大阪市内の商店街――下町情緒溢れるアーケード通りに、今はジャック・オ・ランタンやら、シーツを被ったようなゴーストやら、コミカルタッチのデビルやらのバルーンにポップ、色彩も西洋南瓜の明るい橙色や夜を思わせる紫色と、ハロウィン一色の光景となっている。
「……なぁ、ハロウィンって、そもそも何なんや?」
「うちの孫の話じゃ、外国のお盆らしいで」
「細かい話はええやんか。どんな祭りかて、楽しかったら」
いつも客寄せで鍛えている喉だ。商店街の賑やかに飾り付けながら、お喋りも声高に。
「けどなぁ……何か派手な事したら、デウスエクスがやって来るんもお約束、なんよな」
「大丈夫やて。『ケルベロスハロウィン』やで。ケルベロスさんかて来てくれるんやから」
「そしたら、『ケルベロスハロウィン・戦勝パーティ』やな! ケルベロスさんらの仮装、今年は生で見られるんやで。喜んでもらえるように頑張らんとな!」
「東京のケルベロス大運動会は大成功やったさかいな、大阪も負けてられへんで!」
勝気そうなお姉さんの言葉に、大人達もうんうんと頷いて。
「モールと風船の追加、届いたで!」
ケルベロスに絶大の信頼を寄せて、大阪の人々はハロウィンパーティの準備に勤しんでいる。
――同刻。
再建中の大阪城に、突如出現したのは小振りな(と言っても相当なサイズの)ユグドラシルの根。
果たして、ドリームイータ――パッチワークの幹部に率いられ、量産型白の魔女の軍勢が、大挙して大阪市街へ出撃した。
「……定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
集まったケルベロス達を見回し、都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)はタブレット画面を一瞥する。
「今年のケルベロスハロウィンは、関西市民の熱い要望により、大阪で開催する事が決定しました」
ハロウィンと言えば、季節の魔法。その季節の魔法を狙う、ドリームイーターや死神の動きを警戒したケルベロスも少なくない。
「皆さんの懸念通り、パッチワークの魔女の首魁である『最後の魔女・ドロシー』が、拠点としていたユグドラシルの根と共に、大阪城に舞い戻りました」
残された全戦力を投入して、ケルベロスハロウィンを襲撃してくるという。
「ドリームイーター残党であるパッチワークの魔女は追い詰められており、この作戦を阻止出来れば、壊滅状態となるのは間違いありません」
故に、今回の襲撃は、寧ろ好機だ。
「皆さんには、大阪城から出撃してくる、ドリームイーターの軍勢とパッチワークの幹部を撃破。更に、大阪城内で季節の魔法を集める儀式中の『最後の魔女・ドロシー』の撃破もお願いします」
大阪市街へ出撃したパッチワークの魔女は第四の魔女・エリュマントス、第七の魔女・グレーテル、番外の魔女・サーベラス、そして、オズの魔法使いの4体だ。
「皆さんには、オズの魔法使いの部隊を担当して頂きます。オズの魔法使いは、パッチワークの魔女と些か毛色が異なりますが、『最後の魔女・ドロシー』と縁が深いようですね」
幹部達が率いる量産型白魔女・エーテルは、『コギトエルゴスムにユグドラシルの根のエネルギーを与え、ハロウィンの魔力の奪取に最適化して復活させたドリームイーター』であるという。
「コギトエルゴスムとなったドリームイーターの個性を全て消した上で、今回の作戦の為だけに能力を調整するとは……パッチワークの魔女の本気の程が窺えます」
量産型白の魔女は、ハロウィンの魔力の奪取に長けているが、戦闘力は高くない。現在のケルベロスの敵ではないだろう。
「尤も、各方面にそれぞれ100体以上配置されています。数だけは多いですから、まともに戦えば、消耗も大きいでしょう」
ちなみに、量産型白の魔女は、チビジャック・オ・ランタンやミニスノーマン、プチ木の葉の精霊をけし掛けて戦うようだ。けし掛けるというか、勝手に飛び回る妖精達に振り回されているというか。
「それぞれの幹部は、量産型白の魔女を突破した後に戦えます。更に、最後の魔女ドロシーには、幹部撃破後に大坂城に向かえば、挑む事が出来るでしょう」
今回の作戦実行先立ち、東京焦土地帯のブレイザブリクに、死神からのメッセージが届けられた。
――ドリームイーターの残党が、季節の魔法を狙って動き出している。
それを阻止し、季節の魔法を奪われないようにするために、我々も軍勢を派遣する。
ケルベロスが討ち漏らして、市外に抜けてくるドリームイーターの撃破を行う予定だ。
我々が倒したドリームイーターが得ていた、ハロウィンの魔力は回収させてもらうが、それ以上を行うつもりは無い。
こちらからケルベロスを攻撃するつもりは無いが、戦闘を仕掛けられれば応戦するだろう。
実際、イレム・カリュブディスを指揮官として、死神のアプリコーゼ、合流したドリームイーター、Re:ベリアル・マリス、夢見の偶像・オリヴィ、空虚のルルが、魚類型の下級死神を率いて、市街地を護るように出現するようだ。
デウスエクス相手に信頼も信用もないが、死神にとって最重要である『死者の泉の奪還』には、ケルベロスの協力が必要だ。ケルベロスと友好関係を構築しようという意図があるのかもしれない。
「ただ、ポンペリポッサとの取引により、死神は多くのドリームイーター残党を引き入れ、季節の魔法の扱い方を習得しています」
或いは、ケルベロスに気付かれないよう『ドリームイーターが集めたハロウィンの魔力を横取りする』作戦を考えているかもしれない。油断は禁物だろう。
「以上を考慮した上で……死神を利用して、確実にドリームイーターの幹部や最後の魔女を撃破するか。死神を信用せず自分達だけで戦うか。死神を敵に回して戦うか。どの選択にも一長一短があります。各チームで相談の上、死神への対応を決定して下さい」
ケルベロスハロウィンを楽しみに、準備してくれている大阪の人々の為にも、季節の魔法を護りきらねばならない。
「尤も、幹部や最後の魔女を撃破出来なくとも、ケルベロスハロウィンを守り切れば、ドリームイーター勢力は壊滅となります」
この場合、残党は攻性植物の聖王女勢力や死神勢力に吸収される事になるだろう。
「先を見据えての行動が必要かもしれませんね……どうぞ、ご武運を」
参加者 | |
---|---|
レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079) |
立花・恵(翠の流星・e01060) |
癒月・和(繋いだその手を離さぬように・e05458) |
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423) |
翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525) |
●翠なる魔女の慟哭
死神アプリコーゼ率いる怪魚共の咆哮が、通りに響き渡る――。
量産型白魔女・エーテルとの戦いは死神の救援に任せ、ケルベロス達は光の柱立つ大阪城目指してひた走る。
「死神と協力して戦うってのも少しムズムズするけど、今回は仕方ないな」
「折角のハロウィン、台無しにされちゃたまんないよね」
いっそざっくばらんに肩を竦める立花・恵(翠の流星・e01060)に、癒月・和(繋いだその手を離さぬように・e05458)も同意する。それでも、死神とてデウスエクスならば、信頼が過ぎるのも問題だろう。
「本音を言えば、死神に好き勝手させたくはないけれど……」
「変な事しないかだけは、見とかないとな」
頷き合う和と恵。泳ぎ回る死神怪魚に対して、警戒は怠らないように……尤も今の所、死神が約束を違える様子はない。
――――!!
死神の救援を利用し、パッチワークとの戦いを有利に進めると決めたからには――時に聞こえる幼げな悲鳴に顔を顰める事こそあれ、レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)は無言のまま先を急ぐ。
一方、容赦なく怪魚に追い立てられ、狩られていく白の魔女達を目の当たりにして、眉根を寄せる翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)。
(「死神達……確かに共闘の意思が見えるとはいえ、やはり信用はしきれませんね」)
かつて、兄弟達をサルベージされて戦わずを得なかった風音の心中は、死神への不信感の方が強い。
(「回収される季節の魔法の使い道も気懸りです。何か、不吉な素振りがあれば……放ってはおけません」)
死神との共闘こそ不本意であれ、大阪の人々が楽しみにしているケルベロスハロウィンを、むざむざ奪わせはしない。
(「仲間も、人々も、護ってみせます」)
決意を固める風音に寄添うように、ボクスドラゴンのシャティレは懸命に並走している。
「これで、ドリームイーターとも決着か」
「皆さんが楽しみにして下さっているハロウィンは、もう狙わせません!」
一方、感慨深げな恵の呟きに、イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)は意気軒昂に拳を握る。
「パッチワークの壊滅と共に、とびきりのハロウィンをお届けして見せます!」
(「あ……今回ケリがつくのは、パッチワークの方だっけ」)
そう言えば、死神に合流したドリームイーターもいた筈。実際、今回の作戦にも、何体かが、死神勢力の救援として派遣されている。
「……そうだな、ちゃんとハロウィンを開催する方が優先だよな!」
「頑張ろう」
今回は、ケルベロス5名にサーヴァント2体とフルメンバーではなかったが、ケルベロスハロウィンを護らんとする意気は、どのチームにも負けていない。
大好きな和を頼もしげに見上げて、ボクスドラゴンのりかーはギュッと抱き付いてきた。
「……」
果たして、其処に、翠に彩られた魔女がいた。対峙するケルベロスは4チーム。大人数が相手であるにも拘わらず沈着に、冷ややかに。
「オズの魔法使いに、ドロシーか……」
名作を彷彿とさせる符合に、恵は気懸りそうに首を傾げる。だが、何か関係があるにしても、優先すべきは戦いの終結だ。無論、勝利した上で。
「だから、通らせてもらうぜ!!」
声も高らかに地を蹴る恵。二つ名も斯くやのスターゲイザーが、天翔ける。
「光よ、かの敵を縫い止める針と成せ! 銀天剣・弐の斬!」
ほぼ同時、イリスは全天より光を収束、圧縮。生成した大きな針を、投擲する。狙い澄ました突撃は、夥しい数の光鎖となって絡み付き、オズの魔法使いの動きを封じんと。
ヘリオンデバイスの力も得て、ジャマーとスナイパーの初撃が相次いで、敵に突き刺さる。
サウザンドピラーを操る風音が星の輝きを宿す魔力柱を現出させ、和がライトニングロッドを掲げて雷壁を巡らせる中、シャティレとりかー、ボクスドラゴン達は次々とタックルを敢行。
「――奏でよ、奪われしものの声を」
レーグルの両腕に纏わる地獄の炎が、敵の躰に呪詛を刻まんとゴウと唸る。
だが、開戦からの4チームもの猛攻を、オズの魔法使いはヒラリヒラリと回避してのける。反撃は、やはり彼の童話を思い起こさせる魔法めいたグラビティ。的確に、ケルベロスを撃ち抜いた。
「キャスターだね」
続くスターゲイザーをあっさり躱されたのも、眼力が示した命中率では仕方ないか。和の判断は正しいだろう。
――――。
オズの魔法使いは、淡々と翠のタクトを振う。宙に浮くエメラルドが煌めくや、時に恐ろしげな獣が駆け抜け、眩い火球がケルベロスに襲い掛かった。
その魔力は、幹部と目されるだけあって強大。或いは、1チームずつで対決していれば、各個撃破される可能性すらあり得ただろう。
「でも、皆さんと力を合わせれば!!」
轟竜砲を放ったイリスの言う通り、まずスナイパーとジャマーの足止め技で動きを鈍らせ――ケルベロス4チームで一気に畳掛ければ、押し切れる!
「ドロシーを傷つけさせやしない」
「……む?」
フレイムグリードを繰り出すレーグルの耳に、届いたのは決意の言葉。
「やはり、ドロシーを……最後の魔女を護って」
殺到するケルベロスの攻撃に、必死に踏ん張ろうとするオズの魔法使いの形相に、サークリットチェインを描きながら、風音は痛ましげに溜息を吐く。
「可哀そうなドロシー。こんな奴らにあんたを痛めつけさせたりするもんか。あんたは私たちが守ってやるよ……!」
――だが、どうも様子がおかしい。
「私たちのドロシーになんてことするんだい、あんたたち……! よくも、よくも……!」
まるで、ドロシーがこの場にいるかのように。オズの魔法使いは憤りを叫ぶ。
「ほらほら。ぼやぼやしてると、撃ち抜くぜ!」
怪訝そうに緑の双眸を眇めながら、恵は試すように挑発を言い放つ。目にも留まらぬ早撃ちは、確かにオズの魔法使いを穿ったというのに。
「ああ、やめろ! ドロシーに手を出すんじゃないよ、悪い魔女め! なんてこと……ああ、ドロシー……!」
「魔女じゃないし! というか、俺、男だし!」
反射的に言い返してしまったが、きっと彼女には届いていない――ケルベロスのグラビティがオズの魔法使いの命を削る度、秘められていた狂気がじわりじわりと露になっていく。
「ああっ、ドロシー、ドロシー! そんなに傷ついて。……あんたたち、生きて帰れるだなんて思っちゃいないだろうね」
己の傷を庇う彼女の様は、痛みに慄くというより、誰かを抱き締めるように。
周囲を睨み付けるその眼は、果たしてケルベロスを見ているようで、何か別のものを映しているのか。
「……さっきから、何を言ってるんです? ドロシーはここにいないのですよ?」
聞こえて来た戸惑う声音は、ケルベロス達の総意だろう。
「違う……違う! ドロシーは私の、私たちの目の前で喰われてしまったんだよ! だからもう、二度と殺させはしないと誓ったのさ!」
対する血の吐くような叫びは、明らかに、ケルベロス達の認識と噛み合っていない。
「出てきな! 大事な大事なドロシーを護るんだよ! あんたたちにとってもそうだろう!?」
とうとう、悲痛な喚び声に、3つの光柱がケルベロスの視界を灼いた。
●ドロシーは何処?
彼の童話に於いて、ドロシーという少女は愛犬のトトを連れて旅をする、3人の仲間――即ち、ブリキの木こり、臆病ライオン、脳無しカカシと共に。
「ああ、そうだよ。ドロシーは、今度こそおいらが護るんだ」
枯れ木の手足に藁の顔。カクリとマリオネットめいて首を傾げたカカシは――歪な大鎌を、最寄りのレーグル目掛けて振り回す。
「……っ!」
咄嗟に大鎌の軌道を遮る和。力任せの斬撃に息が詰まる。りかーと魂を分け合おうと、ディフェンダーの立ち位置でそう簡単に膝を突くつもりはない。だが、細腕に違う武威に、思わず皮肉を呟く。
「成程、『脳筋』か」
「違うよ。おいらは『脳無し』。考える事は、いつも、ドロシーがやってくれた」
額面通りの言葉を返したカカシは、カクリカクリと頭を振る。
花の女神の喜びの歌。春を謳う命の想いと共に響け――。
その間に、風音は花と春の二重唱を唄う。花と春の女神が喜び歌い踊る歌曲は、幸いにして、数多の命の歓びと共鳴した。
(「ヘリオンデバイス様々ですね」)
サーヴァント伴う身でエフェクト発動は確実と言えずとも、回復量の上昇はありがたい。敵がクラッシャーであるなら尚の事。
「おいら達は皆、何かが足りなかった。でも、ドロシーがいてくれたから……家族みたいに、補い合ってきたのに……」
「へぇ、今はそうじゃないって事?」
「ドロシーは……最後の魔女は、大阪城にいるのではないですか?」
新手のドリームイーター3体に対して、3チームが分かれて対峙する。もう1チームがオズの魔法使いと戦い続けているが、加勢にするには、まず目前のカカシを倒さなければ。
標的が変わろうと、基本的な作戦は変わりない。足止めのグラビティを繰り出し、恵とイリスが口々に問えば、斬を飛ばしたカカシはポカリと虚ろに空を見る。
「ドロシーは、『最後』なんかじゃ、ない……おいら達の『1番』で……」
くしゃくしゃと、藁の面が萎びる。
「……そうだ、あいつらは、『悪い魔女』は、おいら達の力を狙って……まだ足りないのかい? おいら達の『1番』を呑み込んだ癖に!!」
レーグルのケルベロスチェインに縛されながら、カカシは構わず大鎌を振り回す。だが、力任せな軌道はいっそ惰性的で、誰にも当たらず空を切る。
「嫌だって言ったんだ。おいら達はおいら達で、楽しく暮らしていたんだ。なのに、なのに……」
ケルベロス達が攻撃を控える事は無い。だが、誰もが、脳無し案山子の言葉に耳を澄ませる。
「あの子は……『喰われた』。『最後の魔女』、ああ、なんてひどい」
「……っ!?」
パズルのピースがパチリと嵌った心地で、目を瞠る和。
「だけど、おいらは脳無しだから……ドロシーがいないと、何も考えられない」
ドロシー失くして、生きていけない。それは、きっと、此処に居る4体全員が同じ――喩え、今在るのが、本当の愛し子を喰らって成り代わった、パッチワークの魔女であろうとも。
「もしかしたら、『パッチワーク』の無数のブリキやカカシを操る能力は、『喰われた』ドロシーと彼ら一派の力だったのでしょうか」
同族すら文字通りに「食いもの」にする所業に、風音の闘気が憤りに揺らぐ。
「なればこそ、彼奴等はここで斃さねばならん」
レーグルの言葉に否やはない。容易く軍勢を召喚する術がある限り、パッチワークは何度でも息を吹き返すだろうから。
――――!!
そのスピードは正に流星の如き。燃え上がった恵の蹴撃が、脳無し案山子に突き刺さる。
一の反撃に何倍もの攻撃が、殺到する。カカシの反撃とて、けして軽くはなかったが、風音とシャティレが懸命に癒し続けた。
「灼き尽くせ、龍の焔!」
その藁の身体に燻ぶる何もかもを――イリスのドラゴニックミラージュが、カカシのみすぼらしい帽子を爆ぜ飛ばす。
その頭から飛び散ったモザイクに、咄嗟に手を伸ばしたカカシは、何かを求めるように首を巡らせる。
「逃げられるとは……流石に、思っていないだろうけど」
ライトニングロッドより、微弱の雷が幾重にも張り巡らされる。緻密なる照準を合わせ、更にはりかーとも息を合わせ、和は雷に由る光速の一撃を放つ。
「ドロシー、ごめん……ごめんな」
バラバラとモザイクが零れ散らばる中、脳無しカカシは慟哭しながら消えていった。
すぐさま、身を翻したケルベロス達は、先にブリキの木こりを降したチームに続き、援護射撃をオズの魔法使いに浴びせ掛ける。
「地獄の業火を、灼きつけろ!」
銃弾に闘気を込め、炎纏う銃撃を浴びせる恵。炎に翻弄された怒りはジャマーの手に掛かればより重篤だ。他のチームには、攻撃に集中して貰うべく。
――黒き氷壁よ、来たれ。
そして、最後に臆病ライオンを倒したチームが加われば、いよいよ、オズの魔法使いの命も風前の灯火。
イリスが敵の時空を凍結させれば、レーグルの地獄の炎纏う縛霊手が唸りを上げる。同時、一気にその身に蓄えるグラビティ・チェインを昇華させる恵。全身に闘気を纏い、空絶つ一撃が、翠の影を貫く。
和がガネーシャパズルを組替え、駄目押しに怒れる女神を顕現させれば、りかーも更に怒りを深めんとボクスブレスを吐く。
これまで、ヒールに専念していた風音が初めて攻撃に転じて影撃を繰り出せば、シャティレも又、寸分違わぬ軌道を辿った。
「いってください!」
凛とした掛け声に、交錯する2つの拳。更に、鋼の拳がオズの魔法使いへ叩き付けられる。
「喰らいつき、魔女の妄執を飲み込んでしまえ」
最後に、巨大なる蔦の顎門が、魔女の身体を呑み込んでいく――。
「……ああ、ドロシー。どうか笑っておくれ」
断末魔の囁きすら、儚く消えて。遣る瀬無い面持ちで、ケルベロス達は哀しい最期を見送った。
――戦いの余韻に浸る暇もなく、ケルベロス達は再び大阪城を目指して駆け出す。
「む……」
だが、辿り着く前に、大阪城の光の柱が消えていくのが見えた。
「先を越されたようだな」
溜息混じりに瞑目するレーグル。ゆっくりと、マーコールのような竜角が揺れた。
「応援する暇も無かったのは残念だけど。これで、ケルベロスハロウィンも安泰だな」
終わり良ければ総て良し、と恵が笑みを浮かべれば、風音もホッとした表情で頷く。
「深刻な負傷者も、出なくて何よりです」
尤も、ケルベロス圧勝とも言える戦果は、量産型白魔女の大群を、死神の救援に任せた方針に由る所も大きいだろう。
「死神達、どうしてるかな」
「ハロウィンの魔力を集める所、気付かれないように観察できるでしょうか……?」
和もイリスも、そして風音も死神の動向が気になるが、オズの魔法使いが潰えた事で、この方面のパッチワーク勢は壊滅した。死神の方も速やかに撤収した模様。
季節の魔力を十分に得たであろう死神勢力が、これからどのような策を巡らせるか……気になる所ではあるけれど。
今年のケルベロスハロウィンも、無事に開催されるだろう――それは確かに、ケルベロス達が奮闘の末に掴んだ戦果である。
作者:柊透胡 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年10月31日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
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