牙は海を見たか

作者:土師三良

●侵攻のビジョン
 一頭のドラゴンが空から降下してくる……と言うと、なにやら勇壮なイメージが思い浮かぶかもしれないが、実際の光景は勇壮には程遠いものだった。
 だが、壮絶ではあった。
 そのドラゴンは力尽き、ミイラのようになっていたのだから。
 しかも、蛇とも蛭とも虫ともつかない不気味な存在――ニーズヘッグの群れが巨体にまとわりつき、食いちぎり、噛み砕いている。
 ニーズヘッグたちに貪られた結果、地上に到達する前に巨体から『巨』の字が抜け、やがて、ただの体でもなくなった。
 しかし、無に帰したわけではない。
 ニーズヘッグたちの食べカスである無数の骨片がまだ落下を続けている。
 それらは空中で組み合わさり、百体ほどの竜牙兵に変化した。
 そして、亡きドラゴンに代わって、次々と着地した。
 城ヶ島に。

●ザイフリートかく語りき
「百八体もの竜牙兵が城ヶ島に出現した」
 ヘリポートに並ぶケルベロスたちの前でヘリオイライダーのザイフリートはいきなり本題に入った。
「その竜牙兵どもの発生源は、竜業合体で地球に向かっていたドラゴンの生き残りだ。本隊に先行するも地球に辿り着くことができず、力尽きて宇宙を漂っていたところ、ニーズヘッグどもの集めた力に反応して地上に転移してきたらしい……というような事情は既に知っている者もいるだろう。竜牙兵が大量発生したのは今回が初めてではないのだからな」
 竜牙兵たちは皆、『竜業合体で地球にやってくる同胞たちのためにグラビティ・チェインを集めなくてはいけない』というニーズヘッグの強い意思に支配されており、グラビティ・チェインの獲得――虐殺を繰り広げることだけをただひたすらに考えている。
 しかし、城ヶ島には獲物がいない。有事に慣れた城ヶ島の住人たちは危機を察して避難したのだ。
 そこで竜牙兵たちは本土をグラビティ・チェイン狩り場と定め、海を渡り始めた。なにやら不可思議な力で宙に浮かび、海面を歩くようにして。
「竜牙兵どもに本土の土を踏ませるわけにはいかん。なんとしてでも殲滅しろ。敵は海面にいるので、こちらも海で迎え撃つ形になるだろう。自分の翼やヘリオンデバイスで飛ぶもよし、泳ぐもよし、船等に乗るもよし」
 百八体の竜牙兵は密集陣形を取っている。九人一列の十二列横隊。広さにほぼ制限がない海上であえて固まっているのは、そのほうが指揮を取りやすいから……というわけではないらしい。
「奴らは知能がさして高くないので、群体じみた密集陣形に固執しているだけだ。どんなに激しい攻撃を受けても散開せず、機械的に前進を続けるだろう。タワーディフェンスゲームの敵のようなものだな」
 何人かのケルベロスは『王子もタワーディフェンスとかするの!?』と驚いた。一方、その事実をすんなりと受け入れることができたケルベロスたちもいた。ザイフリートが真剣な顔でスマートフォン(エインヘリアルなのでタブレットサイズ)を覗き込み、あるいはパソコンを睨みつけ、トラップや砲台の配置に頭を悩ましている――脳裏に浮かんだそのその光景に微塵も違和感がなかったからだ。
「だが、一体だけ知能の高い指揮官クラスの竜牙兵が七列目の中央に陣取っている。そやつを倒せば、残された敵たちの動きは鈍るはず。もっとも、知能が高いといっても、他の竜牙兵と比較した場合の話だ。指揮官を優先的に排除することなど考えず、目の前の敵を蹴散らしていくのもいいだろう。まあ、戦術は問わん。貴様らの好きなように戦うがいい」
 好きなように戦っても構わないが、求められている結果は一つだけ。
 勝利だ。
 だが、ザイフリートはそれを口に出さなかった。彼にとっては、言うまでもないこと。ケルベロスにとっては、言われるまでもないこと。
「では、行くぞ!」
 ヘリオンに向かって、ザイフリートは歩き始めた。
 リアルなタワーディフェンスゲームに挑むケルベロスたちとともに。


参加者
エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)
新条・あかり(点灯夫・e04291)
巽・清士朗(町長・e22683)
バラフィール・アルシク(闇を照らす光の翼・e32965)
ダスティ・ルゥ(長い物に巻かれる・e33661)
カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)
リリス・アスティ(機械人形の音楽家・e85781)
オズ・スティンソン(嘯く蛇・e86471)

■リプレイ

●リリス・アスティ(機械人形の音楽家・e85781)
 密集陣形を組んで突き進んでくる百体超の竜牙兵たち。
 その足元から上がっているのは濛々たる土煙ではなく、大量の水飛沫です。彼らは不可思議な力を用いて、海面を歩いているので。
 そんな異様な軍団と対峙しているケルベロスの一人――このわたくしの姿も遠目には海に立っているように見えるかもしれませんね。実際はレスキュードローン・デバイスを足場にしているのですが。
「ザイフリート王子はタワーディフェンスに例えてましたけど……」
 大きな垂れ耳を指先でかきながら、人型ウェアライダーのダスティ様が呟かれました。
「整然と隊列を組んだ敵とこうやって対峙してみると、昔懐かしのインベーダーゲームかブロック崩しって感じがしないでもないですね」
 ダスティ様も木箱型のレスキュードローン・デバイスを海面に浮かべているですが、それを足場にしているのはフォーマルハウトという名のミミック。御本人はジェットパック・デバイスからの牽引ビームで飛翔しておられます。フォーマルハウトの主たるカロン様(彼も人型ウェアライダーです)も御同様。
 ビームの射出者は清士朗様。和服姿の人派ドラゴニアンです。足裏が海に触れそうな位置で浮遊されているので、彼もまた遠目には海面に立っているように見えることでしょう。
「主の命の残滓より生まれし者どもよ。すまんが、汝らの本懐、遂げさせるわけにはいかん」
 迫り来る竜牙兵たちに語りかけながら、清士朗様は抜刀されました。黒鞘から放たれた白刃が一瞬だけ煌めいたのは牽引ビームを照り返したから。
「我ら、ケルベロス。これより、殲滅戦を開始する」
「うん」
 と、頷かれたのはメリュジーヌのオズ様。デバイスではなく、御自分の翼で飛んでおられます。
「開始しようか」
 オズ様の蛇型の下半身を伝うようにして鎖が流れ落ちていきます。
 それは海中に沈むことなく、サークリットチェインの魔法陣を波間に描きました。

●オズ・スティンソン(嘯く蛇・e86471)
 サークリットチェインの範囲にいたのは一人と三体だ。僕、フォーマルハウト、ウイングキャットのカッツェとトト。
「それにしても――」
 横九列と縦十二列に並んだ竜牙兵たちを見据えて、レプリカントのリリスさんがゾディアックソードを一振り。揺れる水面に守護星座の紋様が浮かび上がり、またもや僕とサーヴァントたちにエンチャントがもたらされた。
「――ダスティ様が仰ったとおり、整然と並んでいますわね」
「まあ、列を作るために思考リソースを割いてくれているのなら、こっちとしては有難いかも」
 と、僕が言ってる間に敵は乏しい思考リソースを戦闘にも回したらしく、次々と攻撃を仕掛けてきた。簒奪者の鎌を投擲したり、ゾディアックミラージュを放ったり。
 ただし、戦っているのは最前列の面子だけ。後列が援護するとか、ファランクスを解いて僕らを取り囲むとかいう発想はないらしい。これは思考リソース云々以前の問題だったかな? そもそも思考しているかどうかも怪しいね。
 だからといって、攻撃が緩いわけじゃないけれど、僕らが受けた傷はすぐに癒された(もちろん、全快とはいかないけどね)。
 なぜなら――、
「僕、タワーディフェンスよりもストラテジーゲームのほうが好きなんですよね」
 ――と、なんだか判らないこと(ごめん。ゲームには詳しくないんだ)を言いつつ、ダスティさんがブレイブマインを炸裂させてくれたから。
 続いて、ヴァルキュリアのバラフィールさんもヒールのグラビティを発動。背中に展開している翼から羽根型の小さな光がいくつも分離して僕らに降り注ぎ、傷を塞いでいく。
「ザイフリート王子とは、今まで直に会話させていただく機会はありませんでしたが――」
 首をかしげて呟くバラフィールさん。ダスティさんのゲームの話を聞いて、ヘリポートでの王子の言動を思い出しているみたい。
「――意外と庶民的なかたなのでしょうか?」

●ダスティ・ルゥ(長い物に巻かれる・e33661)
「庶民的というか、地球の文化への学習欲が強いんだと思うよ。王子はいろんな意味でマジメな人だから」
 と、淡々とした調子でバラフィール様に語って聞かせたのは、シャドウエルフの女の子――あかり様だ。朝顔の蔓が絡みついたかのようなデザインのチェイスアート・デバイスで牽引ビームを受け、宙を舞っている。
「まずは面で削っていこうか」
 竜牙兵たちへと向き直り、あかり様は宣言通りに面で削った。アイスエイジの呪文を唱え、氷河期の精霊を乱舞させて。
 何体かの竜牙兵がカチンコチンに凍り付き……そして、その姿勢のままで薙ぎ倒された。カロン様がレガリアスサイクロンを見舞ったから。
 ちなみにカロン様はウサギのウェアライダーで、衣装もウサギの着ぐるみだったりする。ウサギ度が濃すぎない?
 でも、そんな見た目の愛らしさからは想像できないほどの激しい怒りを感じているらしく――、
「死に損ないが! そんな姿になってまで、地球が欲しかったのかよ!」
 ――竜牙兵たちに向かって叫んでるよ。
 あと、エルス様も怒ってるみたい。彼女はあかり様に次いで年少のオラトリオ。カロン様とは別のベクトルで愛らしい姿をしているけど、全身から殺気を漂わせているような気がする。
「……」
 あかり様とカロン様の攻撃を免れた竜牙兵たちの前をエルス様は通過した。右から左へと。アイスエイジで攻撃しながら。
 ほぼ同時が清士朗様が左から右に動いた。袴の横の隙間から尻尾を出し、ぶるんぶるんと振りながら……なんて言うと、ちょっと可愛い絵面が思い浮かぶかもしれないけれど、実際は凄い迫力だよ。ドラゴニアンのテイルスイングだからね。

●巽・清士朗(町長・e22683)
 何体かの竜牙兵は俺たちの攻撃をなんとか耐え忍んだ。とはいえ、あと一撃かニ撃で落ちそうだが。
「フォーマルハウト!」
 カロンの叫びに応じて、ミミックのフォーマルハウトが愚者の黄金を海にばらまき、満身創痍の竜牙兵たちを惑わせた。黄金が水に沈まずにプカプカと浮かぶ様はなかなか愉快だが、それに群がる竜牙兵たちの姿は哀れというか、なんというか……。
 もっとも、哀れみをもよおすその光景はすぐに見えなくなった。
「定められた結末なんてない♪」
 オズが『トーンアパート』を歌い、とどめを刺したからだ。
 当然のことながら、それで戦いが終わったわけじゃない。間髪を容れずに二列目が攻撃を仕掛けてきた。
 俺のところにもいくつかのグラビティが飛んできたが、そのうちの一つは――、
「にゃん!」
 ――勇ましい咆哮(?)を響かせて、ウイングキャットのカッツェが代わりに受けてくれた。
「休む暇もありませんね。まあ、休むつもりなど、ありませんけど」
 背中にある自前の光の翼とチェイスアート・デバイスの踝の辺りから発生している光の翼を震わせて飛びながら(いや、実際は牽引ビームの力で飛んでいるんだが)、カッツェの主たるバラフィールが後衛陣にメタリックバーストを施してくれた。飛行状態にある者が多いために効果は減衰しているものの、消え去ったダメージはゼロではない。それで充分。
 そして、彼女が散布した光り輝くオウガ粒子に白いものが混じった。
 あかりが腕を振り、グラビティの雪を降らせたんだ。
「ほんのちょっぴり季節はずれだけどね」
「でも、綺麗ですよ。せっかくだから――」
 カロンが手を突き上げた。
「――光を加えてみましょうか」
 雲の隙間から光が差し込んだ。薄明光線というやつか。もちろん、あかりの雪と同様、その光線もグラビティだろう。

●カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)
 二列目、三列目、四列目……本土を目指して機械的に前進を続ける竜牙兵たちを僕たちは文字通り海の藻屑にしてやりました。それでも、敵の数はまだ半分以上も残っています。
「地球では、ラッキョウの皮を剥く猿に例えるんだっけ? こういう風に単純作業をひたすら続けることを……」
 オズさんが翼を広げて飛び上がり、六列目の敵が放ったゾディアックミラージュの一端を我が身に受けました。後方にいるあかりさんを庇ったのです。
「うーん。ちょっと違うかな」
 腕を振り、グラビティの雪をまた降らせるあかりさん。花吹雪と見紛う綺麗な雪ですけれど、それを浴びた竜牙兵たちはなにかに押し潰されたかのように体勢を崩し、苦しげに痙攣しています。
「ラッキョウを剥いてる可愛そうなお猿さんはなにも得ることができないだろうけど、僕らの場合は――」
「――諦めずに皮を剥がし続ければ、勝利を得ることができます」
 僕は引き取り、手を突き上げて『蒼天夢幻のスカイティアーズ』を発動させました。雲間から光が伸び、竜牙兵たちを突き刺していきます。
「白骨蠢く初冬の海に雪が舞い散り、太陽の光が差し込んで……なかなかに乙な光景だな」
 凛とした声が光と一緒に落ちてきました。
 見上げると、そこにいたのは清士朗さん。いつの間にか高度を上げていたようですね。傍らにはエルスさんの姿もあります。
「いくぞ」
「……」
 清士朗さんの言葉に頷くエルスさん。
 次の瞬間、僕の視界から二人が消えました。

●バラフィール・アルシク(闇を照らす光の翼・e32965)
 エルスさんと清士朗さんが見えなくなったのは、いきなり猛スピードで急降下したからです。
 海の中に飛び込まんばかりの勢いでしたが、もちろん、本当に飛び込んではいません。海面にぶつかる寸前に二人は直角の軌跡を描いて左右に分かれ、水平に飛びながら、竜牙兵たちに攻撃を加えました。エアシューズを履いたエルスさんはレガリアスサイクロンで。日本刀を手にした清士朗さんは流水斬で。
 それがとどめとなって、五列目が瓦解。
 すると、なにごともなかったかのように六列目が攻撃をしかけてきました。
「こんなに圧されているのに――」
 あかりさんがアイスエイジで反撃。
「――一向に怯まないんだね」
「きっと、戦況を正確に把握できるほどの知能を有していないのでしょうね」
 リリスさんがあかりさんに祝福の矢を放ち、傷を癒しました。
「あるいは、怯んだり怖がったりするような心を有していないのかもしれませんよ」
 そう言いながら、ダスティさんがガラスのような無色透明のクナイ(戦場に撒かれたオウガ粒子等の光を反射したので、透明でも視認できましたが)を竜牙兵めがけて連射しました。
「正直、僕のほうは怖くてたまりませんけどね。いや、敵じゃなくて、水上で戦うというこの状況が……」
「どうしてですか?」
 と、首をかしげるリリスさん。彼女のサーヴァント――ファラオめいた金の隈取りのあるウイングキャットのトトくんも不思議そうにダスティさんを見ています。
「どうしてもなにも、海に落ちて溺れたりしたら、大変なことになるじゃないですか。ケルベロスなので溺死することはありませんけど、海の底に沈んだままでずっと過ごすなんて……もう『考えるのをやめる』という選択肢しか残されてないシチュエーションでしょ」
 ……それは杞憂なのでは? そもそも、デバイスで飛んでいる限り、海に落ちることなんてありませんし。

●新条・あかり(点灯夫・e04291)
「七列目が見えました」
 六列目が消え去ると、バラフィールさんが改めて光の羽根を散布してくれた。傷が治って、エンチャントもついて(防御力がちょっと上がったみたい)、おまけに見た目も綺麗という一粒で三度おいしいグラビティ。
「あれが指揮官ですね……」
 エルスさんが呟いた。控えめな声量に反して、光の羽根やらオウガ粒子やらで全身がキラキラ状態。まあ、キラキラなのは他の皆(僕も含む)も同じなんだけど。
 彼女が睨みつけている『あれ』は七列目中央の竜牙兵。外見は他の竜牙兵と変わらないけど、目には見えない圧力みたいなものが感じられる。
 でも、その圧力に屈することなく――、
「沈め!」
 ――カロンさんがスターゲイザーを打ち込んだ。
 別の竜牙兵が指揮官の前に体を投げ出すようにして盾となったけど、清士朗さんがすかさず繰り出した雷刃突までは防げなかった。ほぼ同時にエルスさんが撃ち出したディスインテグレートも。
「昔々、川を挟んで……」
 オズさんが昔話みたいなものを語り始めた。場違いな行動に見えるけど、その昔話はグラビティなんだろうね。竜牙兵たちが傷を受けているから。
 そして、ダスティさんが透明のクナイで追撃。結果、何体かの竜牙兵が海に沈んだ。表情も変えずに……。
 ダスティさんが言ったとおり、彼らには心がないのかもしれない。仮に心があったとしても、誰一人として感じ入ってないみたい。この海の碧さとか、奪おうとしている土地の美しさとか、清士朗さんが『乙』と評した光景とか……そういう諸々について。
 それが僕は恐ろしい。とても、とても、恐ろしい。
 そして、悲しい。

●エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)
「にゃー!」
 カッツェちゃんが飛ばしたリングによって、指揮官の顔面に横一文字の傷がつきました。
 そして、すぐに斜めの傷もつきました。
「にゃおー!」
 トトちゃんが急降下し、爪の斬撃をお見舞いしたからです。
 指揮官は反撃の動きらしきものを見せようとしましたが――、
「鎮魂歌の代わりにこの曲をどうぞ」
 ――リリス様のほうが先に動きました。
 レスキュードローン・デバイスの上でバイオリンの演奏を始めたのです。
 ノクターンらしきその楽曲はとても美しいものでしたが、私の心中で燃え上がっている炎を消し去ることはできませんでした。
 そう、ドラゴン勢に対する怒りの炎は……。
 代わりに指揮官の命を消し去ってくれましたが。
「一山、越えたね」
 指揮官が頽れる様を少し悲しげな目(悲しみの理由までは判りませんが)で見ながら、あかり様がアイスエイジを発動させて、七列目の残党にとどめを刺しました。
「越えたついでに白状するけどさ」
 八列目の攻撃(指揮官が死んだことで動きが鈍っています)をいなしつつ、オズ様が鎮めの風を送ってくれました。
「ダスティさんと同様、僕もこの戦いが怖いんだよね。ホント、足がすくみそうな思い……」
「足はないじゃないですか」
 蛇の下半身を見て苦笑しながら、バラフィール様が八列目にライジングダークを放射しました。
 私のほうは前述した怒りのせいで苦笑する余裕などありません。
 しかし、その怒りは言葉や表情ではなく、行動で示しましょう。
 目の前の竜牙兵たちを殲滅するという行動で。
「二山目は一気に越えるぞ」
 と、清士朗様が声をかけてきました。こちらの心を読んだかのように。
「はい」
 私はうなずき、清士朗様とともに飛び込ました。
 憎むべきドラゴンの尖兵の群れに。

作者:土師三良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年12月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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