ミッション破壊作戦~デッド・エンド

作者:鹿崎シーカー

「思えば死神とも……長い付き合いですよねえ……」
 跳鹿・穫はしみじみと呟きながら、事の次第を話し始めた。
 そういうわけで、グラディウスを使ったミッション破壊作戦である。ジグラット・ウォーで手に入れた新たなグラディウスを元に、今回は死神のミッション地域に攻勢を仕掛けることになったのだ。
「一応知らない人のために捕捉しておきますと、グラディウスは長さ70センチぐらいの光る小剣型の兵器です。通常の武器としては使えない代わりに、『強襲型魔空回廊』を破壊する力を持っています。こいつでミッション地域の強襲型魔空回廊を壊してやろうって算段なわけですねー」
 グラディウスの使用には、一回ごとにグラビティ・チェインを充填してやる必要がある。だがそれさえ出来れば何度でも使用可能なので、失くさずに持って帰ってきてほしい。
 そして肝心のターゲットだが、現在攻撃可能な死神の強襲型魔空回廊は五か所。皆にはそのどこか一か所を選んで攻撃してもらうことになる。
「現在、死神のミッションが発令されてるのは『愛知県稲沢市』、『栗原市防衛線』、『長野県諏訪湖』、『瓜生島伝説』、『三重県尾鷲市』。で、それぞれの魔空回廊には護衛勢力がおりまして、強行突破はまず不可能です。なんで、高高度からの降下攻撃をぶちかまします」
 強襲型魔空回廊があるのは、ミッション地域のど真ん中。並み居る護衛戦力を突破して辿りつくのは困難を極める。しかし、護衛戦力は高高度からの降下攻撃は防げない。
 加えて、強襲型魔空回廊は半径30m程度のドーム型バリアで囲われており、このバリアにグラディウスを触れさせれば攻撃は成立する。グラディウスを持ってヘリオンから飛び降り、バリアを叩き割れば強襲型魔空回廊は破壊できるというわけだ。
「まあ今回で破壊できるかどうかは皆さん次第ではありますが……失敗してもダメージは確実に蓄積してきますんで、何回も殴ればそのうち壊せます。皆さんの魂の叫びの強さ次第ですねー」
 ちなみに、グラディウスは攻撃時に雷光と爆炎を発生させる。これはグラディウスの所持者以外を無差別に襲う上、強襲型魔空回廊の防衛部隊であっても防ぐ手段はない。
 なので作戦が終了した後は、この雷光と爆炎を目くらましにして撤退するといい。最も、目くらましが効かない強化個体が決まって一体存在し、その個体だけはケルベロスに攻撃を仕掛けてくるので注意が必要だ。
 それでは最後に、各地域で戦うことになる強化個体についてだけ軽く解説する。

 『愛知県稲沢市』にいるのは強化版『デセスペラシオン』。襤褸布のようなローブと瘴気をまとい、死病を蔓延させる力を持つ。
 『栗原市防衛線』では強化版『追命鬼』。骨だけの大蛇を従えた和装の女性型。無数のダモクレスを復活させて従え、不滅の肉体を授けているという。
 『長野県諏訪湖』に強化型『渡し守』。幽霊船を操り魂を運ぶ。船に大量の死神を乗せ、地球に連れてきているようだ。
 『瓜生島伝説』は『ウルティマトゥーレ』の本体。島のように巨大なアカエイ型の死神で、無数の小型死神を吐き出しているという。
 最後に『三重県尾鷲市』で強化版『カサガミ』。和傘を手にした白装束の死神で、降らせた雨の中からデウスエクスを次々とサルベージできるようだ。

 これらのうちどこかひとつに狙いを定め、攻撃を仕掛けることになる。先述したように、こちらを攻撃してくるのはグラディウスの雷光と爆炎に耐えられる強化型の個体一体のみ。どこを狙うのか、充分に相談して決めてほしい。
「前から数えるとだいぶ死神のミッション地域も減って来ましたからねー。ここで出来るだけ壊し切っちゃいましょー! それじゃ、よろしくお願いしまーす!」


参加者
伏見・万(万獣の檻・e02075)
セット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)
霧崎・天音(星の導きを・e18738)
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)
御手塚・秋子(夏白菊・e33779)
安海・藤子(終端の夢・e36211)

■リプレイ

 三重県尾鷲市上空。ヘリオンがプロペラで雨を弾きながら飛行する。窓から曇天の空を見た卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)は、コイントスしながら不敵に笑った。
「おーおー、土砂降りだな。オレの腕が錆びちまう」
「もう錆びてるんじゃないの? それ」
 泰孝の対面に座った安海・藤子(終端の夢・e36211)が、彼の廃材で出来た左腕を見ながらケラケラ笑う。
 一方で、別の窓から町を見下ろす御手塚・秋子(夏白菊・e33779)に、霧崎・天音(星の導きを・e18738)が小首を傾げながら声をかける。
「……どうかした……?」
「ん、ちょっとね」
 秋子は目を伏せ、窓ガラスに手の平をあてがった。
「昔、ここに住んでた時があったんだ。魚が美味しかったし、みぞれのカキ氷は衝撃だったな……。熊野古道、結局行けなかった……」
 寂しげに呟く秋子に、天音は少し眦を落とす。その様を少し離れていたところで見ていた伏見・万(万獣の檻・e02075)が腰のポーチを探り、スキットルをひとつ取り出した。
「おい、秋子」
 振り向いた秋子にスキットルが投げ渡された。目を丸くし、危うく受け止めた彼女に、万は別のスキットルをラッパ飲みして言う。
「しみったれた面してどうすんだ。それでも飲め」
 秋子は小さく苦笑すると、スキットルを投げ返した。
「いや、いいよ。気持ちだけ受け取っておく。……っていうか、今飲むのはどうなの?」
「ああ? 酒無しでどう戦うってんだ」
 スキットルを受け止める万。その時、開かれたヘリオン奥の扉から、セット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)が顔を出す。
「皆さん、お待たせしたっす! ヘリオンデバイス、用意できたっすよーっ!」
「ん……お疲れ様……」
「ありがとっす! 天音さんはジェットパックっすよね」
 労う天音に軽く会釈しつつ、セットは背後に並べた機械のうちジェットパックをつかんで差し出す。その横をすり抜け、ゴーグル型のデバイスを拾う万に泰孝が手を振る。
「伏見の旦那ァ、通信機とってくれ! 安海の姐さんはいらないんだっけか」
「あたしは無くて大丈夫。ま、しっかり治してやるから安心しなよ」
 軽く笑う藤子を余所に、泰孝は飛んできた通信機を受け止める。
 他方、秋子は自分のジェットパックを背負い込み、備え付けのベルトを胴に回してバックルで固定。軽く背負い直して感覚を確かめると、立てかけておいたグラディウスを手に取った。秋子のジェットパックを軽く点検したセットは腕を組んで満足げに頷く。
「よし。これで準備完了っすね!」
 両手で虚空を開くように薙いだセットの前に、青いエアディスプレイがいくつか出現。表示された情報を食い入るように見ながら、セットは仲間たちの方に人差し指を一本立てて見せた。
「えーっと、現在地はちょうど尾鷲市の上っす! 扉開けてジャンプして落ちればバリアを叩ける位置! 天気は見ての通りの雨で、地上はカサガミにサルベージされたと思しき動体反応でいっぱいっす!」
「つまり概ね聞いてた通りだな?」
「そっす!」
 万にセットが頷いた。藤子が立ち上がり、背中を伸ばす。
「それじゃ、行きましょうか」
「だな」
 泰孝が弾いたコインがヘリオンの床に落下。ナノナノが彫られた面が上。泰孝は不敵に笑い、巨大なジャンクの左腕でヘリオンの扉を開いた。
「明日は天気いい日になるってよ」
 廃材の左腕が立てた親指で外を示すと、いち早く天音と秋子が走り出し、ヘリオンから飛び出した! 頭から真っ直ぐ落下する二人の下にはゾンビが這い出す街並み。そしてそれを覆う透明な巨大ドーム!
 手にしたセピア色の集合写真を見つめる天音の隣で、秋子は懐かしむように目を閉じる。
「昔、お世話になってた市なんだ。親切な人が沢山いたよ」
 風を切る音とともに、ジェットパックの噴出口が橙色に輝き始める。
「お魚もらっても捌けないって言ったら捌いてくれた人もいた。普通の雨が豪雨並で、初めて見た時凄く怖かったけど、雨上がりの山はとても綺麗でお水も美味しくて、自然の中で生きてるって体感出来る素敵な場所だった」
 次の瞬間、秋子はカッと目を見開く!
「だから、この自然もここの人達もここに眠る人達も守る!」
 力強い宣言を聞き、天音は写真を懐にしまった。振りかぶったグラディウスが白熱!
「……このまま悲しい別れを繰り返させるわけには行かない……この場所が水の中に沈んだら、あの島と同じ悲しい出来事が繰り返される……! それだけは、絶対にさせない!」
 天音と秋子のジェットパックが同時に火を噴く! 秋子と天音は真っ白に輝くグラディウスを構え、凄まじい速度で近づいてくるバリアめがけて撃ち下ろした!
 真っ白い爆炎と轟雷が全方位に吹き出し、白い雷が次々と地上に突き刺さる! 降り注ぐ白雷の一本を朱色の和傘で防いだカサガミの一人が、すっと目を細める。
「これはこれは。雨模様に似合わぬ雷、そして炎。わっちの空を汚すつもりか? ケルベロス……」
 傘を少しずらしたカサガミは金色の瞳を光らせ、直後に姿を掻き消す! 凄まじい速度で虚空の雨粒をジグザグに蹴り渡り、雷を回避しながら空へ! 一息に跳躍したカサガミはたちまち秋子と天音を見下ろす位置に到達! 剣呑な面持ちで傘を回した。
「お出でなすったところ申し訳のうありんす。けれども先に狼藉働いたのはそちらさん故なァ……」
「だーれが狼藉働いたって?」
 刹那、カサガミは僅かに傘を動かし上空から飛来した砲撃をガード! 万は自由落下しながら肩に担いだ大型砲の狙いを定める!
「俺らに言わせりゃ、お前らの方が100倍狼藉働いてんだよ! 年貢の納め時だ! 喰い尽くしてやる!」
「猪口才な……」
 傘の陰から凶悪な笑みをのぞかせるカサガミ。同時に天音と秋子が放つ白光がしぼみ、グラディウスへと収束していく。二人のすぐ真後ろに降り立った藤子は右腕を振って二人の背中に人型の紙切れを付着させた。
「チェンジだ。行きな」
「ん……」
「任せた!」
 二人はジェットパックの上部にグラディウスを差し込み、カサガミめがけて飛び出した! カサガミは和傘を回し周囲の雨粒を集めて凍らす。パキパキと音を立てながら、全方位に先端を向ける氷柱を無数に形成! それらが竜巻めいて高速回転!
「わっちの空を汚す愚者どもよ。よかろう。ならばそちらも沈むが良い。冷たい雨が生み出した、湖の底へ!」
「おおっと、そうはいかねえのよ!」
 カサガミの後方に落下しながら泰孝がトランプカードを投擲! 回転する氷柱の隙間を縫ったカードを振り向きながら傘の柄で受けるカサガミ。直後、彼女の周囲に出現した箱状バリアが氷柱ごとカサガミを閉じ込めた! バリアに着地した泰孝が言い放つ!
「俺の予報じゃ明日は晴れだ。洗濯日和って奴になンだよ! なあ安海の姐さん!」
「そうね。この地の雨は今日限り!」
 秋子と天音を送り出した藤子がグラディウスを振り上げる!
「全てを水底に沈めるって? そんな大層なこと、あんたら死神にできるわけないじゃない! 誰よりもこの地を愛してるって人たちがいるんだ、その人らを追い出しといて、ねぇ……」
 白光を放つグラディウス! バリア内のカサガミは剣呑に目を細めた。
「わっちを塞いで時間稼ぎをしようてか。甘い考えでありんすえ!」
「どうだかね!」
 コートをはためかせた秋子が足元のバリアを蹴って急接近! 真横に伸ばした腕にオウガメタルを螺旋状にまとわせながら声を張る!
「卜部さん! このままぶん殴って大丈夫!?」
「おう! バリアごとぶっ潰してやんなァ!」
 廃材の左腕をカサガミに突き出し、力を込める泰孝! カサガミはバリア越しに向かってくる秋子を見据え、閉じた和傘を突き出した!
「まずはそちごと、奥の娘を射抜いて差し上げんしょう。わっちの雨を止ませはしないえ?」
 次の瞬間、カサガミの氷柱が射出され箱型バリアの壁に激突! ドリルめいて回転しながら光の壁を破らんとする死神を遠目に、藤子は励起したグラディウスを逆手に持ち替えた!
「同じ沈めるってんならダムの方がよっぽど有意義だわ。誰かを守るために沈むことを受け入れた英雄たちに申し訳ないと思わないの? 思わないからそう言えるんでしょうけど。だからさ、さっさと消えてくれよ。害悪でしかないのにさ!」
 振り下ろし、二度目の白い大爆轟! 同時に氷柱がバリアを突き破り秋子を急襲! 秋子のやや後方、盾型ドローンを手甲のようにした巨大機械手にぶら下がったセットが降下!
「秋子さん、ちょっと頭下げてほしいっすーッ!」
 セットをぶらさげた機械の巨腕が迫りくる氷柱を薙ぎ払う! 一方破れ砕け散ったバリアから解放され、傘を軽く掲げるカサガミにハイジャンプした天音が流星めいた蹴りを繰り出す! 獄炎の脚が和傘に命中し、周囲に衝撃波を撒き散らした!
「何も……させない……!」
「はッ」
 軽く笑い捨てたカサガミは和傘を回して天音の蹴り足を逸らした! バランスを崩した天音の腹に畳んだ傘の石突を打ち込み、吹き飛ばしたカサガミの懐に秋子が踏み込む。ワン・インチ距離からのオウガメタル右ストレート!
「はああああああああッ!」
「ぬっ……!」
 カサガミは折りたたんだ左腕を差し込み拳を防御! 構わず死神を殴り飛ばした秋子の後方で、セットが周囲に展開したホロウィンドウを素早く叩く!
「リードデバイス展開! 万さん!」
「おう、見えてるぜ」
 万が吹き飛んだカサガミと並走し、加速して背後に回り込む! 前後反転してブレーキをかける彼の足元から獣状になった影がレーザーめいて伸び、バリアの上に着いたカサガミの右爪先に食らいついた!
「ん?」
「捕まえたぜ!」
 万が叫ぶと共に、怪訝そうに足元を見たカサガミの前後から天音と泰孝が突撃! それぞれパイルバンカー二刀流、廃材の手首から抜いたバールを振りかぶって殴りかかる! カサガミは閉じたままの和傘に黒い雷をまとわせて一回転! 漆黒が円弧を描く!
「そんな迫るものやのうて。ほれ、下がらんしゃい」
 刹那、黒い軌跡が黒雷を爆発させ零距離まで接近していた二人をもぎ放す! 足首に食らいついた獣影を傘の石突で潰したカサガミに、高度を稼いだセットのマシンハンドが五指から雷撃を発射! カサガミはなんなく和傘で防ぐ!
「呆れたものでありんす。わっちを雷で倒せるなどと」
「当然、雷は布石っすよ!」
 跳躍したセットがマシンハンド掌底から突き出したグラディウスの柄をつかんで引き抜く! その時、カサガミの足元に滑り込んだ白い毛並みの犬神が跳躍斬り上げを繰り出した! 右半身から右目までを裂かれたカサガミが血を撒きながらノックバック!
「ぐうっ……!」
「良い子だクロス!」
 紙面を剥がした藤子がグラディウスを左腕の縛霊手に突き刺し、左手を握り込む! 縛霊手の左右から吹き出した黒灰色のゴーストたちが戦場を舞う中、バリアに着地したセットはグラディウスを振り上げた!
「今っすよ万さん! バリアを叩き割るっす!」
「おう、俺らの手番か!」
 万は取り出したスキットルを一気飲みして投げ捨て、腰に帯びたグラディウスを抜く! 一足先に両手で短剣を振りかぶったセットを横目で捉え、切り傷を抑えたカサガミは顔を歪めた。
「おのれ……! させぬ!」
 水滴を帯びた傘がセットに向けられた瞬間、傘が赤黒い光を帯びて半ばから圧し折れた! 赤黒い光を宿した両手を傘にかざした秋子がカサガミを睨む!
「余所見は困るね! 私たちもいるんだよ!?」
 カサガミは口元を歪め、突き出した指先から黒い雷を複数発射! 複雑軌道を描くそれらが防御態勢をとった秋子の腕や脇腹、膝を貫く!
「ぐうううううッ!」
「このまま引き裂いて差し上げんしょう!」
 黒雷の伸びた指を握り込み、胸元に引くカサガミ。そこへ赤い砲弾がタックルをかけた! ジェットパックを唸らせた天音はカサガミを睨み上げ、黒雷放つ手をつかむ!
「死なせ、ないッ!」
 天音の手が赤く光り、紅色の氷がバキバキと音を立てつつカサガミの腕を覆い始める! そちらを見つつ、セットは大きく息を吸い込んだ!
「情勢は目まぐるしく動いてて、死神勢力も近々何かを起こすかもっす。だからここで死神の橋頭保になりうる場所を壊して、死神たちの行動を続かせないようにするっす! これ以上日本という土地を好きにはさせないっすよーッ!」
「水浸しの死神付きとか、ケッタクソ悪ィ。水に沈むなんざ御免だ、湿っぽいのも趣味じゃねェ。カビが生える前に、ここは返してもらうぜ。これ以上勝手はさせねェよ! とっとと消えろや、死神共!」
 セットと万が同時にグラディウスを叩きつける! 凄まじい爆音! バリア内に降り注ぐ雷の雷鳴に混じり、ガラスのひび割れるような音が響く。ドーム型のバリア全体に生まれた亀裂が広がっていく!
 カサガミは顔を歪めると、爪先を立てブレーキを駆け天音をもぎ放す。そのまま折れた和傘を無理矢理開き、裏地から降り注ぐ雨で赤く凍りついた腕を溶かし始めた。その様を遠目に、泰孝は廃材の左腕に右手を突っ込む。
「おいおいまだやる気かい? しぶといこった」
 腕の中をまさぐり、引きずり出した手の中にはグラディウス!
「ここに随分長く滞在してくれちまってるなぁ。だがテメーの回収作業もここまで。天気予報だ、雨時々グラディウス、ところによってケルベロス、ってなぁ!」
 白熱したグラディウスをバリアに突き刺す! カサガミは地震めいて震え出すバリアを足蹴にしながらうめく!
「わっちのヤサが! おのれ、やめぬか!」
 一歩踏み出したカサガミの足元を白いオルトロスが駆け抜け、一拍遅れて裂かれた腱が血を噴き出す! 藤子は縛霊手に握ったオーラ玉を振りかぶった!
「大人しくしてろ。雨の日は今日で終いだ!」
 投擲! 真っ直ぐ飛翔したオーラの球は血みどろで駆ける秋子に命中。体を包み、傷口を塞ぐ! 大きく踏み込んだ秋子は銀色の右手を下段に振りかぶってカサガミに突進! アッパーカットを顎に打ち込む!
「うぎ、ぎッ……!」
「街を……解放、しろおおおおおおおおッ!」
 振り切られた鉄拳がカサガミの下顎を粉砕して吹き飛ばす! 直後、尾鷲市に蓋をするバリアを白い光が満たし、内側から爆散させた! グラディウスを引っ込めた万はゴーグルを下ろし、周囲を見回す!
「ハッハァ! 一丁上がりだ! 撤収するぞお前ら!」
「……捕まって……!」
 ジェットパックで浮遊した天音が両手から計五本赤いレーザー糸を放ち、仲間たちの腕に絡みつかせる! 一気に空中へ飛翔していくケルベロスたちを見ながら、放物線を描いたカサガミは砕けた顎の隙間から呻き声を上げた。
 曇り空から差し込む一条の光。カサガミは飛び去っていくケルベロスたちに手を伸ばし、空中で爆発四散した。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年12月16日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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