ミッション破壊作戦~勇者に捧ぐ葬送歌

作者:坂本ピエロギ

「よく集まってくれた。早速だが、作戦の説明を始めよう」
 ザイフリート王子はそう言って、ヘリポートのケルベロス達を見回した。
 今回の依頼はミッション破壊作戦。デウスエクス勢力が日本各地に築いたミッション地域を強襲・破壊する作戦である。
「既に知っている者も多いだろうが、念の為説明しておく。本作戦の目的はミッション地域の中枢にある強襲型魔空回廊を攻撃し、これに損害を与える事だ。首尾よく魔空回廊を破壊できれば当該地域は解放され、人々の手に戻るだろう」
 今回標的となる種族はエインヘリアルだ。
 彼らの有する回廊は盛岡城跡公園の1ヶ所を残すのみ。そこを破壊すればエインヘリアルのミッション地域は完全解放となる。
「強襲型魔空回廊はデウスエクスの重要拠点。故に周辺は敵の防衛部隊に固められており、陸路から侵攻する事は叶わぬ。そこでこの作戦では、私が回廊の上空まで飛ばしたヘリオンから降下し、強襲を行って貰いたい。――この『グラディウス』でな」
 そう言って王子が見せたのは、長さ70cmほどの光る剣型兵器だった。
 使用方法はいたってシンプルだ。ヘリオンを降下後、この剣を回廊のバリアに接触させてグラビティを極限まで高める。そうして魂の叫びを込めれば、剣から生じる爆炎と雷光が、回廊を攻撃してくれる。
「爆炎と雷光はグラディウスを持たぬ者に無差別に襲い掛かる故、敵の防衛部隊であっても防ぐ術はない。お前達は攻撃完了後、剣の力で発生するスモークを利用してミッション地域を離脱するのだ。無論、グラディウスを持ち返る事も忘れてはならぬぞ」
 そう言って王子は、最後に数点の注意事項を付け加えた。
 グラディウスの攻撃で無力化できるのは敵の防衛部隊のみであり、彼らを統率する強力な個体には通じない事。ケルベロスがミッション地域を離脱する際、この強力な敵は必ず攻撃を仕掛けて来るため、遭遇したら素早く撃破して撤退を行う事。
 そして万が一、脱出前にスモークが切れた場合、降伏か暴走以外に助かる術はない事。
「ヘリオンデバイスの実装によって、ミッション破壊作戦の危険度は幾分か下がっている。だが、盛岡城跡公園はエインヘリアル種族の最高難度を誇るミッション地域だ。くれぐれも油断せぬようにな」
 そうして王子は説明を終えると、改めてケルベロス達に向き直った。
「死者の泉の『門』攻略は佳境を迎えている。泉への道が開かれれば、アスガルド本国との最終決戦は時間の問題であろう。来たる戦いに万全の態勢で臨めるよう、ミッション地域の解放を進めて貰いたい。頼んだぞ!」


参加者
マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)
御手塚・秋子(夏白菊・e33779)
ラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869)
人首・ツグミ(絶対正義・e37943)
帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)
エリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)
 

■リプレイ

●一
 その土地は、ただ一体のエインヘリアルが守る領域であった。
 盛岡城跡公園――射手『ラピスラズリ』が占領するミッション地域開放の為、ケルベロスを乗せたヘリオンが盛岡の空を飛んでいく。
「見て、ハク。目的地が見えてきたよ」
 飛翔を続けるヘリオンの機内で、エリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)は翼猫『ハク』と一緒にミッション地域の遠景を眺めていた。
 街中の高台に設けられた城跡公園、その随所を闊歩するのはラピスラズリの分身達。
 かつて花紅葉の名所として知られ、土地の人々に愛された名跡の賑わいは、すっかり影を潜めて久しい。
「あれが、エインヘリアル最難関のミッション地域ですか……」
 地上を凝視する帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)がぼそりと呟く。
 エインヘリアルが築いた地球侵略の橋頭保。その回廊と繋がっているのは、彼らの本拠地アスガルドゲートに他ならない。
「潰しておきたいですね。決戦が始まる前に」
 揺るがぬ意志を胸に、翔はグラディウスを握りしめる。
 その隣ではシルディ・ガード(平和への祈り・e05020)が、マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)と地図で地形の確認を行っていた。
「今回の戦場は市街地の中か。けっこう狭いエリアだね」
「ああ。綺麗な状態で奪還できるといいな……街の人達の為にも」
 離脱時には煙幕による撹乱が行えるとはいえ、詳細な情報を把握しておいて損はない。
 高低差、障害物の有無、奇襲を受け易そうなポイント、等々。危険そうな場所をあらかた頭に叩き込むと、二人はその他細々とした支度を終えて降下を待つのみとなった。
 一方その向かいでは、御手塚・秋子(夏白菊・e33779)も準備を終え、緊張した面持ちで作戦開始の時を待っている。
(「皆で帰る……帰るぞ!」)
 難関ミッションのボス戦では何が起こってもおかしくない。ヘリオンデバイスがあっても油断は禁物だ。どうか全員で揃って帰還できるようにと、秋子は紫黄水晶のマリッジリングへ静かな祈りを込めた。
「絶対に勝つんだから。皆よろしくね」
「くふふ、こちらこそ。悪の粛清、成し遂げますよーぅ」
 そう言って秋子に挨拶を返すのは、人首・ツグミ(絶対正義・e37943)だった。
 人に害為すデウスエクスは存在自体が悪。即ち容赦も酌量も必要なく、正義の味方である自分に疾く誅殺されるが当然――そう考えるツグミは、初めて使う兵器グラディウスを手に収め、旅団仲間のエリザベスに微笑みを向ける。
「魂の叫び、張り切っていきましょうねーぇ」
「うん。初挑戦だけど頑張ろう!」
 そうして降下ポイント到着のブザーが鳴り響くと、7人は席を立った。
 堅牢な回廊、そして強力なる首魁。緊迫感に包まれた空気の中、ヘリオンのハッチが重い音を立てて開放されていく。
「それでは、いざ出撃と参りましょうかねえ」
 準備を終えたラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869)は、地上に展開する敵をハッチから見下ろした。あの大群のどこかに、かつて逃がした『奴』がいる――その事実に、兜の地獄炎が静かに燃え盛った。
「つくづく、しぶといですねえ――彼も」
「では行きましょう。帰天・翔、降下開始します!」
 過去に紡がれた因縁に終止符を打つため。エインヘリアルの侵攻を阻止するため。
 各々の意思を胸に秘めながら、番犬達は一斉に大空へと身を躍らせた。

●二
 一瞬の浮遊感の後、切りつけるような寒風が襲う。
 地球の重力に引かれるケルベロス達の真下、回廊を保護するのは半球状のバリア。そこへ降下したエリザベスは、構えたグラディウスを一思いに叩きつける。
「お城にはね。今を生きる人、そして……昔を生きた人の想いも詰まっているの」
 かつては武士の城として、今は市民の憩いの場として、人々と共にあり続ける場所。
 連綿と想いが重ねられた地に居座る敵へ、エリザベスは鋭く叫ぶ。
「いつまでもあなた達の好きにはさせない!」
 魔空回廊を、一条の雷光が撃ち貫く。
 同時、奇襲を察知した防衛部隊のラピスラズリ達が、一斉に動き始めた。
 ある者は牽制の矢を射て、ある者は隊列を組むために走り出す。その光景を翔は空中から睥睨しながら、光剣を握った。
「この名跡を占領し、人々を苦しめてきたようですが……それも今日で終わりだぜ!」
 緑色のワイルドが迸り、翔の口調が一変する。
 そうして彼が叫びに込めるのは、デウスエクスへの明白な敵意だ。
「ここは只の城じゃねぇ、この地で生きる人々の歴史の象徴、そして誇りだ! それを踏み躙るてめぇらは、今すぐ消えやがれ!」
 咆哮と共に放たれた爆炎が、容赦なく魔空回廊を削っていく。
 対するラピスラズリ達はケルベロスの攻撃を逃れながら、反撃の機会を地上で淡々と狙い続けている。矢による攻撃が無駄だと悟ったのか、消耗を抑え、ケルベロスが着地した所を叩こうというのだろう。
「ま、それも結局は無駄なんだけどさ」
 明るい笑みを浮かべ、マサムネがバリアに剣を突き刺した。
「ここってさあ、花や紅葉がすっごく綺麗なんだよね」
 だが、その美しさはタダで手に入るものではないと、マサムネは続ける。
「木々や道を整備してくれた人達の、土地への愛。美しい自然の四季を愛でる、星への愛。お前達にそれを汚させはしない」
 静かだが、揺らぐ事のない叫び。その一声が爆炎に変じて降り注ぐ。
 続けて降下して来たシルディも、この地の開放を願いながら叫びを込めていく。
「氾濫に耐えて、敵兵を押し返した石垣はもうないけど……それでも!」
 ぐっと歯を食いしばり、シルディは言った。
 在りし日の姿は今でも人々の心と繋がっている。四季を誇る風景と一緒に――と。
「此処を守って来た人々の誇りを、心を、取り戻すからね――この一撃で!」
 まばゆい雷光が、回廊に深い傷を刻む。
 残るグラディウスは3本。その1本を握るツグミは、地上に蔓延る悪を見下ろしながら、くふりと笑いかけた。
「くふ、ふ、『コレクション』に『相応しい』ときましたかーぁ」
 ツグミが彼らに抱く感情。それを一言でいうならば『許しがたい』だ。
 一体なぜ? そう問われたら、彼女はこう答えるだろう。
 蒐集という行為はともかく、自分達ケルベロスの力を我が物にできると思っている、その思いあがった態度が許せないのだと。
「というわけでーぇ……全力、籠めて参りましょうかーぁ!」
 グラビティが爆炎に形を変え、魔空回廊を包み込んだ。
 そうして回廊が、地上が、スモークによってうっすら覆われ始める。ケルベロスの離脱を助ける濃密な煙幕、それは同時にグラディウスの攻撃完了が間近である事も意味する。
 煙に覆われていく敵の群れ。そんな彼らに向かってラーヴァは愉快そうに語り掛けた。
「分身達と遊ぶのもたのしいですが、そろそろ飽きました。そうでしょう?」
 かつて雌雄を決する事叶わず、取り逃がした敵。そいつと今日こそ決着をつけるため。
 そろそろ区切りとしましょうね、その言葉と共にラーヴァは続ける。
「こんどは逃しはしないので――まずは出てきてもらおうねえ!」
 激しい爆炎が回廊を嬲る中、秋子が最後の一本を携えて降下して来た。
 彼女は剣を手に、ゆっくりと、しかし強い声で叫びを込めていく。
「最近死んだ後の事考えるの。私忘れられちゃうのかな、生きた証何か残せるのかなって」
 彼女が見つめる先には、鮮やかに色づいた木々があった。この史跡も自然も、全ては名もなき人々が残してきたもの。それはそのまま、彼らの生きた証でもあるのだ。
「壊したら取り戻せない、受け継がなきゃいけないもの。貴方に取られたまま終われない。皆の生きた証、返してもらうよ!」
 7度目の叫びが雷光に変じて降り注いだ。
 周囲を包む一瞬の静寂。
 消滅するバリア。
 そして――。
「見て、魔空回廊が!」
 シルディの指さす先、城跡公園の回廊が轟音と共に崩壊していく。
 地上へと着地した秋子は回廊の消滅を確認すると、直ちにグラディウスを収納。合流した仲間達と頷きを交わし合う。
「成功っ! それじゃ、撤退開始だね!」
 任務は未だ道半ば。戦場の離脱という任務が、自分達には残っているのだ。
 こうして魔空回廊の破壊を完了したケルベロス達は、ヘリオンデバイスの装着を終えると迅速に離脱を開始していった。

●三
 混乱に包まれたミッション地域を、ケルベロス達が駆け抜ける。
 先頭を行くのはエリザベスとシルディだ。一方、翔とツグミはジェットパックで浮上し、牽引ビームを中衛に照射。ラーヴァと3人で空へと飛行していく。
 煙幕の助けを借り、防衛部隊をすり抜け、ひたすらに駆け続けるケルベロス達。
 と、その時――エリザベスが急に立ち止まり、仲間達へ注意を呼び掛けた。
「前方に敵。気をつけて」
「ええ、来たようですねえ。……本命が」
 煙幕の向こう、きらりと輝く瑠璃の色。
 そうして7人の前に姿を現したのは、ただ1体のラピスラズリだった。分身達とは比較にならぬ重厚なオーラは、彼が本体――すなわち敵の首魁である事実を雄弁に告げている。
『我が回廊が一度の襲撃で落ちるとはな。大した手並みだ、ケルベロス』
 怒りでも敵意でもなく、惜しみなき称賛を込めて、ラピスラズリは弓を構えた。
『今日は運がいい。あの日逃した敵を、討ち取れるのだからな!』
「良いでしょう。この辺りで決着をつけて――」
 ラーヴァもまた得物を手に応じる。
 自分の弓と似たそれを武器とする、エインヘリアルの宿敵に向けて。
「今度は私が、貴方の力をいただくとしましょうか」
『ふふ……行くぞ!』
 その一言が、戦闘開始の合図となった。
 同時、ラピスラズリの弓から必殺の矢が飛ぶ。ラーヴァめがけ発射された瑠璃の一撃を、エリザベスは身代わりとなって受けた。間を置かず放たれる追撃に、エリザベスの生命力が勢いよく削られていく。
「一撃だって通さないよ。ハク、清浄の翼!」
 派手に出血する傷口を全身防御で固めながら、エリザベスは翼猫に指示を飛ばした。
 後ろの仲間達を守るためにも、盾役の自分達が倒れる事は許されない。
「アリクイさん、力を貸してね」
「命中は十分かな? なら、こっちで!」
 ケルベロスの動きは、いずれも迅速で淀みない。
 ハクの風を受けたシルディが散布するオウガ粒子と、後衛の秋子が示した百戦百識陣は、アタッカーの仲間達に命中強化と破剣の力を付与していく。ラーヴァもまた番犬鎖を展開しながら、守護の魔法陣で前衛を包む。
「さて、反撃開始ですかねえ」
『来い。残らず撃ち落としてくれよう!』
 挑発するように、光の盾で自身を覆うラピスラズリ。
 ツグミはそこへバトルオーラで覆った拳を構え、ハウリングフィストを放つ。
「くふふ、粛清開始ですぅ!」
 デバイスの力を帯びてラピスラズリを捉える音速の拳。守護を砕くその一撃は、しかし光の盾を破壊し切れず、大幅に威力を殺される。
「……ジャマーか!」
 敵のポジションを察した翔は、即座に己が身を鋼鬼へと転じた。
 ミッション破壊作戦のボス戦はすなわち時間との闘い。どれほど優勢でも、煙幕が切れた時点でケルベロスの敗北は確定してしまう。
 今すべき事は只一つ。一刻も早く、守りを剥ぐのみだ。
「打ち砕いてやる!」
 めり込む戦術超鋼拳。砕ける甲冑。しかし光盾はブレイクを免れ、なおも壊れない。
 ならばと続くマサムネは、マイクを手に歌唱を開始。『やがて復讐と言う名の雨』で足を止めにかかる。
「神よ汝の子を哀れみ給え」
 ダークなメロディに乗せたグラビティが戦場に響き、敵の足捌きを奪い始めた。
 デバイスの力を帯びたケルベロスの猛攻は凄まじく、ラピスラズリに1つまた1つと傷を刻み付けていく。ラーヴァもまた戦靴型のデバイスで戦場を駆け、回転する機械腕の刺突でラピスラズリの装甲を剥ぎ、残った光盾をついに粉砕した。
「さあ――今度は私が、貴方の力をいただく番です」
『まだまだ……!』
 地獄炎を燃え立たせるラーヴァに、反撃のホーミングアローが放たれた。
 その瞬間、射線に割り込んだシルディが盾となって矢を受ける。射抜かれた脇腹を鮮血で染めるシルディ。そこへ秋子はドローンをフル稼働し、癒しのレイピアを生成していく。
「吃驚するかもだけどじっとしててね」
「ありがとう。もう大丈夫」
 降り注ぐ真っ赤なレイピアが傷口に刺さると同時、シルディは一息で跳び起きた。
 その前方ではゼログラビトンを発射した翔が、盾を失ったラピスラズリに捨て身の猛攻を加えている。じわじわと煙幕が薄れ始めている今、手間取っている時間はない。シルディはエリザベスと視線を交わし、同時に爆破スイッチに指をかける。
「皆、お願い!」
「ブレイブマイン、起爆!」
 花開く七色の煙幕が、後衛の背後を派手に彩った。
 昂る心に身を任せ、マサムネが流星蹴りを放つ。脚甲に直撃を浴び、俄かに体勢を崩したラピスラズリへ叩き込まれるのは、ツグミが振り被る大鎌だ。
「自分は貴方を救いません。願いもしないし祈らない――」
 魂の残滓で練り上げた『毒麦と見做せば』が一閃、敵の巨躯を袈裟に斬る。
「ええ、ええ。神の手など払いのけましょう。それが貴方の結末ですよーぅ♪」
 デバイスの力、煙幕の支援、追撃の一撃。ツグミの振るう鎌に致命傷を刻まれながらも、なおラピスラズリは倒れようとはしない。
『ふふ……素晴らしい力が……目の、前に……』
 全身を血に汚し、震える手で矢を番えるラピスラズリ。
 その眼前に赤くきらめくのは、ラーヴァの地獄炎を帯びた矢束であった。
「我が名は熱源。余所見をしてはなりませんよ」
 機械仕掛けの脚付き弓が、燃え盛る金属矢を一斉に放つ。
 そうして滝のように降り注ぐ『ラーヴァ・フォールズ』の一射は、瑠璃の名を冠する弓手を赤一色に染め上げて、その命を完膚なきまでに断ち切った。

●四
 それから数分後、ケルベロスは戦場を無事に離脱した。
 秋子は全員の無事を確認すると、回廊の消えた公園を眺めて作戦成功を噛み締める。
「これで、この場所も開放されるね」
 かつて家族で岩手旅行に来た時、立ち寄る事の叶わなかった場所。
 噛み締めた怒りも無念も、今はもう過去の話だ。遠くない未来、復興が為った暁には必ず皆で訪れようと、秋子はそっと心に誓う。
「早く平和が戻って来るといいな」
「うん。悲しい歴史は短い方がいいものね」
 エリザベスは秋子に頷きを返しながら、ふと思う。
 彼女が夢に描く歴史書の執筆――ケルベロスとデウスエクスの戦いを記した本には、今日の戦いをきっと記すことにしよう、と。
「さあ帰ろう。私達の勝利だよ」
 半年後か、あるいは一年後か。
 そう遠くない未来、この地の歴史には『復興』の二文字が刻まれるだろう。
 その日が一日でも早く訪れる事を祈りながら、ケルベロス達は帰還の途に就くのだった。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年11月30日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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