魔導神殿追撃戦~金牛の殺害者

作者:椎名遥

「皆さん、『アスガルド・ウォー』での戦い、お疲れさまでした」
 集まったケルベロス達を見つめると、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は深々と一礼する。
 エインヘリアルとの決戦『アスガルド・ウォー』は、ケルベロス達の勝利に終わった。
 英雄王シグムンドを討ち取り、地球を繋ぐゲートの破壊にも成功。
 これによって、エインヘリアルとの戦いには、一つの区切りがつくことになるだろう。
「ですが――エインヘリアルの残存兵力が、魔導神殿群ヴァルハラの宮殿と共に地上に出現してきました」
 金牛宮「ビルスキルニル」、白羊宮「ステュクス」、双児宮「ギンヌンガガプ」。
 戦争の中でシグムンドによって転移させられた三つの神殿は、守護する王族や防衛部隊と共に地上へと姿を表している。
 それ自体が移動要塞であるとともに、それぞれが特殊な力を持つ神殿の力を活用されれば――戦いの果てに掴んだ勝利すら、覆されかねない。
 故に、
「皆さんは、金牛宮『ビルスキルニル』の迎撃に向かってください」
 そう、セリカはケルベロス達を見つめる。
 第四王子ジーヴァが護っていた、金牛宮『ビルスキルニル』。
 周囲にグラビティの落雷を落とす破壊兵器でもある神殿は、アスガルド・ウォーの敗残兵を吸収して戦力を増強した上で鎌倉駅へ――『蒼のビフレスト』へと向かい進軍を始めようとしている。
 かつて、エインヘリアル第一王子であるザイフリートが地球侵攻時に使用した『虹の城ビフレスト』の中枢である『蒼のビフレスト』。
 今回の進軍は、その力を狙ってのものと思われるが……。
「幸い、と言いますか……避難訓練が行き届いていたおかげで、鎌倉市民の方達の避難は間に合いました」
 鎌倉奪還戦で一度壊滅していたからこその結果に、複雑な表情を浮かべつつもセリカは地図を示す。
「皆さんは鎌倉駅で金牛宮を待ち受け、目的地についた金牛宮が移動形態から停止形態へと形状を変化させる隙を突いて内部に突入してください」
 駆動部や変形部など、形態変化時にはいくつもの隙間が発生することが予知されている。
 その場所を選べば、問題なく金牛宮内部に突入することができるだろう。
「そうして突入した先、金牛宮内部では『嘆きの無賊』との戦いになります」
 第四王子ジーヴァの率いる傭兵部隊『嘆きの無賊』。
 単純な殺し合いを求めるジーヴァの旗下故か、敗戦を経てもその士気に翳りは無く――だからこそ、ここで倒せなければいくつもの災厄の種となるだろう。
「皆さんが戦うことになるのは、『嘆きの無賊』を取り仕切る部隊長。殺害者を名乗るエインヘリアルです」
 二振りのチェーンソー剣を操るエインヘリアル『殺害者』。
 かつてはザフリートの側近を務めるも、自らの欲求を満たすためにジーヴァの元へと身を寄せ。
 その後、十数年で傭兵部隊を取り仕切る部隊長にまで上り詰めた手腕は、個人の武勇だけでなく指揮官としても有数のもの。
「殺害者は二名の部下を従えていますが……戦いが長引いた場合、周囲の警戒に当たっていた部下の参戦も予想されます」
 相手は強敵で、長期戦は相手に有利。
 出来る限り速やかに。だが、焦れば足元をすくわれる。
「厳しい戦いになると思われます。ですが、退くわけにはいきません」
 壊滅を経て復興した鎌倉を再び焼き払われることには、セリカにも、ケルベロスにも忸怩たる思いがある。
 だが、金牛宮を止めることができなければ、その厄災は地球全土へと広がることになる。
 人命さえ守れれば、町は再び復興できる。
 そして、ここで決着をつけることができれば――次の復興を最後にできる。
 だから、
「アスガルド・ウォーの延長戦です。皆さん――御武運を」


参加者
ティアン・バ(呼ぶ声遠く・e00040)
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)
神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898)
武田・克己(雷凰・e02613)
美津羽・光流(水妖・e29827)
チャル・ドミネ(シェシャの僕・e86455)

■リプレイ

 大地が揺らぎ、大気が震え。
 轟音と共に閃光が走るたび、周囲の建物が砕かれ崩壊する。
「人んちの近所で何しとんねん! いくら丑年かて金牛宮なんて誰も呼んでへんわ」
 崩れ落ちる建物の姿に眉を寄せ、顔を上げる美津羽・光流(水妖・e29827)の視線の先にあるのは、雷光を放ち鎌倉を駆ける巨大な宮殿。
 アスガルド・ウォーを生き延びた宮殿の一つ、金牛宮『ビルスキルニル』。
 かつて、『人馬宮ガイセリウム』が襲来した時には、ケルベロス達の一斉砲撃でその動きを止めて乗り込んだ。
 だが、今回は――別々の思惑で動く3つの宮殿に対応しなければならない状況では、それを行うことはできない。
 けれど、
「往生際の悪い事です」
 軽く息をつくチャル・ドミネ(シェシャの僕・e86455)に頷き、神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898)のデバイスから伸びる光が仲間達を繋ぎ、その身を宙へと浮かべる。
 移動中の金牛宮を止めることは出来なくても、停止するために形態を変化する隙を狙えば突入は十分可能。
 アスガルド・ウォーではあまり活躍できなかった分も此処で発散するとしよう」
 不敵な笑みを浮かべる柧魅と共に、ケルベロス達は宙を駆ける。
 展開する装甲、蠢動する機構。
 無数の金属が唸りを上げるその隙間を、止まることなく、速度を落とすことなく駆け抜け。
 そして、
「抜けた――っ!」
 機構部を潜り抜け、金牛宮内部へと入り込み。
 ティアン・バ(呼ぶ声遠く・e00040)が周囲に視線を走らせ――飛び退く直後、その空間を白刃が薙ぎ払い、
「ふっ!」
「させん!」
 続く追撃の双刃を、武田・克己(雷凰・e02613)の刃と新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)の鎖が食い止める。
 鎖を絡みつかせながらも唸りを上げ、諸共に断ち切り押し切らんとする二振りのチェーンソー剣。
 その回転に刃を弾き飛ばされないよう、刀を握り、腰を落として得物を構えて克己は眼前の敵を見据える。
(「殺害者ね」)
 二振りのチェーンソー剣を操るエインヘリアル『殺害者』。
 自らの求める戦いのために主を変え、数多の戦場を渡り歩く『嘆きの無賊』の部隊長。
 その口元に浮かぶのは、強敵と戦えることへの歓喜の笑み。
「これを凌ぐか」
「ああ、凌ぐさ」
 そして、刃を受け流し距離をとる克己の口元に浮かぶのもまた、同じ笑み。
(「真っ直ぐで嫌いじゃない。俺と似たような奴だってのも共感できる」)
 恭平と肩を並べて得物を構える克己に、殺害者は無言で――しかし、暴風の如き闘志を纏い、居並ぶ部下と共に双刃を構える。
 もはや言葉は不要。
 後は刃で決めるのみ。
「さて、始めるか」
「俺たちが勝つか、お前が勝つか、二つに一つだ」


「くっくっく、圧倒して魅せよう」
 宙を駆ける柧魅の拳撃、地を駆ける克己の斬撃。
 拳打と白刃の連撃が唸りを上げる轟刃とぶつかり合い、無数の火花を散らしてせめぎ合い――押し勝つのは轟く双刃。
 振り抜く刃が柧魅を捉えて跳ね飛ばすも、半ば自ら飛ぶことで衝撃を殺すとともに、柧魅が打撃とあわせて仕込んでいた鋼糸がチェーンソー剣へと絡みつく。
 異音が響き、刃が鈍り、されど一瞬後には轟音と共に唸る刃が鋼糸を断ち切り――しかし、
「華々しく、派手にしてやろう……くっくっく」
 柧魅が印を切り、深紅の長手袋『朱初月』を振るえば、宙を舞う鋼糸の断片へとエネルギーが流し込まれ、一瞬灰色の光を放ち――。
 直後、巻き起こる真っ赤な爆炎が、殺害者を飲み込み荒れ狂い。
 それが収まるより早く克己が踏み込み、閃く白刃が炎を切り裂く轟刃と交錯する。
「「おぉっ!」」
 ケルベロスとエインヘリアル。いずれ劣らぬ裂帛の気合と共に轟音が響き。
 火の粉を散らす轟刃が受け止めた克己を体ごと中に浮かせるも、空中で体勢を崩しつつも克己が放つ雷刃突が追撃の刃を打ち抜いて外へと弾き。
「西の果て、サイハテの楔よ。訪れて穿て。滅びは此処に定まれり」
「凍てつきし刃よ、彼の者を両断せよ!」
 その機を逃さず、相手を見据えた光流が胸の前で空間を十文字に切り裂けば、そこより現れるのは冥界の魔力を宿す氷の楔。
 同時に、恭平の掌中の黒曜石が氷を纏い黒氷の刃を作り出す。
 冥界の楔。黒氷の一閃。
 二種二重の冷気が殺害者を切り裂き、凍てつかせ。
「可及的速やかに片付けましょう」
 動きを鈍らせた殺害者へと、彗星の如き光を纏いチャルが駆ける。
 だが、
「はっ、ぬるいぞ!」
「くっ」
 氷を砕き、振るう刃がチャルの突進を跳ね飛ばし。
 続けて襲い掛かる取り巻きの刃を、ティアンのフレイムグリードが牽制する。
「大丈夫か?」
「ええ。木っ端エインヘリアル程度、敵ではないつもりですが……」
 自身も掌打を放って迫る刃を捌きながら、チャルは一度息をつく。
 傭兵部隊『嘆きの無賊』の部隊長。
 その肩書を甘く見ていたつもりはない。
 だが、ケルベロス達総がかりの連携を正面から押し返しかねない殺害者の力は、想像以上の領域にある。
 ――それでも、
「ですが、負けるつもりはありません」
「ああ」
 刃を打ち払い、大きく踏み込むと共に至近距離からの彗星爆突衝で隊員を跳ね飛ばし。
 視線を鋭くして相手を見据えるチャルに頷きを返し、ティアンも得物を握りなおす。
(「どこまでも戦いを求める殺害者、か」)
 強くなりたいと願った事こそあれ、戦い自体を楽しんだ記憶はない。
(「それでも、ケルベロスとして戦える力があってよかったと思う――こういう奴に、己の手で抗うことができるから」)
 暴力に抗い、理不尽を打ち倒し、人々を守り抜く。
 地球から何も奪わせない、壊させない、殺させない。
「この宮殿にもはやくどいてもらおう。ここに住むひとたちが、故郷の奪還を待っているだろうから」
 ティアンの手元から走るマインドシールドが仲間達を包み込んで加護を与え、その光を纏いケルベロス達は再度戦場を駆ける。
 長く赤いマフラーを靡かせ、宙を駆ける柧魅の繰り出す指天殺が殺害者を掠め。
 返す刃が割り込んだチャルを捉えるも、ティアンの操るエナジープロテクションが盾となって衝撃を殺し。
 同時に、至近距離から投げつける殺神ウイルスが相手を一瞬怯ませ、生まれた隙を縫って後ろへ飛ぶ柧魅と入れ替わるように、踏み込む克己を阻むのは――三重の剣閃。
「ちっ」
 増援を加え、三名となった『嘆きの無賊』の隊員達。
 殺害者と比べれば戦力としては劣るも、鎧袖一触と切り捨てることができるほどの弱兵でもない。
 重なり閃く刃をかわして捌き、そして。
「――邪魔はさせへんよ!」
「絶望せよ、これは黒の光なり」
 克己が反撃に転じるよりも早く、光流と恭平の呼び出す二つの黒太陽の光が隊員達を焼き払う。
「後ろは任せぇ!」
「――ああ、任せた」
 背を押す声に言葉短く頷いて、克己は踏み込み、刃を振るう。
 背後を気にしていては、攻め手が攻撃に専念できなければ――この強敵に刃を届かせることはできないと、直感しているから。
(「さすがは部隊長を任されるだけはある。俺の刀より重いもの二本持ってるのに互角以上に動くんだからな――だが、楽しい。こんなに楽しいのは久しぶりだ」)
「さぁ、もっと、もっと斬り合おうぜ!生と死の瀬戸際の、魂のざわめきが感じられるまで!」」
 踏み込み放つ月光斬と殺害者の双刃が交錯し、互いに弾き合って距離を開け。
 その隙を縫って距離を詰め、重ねて撃ち込む柧魅の降魔真拳とチャルの彗星爆突衝が殺害者を退かせ――。
 しかし、体勢を崩しながらも振るう轟刃が光流を切り裂き追撃を阻み、続く隊員の刃が恭平を牽制するも、ティアンのステルスリーフが傷を癒して体勢を立て直し、繰り出す達人の一撃が轟刃と交錯する。
 斬撃、拳撃、忍術に体術。
 切り込み、かわし、捌き、堪えて再度切り込んで。
 ケルベロス達の力は、殺害者の暴威を受け止め、時に押し返すまでに至っている。
 けれど――、
(「これは……良くない流れだ」)
 手を止めることなく仲間の傷を癒し、戦況を見つめてティアンは小さく眉を寄せる。
「邪魔だ――地も空も全てを封じ込めよ」
 恭平の放つアイスエイジが隊員を凍てつかるも、倒すまでは至らず。
 氷を振り払った隊員が手にした刃を振りかざし、
「退けやぁ!」
 それが振るわれるよりも早く、走りこむ光流のレガリアスサイクロンが隊員達を薙ぎ払う。
 時間が経つにつれ、増援に現れる『嘆きの無賊』の隊員達。
 現れるたび、恭平と光流が迎撃に当たるも――範囲攻撃を中心とした攻撃では、倒しきるまで四手か五手か、あるいはそれ以上。
 倒しきる速度よりも、増援が加わる速度の方がわずかに上回り。
 少しずつ、増えてゆく手数がケルベロス達を押し込んでゆく。
 ――けれど、隊員へ迎撃が弱いのは、大将首に攻撃を集中させることができていることと裏表。
 血にまみれて肩で息をする殺害者もまた、限界は近い。
 ならば、
「ここが勝負所だな」
「分の悪い賭けだな」
 胸の前で拳を打ち合わせて不敵に笑う柧魅に、頬を伝う血を拭って克己も獰猛な笑みを返し。
「だが――それでこそだ!」
 視線を交わし、そして同時に戦場を駆ける。
 螺旋を描き宙を走る光流の手裏剣は切り払われ――しかし、手裏剣の影に隠れるように並走した柧魅が弾かれた手裏剣をつかみ取り、殺害者へと投げ返せば、手裏剣は灰の光を放ち爆炎を巻き起こす。
 接触した物体にエネルギーを直接流し込んで爆発させる、火遁系の超強化忍術。爆殺忍術『灰紅』。
 巻き起こる爆炎に恭平の放つグラインドファイアの炎が重なり、作り出されるのは巨大な火柱。
 だが、
「まだだ!」
「ええ!」
 追撃かける克己とチャルを迎撃する、炎を切り裂く二つの刃。
 縦横に走る刃が炎を吹き散らし、克己を跳ね飛ばし、チャルを切り裂き――しかし、
「……言ったはずです、まだだ、と」
 ざっくりと肩口から切り裂かれ、よろめきながらも踏みとどまり。
 自らを切り裂く刃を抱え込んだまま、チャルは至近距離から殺害者を見据える。
 その体を支えるのは、ティアンの送り込む癒しの星の幻視と、胸の奥に灯る大切な人の思い出。
(「星、みつかった?」)
(「ええ。私の星は、あの人達と共にあります」)
 今は近くに居なくても、いつか再び見つけだす。
 その想いと共に、
「お返しです。少々痛くしますよ」
 放つのは、一見、普通の掌底打ち。
 しかし、打突と同時に手の平から飛ばす微細な無数の棘が殺害者を射抜き、その身を縛る呪縛を倍加させ。
 同時に、
「おぉっ!」
 よろめく殺害者へと、体勢を立て直した克己が叫びと共に切りかかる。
 その声に応え、ワイルドスペースを通して呼び出されるのは、得物を手にして克己と共に駆ける伴侶の影。
「木は火を産み火は土を産み土は金を産み金は水を産む! 護行活殺術! 森羅万象神威!」
 口上と共に大地の気を集約し、刃に込めて二者二刃で繰り出す連続切りが双刃と交錯し。
 集約された気が四散し、生み出された白い霧が晴れ――、
「惜しかったな――だが、俺の勝ちだ」
 そこにあるのは、崩れ落ちる克己と、深手を負いながらもいまだ健在の殺害者の姿。
「ちぃっ」
 さらに、カバーに入ろうとする光流の動きを、新たな増援を加えた隊員の刃が退ける。
 もう一手、二手を詰めることができていれば、あるいは結果は違ったかもしれない。
 しかし、もはや勝利はケルベロスが掴めないほど遠くなっている。
「ここまでだな」
「ええ――ここまでですね」
「……なに?」
 覚悟を秘めたチャルの声に、殺害者が眉を寄せ――直後、疾風の如き速さで走り抜けたチャルが、隊員諸共に殺害者を跳ね飛ばす。
 数舜前とは比べ物にならないほどの力を全身に満たし、膨れ上がる力に半ば振り回されながらも敵を薙ぎ払うその姿。
 ケルベロスの持つ最後の手段――『暴走』。
「チャル君――いや!」
 呼びかけようとする言葉を押しとどめ、ティアンは首を振って前へと向き直る。
「今やるべきは」
「ああ――風雅流千年。神名雷鳳。この名を継いだ者に、敗北は許されてないんだよ!」
 歯を食いしばって掌に炎を宿すティアンに応え、克己も己を𠮟咤し魂を燃やして立ち上がる。
 閃く克己の刃が、突き出す柧魅の拳が、よろめきながら立ち上がる殺害者の双刃を打ち払い。
 疾る恭平の黒氷とティアンの炎弾が、殺害者を包みこむ。
 戦況は再び覆った。
 遠ざかった勝機にも、今この瞬間だけは手が届く。
 だから、
「これで――」
「終わりです!」
 殺害者の胸へ突き立つ光流の手裏剣を、チャルの掌打が押し込み、貫き、壁へと叩きつけ。
 驚愕に目を見開き――しかし、どこか楽し気な笑みを浮かべたまま、殺害者は崩れ落ちる。


「急げ、退くぞ」
 刃を振り抜いたまま、前のめりに倒れこんだ克己をティアンがレスキュードローンへと運び。
 撤退しようと恭平が視線を巡らせた直後、背後から迫る靴音に光流は得物を握りなおす。
 部隊長である殺害者は討った。だが、金牛宮に配置されている無数の隊員達はいまだ健在。
 ――だが、
「ここ、は――私が、抑えます!」
 暴走に意識を揺らがせながらも、疾駆するチャルが現れる隊員を打ち倒し。
 その剣戟の音を背に、ケルベロス達は出口へと向かい走り出す。
「それでも地球で生きると決めたのです。後ろは振り返らないと致しましょう――後はお願いします」
 背後から聞こえたその言葉に、柧魅は小さく、強く頷く。
 この地を取り戻すことも、人々を守ることも。
 そして、仲間を見つけて助けることも。
「ああ、全部オレ達に任せろ」

作者:椎名遥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:チャル・ドミネ(シェシャの僕・e86455) 
種類:
公開:2021年1月4日
難度:やや難
参加:6人
結果:成功!
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