魔導神殿追撃戦~巨人大系

作者:土師三良

●音々子かく語りき
「アスガルド・ウォーは我が軍の大勝利に終わりましたー! お疲れ様です&おめでとうございまーす!」
 ヘリポートの一角。祝勝会でリフレッシュしたばかりのケルベロスたちの前でヘリオイライダーの根占・音々子が語り始めた。
「しかしですねー。『終わりました』とは言いましたけれど、完全に終わったわけではないんですよ。エインヘリアルたちの最後っ屁の後始末をしなくてはいけませんから」
 そう、エインヘリアル勢は戦いに敗れはしたものの、いくつかの魔導神殿を浮上させた。
 そのうちの一つである双児宮『ギンヌンガガプ』を攻略するためにケルベロスたちは招集されたのだ。
「ちょっとおさらいしておきますと、『ギンヌンガガプ』というのは『終末の巨人族』なる存在の模倣体を作り出す装置がある神殿です。指揮官は第三王子モーゼス。こいつはエインヘリアルのくせしてダモクレスの技術を色々と取り込んでいるようでして、なにやらメカメカしい外見をしてやがるんですよー」
『ギンヌンガガプ』が転移した先は宮城県仙台市の郊外――巨大オブジェのごとく聳え立つ載霊機ドレッドノートの傍。神殿内で生み出されたであろう巨人系エインヘリアルたちが既に周囲の警戒を固めているという。つまり、その場所から(少なくとも今すぐには)移動するつもりはないということだろう。
「『ギンヌンガガプ』は宇宙に向かって怪しげな電波をビビビビビっと送信してるんですよー。電波の内容までは判りませんが、モーゼスたちがヤバげなことを企んでいることだけは間違いありません。今回の作戦は残党狩りだけではなく、その企みを阻止するという目的も含まれているわけです」
 残党といっても、モーゼス率いる巨人たちの軍勢は強力だ。今回の作戦で撃破することはできないかもしれない。だが、なんらかの情報を持ち帰ることができれば、その情報を活かして再突入できるだろう。
「では、作戦がどんな感じで進行するかご説明いたしますねー。先程も言ったように巨人系のエインヘリアルが『ギンヌンガガプ』の周囲を防護しているので、まずはそれを突破してください。確認されている巨人系は三種類。かつて佐賀県唐津市を占領していた『ユミルの子』、北海道苫小牧市で暴れまわった『獣型巨人』、そして、眩しい炎みたいな星霊甲冑を纏った『光の巨人』です」
 巨人系エインヘリアルの総数はさして多くない上にどの個体も単独で哨戒活動をおこなっている。外縁部で一体を狙って撃破すれば、そこから『ギンヌンガガプ』に近づくことができるだろう。
「外縁部以外にも巨人のエインヘリアルが歩き回っていますから、そいつらの警戒を上手くくぐり抜ける工夫もあったほうがいいですねー。あと、外縁部の一体との戦闘に手間取っていると、騒ぎを聞きつけて他の巨人が集まってくるかもしれませんので、早急にケリをつけることを念頭に置いて戦ってください」
 巨人系の防護網を突破した次に待っているのは『魔獣巨人キメラディオス』だ。アスガルド・ウォーでは目にする機会がなかった謎の敵である。
「その『魔獣巨人キメラディオス』を倒して『ギンヌンガガプ』の内部に侵入し、ヤバげな企みを暴いて、可能ならばモーゼスを討ち取っちゃってください。なんかもう息つく暇もない連戦って感じですが――」
 言葉を切り、大きく息を吸い込む音々子。
 そして、信頼の叫びをケルベロスにぶつけた。
「――大丈夫です! 皆さんなら、できます!」


参加者
大弓・言葉(花冠に棘・e00431)
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)
ラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610)
ウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)
リュシエンヌ・ウルヴェーラ(陽だまり・e61400)

■リプレイ

●巨人が一匹
「んにゃー」
 血飛沫 跳ね飛ぶ戦場をウングキャットのムスターシュが翔ける。
 その翼から異常耐性の恩恵を受けた者の一人――人派ドラゴニアンのラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610)がドラゴニックハンマーを振り抜いた。
「あいかわらず、エインヘリアルどもは諦めが悪いよな。王が倒されて、ゲートも破壊されたっていうのによぉ!」
 向こう臑にアイスエイジインパクトを食らい、敵がよろめいた。
 もっとも、ラルバは意図して向こう臑を狙ったわけではない。身長差が大きすぎるので、どうして攻撃が下半身に集中するのだ。
 そう、彼らが戦っている相手は巨人だった。
 通称は『ユミルの子』。
「初めて戦った時ほどの手応えはありませんね。まあ、あの時とは違う個体なんですけど」
 そう言って、蹴りを放ったのは北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)。発光するラインに彩られた魔導装甲を着込んでいるためにレプリカントかグランドロンのように見えるが、純然たる地球人である。今の蹴りも地球人だけが使える達人の一撃だ。
 斬撃のごとき蹴りに足首を折られ、ユミルの子は片膝をついた。
「同型の敵と初めて対峙した時は辛酸を舐めたが……弛まぬ鍛錬と数多の実戦を経て、俺たちは十分に強くなった」
 立ち上がる暇を与えることなく、リューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)が急降下して破鎧衝の一撃を頭部に叩きつけた。銀狼の人型ウェアライダーである彼がそのような空中戦をおこなうことができるのは、ジェットパック・デバイスを装着しているからだ。
「慢心する気はないが、後れを取るつもりもない。ここでてこずるようでは――」
 命中箇所から腐汁混じりの肉片群が飛び散ったが、リューディガーはジェットパック・デバイスを噴かして素早く後退し、それらを避けた。
「――後に控えてるであろう強敵とまみえることも敵わないからな」
 飛び退るリューディガーをユミルの子は目で追うことしかできなかった。近接グラビティしか持っていないため、飛行中の相手に対しては文字通り手も足も出ないのだ。
 そんな彼(彼女?)に向かって、無情にも別の飛行者が突進してきた。人派ドラゴニンのウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)である。
「かなり弱ってるぞ。畳みかけろ」
「うん」
 飛び込みざまに稲妻突きを見舞ったウリルの声に応じて、彼の妻――オラトリオのリュシエンヌ・ウルヴェーラ(陽だまり・e61400)が『Coin leger』を発動させた。オウガ粒子と見紛うような小さな光の矢が降り注ぎ、ユミルの子の影に次々と突き刺さっていく。それによってダメージを受けたのは影ではなく、本体のほうだが。
 すかさず、二体のボクスドラゴン――熊蜂型のぶーちゃんと青い体表のラグナルがブレスを浴びせた。更にライドキャリバーのこがらす丸がキャリバースピンで追撃。
「――ッ!」
 足の指を轢き潰され、ユミルの子は絶叫した。苦悶がもたらした悲鳴……ではなく、ドレインを有したグラビティだ。
 標的となったのはオラトリオの源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)。
 しかし、同じくオラトリオの大弓・言葉(花冠に棘・e00431)が瑠璃の前に飛び出し、見えざる打擲を代わりに受けた。
「うるさいな、もぉー。叫んだりしたら、他の巨人に気付かれちゃうでしょ。こっちは密かに侵入しようとしているのに」
 控えめの声量で抗議しつつ、地獄の炎を纏わせたエアシューズで蹴りつける言葉。
「まあ、誰かが気付いてやってくる頃には――」
 瑠璃がガネーシャパズルに指を走らせた。3×3の形にパネルが並んだ点灯パズル。
「――死体しか残っていないだろうけどね」
 すべてのパネルが光り、竜の形状をした稲妻が迸った。
 それを受けて瀕死となった敵に別の竜が迫る。
 竜派ドラゴニアンの神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)が手にした武器。竜の頭部を模した錨『溟』だ。
 晟は地を蹴って飛翔し、ユミルの子の左胸めがけて『溟』を突き入れた。
 そして、得物から手を離して着地。
 地面が足に触れた瞬間、ユミルの子の巨体が煙のように消失し、胸に突き刺さったままだった『溟』が落下した。
 相当な重量のあるそれを軽々と受け止める晟の後ろ姿を見ながら、瑠璃が先程の発言を訂正した。
「誰かが気付いてやってくる頃には、死体さえ残っていないだろうけどね」

●巨人がまた一匹
「シャー!」
 巨大な蛇が鎌首をもたげて、威嚇の音を発した。
 いや、鎌首以外の部位も地面に触れてはいない。その大蛇は宙に浮いていた。巨人の腰に繋がった後端部を支えにして。
 一応、その巨人は女だった。『一応』がつくのは、人間の女とはかけ離れた姿をしているからだ。蛇だけでなく、獅子や竜などの様々な生物のパーツが体のそこかしこに取り付けられている(あるいは内側から生えているのかもしれない)。
「こいつが門番の――」
 蛇の威嚇音に臆することなく、ウリルが巨人に稲妻突きを繰り出した。
「――魔獣巨人キメラディオスとかいう奴か」
「そうでしょうね」
 頷いてヒーリングパピヨンを飛ばしたのはリュシエンヌ。気丈に振る舞おうとしているのだが、実は連戦による疲労と緊張で心が折れそうになっている。『折れそう』の段階でとどまっているのは夫の雄姿を前にしているからだ。
「どうせキメラるなら、もっと可愛い動物のパーツを集めてキメラればよかったのにねー」
 リュシエンヌの蝶を頭に乗せて、言葉がマインドシールドを自身に施した。
「可愛いかったとしても、手加減はしないがな」
 言葉の冗談に真顔で応じながら、リューディガーがキメラディオスの鼻先に飛び込んだ。叩きつけたグラビティは獣撃拳。
「そもそも、手加減する余裕がないぜ」
 ラルバが両の掌を突き出し、ジグザグ効果を有する突風を放った。
「ユミルの子よりも手強そうですしね」
 計都が片腕を突き出し、真導装甲に内蔵されたガトリングから六発の弾丸を一度に発射した。
「とはいえ、手加減できないのは向こうも同じだ。こちらには――」
 晟が『溟』を砲撃形態に変えて、轟竜砲を発射……するより先に、別の砲弾がキメラディオスに命中した。しかも、一発ではない。
「――頼れる仲間がいるのだからな」
 そう、周囲には頼れる仲間がいた。ユミルの子等の防護陣を突破した三つのチームが、晟たちのチームとともに接近戦を繰り広げているのだ。更に他の数チームが遠距離から援護射撃をしている。
 晟は改めて轟竜砲を発射した。

 数と意志の力で体格差を埋め、ケルベロスは巨大な敵を圧し続けた。
 キメラディオスは満身創痍。だが、門番の務めを放棄するつもりはないらしい。瑠璃めがけて、爪を振り下ろした。
 しかし、瑠璃は躱す素振りも見せず――、
「食らえ!」
 ――金木犀が咲くアニミズムアンクを一振りした。
 叫びとともに撃ち出されたエクトブラズムの霊弾がキメラディオスの顔面で炸裂した。
 衝撃で巨体が仰け反り、爪の一薙ぎが虚しく空を切る。
 だが、キメラディオスは倒れなかった。
 いや、倒れることができなかった。
 リュシエンヌが無数の光の粒子を降らせて――、
「もう動かないで」
 ――影を地に縫い止めたからだ。
「シャーッ!」
 仰け反ったままの状態で硬直した本体に代わって、尻尾の蛇がのたうちまわった。あの奇怪な音をまた発しているが、今度のそれは威嚇ではなく、苦悶の呻きのようなものだろう。
 その音が途切れると、蛇の体はだらりと垂れ落ちた。
 そして、本体ともども砂像のように崩れ去った。

「あれが後半戦の舞台ね」
 リュシエンヌが視線を移した。砂の山と化したキメラディオスから地平の彼方へと。
 左右非対称の歪な宮殿が見える。いや、非対称というよりも、二つの宮殿を強引に繋げたような印象を受ける。
「『双生児ギンヌンガガプ』か」
 宮殿の名をラルバが呟いた。
「宇宙に向かって、怪電波を飛ばしてんだよな。いったい、なにを企んでいるのやら……」
「やっぱり、UFOの召喚っていうのが定番じゃない?」
 と、またも冗談を口にする言葉の横では、ぶーちゃんが期待に目を輝かせている。『UFO、見てみたいっス』と思っているのだろう。一方、ラグナルは鼻息を荒くしていた。『UFOなんか撃墜してやる!』と意気込んでいるらしい。
「なにを召喚するつもりであれ、奴らの好きにはさせない」
 そう言って、リューディガーが歩き始めた。

●巨人が百匹
「前からずっと思っていたんですけど……『ギンヌンガガプ』って、言いづらくないですか?」
 天井が高い上に横幅も広々とした通路(巨人のサイズに合わせて設計されているのだろう)を進みながら、計都が何気ない調子で問題提起(?)した。
「同感なのー」
 言葉が頷いた。なぜか、サーヴァントたちも頭を(こがらす丸は機首を)上下させて同意を示した。彼らの場合、言いづらい以前にそもそも人語を話せないのだが。
「でも、略すわけにもいかないよな。『ギンガプ』だの『ヌンガガ』だのとか呼んだ日にゃあ、緊張感が行方不明になっちまうから」
「それは略し方に問題があるのでは?」
 略称の例を挙げるラルバと、苦笑する瑠璃。
 そうやって軽口を叩きながらも、皆は四方を気を配って歩いていた。この場合の『皆』というのは八人と四体だけである。宮殿内は広大なので、各チーム分かれて探索しているのだ。
「今のところ、内部の敵とは一度も接触してないけど――」
 リュシエンヌが別の問題を提起をした。
「――重要と思われる施設や機器の類も見つけてないよね」
「うむ」
 晟が頷いた。すると、サーヴァントたちも再び頭を(こがらす丸は機首を)上下させた。深く考えることなく、雰囲気に合わせて同意しているだけなのかもしれない。
「敵を避けて移動していても埒があかんな。虎穴に入るしかないか」
「そうですね。他の班がまだツバをつけていなくて、なおかつ敵が待機している場所は、と……」
 計都がゴーグル型のデバイスを操作すると、前面に備えられたターレットレンズが回転し、簡素な平面マップが視界に投影された。マップのそこかしこで二色の光点が瞬き、仲間と敵のおおまかな位置を教えてくれている。
「北東に三百メートルほど行ったところに敵が固まってます」
「そいつらも巨人なのか? それとも、普通のエインヘリアルなのか?」
 ウリルが尋ねると、計都は肩をすくめた。
「さあ? そこまでは判りません」
「自分たちの目で確かめるしかないな」
 リューディガーが北東の方角を見た。そこにあるのは通路の壁だけだが、なんの問題もない。
「では――」
 その壁に晟が歩み寄った。
「――確かめに行くか」
 竜派ドラゴニアンの屈強な体をより屈強なものに見せていたアームドアーム・デバイスが展開し、鋼の腕の先端にあるドリルが壁に突き込まれた。

「やっぱり、普通のエインヘリアルじゃなかったね……」
 呆然とした面持ちでリュシエンヌが呟いた。
「普通の巨人でもなかったけどな」
 憮然とした面持ちでウリルが呟いた。
 幾枚かの壁を突き破って辿り着いた場所。『茫洋たる』という表現を用いても大袈裟に思えないほどに広いその区画には、ケルベロスたちの目的の品――宇宙に電波を送信している機械ばかりか、普通の家具や調度品すら置いていなかった。
 そして、リュシエンヌとウリルが言ったとおり、普通の巨人型エインヘリアルの姿もなかった。
 異形の巨人しかいなかったのだ。
 たとえば、ケルベロスたちに最も近い場所にいる巨人。皆の目の前をゆっくりと這っているそれは無数の足を有していた。ただし、どの足も人間と同じサイズだ。腰から下は小さな足の集合体。
「百腕巨人(ヘカトンケイル)ならぬ百脚巨人か……」
 顔をしかめる瑠璃の視線の先で、巨人は這い続けている。腕だけを使って。足の群れはただ痙攣するばかりで、なんの役にも立っていない。
「なんか、ナメタケやエノキタケに似てなくもないな」
「やめてよ、ラルバくん! この先、キノコを見る度にこいつの姿が思い浮かんじゃうじゃなーい!」
 言葉が跳躍し、百脚巨人にスターゲイザーを食らわせた。
 すると、巨人は進路を変更し、ケルベロスたちに向かってきた。攻撃されるまで、他者の存在に気付かなかったのだ。それも当然。彼(彼女?)の顔には目も耳も鼻もなかった。
「これはひどい……」
 計都が腕部のガトリングを作動させ、百脚巨人にとどめを刺した。
「こっちの巨人もひどいもんだぞ」
 ウリルが炎のグラビティで別の巨人を攻撃した。
 百脚巨人と違い、その巨人はしっかりと立っている。
 蹴爪が生えた右足と、蹄が備わった左足で。
「まるで、ボッシュの絵から抜け出てきたような……」
 目を背けたいという思いを必死に抑えながら、リュシエンヌがヒーリングパピヨンを飛ばした。
 それを肩に受けた晟が轟竜砲を第三の巨人の頭部めがけて……撃つかと思いきや、砲身を少しばかり下げ、腹部めかげて撃った。
 その巨人には頭部など最初から存在しなかったからだ。
「どうやら、ここにいる巨人たちは――」
「――巨人を製造する装置の失敗作ってところかね」
 晟の後を引き取って、ラルバが指天殺を突き入れた。欠損している部位もなければ、動物の体が混じっているわけでもない巨人に向かって。
 だが、その五体満足な巨人もまた失敗作であるらしい。ラルバの攻撃を受けたことにも気付かず、天井を見上げてニタニタと笑っている。
「さしずめ、ここは失敗作を放り込んでおく倉庫……いや、ゴミ箱ってわけだ」
 笑い続ける哀れな巨人を見据えて、ラルバは吐き捨てるように言った。
「またも……」
 リューディガーも吐き捨てるように唸った。
 そして、その唸りを怒号に変えて――、
「またも命を弄ぶか、デウスエクス!」
 ――ゴミ箱に押し込められた失敗作たちめがけて、何発もの銃弾を撃ち込んだ。
 銃声の怒号の二重奏によって、ただでさえ鈍い失敗作たちの動きが更に鈍る。
「この巨人たちが失敗作なら、外にいたのは成功作ってこと?」
 言葉が悲しげに皺を寄せた。人型の腐肉にしか見えないユミルの子や様々なパーツを無節操に寄せ集めたキメラディオスの姿を思い出しながら。
「成功作と失敗作との間に大きな違いはないのかもね」

 最後の一体を倒した時、倉庫/ゴミ箱が激しく揺れ始めた。
 いや、宮殿全体が揺れているらしい。
「お約束の自爆装置か?」
 ウリルがジェットパック・デバイスの牽引ビームを仲間たちに伸ばした。
「いや、爆発の前兆というわけではないようだが……撤退したほうがよさそうだな」
 リューディガーも牽引ビームで仲間たちを繋いだ。
 そして、皆はそこから飛び去った。
 ほんの一瞬の間を置いてから。
 示し合わせたわけではないが、その一瞬の間に黙祷を捧げたのだ。
 名もなき失敗作たちに。

作者:土師三良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年1月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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