示したのは城ヶ島大橋。
 先の城ヶ島浸透作戦でも激しい戦闘が繰り広げられた、城ヶ島の正面玄関だ。
「私たちの担当は正面陸路……今回も間違いなく、最も激しい戦場の一つになるだろう」
 建造当時は東洋一ともいわれた巨大な海橋は本土から城ヶ島の中央をぶち抜くようにのび、上陸後は東西に延びるメインストリートに連結している。
 島内全土から援護できる要塞橋であり、確保すれば島内への橋頭保となる要衝。
「作戦は同時に複数の高速艇での強襲揚陸、ヘリオンによる空挺攻撃もあるが、ここを抑えれば各方面の支援となる。逆に抑えられなければ非常に苦しい戦いとなるだろう」
 リリエの話すところは勿論、ドラゴンたちも承知だろう。ゆえにか最大規模の戦力がこの正面玄関には集中している。
「島側の門……料金所はニーズヘッグの一体が守備にあたり、多数の竜牙兵の守備隊も確認された。更にドラゴンが突破の危険を感じれば島の各所から増援が押し寄せるは間違いない」
 だがこれはある意味でチャンスだとリリエは説明する。
「増援の竜牙兵が動員されるということは、それだけ城ヶ島大橋以外が手薄になるということだからな」
 より激しく戦えば、それだけで他の班への援護になる。
 それに今回はケルベロス側も総力戦だ。十分な戦力で攻勢に出れば、外周部の竜牙兵とニーズヘッグを一網打尽に殲滅することもできるはずだと、リリエは力強く告げた。

「死神のミッション地域も壊滅しており大規模な攻撃は行えません。今度は我々が攻めるです、新たな攻撃から護るために」
 両の腕に大盾とゾディアックソードを拵えたソフィア・グランペール(レプリカントの鎧装騎兵・en0010)が言葉少なに、しかし確固たる意志で言う。
「参りましょう、守るべき地を取り戻すために」


参加者
青葉・幽(ロットアウト・e00321)
武田・克己(雷凰・e02613)
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)
端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)
浜本・英世(ドクター風・e34862)
朧・遊鬼(火車・e36891)

■リプレイ

●城ヶ島大橋を取り戻せ
 建造当時は東洋一ともいわれた城ヶ島大橋。
 その人類と竜の領域を分ける大橋の本土側料金所をくぐり、総勢二十五名のケルベロスたちは城ヶ島の姿を臨み見た。
「ここから先は竜の巣か、気をつけて行こう……とは今更言うまでもないことか」
「あぁそうだ。どこまで行っても人の世界であり、奴ら目が不法滞在者であることは動かない」
 浜本・英世(ドクター風・e34862)の軽口にも飛ばしきれないマーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)の重い声。
「城ヶ島大橋で初めて戦ったあの日から、もう五年ほどにもなるじゃろか」
 城ヶ島はこれまで二度解放され、二度奪還された。端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)の遠くを思う声が風に流れ、竜の声が叫ぶ。
「いるな……でも、今度こそ」
 並び立つレヴィン・ペイルライダーが万感を込めて『【箒】~託された想い~』を抜く、その時。
「警戒! テキシュウ! 警戒セヨ!」
「きたな、今回も!」
 竜牙兵たちが片言めいて骨慣らす。
『直刀・覇龍』を抜き放ち、武田・克己(雷凰・e02613)が駆ける。
 橋上に築かれた陣地を前に『ジェットパック・デバイス』が帰天・翔たち旅団の仲間をけん引して離陸する。
「いますね……へっ、ずいぶんと代わり映えのない奴らがなぁ!」
「どんな相手であろうと、ただ斬って捨てるのみ!」
 獰猛な闘志をむき出しにした戦士たちの太刀筋が、銃撃が、強襲に反応した竜牙兵を一撃のもとに葬り去っていく。
「削らせてもらう!」
 竜牙戦士を切り抜けた灰山・恭介の刀が天を衝くや、降り注ぐ死天剣戟陣。竜牙魔術師たちの魔術が中断され、ケルベロスたちは前線を一つ押し上げた。
「敵軍はニーズヘッグを最奥に多重陣を引いています。皆様、お気を付けて」
「支援砲撃を開始する、制圧射撃!」
 黒田・義春が仕掛けた制圧射撃が止まった敵w薙ぎ払う。
 ソフィア・グランペール(レプリカントの鎧装騎兵・en0010)のヒールドローンが盾となり、癒す。
 もはや竜牙戦士や魔術師ごとき相手にもならない。五年前とは質も、量も、圧倒的に違うのだ。
「ゲートももう無いってのに往生際悪すぎなのよトカゲども!」
「もういい加減この島は返してもらう、SYSTEM COMBAT MODE!」
 先陣を切り裂く克己の隊に続くは高機動装備を携えたマークと青葉・幽(ロットアウト・e00321)の空地同時攻撃。
 ジェットパック・デバイスで機動する仲間たちの背後より、阿賀野・櫻の放つメタリックバーストが感覚を研ぎ澄ませ、後光の如く輝いた。
「さぁ、一発派手に行くよっ!!」
 先手を打つシル・ウィンディアの『拡散精霊砲』に散らばった竜牙兵へ、リビィ・アークウィンドのバスタードソードが『光翼粒子斬』を振りぬいていく。
 殺到する竜牙兵たち。そこへ降り注ぐ焼夷弾の連射。
「支援感謝いたします、幽殿」
「因縁はいつかケリつけなきゃいけないのよ……自己犠牲って言えば聞こえは良いけど、自ら共食いの糧になりにいくとか正気とは思えないし」
 ソフィアたちへ『ゴッドサイトデバイス』の情報を共有した幽は声と砲撃で応じる。
 放たれたナパームミサイルは誘き出された陣地を、陣地を飛び出した竜牙兵を丁寧に粉砕していく。
「前はお任せください……盾は簡単に抜けると思わないことですよ」
「この大橋で戦うのも、これが、最後!」
 第二陣地から竜牙兵の魔術、弓矢が浴びせられるなかをケルベロスたちは進軍する。
 リビィの『可変式攻防光盾』が殺到する魔力弾を弾き、フローネ・グラネットの『トパーズ・キャノン』よりそのシールドを突き貫け『紫黄旋嵐砲』を照射。
 マークの元には彼をはじめ、城ヶ島と因縁ある手練れの仲間たちが集い、圧倒的な火力と機動で六百メートルの要塞を次々と突破していった。
「敵陣容は竜牙兵のみ……これだけ実力者の方々がいらっしゃるなら、私は来なくても良かったのでは」
「現在の鏡花くんの実力を見ておきたくてね。それに今回は敵が多い。頭数は多いほど……そら来たぞ」
 長田・鏡花の指摘ももっともという戦力差。英世のアイスエイジが竜牙戦士の一団を凍らせ砕くも、島側の橋向こうには揺らめく影。
「本土より竜牙兵の増援を確認しました」
「いや、それだけじゃねぇ……っ、急ぎで削らせてもらうぜ!」
 ソフィアの報告と同時、相馬・泰地の死天剣戟陣が無数の刃を増援に振らせる。だがその後方、倒れていく竜牙兵を、ヒールドローンごと飲みこんでいく巨大な影。
「シュゥゥゥアァァァァァ!」
「千客万来というわけか!」
 メタリックバーストと共に朧・遊鬼(火車・e36891)が叫ぶそこには、直掩の十字騎士団クルセイダーズたちを従えた巨大なニーズヘッグ『たち』の姿があった。
「無理に突っ込まない方がいい。今は括とマークたちが要、腰を据えて迎撃。後に宣戦を押し上げる」
 嵐のような増援のグラビティの連打に、リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)は『対艦戦用城塞防盾』を地面に突き立て守りを引く。猛進撃がクルセイダーズをも巻き込んで押し寄せるのを受け止め、すかさず殺神ウイルスをカウンターと放つ。
「いかせるかっ!」
 レヴィン・ペイルライダーの制圧射撃に足踏みしたクルセイダーズには括のニブルヘイムシール。厳冬の冷気が霜の領域を展開し、その足を止める。
 ならばとすかさず持ち替え、放たれるゾディアックミラージュ。
 だが一斉射撃に打ち砕かれてみえたそれは、ジジ・グロットの幻夢幻朧影。
「タマ、お手伝いするで!」
「誰がタマだ!」
 とまどう間にも、突っ込む玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)が『きぶし』を漂わせ、傷ついた仲間たちへと気力溜めを与えていく。
「ッガァァァァ!」
「ん……先は長いぞ」
「任せとき!」
 短く信頼を交わすなか、掛け合いを切り裂くニーズヘッグの咆哮。
「マッパにしても、骨と鱗ばかりで色気ないでござるなあ。せめてビキニのドラグナーのお姉ちゃんの一つも連れて来るでござるよ」
「でもオークはない……骨だけなら!」
 次々と破鎧衝を打ち込みまわるカテリーナ・ニクソンの軽口へ、霧崎・天音の『獄炎斬華・死桜』が竜牙兵を武装ごとに焼き切り炎の花欠を散らす。
 戦いはいやおうなく激しさを増していった。

●大橋、奪還
 橋脚がきしみ、悲鳴を上げる。
 ワームじみたニーズヘッグたちが増援と共に大橋を本土方面にむけて進撃しはじめたのだ。
「その巨体で狭い橋をどうするのかと思ったけど……そう来たか」
「姉上、ソフィア殿、ここは退き時でござる!」
 リティの呟きにカテリーナが『忍法マッパの術』を放つが、竜鱗を削り取りあがる血しぶきには顔をしかめるしかない。
「読者サービス……とは、とても言えんでござるな。R-18Gでござる」
「シュゥ、ギ……ギ……ッ」
 その身を削り進むニーズヘッグたちの移動は絡み付き。
 巨大な城ヶ島大橋へ世界樹の根がごとく十重二重に巻きつき、のたうちながら迫る。
 展開したマインドシールドを圧倒的質量で砕いていくニーズヘッグの群れは、さながらヒュドラか八岐大蛇のようでもあった。
「ルーナ!」
「ナノッ」
 その胴体をクルセイダーたち伝わってくる。次々に放たれるゾディアックミラージュをナノナノ『ルーナ』のバリアに頼み、遊鬼もまたその巨体の上へと迎え撃つ。
 切り結ぶケルベロスを意にも介さず突き進むニーズヘッグの上は、まるでベルトコンベアの上を戦うようだ。
「いかん、食い止めんと橋ごとすりつぶされるぞ」
「とはいうが……こういう時、目の前の相手しか攻撃できない自分を呪うね!」
 ブレイブマインを起爆した陣内の指で音を立てる『堕天使の炎』。それを合図に、声とは裏腹の笑いで克己が喰らいつく。
「まずは足を止める!」
「質と量、どっちが強いか、やってみるか? 木は火を産み火は土を産み土は金を産み金は水を産む!」
 螺旋を描くニーズヘッグの猛進撃へ、遊鬼のライジングダークが迎え撃つ。絶望の黒光に照らされたニーズヘッグの頭がたまらず橋上に出た瞬間、克己『直刀・覇龍』を大口へと叩き込んだ。
「ギッ!? ガッ!」
「飛ぶぞ!」
 もだえる体に振り落とされるクルセイダーズ。
 自分たちも振り落とされる寸前、退避した遊鬼らを拾い上げたのはリティの『エアロスライダー』高機動ユニットだった。
「すまない。助かった」
「少々お仕置きが必要かな。内蔵兵装ロック解除……グラビティフィールド展開。放電ユニット起動」
 なおも荒れ狂うニーズヘッグの巨体、ともすればひっくり返りそうなサーフボード型ユニットを、リティは『ライトニングウィップ』をカウボーイのように絡ませて耐える。
「さぁ、お前はもう逃げられんぞ……克己!」
「あぁ……護行活殺術! 森羅万象神威!!」
 竜の爪がごとく研ぎ澄まされた無数の剣閃は、邪悪な竜をとらえ削っていく。貪る竜牙を叩き割り、筒状の口を更に大きく割きながら。
 残霊のカトレア・ベルローズに、差深月・紫音と真田・結城を加えた五重の演武。
 気と大地の気を融合させて切り裂く克己の『森羅万象・神威』がこじ開けた傷口へ、更に捻じ込まれる『鬼病大演舞』。受け取った不浄が武器封じの厄を与え、裂帛の気と共にはじけて光散らす。
「グラマラスな熟女に殺到されるのは歓迎だが……あいにくと、止まる暇はない。お前には、お前だけの美しい夢をくれてやる」
 悶える同族を飲みこみ迫らんとするニーズヘッグへ突きつけられるのは、軽口交じりの陣内の『贋作』
 海に沈むニーズヘッグに美しい夢は見えたのか。
「フッ」
 ウイングキャット『猫』のキャットリングに打たれ、顔そのものを顎とした異形の竜は、東洋の竜橋から海へと消えた。

「あいにくとのんびり待つほど暇してないのよ! 残り一つ!」
「絶対に逃がしません……和奏、いくわよ!」
 進路を迫る新手のニーズヘッグには幽が飛ぶ。
 超低空からの急上昇で、ともに舞うのは水瀬・和奏と水瀬・翼の姉妹。
 アームドフォートから浮遊砲台を展開しての全兵装一斉砲撃『流星の嵐』。姉妹二条の流星雨は重なり合い、ニーズヘッグの身に体液をはじけさせていく。
「頼むぜ、幽さん!」
「ターゲットロック……出し惜しみは無しよ、マーク、ソフィア!」
 翼のそこに打ち込まれる無数のミサイル。白く霧を吹き上げて炸裂する『フロストミサイルサーカス』。
 ウェポンスラスターベンを振るって機動する幽の空戦機動に追従する無数の誘導弾は凍結兵器であり、ドラゴンの背を騎馬とするクルセイダーズをも巻き込んで再生の樹液ごと静止させていく。
「ブレードバレル伸長。コア出力、臨界まで上昇……対ショック、対閃光防御」
 両肩のシールドとゾディアックソードを変形させたソフィアのサイティングナイトヘルムが変形する。
 わずかに生き残ったクルセイダーズが飛び掛かるが、それを遮るものもまたケルベロスの側に控えていた。
「T307D・CORE CONNECT」
『コアブラスター、最大稼働モードに移行します。機動力低下、着陸を推奨』
 多銃身回転機銃『M158』による制圧射撃を行いながら、マークの巨体が滑走路さながらに滑り込む。阻まんと剣を振り上げた竜牙戦士を跳ね飛ばし、残りはミサイルの雨。
「!?」
「無粋なことを、とはいわんが忘れられるのは心外だな」
 儀仗よろしく『凶科学式魔導砲』をつけつける英世。促されるようにマークの『6型追加装甲』が展開し、かつて彼の部隊を滅ぼした竜の化身を思わせる風貌と姿勢でソフィアを抱え上げる。
「ありがとうございます、マーク殿。コアブラスター……」
「MAX POWER!」
 ケルベロスの側にも現れた小さな竜騎士が『MAXIMUM CORE BLASTER』の吐息を放つ。二人のコアブラスターは合流して嵐となり、大橋ごと飲みこみ蹂躙せんとするニーズヘッグをその大口からぶち抜いた。
「終わりじゃ、人世を乱す落ち武者め!」
 及び腰となった竜牙兵の残兵へと括の『六花輪胴』がフリージングブリザードを叩き込めば、今度こそ城ヶ島大橋は人の手へと戻された。

●ここより人の地
「ひふみよいむな。葡萄、筍、山の桃。黄泉路の馳走……」
 数え詩を口ずさみ、括は『いたずら野鉄砲』と共に城ヶ島料金所の周辺へと要石を打ち込んでいく。
 上陸作戦開始からおよそ一時間。背負う『マインドウィスパー』からは三崎魚港、青木造船所へと揚陸した仲間たちからの勝利の報が届いてくる。
 敵は竜牙兵とニーズヘッグのみ。ヘリオンデバイスをはじめ、一年前から格段に戦力を向上させたケルベロスたちの強襲作戦は、もはや数の暴力にも揺るがないほどとなっていた。
「浮かない顔だな、陣内」
「いくつかの例外はあれど、獣は危機を前にすればひるみ逃れようとする……今のドラゴンたちの動き、どう思う」
 ステンドグラスがはめ込まれた『Notre-Dame』パズルが陣内の手の中を回転する。
 はめ込まれたピースに反射する光が天使の意匠を描き、また消える。
 不思議な光景に首を傾げたナノナノ『ルーナ』を撫でながら、遊鬼はなるほど……と『ゴッドサイト・デバイス』を起動した。
「この敗走、いや『撤退』の動き……」
「レミングかしら? いやアレは都市伝説なんだったわね」
 青葉が思わず皮肉を口ずさむほど、デバイスに投影される光点……デウスエクスたちの動きはあまりに統制だっている。
「少なくとも戦況に合わせて兵を指揮するような奴がこの島にいる」
「心当たりはいくつかあるな。だが……」
 陣内の推理へ遊鬼が声を切ったのは、肉眼にも見えた黒い霧。いや、うごめく無数の軍勢。
「おい。おい。アレが全てニーズヘッグ? 出来の悪いハーレムものか?!」
「城ヶ島内のドラゴンが撤退を開始しておる。それもすべて、一斉に!」
 陣内の心にもない軽口に、ウイングキャット『猫』が毛を逆立てる。
 マインドウィスパーが伝えてくる戦況に括の狸耳がピンと跳ねるなか、英世は確信に『凶科学式獣甲『白虎』』の襟を正す。
「知性のないニーズヘッグが一斉に城ヶ島を目指し、今度は一斉に同じ場所へと逃走する。陣内くんの見立てた通りのようだ」
「で、どうする? 島は解放されたし、おとなしく道を譲る?」
「んなわけあるか」
 さらさらそんな気はないという調子の幽の問いに、克己も闘志をむき出しにする。
「分の悪い賭けは大好きでね。ここで息の根止めてやるぜ」
「それにそう悲観したものでもない。『門』はこちらの手に落ちているし、『追っ手』だっている」
 言いながらリティが指し示したのは島から伸びる城ヶ島大橋。
「島と橋は天然の要塞です。包囲を避け各個撃破で当たれば、あるいは」
 分析を義春が補強して言う。
 ここは島から本土に至る唯一の、10メートル足らずの橋。守る側になればこれほど頼れる地形はないだろう。
「ここで逃せば彼奴らはまたやってくる。城ヶ島大橋は、もはや譲らぬ!」
「ああ。これ以上の屈辱はノーサンキューだ」
 因縁に燃える『杜の荒魂』が括の身をほとばしり、修復を終えたマークのボディが戦闘機動を再開する。
「オォォォォォ!」
「てぇぇぇぇー!」
 鉄と吹雪の嵐が迫りくるニーズヘッグを薙ぎ払う。
「これでも喰らえ、ぐれねーっど!」
 エマ・ブランのアブソリュートボムが霜を撒き、竜鱗を凍らせ砕く。
 それでも竜は殺意をむさぼり、群れて迫る。
 押し込む。
「ここで食い止める。追撃班と挟み撃つのだ!」
「黄泉路の馳走じゃ、存分に喰らうてゆかれよ!」
 モモンガより姿を変えた括の『いたずら野鉄砲』が要石の弾丸を叩き込み、先に撃ちこんだ地の弾丸と『伊賦夜道返・戸契括』を縁結ぶ。
 ぎりぎりと周囲を見回すニーズヘッグは彼の地にどのような幻影を見たのか?
 わからぬことを考えても仕方なしと、英世は冷たく止めの刃を投げた。
「切り裂け!」
『冷酷! 切り裂く苦痛の歯車!』
 三枚の歯車が傷ついたニーズヘッグをえぐり、その身を三等分に切り刻んでいく。
「肉片も残さねぇ……跡形もなく消えやがれ!」
 すかさず放たれる翔の『カオティックファイナルバスター』。
 体ごと支える腕のSFキャノンから放たれた混沌光線が、続こうとするニーズヘッグを飲みこんだ。

●ドラゴン・ジョー・ライズ
「頭数が必要なほど敵が多い、なるほど理解しました」
「少々想定を超えつつあるがね。古き人類の英知よ、今しばし耐えてくれたまえ……!」
 珍しく得心したという鏡花に英世は内幕を隠さず、きしむ城ヶ島大橋へと呼びかける。
 その身は既に海上、陣内のレスキュードローン・デバイスの上にあった。
「要石が保たぬ……次が来るぞ!」
「エナジープロテクション、突破……馬鹿力にもほどがある」
 括の打ち込んだ『伊賦夜道返・戸契括』の弾丸が地面ごと引きずられる。
 押しつぶされていく『対艦戦用城塞防盾』を投げ捨て、リティも思わず声を上ずらせた。
「だーいじょーぶ! ファイアー!」
 だが拘束を力技で引き千切り城ヶ島大橋を昇るニーズヘッグにエマが構えた『PBW』を照準、発射。
 大口が弾頭を飲みこもうとする瞬間、幽の『Eurypterid Mk-Ⅱ"Pterygotus"』が制圧射撃を叩き込む。
「弾着……よし」
「隠し玉、という程でもありませんが《lock and load!》――ルーイン・ショット」
 爆発。
 口内に炸裂する圧力波が、同時に鏡花の腕部装甲より電磁射出された『機壊礫弾』を巻き込んで、深々と足止めする。
 あざやかな連携に英世が声を弾ませた。
「いい判断だ、鏡花くん」
「今のうち、後方を!」
 幅十メートルもない城ヶ島大橋は一体が倒れれば完全に封鎖されてしまう。
 先頭に覆い被さりながら乗り越えようとするニーズヘッグたちに『Oath of Knighthood』を翻し幽は叫ぶ。
「……お前も同じか」
 猛進撃に振り回される尾に身を裂かれながら、遊鬼は飛びついた料金所へふと呟く。
「燃えてしまえば、最期まで」
「ギエエエェェェ!」
 引き抜いた簒奪者の鎌がデスサイズシュートを叩きつけ、絶叫。
 遊鬼が飛び退いた後には質量に粉砕された料金所の屋根。それでもまだ橋は無事だ。
 何度となくデウスエクスの手に落ち障害と化した橋は今、傷つきながらも落ちぬと人類と共に戦っていた。
「風雅流千年! 神名雷鳳! この名を継いだ者に、敗北は許されてないんだよ!」
「塵一つ残さず燃え尽きろぉぉぉぉ!」
 もはや足の踏み場も消えつつある大橋脇の岸壁で、克己と恭介は踊る。圧倒的質量を紙一重に交わし、『Revellion』に血をにじませ傷つきながらも、全身のバネを乗せた『雷刃突』がニーズヘッグに突き刺さる。
 貪る竜牙に飛び退く克己。
 血を噛んだ巨竜の頭部が『我流剣技・地獄炎葬剣一閃』に一つまた叩き割られた。

『M158、残弾ゼロ』
「ARMD FORT STANDBY」
 伸びきったベルトリンクと共にマークの両腕からガトリングガンが切り離され、背から展開された『XMAF-17A/9』アームドフォートが制圧射撃を仕掛けていく。
 黒鋼の戦闘マシンが大橋を走る。飛ぶ。
 航空戦用にシールドも重装も排除したゆえの軽さだが、それに臆する彼ではない。
「橋が、守ってくれています……今こそ!」
 狭い本土より、橋より、尾を振るい、長大な体を伸ばして食いつかんとするニーズヘッグたち。
 直撃すればただでは済まないそれも大橋に遮られ、フローネの『アメジストシールド』にヒビを入れつつも食い止められている。
「火よ、水よ、風よ、大地よ……さぁ、一発派手に行くよっ!!」
 シル・ウィンディアの『精霊石の指輪』が描く法陣からの『拡散精霊砲』。また一体のニーズヘッグが力尽き、海中へと没していく。

「ブースト起動、格闘戦に移行する……後いくつだ」
 むき出しになった骨格をアームドアーム・デバイスで支え、リティはニーズヘッグの腹側から『対デウスエクス大型高周波ダガー』を突き立てる。
「見る先が違うわよ、こっち、さぁこっち……Look at me! Look at me!」
 のたうつ体が骨組みごとリティを押しつぶそうとするのを櫻の『執着の魔眼』が固着する。すかさずマークのナパームミサイルが斉射され、石と化した竜が吹き飛んだ。
「GOOD JOB」
「助かった……」
 埋まりかけた橋から引っ張り出され、そのまま後退する。既にもうお互い武器もない。
「最後の武器は筋肉だ! 自慢の足をお見舞いしてやるぜ!」
 じりじりと前進するニーズヘッグへ泰地の『巨人の足』がたたらを踏む。衝撃波に橋が、竜が揺れて足踏みする。
 自分たちも、いま立つこの足場も耐えきれるのか?
「そろそろ、保たんな……」
「歳?」
「俺じゃなくて、橋」
 ジジに引っ張り上げられ、ウイングキャット『猫』を抱きかかえた陣内が吐く息は荒い。
 攻めのマーク、情報の括と共に、メディックの彼は倒れることを許されない。そろそろ癒しも品切れだが、レスキュードローンという足場を維持する役目がある。
「いや……そうでもないか」
「あぁ。どうやらな」
 凶科学式獣甲の白も見る影ない英世だが、そう答える彼には余裕が垣間見えた。
 橋上より見渡せば、地面を埋め尽くしたニーズヘッグはもう数もない。代わりに押し寄せるのは頼もしい仲間たち。
「残り……これで一つ!」
「あと一押し、いこうか諸君!」
 両腕より氷炎のダブルスパイラルバンカーを叩き込み、押し返す天音。
 最後の一つとなった巨体目掛け、英世の『凶科学式魔導砲』が高らかにバスタービームを咆哮した。
「どうにか報いれたかの……杜よ」
「ALL……DOWN」
 括の最後の要石を乗せ、パワー全てを振り絞ったマークのコアブラスターが橋を架ける。
 橋を締め上げるニーズヘッグに突き刺さり、突き抜ける。

 そして、第三次城ヶ島制圧戦は終わりを告げた。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年1月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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