黄泉比良坂の門

作者:雷紋寺音弥

●彷徨う黒騎士
 歪んだ時間、捻じれる空間。
 磨羯宮ブレイザブリクより続く、魔空回廊の如き異次元の通路。
 それは、死者の泉へと続く転移門の内側だ。そして、その内側を彷徨うのは、漆黒の甲冑に身を包んだ黒き騎士。
 彼の者に名前は存在しない。強いて呼ぶのであれば、それは『門』だ。
 彼の者は言葉を発さない。なぜなら、彼は『死』そのものであるからだ。
 故に、彼の者に触れることは許されない。彼の者に見つかることは死を意味する。魂に飢えたる呪われし大剣を引き摺りながら、『門』は今日もまた獲物を求めて彷徨い続ける。

●冥府への階段
「召集に応じてくれ、感謝する。今回、お前達に向かってもらいたいのは、レイザブリクの隠し領域だ」
 正確には、そこから死者の泉に繋がる転移門。そこを目指して欲しいのだが、しかし一筋縄ではいかないと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は手帳を開きながら、集まったケルベロス達に説明した。
「既に知っている者も多いとは思うが、転移門への隠し通路を発見したのはリューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)だ。その後、この隠し通路が双魚宮……死者の泉に繋がっている事までは確認できたが、死者の泉を守る防御機構の『門』によって護られている」
 それを突破しない限り、死者の泉に向かうことはできない。『門』は『死を与える現象』が実体化したような黒い鎧のエインヘリアルで、倒されてもしばらくすると蘇り、新たなる『門』として死者の泉への道を守り続ける守護者である。
「お前達が『門』と戦うことになるのは、魔空回廊のような異次元回廊だ。この回廊の内部では、『門』の戦闘力は数倍に強化されるからな。今までのデウスエクスと同じだと思っていると、痛い目に遭わされるかもしれないぜ」
 黒騎士のような姿をした『門』の武器は、命を喰らう巨大な剣。その見た目に相応しく無骨で荒々しい攻撃を繰り出して来るが、単なる剣撃と侮っていると、恐ろしい目に遭わされる。
 なにしろ、相手は『死を与える現象』が実体化したような存在なのだ。当然、その剣撃もまた『死』を強くイメージさせる効果を持っており、様々な種類の『死』を与えることで、敵対する者の命を容赦なく削り取って行く。
 なお、『門』は倒してもしばらくすると復活してしまうため、撃破後に同じ場所に留まるのは望ましくない。消耗した状態で復活した『門』と遭遇すれば、撤退することもできないまま、無慈悲に蹂躙されるだけだ。
「倒しても復活する以上、無限に再生すると思われがちな『門』だが……こいつらも、無尽蔵に湧くわけじゃない。合計で42体の『門』を撃破すれば、こちらの邪魔をする者はいなくなり、死者の泉に転移が可能になると予測されているぞ」
 ただし、それはあくまで、エインヘリアル側に察知されなければの話である。この地の攻略にはそれなりに時間も掛かっており、故に残された時間は決して多くないと言えるだろう。
「これまで『門』の攻略に関わって来た者達の努力を無駄にしないためにも、迅速かつ確実に、少しでも多くの『門』を撃破する必要があるからな。お前達の活躍に、期待しているぞ」
 もしかすると、エインヘリアルと雌雄を決する日も、そう遠くないのかもしれない。それだけ言って、クロートはケルベロス達に改めて『門』の撃破を依頼した。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
比良坂・陸也(化け狸・e28489)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)
夢見星・璃音(輝光構え天災屠る魔法少女・e45228)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)

■リプレイ

●積尸気の護り手
 異様に歪んだ空間を進むにつれて、なんとも嫌な気配が増して行く。全身の体温を奪うような冷気。深海の底にでもいるような重圧感と冷たさが、進む度に身体を蝕んで行く。
 それだけ、自分達が死に近づいているのだと、獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)は本能的に察していた。この先に待つ『門』を撃破し続ければ、その果てに繋がるのは死神の世界。文字通り、光の射さない死者の国であり、本来であれば人の身で訪れることが決して許されない場所なのだから。
「何やら地獄のー、気配を感じますわねぇー」
 『門』の放つ殺気に当てられてか、フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)もまた、自身の脳が反応しているのを感じていた。
 外からは分からないが、彼女の脳内は全て地獄化されている。その焔が、今までになく激しい揺らぎを見せるのだ。
「死神の領域ねぇ……。ま、さっさと抑えようぜ。気分が良くなるようなもんはなさそうだしよ」
 重い腰を上げて、比良坂・陸也(化け狸・e28489)が立ち上がった。こちらに近づいて来る影を捉えたことで、いよいよ乗り越えるべき障害が現れたのを察したのだ。
「残りの『門』もあと少しだね。油断できない相手だけど、リリ達はこんなところで立ち止まっていられないよ!」
 それだけ言って、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)が銃を構えた。その眼前に佇むは、おぞましい殺気を放つ剣を引き摺る漆黒の騎士。
 相手の力量は、遠間から見ても十分に理解できた。とてもではないが、1対1で敵う相手ではない。否、ここにいる者達で一斉に攻撃を仕掛けたところで、ようやく相討ちが良いところかもしれないが。
「わたくしがあなたたちと戦うのは三度目。決して甘く見てはいけない相手だとしても越えられない壁ではないと知っています」
「僕は門との戦闘も五回目だよ。少しずつ終焉に向かってると信じて……この一戦、確実に勝とう」
 ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)の言葉に続け、源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)が軽く微笑みながら言った。
 そう、今この場には、かつて『門』と戦って勝利し、そして帰還して来た者達がいる。圧倒的な力を持つ『門』ではあるが、彼らの存在そのものが、目の前の敵が決して無敵の存在ではないという証。
「これが、門ですか……。確かに今まで戦ってきた敵とは違いますね。でも、負けられません……いや、負けられるかよ!」
「そろそろ門の数も打ち止めが見えてきたかな? 彼岸花を宿すものとして、『死』そのものなんて聞き捨てならないからね!」
 先手必勝とばかりに動き出す帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)と夢見星・璃音(輝光構え天災屠る魔法少女・e45228)の二人。そんな彼らの姿を前にして、漆黒の騎士は大剣を大きく振り被ると、無言のまま真横に薙ぎ払った。

●毒と焔と
 横薙ぎに払われた剣より放たれる凄まじい剣圧。それと同時にケルベロス達を襲ったのは、あらゆる生命を瞬く間に死へと誘わんとする、猛烈な毒素を含んだ霧だった。
「……っ! こ、これは……」
 咄嗟に仲間を庇った銀子が、それ以上は何も言えず、思わず膝をついた。今までも多くのデウスエクスと戦って来たが、こうも本気で恐怖を感じたのは久方ぶりだった。
 身体が重い。そして冷たい。声を出して叫ぼうにも、喉が焼けてそれさえもできない。
 痛みがあれば、却って意識を覚醒させるのに使えただろう。だが、この猛毒は、ただ密やかに命を奪って行く類の代物だ。見た目で侮れば、次の瞬間に待っているのはのは確実なる死。生身の肉体を持つ者だけでなく、機械の身体を持った種族や、果ては魂だけの存在でさえも、蝕み尽くさん限りの恐るべき毒。
「フフッ……ハハハハ……」
 気が付くと、隣ではフラッタリーが、狂った笑みを浮かべていた。恐慌状態になって気をやられたのか、それとも最初から狂っていたのか。
 この場合は、できれば後者であって欲しいものだ。思考すらも侵食する死の恐怖。それに立ち向かうことができるのは、同じく『戦闘狂』という名のイカれた思考しかないのだから。
 そう、狂いながらも、フラッタリーは自分の役割を忘れていなかったわけではない。笑いながら紙兵を散布することで、敵の毒を払う防壁とする。どこまで効果があるかは不明だが、それでも敵に攻撃される度に、毒の濃度を上げられるよりはマシだろう。
「……ま、まだよ……。まだ、この程度で……」
 守りを固めながら、銀子もまた立ち上がった。冗談じゃない。こんなところで、早々に倒されてたまるものか。
「足りない分は、私がフォローいたします。皆様、その間に攻撃を!」
 ルーシィドがエクトプラズムで疑似肉体を構築することで、更に守りは固まった。これなら、敵の毒も少しは効果を和らげることが可能だ。後は、あの超絶的な攻撃力を、なんとか封じ込めることができれば。
「ん、それじゃ、隙はリリが作るよ」
 敵の顔面目掛け、星型のオーラを蹴り込むリリエッタ。真正面からの攻撃を、黒騎士は剣を縦に構えることで防ごうとするが、その隙間を縫って星は黒騎士の肩を直撃し。
「どっち見てるのよ! 本命はこっち!!」
 後方から飛び出して来た璃音が、黒騎士の顔面に強烈な跳び蹴りを食らわせた。その華奢な身体つきからは想像できないが、グラビティとして繰り出された彼女の蹴りは岩をも砕く。さすがの黒騎士も受け切れなかったようで、首がおかしな方向に捻じ曲がり。
「まずは、あの厄介な大剣の威力を削がないとね」
「そういうことなら任せな。……カミサマカミサマオイノリモウシアゲマス オレラノメセンマデオリテクレ……」
 ヌンチャク型に変形させた如意棒で敵の大剣を捌きつつ、瑠璃が懐へ確実に打撃を叩き込んで行く。その一方で、陸也の祈りは敵に対する呪詛となり、さらに力を奪って行く。
 この空間内で敵の力が増す以上、あの大剣の攻撃をまともに食らうわけにはいかなかった。先程は広範囲に攻撃を拡散して来たが、それでもかなりの威力だったのだ。もし、直接斬り掛かって来られたら……受け身を取る間もなく、斬り捨てられてしまうかもしれないのだから。
 一刻も早く黒騎士を倒したいケルベロス達ではあったが、焦って突撃すれば敗北するのは目に見えていた。敵は何も言葉を発しなかったが、その代わりに全身を覆う凄まじい殺気が、焔の如く熱くなって行くのが感じられる。
「武器なんて使わせっかよ!」
 敵が再び大剣を掲げたところで、間髪入れずに翔が中和光線を浴びせた。これだけ攻撃力を削がれれた場合、並のデウスエクスの持つ武器であれば刃毀れするか、あるいは真っ二つに折れていてもおかしくなかった。
「危ない! 下がって!!」
 その刀身に焔を宿した斬撃が陸也を狙っていることに気づき、銀子が割り込む。威力が減衰されている今なら、正面から受けても大丈夫だろうと……そう、思ってのことだったが。
「……っ! くぅ……」
 肩に食らった重たい一撃に、再び銀子は膝をつく。剣先から伸びた焔は、まるで地獄の業火で作られた刃の如く、銀子の肩に食らい付いて離さない。
 腕が切断されなかったことが奇跡と思える程に敵の攻撃は重たく、身体を焼く炎は傷口を焙るようにして、何度も彼女を痛めつけた。威力を削いで、なおこの破壊力。やはり、侮ってはいけない相手だ。一撃が重ければ、それだけ傷も深く刻まれ、回復が不可能な負傷が増えて行くのだから。
 ここから先は、正に殺るか、殺られるか。恐るべき『死』そのものである黒騎士との戦いは、まだ始まったばかりだった。

●死の狭間を越えて
 唯一である大剣の威力を削がれても、黒騎士の攻撃は激しかった。
 この空間が、彼の者に力を与えているというのもあるだろう。だが、それ以上に、何度攻撃を食らっても、敵が悲鳴のひとつも上げないのは不気味の極み。
 通常であれば、肉体の負傷に伴って、その動きが鈍くなったり怨嗟の声を上げたりするものだ。しかし、目の前の騎士にはそれがない。『死』が具現化した存在である『門』には、そもそも感情など存在せず、痛みや苦しみさえ感じないのかもしれない。
 あるいは、自身が痛みや苦しみそのものだからこそ、攻撃を受けても平然としていられるのか。どちらにしろ、どこまで消耗しているのかを表面上の様子から確認し難い相手は、それだけで面倒な敵だった。
「首ヲ堕tOセ、臓腑ヲ捨テヨ。血袋ヲ炎ニ変ヱテ、尚朽チズ……」
 数多の攻撃を受けて傷だらけになりながらもフラッタリーが敵の喉元を握り潰さんと食らい付いて行く。何の変哲もない武骨な一撃。それでも、掴まれた箇所からは熱が奪われ、瞬く間に黒き鎧を氷の中へと閉ざして行く。
 だが、それでも騎士は止まることなく、凍らされたまま攻撃を繰り出して来た。その刀身に纏った黒い気は、正に絶対的な『死』そのもの。あらゆる意志の力を奪い、魂を簒奪し、肉体を消滅させる究極の虚無。
「……っ!?」
 大剣に薙ぎ払われ、リリエッタの小さな体が宙を舞った。既に、彼女に対する攻撃を庇えるだけの余裕は誰にもなく、それ故に死の影を纏った斬撃は、リリエッタの身体を情け容赦なく食らい尽くした。
(「ん……リリ、死ぬの……かな……?」)
 影が傷口から流れ込んで来た瞬間、そんな考えがリリエッタの脳裏を過った。これで自分も、親友の下へ行ける。敵のグラビティが与える誘いだと分かっていても、身体が拒否することを許さない。
 薄れ行く意識の中、もう何もかも捨てて構わないという虚無感が、リリエッタの全身を侵食して行った。が、己の命さえ放棄しようとした瞬間、彼女は暗闇の中に一筋の光を見た。
「……ちゃん……リリちゃん……」
「……ん? ルー?」
 気が付くと、ルーシィドがリリエッタの顔を覗き込んでいた。大地と霊的にリンクすることで、回復力を数倍に引き上げるグラビティ。どうやら、彼女がギリギリのところで、深淵の底から救ってくれたらしい。
「もう、大丈夫だよ。……ありがと」
 それだけ言って、リリエッタは立ち上がる。こんなところで、負けて堪るか。ここまで繋いできた色々なもの。それを断ち切らせないためにも戦わねば。
「……死ぬのなんて怖くない。でも、お前達になんて絶対に負けてやらないよ!」
 死神には色々と借りがある。瞳の中に静かな怒りを宿し、リリエッタはルーシィドと手を繋ぎ。
「ルー、力を貸して! ――これで決めるよ、スパイク・バレット!」
 互いの魔力を循環させることで生成する、限界以上の威力持った魔弾。それは着弾すると同時に荊の如く相手の身体に食い込むと、絶対に外れず離さない。
「突破口は私が作るわ! 一気に行くわよ!」
 これを勝機と見て、銀子が走り出した。彼女の身体も既に満身創痍だったが、それでも一撃を叩き込むくらいの力は残っていた。
「……っ……おりゃぁぁぁ!!」
 鎧の隙間に槍の先を捻じ込ませ、そのまま強引に持ち上げて振り回す。残る全ての力を込めた特攻だ。膂力に任せて敵の身体を大地へ叩きつければ、再び起き上がったところへ、今度は陸也が飛び込んで行き。
「悪ぃな。急所はもらったぜ」
 敵の背後から肩に飛び乗ると、鎧の隙間から首筋にナイフを突き立て抉った。並のデウスエクスであれば、それが決め手になったかもしれないが……空間の与える力に支えられているからか、黒騎士はそれでも倒れなかった。
「…………」
 無言のまま、再び大剣を構える黒騎士。やはり、強い。しかし、ここで諦めるわけには絶対に行かない。
「死をイメージさせる大剣かー。生憎死を想起させる剣使いなら私もなんだけどねー、ふふん」
 互いに限界が近いことを悟りつつも、璃音がともすれば強がりとも取れる言葉を放つ。黒騎士は、それに何も返さない。彼の者は『死』の具現化した存在である以上、感情の類は持ち合わせていないのだろう。
「じゃあ、私も君の死をイメージさせる大剣、見せてあげようか? 最も、私のは思いと生命の力を束ねた、輝ける大剣だけどね!」
 相手の反応が気に入らなかったのか、璃音は更に挑発するようにして翼を広げた。8つの属性を束ねた虹色の剣。眩い光輝を放つそれで正面から斬り掛かれば、その動きに合わせて彼女の翼もまた光り輝き。
「生命の輝きよ、私に集いて一時の力となれ! ――これで終わらせる! レディアント・ステラ・グラディオ!」
 態勢も整わぬ相手の右肩に、虹の軌跡を伴う斬撃が炸裂した。それは騎士の腕を鎧諸共に斬り跳ばし……傷口から溢れ出る黒い靄が、周囲の空気を死の匂いで穢した。
「やったか……って、まだ動けるのかよ!?」
 だが、その状態でも悲鳴さえ発さず立ち上がろうとする騎士の様子に、翔が思わず驚愕して叫んだ。
 これだけやって、まだ消えない。攻撃に力を全振りしているような相手なのに、この頑強さとタフさは、どう考えても異常だ。
「臆したら、そこで負けだよ。大丈夫……あれは倒せない相手じゃない」
 それでも、攻撃を続ければいつかは勝てると、今度は瑠璃が前に出た。既に幾度となく『門』を倒して来た彼だからこそ、その言葉には重みがあった。
「意志を貫き通す為の力を!! 全力で行くよ!!」
 太古の月の力を剣に変え、瑠璃は一気に振り下ろす。狙いは敵の左腕。璃音の攻撃が芯まで通った以上、この技が通用しない道理はない。
 果たして、そんな瑠璃の考えは正しく、彼の斬撃もまた黒騎士の左腕を斬り飛ばした。それでも崩れ落ちない黒騎士だったが、ここまで追い込めば勝利は目前。
「てめぇの肉片一つ……いや、魂まで残らず全て喰らい尽くしてやるぜ! 消えちまいな!」
 その拳に混沌を宿し、翔はその力を黒騎士の身体へ叩き込む。生も死も、等しく飲み込む混沌の渦は、物言わぬ黒騎士の身体を空間諸共に食らって行き。
「……どうやら、片付いたようですねー」
 気が付くと、フラッタリーがいつもの調子に戻って呟いていた。黒騎士の姿は欠片もなく、周囲には歪んだ空間だけが、延々と広がっているのみである。
「どうやら、今回も勝てたようですわね。さあ、撤退致しましょう」
 新手が出現する可能性が高い以上、長居は無用。ルーシィドの言葉に、ケルベロス達はそれぞれヘリオンデバイスの力を使いつつ頷いて。
「おっけー撤退! さっさと帰って美味しいもの食べに行こう!」
 決戦の時は近い。その日に備えて英気を養おうという璃音の提案に、反対する者はいなかった。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年11月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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