第三次城ヶ島制圧戦~城ヶ島よ再び 蜂起の時!

作者:ハル


 集まってくれたケルベロス達を前に、山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)が笑顔で頭を下げながら口を開く。
「皆さんが奮闘して下さっていた城ヶ島の『竜牙兵本土上陸阻止戦』ですが、この度、見事成功が確認され、竜牙兵の本土上陸を阻止する事ができました!」
 すると、ケルベロス達の表情にも笑顔と安堵が浮かんだ。
「その後の様子ですが、現在まで新たな竜牙兵の出現は確認されておらず、情勢は安定傾向にあります。ですが――」
 そこで桔梗は一瞬間を作る。それにより、場の空気が引き締まった。
「制空龍ファトフ・シャマイムらが予言した、竜業合体のドラゴンがいつ現れるか。現状私達には判別がつきません。そんな状況で、ニーズヘッグを放置するのはあまりに危険です」
 そこで桔梗は、事態を案じて既に動いてくれているケルベロスの名を出す。ティアン・バ(呼ぶ声遠く・e00040)、アンゼリカ・アーベントロート(黄金騎使・e09974)、マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)ら、8名程の名を。
「彼らからは、城ヶ島を奪還するための第三次城ヶ島制圧戦が提案されました。複数の方角から、一定以上の戦力でもって城ヶ島に侵攻。飽和攻撃を敢行します!」
 城ヶ島深くまで足を踏み入れ、竜業合体ドラゴンの贄となるニーズヘッグを出来るだけ多く撃破してもらいたい。


「具体的な進行ルートとしては6つ。城ヶ島大橋方面。揚陸艇で灘ヶ崎から上陸。水中から黒島堤防へ。高速艇で、馬の背洞門と旧安房埼灯台跡から上陸。ヘリオンによる上空からの降下作戦などなど……」
 その中から桔梗がモニターに表示させたのは、高速艇での上陸案。
「私達は千葉県側から高速艇で、旧安房埼灯台跡を目指し、上陸を狙います。岬の先端付近に旧安房埼灯台跡があり、周辺の地形は磯場でしょうか。城ヶ島の中心地に進んでいくと、神社やリニューアルされた安房埼灯台、城ヶ島公園など比較的開けた場所に繋がっています」
 続いて桔梗は、作戦の流れを説明する。
「本土上陸は阻止しましたが、城ヶ島の外周部には依然として竜牙兵の残存部隊の存在が確認されています。なので、まずは竜牙兵を一掃するのが先決――といいたい所ですが、海路で城ヶ島を目指す皆さんの場合は、高速艇での移動中に、海底に溢れていたニーズヘッグといきなり戦闘に発展する可能性があります。あくまで可能性ですが、警戒は必要でしょう」
 ともあれ、海底のニーズヘッグを撃破、あるいはやり過し、竜牙兵を突破した後は、城ヶ島に蔓延るニーズヘッグとの戦闘が本格化するだろう。
「そのニーズヘッグですが、皆さんのご存知であるそれと同様であると考えてもらって大丈夫だと思われます。知性を持ち合わせず、贄としての本能があるのみです」
 また、城ヶ島でヘリオンによる降下作戦を行う別働隊を確認できた場合には、出来る限りの支援を行った方がいいだろう。夥しいニーズヘッグが拠点としている城ヶ島への降下は危険が伴うためだ。
 万全な状態で行動できる部隊が多い方が、より全体的な結果も得やすいはず。
「エインヘリアルの残党や死神の動向も気になりますが、だからといってドラゴンを放置する訳にも参りません。今こそが、城ヶ島を奪還する時なのです!!」


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)
リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)
植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)
鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)

■リプレイ

●城ヶ島上陸
 高速艇の船首に立つウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)が、閉じた瞳をスッと開いた。数瞬遅れて彼女の赤の瞳に映るのは、海面から飛び出そうと構えるニーズヘッグの姿。
「ゴッドサイトデバイスに反応あり。二時方向――来ます!」
 そうはさせまいと、ウィッカが竜砲弾を海面に向けて放つ。
 猛烈な衝撃に押され、ヨロヨロと勢いを失くして飛び出したニーズヘッグを、フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)が獄炎でもって迎え撃った。
「此レ為Ruハ珠玉ヲ飾リシ矛ノ逆事。アS∀マノ猛リヲ顕現ス。火ト硫黄ヲ以テ、アメツチヲ地獄ニ還サン」
 やがて訪れたのは静寂。ニーズヘッグの影が薄い海上を選択した事により、襲撃は散発的。とはいえ、これから数えるのも嫌になる程のニーズヘッグとの交戦が予想されているのだ。当面の敵を掃討してなお、誰もが表情に緊張感を浮かべている。
「そろそろですね」
 紙媒体に書き込んだ、地図と現在地の詳細を整理し、ワイヤレスイヤホン型のデバイスを通じて脳裏に思い浮かべた鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)が、目的地が近い事を仲間に報せる。
「ん、じゃあお菓子はしばらくお預けだねー」
 ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)が、アイテムポケットから取り出したお菓子を、頭上で寛ぐボクスドラゴンのペレと分けつつ、名残惜し気に咀嚼した。
「岬が見えて来ましたね。……だけど、あれ? 外周部にいるはずの竜牙兵が――」
「ええ、随分と個体数が少ないわね」
 目的地の到来に際し、ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)と植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)が顔を見合わせる。
 必然、ケルベロスの視線はマインドウィスパー・デバイスを有する奏過へと向いた。彼は微笑を交えて頷くと、城ヶ島大橋方面で戦端を開いた部隊が、派手に動いてくれている事を口にする。
(「やっぱりそうなのね……!」)
 ガートルードはある程度予測していた内容からその流れに納得しつつ、磯場や旧安房埼灯台跡の上を、足の踏み場がない程に占拠しているニーズヘッグを窺う。塒を巻く様子は、見た目も相まって悍ましさを十二分に周囲へと撒き散らしていた。
「でも、竜牙兵の変わりにニーズヘッグは凄い数がいるね。この辺りの環境がニーズヘッグ好みなのかな? それに……なんだか眠っちゃってる……ぽい?」
「――の、ようだな。私達ケルベロスを前にして、ふてぶてしくも惰眠を貪っているらしい。好機だ」
 図らずも、奇襲を仕掛けられる状況。影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)が瞬時に自身の感覚を研ぎ澄ませ、リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)が髪をポニーテールへキツく束ねた。そして、サポートしてくれる面々に「準備はいいか?」と問いかける。
 彼女ら、彼らの返答は聞くまでもない。成すべきことを為すために、この場に集ってくれた猛者達なのだから。
「ここは城ヶ島中央から離れていますからぁー、ニーズヘッグの警戒心も薄れているのでしょうかねぇー?」
「……その可能性はあると思うわ、フラッタリーさん。それにリィンさんの言う通り、これはチャンスよ。移動が遅れたと思しき竜牙兵の残党の口を塞いだ後、ニーズヘッグに奇襲を仕掛けましょう! 城ヶ島は、必ず奪還させてもらうわ!」
 碧が告げ、「それでは皆々様ー、鏖殺ですのよー」変貌し、狂奔するフラッタリーの過激な檄を背に、ケルベロス達は即座に岬への上陸を試みるのであった。

●城ヶ島公園攻防戦
「雷よ!我が前に立ちふさがる者どもを束縛せよ!カラミティスパーク!」
 ウィッカが五芒星を纏い、広範囲に電撃を撒き散らす。
(「ニーズヘッグを放置する事の危険性は、竜十字島での一件で私は目の当たりにしてるんだ。絶対に阻止しないと!」)
 リナが魔法の木の葉で自己強化を図り、
「これ以上誰かが傷付く位なら……存分にみせてやる。この異形の姿を! 恐れ戦け! お前に……明日はない!」
 ガートルードがワイルド化された左の巨爪で拘束された竜牙兵を両断。
 サポートの一斉攻撃及びエンチャントも加わり、少数の竜牙兵を瞬く間に排除する。
「さぁてと、上陸成功だぜ! お休み中のニーズヘッグには、そのまま永遠に眠っといてもらおうじゃん!」
 ケルベロス流のおはよう――もしくはおやすみの挨拶として、碧の戦乙女の歌を力にタクティ・ハーロットの魔王掌が炸裂する。ミミックが、派手に財宝を撒き散らした。
「俺も先輩らに置いていかれんようにせなあかんな。背後の海の様子は俺が警戒しとくさかい、先輩らは前に集中してや!」
 磯場であろうと、仮にここが海中であろうとも美津羽・光流に二の足を踏む理由はない。そこが彼の領域であるかのように、光流は荒れ狂う波となってニーズヘッグを圧壊させていく。
 合わせて、フラッタリーが放つ、焔を纏う大量の魔法の矢が空を覆った。
「さすが、頼りになる。那岐、光咲! 私達も負けてはいられないな!」
 祝福の矢が放たれ、光の戦輪が進行上のニーズヘッグを吹き飛ばす中、リィンは耳に届くダンスナンバーに合わせてリズムを取り――天空より召喚した無数の刀剣と共に舞い踊った。
 ケルベロスは連携し、ニーズヘッグの各個撃破を狙う。
 だが……!
「さすがに、いつまでも寝ぼけ眼ではいてくれませんか。アリーヤさんは負傷者にヒールグラビティをお願いします」
「うん、頑張っちゃうよっ!」
 奏過の指示を受け、アリーヤ・ヴェルチェ(ヴァルキュリアの鹵獲術士・en0305)がウィッチオペレーションを行使する。
「しばらく動かないで頂けるとありがたい!」
 奏過は、本能に任せた挙動を取り戻そうとするニーズヘッグを、雷に似たグラビティを纏った鎖で捕縛。火力を集め、確実に仕留めていく。
「お世話になった人の力に、期待に応えたい! みんなの情熱に一陣の風を!アンスリウムの団扇風!」
 那磁霧・摩琴が薬瓶を投げ割る。吸い込むと赤・白・緑のアンスリウムの幻影が舞った。
「うん、確かに受け取ったよ、摩琴! 次は、私達が応える番だよねー!」
 ノーフィアが操る重力と加速を宿す刺突剣が、蠢くニーズヘッグを花の嵐の中に閉じ込め自滅に追い込む。
「風舞う刃があなたを切り裂く」
 リナの武装から魔力と幻術が混ざり合った無数の風神が乱れ飛んだ。
「此ノ獄門、煉獄二通ZU門也。血肉乃奉献能ワ不、且nO竜之骸ヲ燔祭二焼ベヨ!!」
 この状況下では、岬で敵の注目を集めるよりも、戦線を押し上げる事こそ肝要だろう。勢いを取り戻そうとするニーズヘッグ共に楔を打ち込むように、フラッタリーが獄焔を放つ大刀を縦横無尽に振るい、消耗したニーズヘッグを消し炭も残さずに消滅させた。

「――っ、ここはうみのね広場近くだと思います! もう少し進めば、城ヶ島公園に辿り着くはずです。そうなれば、中央部までは残り半分程度です!」
 辺りを確認し、次々と突撃してくるニーズヘッグの高精度の突撃を喰い止めるガートルードが声を張り上げる。
 気付けば、ケルベロス達は洲乃御前神社、城ヶ島砲台跡、第一、第二展望台を突破していた。
「半分、ね。しかし、こうも大忙しだとは思わなかったよ、ガートルード。家でテレビでも観ていればよかった……なんてね」
 ガートルードが抑え込むニーズヘッグに向け、豊田・姶玖亜がフォーリングスターから目にも止まらぬ弾丸を撃ち出し、着実に数を削る。
「そう仰らず。ありがとう、姶玖亜さん!」
「まったくキミは。……でも、どういたしまして、だよ」
 軽口も、こんな状況下にあっても変わらぬガートルードの笑顔の前では形無しか。もしくは、図らずも、もっと働かなければと思わされてしまうようだ。
「ペレもご苦労様だよ」
 頑強な翼でニーズヘッグの捕食行動を受け流したノーフィアは、吸収された体力をサポートメンバーやペレにフォローしてもらいつつ、竜砲弾を龍の吐息の如く放ち、ニーズヘッグを大地諸共吹き飛ばす。
 サーベルにも似たリィンのゾディアックソードから、山羊座のオーラが飛来させ、
「ゲートは潰したというのに、ドラゴン勢力はなかなかのしぶとさですね。ニーズヘッグ……あなた達もその例に漏れないという事でしょうか!」
 ウィッカが、クリスタライズシュートでニーズヘッグを切り裂いた。
「ここまでは、至極順調だな。他の戦線もそうなのだろう、奏過?」
「シェンファさんの仰る通りです。私の元にも、各戦線で勝利を収めているという報告が届いていますから」
 とはいえ、それは城ヶ島という広大な土地の中での、小規模な戦線での話。
 それを証明するように、時間の経過に合わせて変化が生じ出す。
(「何か変だわ……!」)
 スノーが壁となってくれている間に、碧は仲間へのエンチャントを終え、炎を纏った激しい蹴りでニーズヘッグを蹂躙する。
 碧の中で、何かが釈然としない。
 そして、それと同じ思いをサポートメンバーも含めた全員が感じているに違いなかった。
(「……違和感を感じる。俺が緊張しているから?」)
 おおわらわのDf陣に、地道に光の盾を始めとするヒールを施しながら、ダスティ・ルゥの胸中は違うと告げている。
 ――キシャアアアアアアアアアアア!!
 ニッズヘッグの怒号が響き、彼の兎耳はビクリと震え、ゴーグル越しの茶色に瞳が状況を把握する。
(「み、みみみ、みなさん!!」)ダスティは仲間を想い、声無き悲鳴を上げた。

「ニーズヘッグの数が、全然減ってないよ!?」
 リナが呪詛を乗せた斬撃を放ち、ニーズヘッグを両断するも、敵全体に与える影響としては軽微に思えた。戦闘が始まって、かなりの時間が経過しているし、相当数のニーズヘッグを撃破もしている。にも関わらず、ケルベロス達が押し込んでいたはずのニーズヘッグは勢いを弱める所か……。
(「増えている可能性すらありますね。ニーズヘッグの怒声に紛れて、デバイスを通さなければ互いの声さえ通らなくなりつつあります。恐らくはこの地点に、ニーズヘッグが集結を始めているのでしょう」)
 場所は城ヶ島公園を目前とした草原エリア。光の粒子と化して迫るニーズヘッグを薙ぎ払う奏過。しかし情報を分析して導き出された回答に、歯噛みせざるを得ない。
「まだ、大丈夫! 少しづつ、少しづつ進もう!」
 これ以上なかなか戦線を押し上げられず、牛の歩みとなった中、リナが仲間を励ます声を上げる。
「分かっているよ。今出来る事を、だね。僕とペルルが盾になる。だから――」
 ――導こう。星の輝きが星図となって瞬く中、ティユ・キューブとペルルが、猛然と襲い、喰らいつくニーズヘッグに対し、一歩も引かずに踏み止まる。
 隙を突き、哄笑を上げるフラッタリーが敵陣の中で、得物を足場に突き刺した。「地獄化」した広範囲を結界とし、焔の奔流が大地を染め上げる。
「くっ――まだまだぁ! 私はこんな程度じゃ怯まないんだよ!」
 ペレの背後から飛び出し、龍の顎門から抜刀したツィルニトラを一閃させるノーフィア。
「……厄介な状況ね。まだすぐに押し返される程ではないけれど、拮抗状態には持ち込まれようとしているわ……! スノーも、よく耐えてくれたわね……!」
 落とされたスノーに労いの言葉を述べながらも、碧がオーラを溜めて、自身を含めた負傷者の応急処置を。
 しかし時間の経過に連れ、星のために命を賭す事に躊躇いのないノーフィアや、火力の一翼を担うクラッシャーであるフラッタリーまで、自身へのヒールに手を取られていく。
「しぶといだけでなく、自己犠牲に躊躇いのない存在。マジックアイテムの実験台としては申し分ないのですが……。ウォーレンさん、お願いします」
「ああ、任せておいて欲しい。がんばりやさんも、もうちょっとだけ頑張ってくれ!」
 傷ついた身体をウォーレン・ホリィウッドのヒールとエンチャントで癒されながら、ウィッカがマントを翻し、掌に顕現した五芒星からドラゴンの幻影を解き放つ。
「ここは私が引き受けます!! さあ、皆さんは先に進んでください!!」
「足止めを喰らう訳にはいかない。ニーズヘッグの数は、可能な限り減らしておかないといけないわ」
 源・那岐がニーズヘッグの怒りを惹きつけ、烏羽・光咲が地獄を纏った羽を投擲する。
「有難い申し出だが、手柄をお前達だけに譲る気はないさ」
 仲間の覚悟に満ちた言葉にリィンは一瞬だけ屈託のない笑顔を見せるが、すぐに引き締めた。また、視界を埋め尽くすニーズヘックの物量を考慮すると、突破できるか否かは限りなく不透明に思えた。
 その時――(「こちら北東チーム、今から援護に向かう。待っていてね」)
 ケルベロス達の元へ、逐次デバイスでこちらの状況を伝えていた奏過を通じ、齎された援軍到来の情報。勝利の女神に見放されていない事をケルベロス達は知る。

(「北東チームへ、援護感謝します! 私達もまだ戦えます。耐えてみせますとも!」)
 その朗報を、誰もが耳にしていた。
「ペレ、それに摩琴達も! お菓子休憩まで、もうちょっとだってさ!」
「援護に来てくれる彼らに、情けない姿を見せる訳にはいかないな! ――この世に形を得た悲しみの欠片達よ、我と共に舞い踊れ!悲しみを全て束ねた欠片、悪意断ち切る一刀に変えここで貫く!……全てを零に!」
 しかしこの場のいるケルベロス達は、ただ救いの手を待っているだけの存在では決してない。女神が微笑まないのであれば、無理やり微笑ませるだけの気概を持った精鋭である。
 ノーフィアの龍の顎門が火を噴き、リィンの無数の小さな氷の刃を乗せた拳撃が、心胆から凍えさせる冷気と共にニーズヘッグへと叩き込まれ、大太刀によって一蹴する。
「あっ、来てくれたみたいだね!」
「セントールさん達ですね! 3人……という事は、先行部隊でしょうか。それだけ急いで来てくれたんですね!」
 リナとガートルードの視界に映る、草原を疾走する北東チーム。
 雷が、瞬時の加速と共に突き立てられた雷刃突が、ニーズヘッグを血祭りにあげていく。
 黒髪の三つ編みを風に揺らすセントールの青年が青銅の槍を掲げると、こちらも負けじと武器を掲げ、健在であることをアピールする。
「この位置関係ならば挟撃ができそうね! 一気に決めるわよ、皆!」
 気勢を上げる碧を筆頭に、鳴り響くセントールの蹄の音に負けないくらいの勢いで、後顧の憂いを断つ事に成功したケルベロス達は攻勢に出る。
 到着した北東チームの主力の到着と同時に、城ヶ島公園における勢力図は一気に逆転。
「本当に感謝します。ですが、これで……!」
 ウィッカの炎と氷、両属性によるグラビティが戦場を支配する。
 リナの稲妻突きが迸った。
「サァ、鏖殺ノ再開デスワ。皆殺デ撃滅ノ殲滅デ駆逐デス!!」
 獣染みた獰猛な動作で、フラッタリーが従えた野干吼が暴虐と煉獄を撒き散らす。
 やがて城ヶ島公園に集ったニーズヘッグの命運は尽き、ケルベロス達は最後の仕上げに向かう。

●包囲網
「逃がさないよ! ……ここまでニーズヘッグの襲撃は散発的だね。と、いう事は、この先に!」
 チェイスアート・デバイスを活用したリナの呪怨斬月が、背中を見せるニーズヘッグを断ち切る。
 城ヶ島公園で合流した部隊と共に、ケルベロス達は城ヶ島大橋に目標を向けた。そこでは大橋を確保した部隊が押し寄せるニーズヘッグと激戦を繰り広げ、そしてその中で逃走を図ろうとするニーズヘッグを、戦線をここまで押し上げてきた他数部隊により挟撃し、包囲殲滅を敢行中だ。
 キャスターの元にはそれぞれの戦況と、そして包囲網に参戦する旨があがって来ている。
(「私達は城ヶ島の南東――旧安房埼灯台跡方面よりに上陸した部隊です。ニーズヘッグの包囲網に加わらせて頂きます!」)
 そして到着次第、奏過が告げる。
「作戦内容はシンプルですのねー、分かりやすくてー、私好みですのよー」
 再度フラッタリーのサークレットが展開し、金色がニーズヘッグを捕捉する。
「多方面から圧し潰せ、という訳ですね……!」
 大橋に意識を向けたニーズヘッグへと、ウィッカの轟竜砲が放たれた。
 蒼の翼を畳んだリィンが、死天剣戟陣を解き放つ。
 その後も――焔の奔流が。
 ドラゴニックミラージュが。
 グラインドファイアが。
 雷の縛鎖が。
 グレイブテンペストが。
 フラワージェイルが。
 血襖斬りが。
 神威氷刃乱舞が。
 サポートメンバーの猛攻と補助が。
 ケルベロスの力となり、同時に容赦なく城ヶ島に蔓延るニーズヘッグに次々と致命傷を与えていく。
「これだけの戦力が一か所に集えば、行けます!」
 今やニーズヘッグは袋の鼠も同然。ワイルド化されたガートルードの巨大な爪が連撃を繰り出す。
「万全とはいかないまでも、問題なく戦える状態になったんだ。最後までわたし達に付き合ってもらうからねー!」
 攻撃対象はこれまでと同様に、瀕死のニーズヘッグを最優先に。壁役から順次排除。それらを、回復できない負傷に気を払いつつ、ノーフィアが放つ爆撃が次々と蹴散らしていく。
「どこも派手にやっているみたいだね! でも、これだけじゃ終われない。この島を完全に取り戻さないとだから!」
「ええ、その通りね。城ヶ島における第三次作戦……4度目は来ないわ!」
 リナの風舞う刃が道を生み、碧が時折エンチャントを交えつつ、エスケープマインで応戦し爆撃。
 巻き上がる煙幕と土煙の中、進軍するガートルードやリィン達前衛に、タクティやティユらサポートメンバーも追随する。脇を固めるのはウィッカ、奏過ら中後衛。さらに光流の視線に人当たりのよい笑みで応えるウォーレン、そしてダスティ達メディック陣が、ペレと共に、火力に寄ったメインメンバーを後ろから全力で支えている。
「もう一歩だ!」
 リィンが小さな氷の粒のようなオーラを溜めながらも、前へ。
 複数の戦線が突き進む度、ニーズヘッグが様々なグラビティの餌食となり、弾け飛ぶ。
 フラッタリーの獄炎が燃え盛り、ノーフィアが弱点を見極めた個体を漆黒の球体に引き寄せて圧壊させた。
 ――鎧袖一触。
 完全包囲されたニーズヘッグの様子は、まさに、そう呼ぶに相応しい光景。
 ニーズヘッグの圧倒的な物量差に苦戦しながらも、メインと、そしてそんな彼らを懸命に支えてくれたサポートの奮闘により、第三次城ヶ島制圧戦はニーズヘッグの掃討という結末で幕を下ろす。
「勝利だーーーー!!」
 作戦の完全成功に、戦場のどこからともなく、歓声が上がるのであった。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年1月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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