その破壊力、メガトン級

作者:天枷由良

 服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)の意識は拳に宿っている。
 そう言われても納得できるほど、彼女の行動は単純明快。
 より強く、より恐ろしく、より確かに『生を実感できる相手』を求めて。
 挑み、殴り、屠り、高らかに鬨を上げてはまた挑み、殴る、殴る、殴り倒す。
 ……そんな彼女だからこそ、だろうか。
 その命を狙ってきた相手もまた、実に解りやすい思想から生まれたものだった。
「――むみょ?」
 敵を求めて流離う最中。
 無明丸は戦の残り香漂う瓦礫の狭間で、気抜けした声と共に青空を見やる。
「……ま、まさか、おぬしは……!!」
 其処に在ったもの、其処から来るもの。
 それは戦略級ミサイル型ダモクレス。
 その名もずばり――メガトン!!!

●ヘリポートにて
「……ええと」
 火急の要件としてケルベロスたちを集めたにも関わらず、ミィル・ケントニス(採録羊のヘリオライダー・en0134)は困り果てた表情で言葉に窮していた。
 それもそのはず、無明丸を葬り去らんと襲撃するダモクレスは、その種族に抱くイメージとはかけ離れた、まるで脳筋とでも呼ぶべき単純な襲撃を仕掛けてきたのだ。
「大型ミサイルの姿をしているダモクレス、メガトンは高高度から狙いをつけて急降下。その質量を武器に服部さんを叩き潰し、目的を達すると急速離脱するつもりのようだわ。すぐに服部さんのもとに向かい、彼女を救援しましょう」
 戦場は、故あって復興されていない旧市街地。
 無明丸がふらりと辿り着いてしまったのは、其処に残る戦の気配に誘われたからだろうか。一帯にひと気はなく、戦火に曝された建物だけが幾つか、ひっそりと佇んでいる。
「その上空を凄まじい推進力でもって自由自在に飛び回るメガトンは、見た目に違わず耐久面も一級品。常に飛行している事で戦闘隊列による恩恵は一切受けられないけれど、それを“些事”と片付けられるだけの尋常ならざる力を持っているはずよ」
 それだけでも厄介なものだが、さらに恐るべきは――。
「……メガトンは、自爆するわ」
 諸共全てを吹き飛ばすその機能の起動条件は、任務失敗と見込まれる時。
 即ち、無明丸を殺せないまま自分が破壊されると判断した瞬間、メガトンは自爆シークエンスに入り、わずか1分ほどでケルベロスごと戦場を吹き飛ばしてしまう。
「そうなっても、何の機能も有していない旧市街地が消し飛んだところで実害は皆無、皆もヘリオンデバイスによって重傷は避けられるでしょう。そして、敵は消滅するから……勝利は此方が得たことになると思うのだけれど」
 救援に向かって、その結末が大爆発では格好もつかない。
「敵の限界を明確な数値などで測ることは出来ないのだから、勝負は敵が自爆すると決めた後の1分になるでしょう。其処で最大火力が発揮できるような作戦で挑むのが、メガトンの自爆を防ぐ方策の一つではないかしらね」
 そう締め括ると、ミィルはヘリオンへの搭乗を促した。


参加者
ウィルマ・ゴールドクレスト(地球人の降魔拳士・e23007)
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)
バラフィール・アルシク(闇を照らす光の翼・e32965)
蘇芳・深緋(ダンジョンレア倉庫・e36553)

■リプレイ


 嘗ての面影を僅かに残す瓦礫の原。
 真なる名も歴史も定かでないが、さりとて其処に意味などない。
 漂う戦の残り香と、一つの街に訪れた“死”という現実。
 その只中で感じる、己が“生”の肌触り。
「……わはははっ!」
 忽然と襲う武者震いに笑い声で抗って、服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)は空を見やる。
 青く晴れ渡った其処は、闘いとは無縁の穏やかさで――。
「……ん?」
 ほんの一瞬、生じた違和感に耳をすませば、微かに聞こえてくる騒音。
 バタバタと激しく叩くようなそれは無明丸にも、もとい大半のケルベロスなら誰でも馴染み深いもの。
「かかっ! 又候殴り込みでも掛けるのかのう!」
 何なら今からでも相乗りさせてはくれまいか――と、思う無明丸の頭上でヘリオンは姿を晒し、其処から三人のケルベロスと二匹のウイングキャットが、ぱらぱらと散るように降りてきた。
「服部さん、ご無事ですか!?」
 バラフィール・アルシク(闇を照らす光の翼・e32965)が慌てた様子で声掛ける。
「わははっ! 見ての通りピンピンしておるが!」
 心当たりのない無明丸は溌剌と答えた。
 それにバラフィールが胸を撫で下ろしたのも、特に気に留めず。
「いきなりどうしたんじゃ、おぬしら! ここにはなぁーんもおらんぞ! 見ての通り一面の瓦礫だけじゃ、かかかっ!」
「いえ、それが――」
 貴方の生命を狙うダモクレスが来るのです。
 冗談としか思えない台詞をバラフィールが告げるより早く、それはヘリオンの翼音をも掻き消さんばかりに高らかと己の存在を知らしめた。
 遙か上空。青空の彼方より来る、玩具のような色合いの鉄塊。
「……ま、まさか、おぬしは……!!」
「ええ、と……無明丸、さんの、お友達の方、で、しょう、か?」
 これぞ驚愕と言わんばかりの表情を作る女傑に対し、ウィルマ・ゴールドクレスト(地球人の降魔拳士・e23007)がどっしりとしたウイングキャット“ヘルキャット”を傍らに置いたままで、おずおずと問えば。
「……だれじゃったかのう」
 お手本のような惚けっぷりに、一同の常識担当を担わされるバラフィールがずるりと滑るように体勢を崩す。
「ここまで! ここまでは出てきておるんじゃが! わはは!」
「……あれはダモクレス・メガトン。どうやら服部さんを狙っているようなのです」
「ほう、それはそれは。物好きなやつもいたものじゃ! わはははっ!」
 甲斐甲斐しい説明も虚しく、笑いばかりが響く。
「確かに、変わった方です、ね?」
 同意なのか疑問なのか悪態なのか、いまいち定かでない相槌を打つウィルマでさえも、無明丸のペースに飲み込まれているようだ。
 ――だが、そんな雰囲気の中でもバラフィールは見逃さなかった。
 拳を武器に数多の戦場を渡り歩く無明丸の瞳が、彼方を見据えてぎらりと輝くのを。


「ともかく、戦闘準備を!」
 バラフィールが言うやいなや、ヘリオンから光が降り注ぐ。
 それは一定の範囲内で各々の望む形を成し、ケルベロスの力を部分的ではあるが大きく強化する。盾を担う者であれば耐久力を、矛となる者には攻撃力を、搦手を用いる者には命中力を――。
「深緋……深緋!」
 くるぶしの辺りに生えた二対の光翼を確かめた後、バラフィールは傍らの女性へと呼びかける。
 どうにも緊張感に欠ける――というか、もはや寝起きのような面構えのそれ、蘇芳・深緋(ダンジョンレア倉庫・e36553)は改造スマートフォンと無線接続されたイヤホンを外すと、ぐっと伸びをしてから視線を返した。
 家で寛ぐのと大差ないその姿に、バラフィールは若干の不安を覚える。
(「……やるべきことはやってくれるでしょうけれど……」)
「あのねぇ、ラフィ。これでもやる気はあるんだよっ、と」
 心を見透かしたかのように言った深緋は、黒いストラトタイプの六弦を担いだ。
 そのまま指慣らしに軽く爪弾けば、気分を高めるような旋律が響き渡る。
(「こんなんでもしなきゃ、正直きっつい状況だもんで、ねぇ」)
 ケルベロスとしての実戦経験には乏しい身で、いきなり他人様の生命を預かるような状況は荷が重い。
 それでも来たからにはそこそこ働くつもりでいるが、意志を言葉にする気は毛頭なく。
 代わりにギターを雄弁に語らせれば、空飛んで来る敵も、いよいよその姿がはっきりと分かる程にまで迫った。
「かつて会うてより幾星霜、律儀なことよ!」
「……あ、やはり、お知り合い、なのです、ね?」
「今世での戦は生死を分ける! おぬしとて勿論分かっておろうな!」
「あ、あの……」
「かかっ! その意気やよし! ならばっ!」
 こいつ全然話聞かねぇな、と内心で詰るウィルマを余所に無明丸は拳を握る。
 戦略ミサイル型ダモクレス・メガトンも黙して語らない(そもそも言語機能があるのかも分からない)が、しかしこちらに向かって――即ち、無明丸目掛けて瞬く間に距離を詰める。
「……ぶつかり、ます、ね」
「いきなりどかん、は勘弁してほしいんだけどなー」
「言ってる場合ですか!」
 マイペースなウィルマと深緋の狭間で、バラフィールの胃痛ばかりが拡大していく。
 けれど、彼女を労ってくれるのはウイングキャットの“カッツェ”くらいだ。そして無情にも時は過ぎ、黄と赤に塗り分けられた先端部が一同に影を落とす。
 ともすれば絶望的な光景。だが、しかし。
「さあ! いざ尋常にッ!!」
 無明丸は変わらず笑ったまま――腰を捻り、腕を引き、敵を見据えて一気に拳を突き出す!
「ぬぁあああああああーーーっ!!」
 絶叫。衝撃。質量では比べるまでもない差のオラトリオとダモクレスの間で空気が波打ち、その強烈な余波が一帯の瓦礫を僅かに崩した。
 大きく後退る無明丸。他方、ダモクレスも地上への衝突が不可避に思えた状況から一転、再び青空へと帰っていく。
「そんな無茶苦茶な……」
 胃痛が頭痛との二重奏に変わる。
 しかし、嘆いてばかりもいられない。バラフィールが気を入れ直せば、殆ど棒立ちになっていた護衛対象から苦悶のような声が聞こえてくる。
「……服部さん!?」
 今の一撃で相当のダメージを負ったか。
 治癒の専任者がいない此度の戦い、魔術的緊急手術の備えもしてきたバラフィールは真っ先に駆け寄って――。
「――届かぬ!!」
 まるでノーダメージな無明丸の雄叫びに再度体勢を崩す。
「飛んでいかれては届かぬ! もう一度降りて来い! いいから! 降りて! 来い!!」
「やる気満々だねぇ」
「言ってる場合で……ああ、もう!」
 これ以上は処理が追いつかない。
 深緋に向けた言葉を半ばで断ち、バラフィールは本来の目的に意識を集中させる。
 途端、無明丸は笑みをニヤリとしたものに変えて。
「降りて来ぬなら……此方から参ろうぞ!!」
 言うが早いか、ジェットパック・デバイスから牽引ビームを放ちつつ飛び上がった。


 その後を追ってバラフィールが、さらにウィルマと、最後に深緋が空へと上がる。
 追随できないウイングキャットの片割れが声援を送るように一つ、鳴いた。
「援護をお願いしますね、カッツェ!」
 僅かに振り返って呼び掛け、バラフィールは白鋼の避雷針を無明丸へと向ける。
 其処から迸る雷は、女傑の屈強な肉体に秘められた力を引き出した。
「ぬおっ! ……おおお!」
 賦活する肉体が気までも昂ぶらせる。
 無明丸は鉄塊へと鋭い眼差しを浴びせ、そのまま拳を突き出す。
 遙か遠間で為されたそれは、ただの空突きではない。堅く握りしめられた拳の先からは時空をも凍りつかせる闘気が撃ち出されて、空を我が物顔で征くダモクレスの横っ面を引っ叩く。
「どうじゃ!」
 手応えありと吼えれば、しかしメガトンは乱れた体勢を即座に立て直して再加速。
 すかさずウィルマが牽引ビームを手繰って軌道上に割り込み、突撃から無明丸を庇う。
「……ぐ……っ……」
 鳩尾にめり込む鋼鉄の衝撃は、これまでに味わった事のないもの。
 それでも意識を繋ぎ止めたままで僅かに身を捩れば、ダモクレスは闘牛士に躱された猛牛の如く、勢いそのままに彼方へ飛んでいく。
「う、く……」
「はいはい、しっかりして。テンション上げてこ」
 ともすれば投げやりにすら聞こえる深緋の言葉は、すぐに継戦と奮起を促す激しい律動に上塗りされた。
 何かが目覚めそうなその音色の沁みた身体は、暫くの間、メガトンの猛進にも耐えられそうだが――そんなことよりも。
「う……ーん、なんだか無明丸、さんと気が合いそうな方です、ね」
 ウィルマはちらりと傍らを見やって呟く。
「かかか! わしとあれの気が合うと申すか! 何故じゃ!」
「なにゆえ、って? ……ド直球で、力押しな感じ、とか?」
「わははははっ!」
 理解して笑っているのか、聞いていないのか。
 何れにせよ、この女傑には協調も了承も皮肉も嫌味も、ほぼほぼ無意味なのかもしれない。言葉を紡げば紡ぐほど疲弊するばかりと悟ったウィルマは、口を閉ざしたままで金属糸を伸ばす。
 紅い輝き放つそれがダモクレスに絡みつけば、手元には凄まじい重さが返った。
 今すぐにでも解きたくなる程の負荷だ。およそウィルマの性分ではなさそうな重労働だが、しかし自身が超重の体当たりを受けないようにする為と思えば、ぎりぎり耐えられるか。
 加えて、ウイングキャットたちも尻尾の輪を飛ばせば、僅かではあるがメガトンの飛行速度が鈍る。
「なんじゃ、そんなものか!」
 無明丸が挑発じみた台詞と共に再び空打ちをすると、今度は炎の龍が翔んで鉄塊を飲み干した。


 やがて、戦場には血と油と鉄の臭いが漂い始める。
「深緋、まだやれますか!?」
「……んー、なんとか」
 相も変わらず締まりのない声音で返す深緋だが――メガトンの突撃から無明丸を幾度か庇った影響だろう、六弦弾く指先の動きは、この戦場に降りた時よりも明らかに鈍っている。
 ウィルマにしても同様だ。鋼糸手繰る頻度は徐々に減り、癒やしの力持つ光蝶を生み出しては己や深緋に放つ事が増えていた。
 とはいえ、メガトンの方にも明確な変調が見て取れる。流線型のボディには数多の凹みを作って、その飛行速度は戦場へと飛来した時とは比べ物にならないほど遅い。
「すまぬが、もう暫く辛抱してくれ! あれはわしの拳で、必ず!」
「……ええ。分かっています」
 ようやっと、まともな意思疎通が出来たような気がしたのも束の間。
 神妙に答えたバラフィールは、果敢にも二本の避雷針を手に接近戦を挑む。
 万全の相手ならば博打だろうが、しかし――。
「其処です!」
 勢いよく振り下ろした得物が接触した瞬間、神の裁きの如き雷がメガトンに流れ込む。
 侮り難いその破壊力に、謂わば機首と呼ぶべき先端が垂れるように下がった。
「続きます、か」
「そろそろ終わってくれるとありがたいんだけどねぇ」
 ウィルマと深緋も口々に言って、金属糸と毒槍に変じたブラックスライムで仕掛ける。
 さらには、無明丸が炎龍を打つ。
 連打を受けた巨大な鉄塊は、錐揉みしながら地上へと堕ちて――。
「仕留めた? ……いや、違う!」
 半信半疑の眼差しを注ぐバラフィールの前で、メガトンはぐるりと一回転すると、後部から瓦礫の原に着陸を果たした。
 同時に、あからさまな警告音に続いて彼方此方から赤灯が輝き出す。
「あれ、もしかしてこれって?」
「自爆機能です! 深緋、畳み掛けて!」
 言うが早いか、バラフィールは敵を追って流星の如く堕ち、強烈な蹴りを見舞う。
 カッツェも爪撃で続けば、ヘルキャットものたのたと歩くような――否、もはや巨体でごろごろと転がるような緩慢さながら、引っ掻き攻撃を重ねて。
 その主人たるウィルマは、忽然と歪んだ時空から覗く地獄より蒼く燃える大剣を引き摺り出して、一気にメガトンとの間合いを詰める。
「さようなら」
 そう呟けば、全貌を把握することさえ出来ない長大な剣はあらゆるものを通り過ぎて、ただ一つ、討つべき敵だけを斬り裂く。
 鉄を鉄と思わぬその一撃に、然しものダモクレスも幾らか躯体を削がれたが、しかし。
「……まだ生きてるか、しぶといなぁ」
 嘆息混じりに言うと、深緋は俄に目を瞑る。
 諦めた――わけではない。心に想うは至極純粋な願い。即ち。
(「明日から頑張るから、あれ何とかして」)
 果たして、何処かの何かに願いは通じたか。メガトンの真下がひび割れて、其処から溶岩が柱のように迸った。
「年貢の納め時じゃな!」
 じわりと溶けるダモクレスを見据え、無明丸は今日イチの気合を拳に籠める。
「さあ! いざと覚悟し往生せい!」
 そのまま降り立つと、踏みしめた大地を蹴り、力強く駆け出して。
 光り輝く拳を思いっきり――思いっきり、メガトンのど真ん中へと打ち込む!
「ぬぅあああああああーーーッッ!!」
 雄叫びに僅か遅れて、金属を殴りつけた衝撃が轟く。
 刹那、メガトンから発せられる光や警告音も膨れ上がる。
「まだ倒れない!?」
「あー、やばい。これやばいよ、ラフィ」
「……お疲れ様、でした?」
「やめてください縁起でもない!」
 先走り過ぎたウィルマの挨拶に返して、バラフィールは己の足元から伸びる三本のビームを確かめると、急ぎカッツェを抱きかかえた。
 深緋もアームドアーム・デバイスを盾代わりにと動かしてはいるが、幾ら強力なヘリオンデバイスであっても、ただ一人の抵抗では焼け石に水だろう。
 事此処に至っては、もはや出来る事もない。少しでも爆心地から遠ざかる以外には、何も。
 だが――。
「……!? 服部さん!?」
 此度の戦の根源である女傑は、打ち込んだ拳を引き戻して再び叫ぶ。
「もういっぱぁつっっ! ぬぅあああああああーーーッッ!!」
 輝く拳が炸裂して、聳え立つミサイル型ダモクレスが中頃から折れ曲がる。
 巨大な爆弾がそんな状況になって、炸裂しないと思う方がどうかしている。
 バラフィールは深緋とウィルマ、そしてウイングキャットたちを伴い、瓦礫の影へと飛び込んだ。


 ――が、恐れていた熱波はいつまで経っても訪れない。
 慎重に様子を窺ってみれば――真っ二つとなったメガトンは、既に瓦礫の一部。
(「これが……死、か!」)
 巨大なダモクレスの骸を見やり、無明丸は暫し目を瞑って。
 すぐに片手を上げると、いつもの如く叫ぶ。
「わははははっ! この戦い、わしらケルベロスの勝ちじゃ! 鬨を上げい!」
 その堂々とした勝利宣言を、他の三人が飲み込むのには少々の時間を要した。
 バラフィールなどは思わず周囲を見回し、その荒廃した様に故郷を思い出しかけるが。
 繰り返される鬨が、追懐など払い飛ばしていく。
「何はともあれ助勢を感謝いたす! 助かった!」
「……まあ、とにかくご無事でなにより、です」
 手当を受けながら言うウィルマに、無明丸は変わらず、快活な笑い声を返した。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年11月26日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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