パッチワーク最終決戦~襲来、第七の魔女

作者:質種剰


 ケルベロスハロウィン。
 それは毎年国を挙げて行われる大々的なお祭りで、ケルベロス大運動会と双璧を成す人気がある。
 そして今年のケルベロス大運動会は、開催地が自国の首都東京であり、当然ながら大盛況に終わった。
 これに対抗心を燃やしたのが大阪市民。
「東京に負けへんぐらいのデカい祭りにしたるで!」
 と、並々ならぬ気合いの入れようで、
 勿論、毎年ハロウィン当日に起こっているデウスエクスの襲撃も懸念されたが、そこはそれ。
「ケルベロスがいればなんも心配あらへん、大丈夫や!」
「いつもみたいにデウスエクスをきっちりシメてくれるハズやから、それだけ疲れて帰ってくるケルベロスにも、楽しんでもらえるパーティーにするで!」
 そんな揺るがぬ信頼のもと、ハロウィンの準備が進められていた。
 かぼちゃの入ったお好み焼き。
 ジャックオランタンの顔を模したタコ焼き。
 お化けの絵をソースで描いたイカ焼き。
 魔女の三角帽子の形に焼いたホルモン焼き。
 やたらと粉もんの店が多いところに大阪市民の商人魂が感じられるが、気にしてはいけない。
 だが、大阪市民がハロウィンの準備で浮かれる傍ら、再建中の大阪城には危険が迫っていた。
 城の周囲に小規模なユグドラシルの根が現れて、そこを起点に、かのパッチワークの幹部率いる量産型白魔女の軍勢が、わらわらと出撃を始めたのだ。
 白魔女を統率するパッチワークの幹部の中には、あのグレーテルの姿もあった……。


「今年のケルベロスハロウィンは、関西市民の熱い要望によって大阪で開催することに決定したであります♪」
 と、嬉しそうに話すのは小檻・かけら(麺ヘリオライダー)。
「しかし、パッチワークの魔女の首魁たる『最後の魔女・ドロシー』が、拠点のユグドラシルの根と共に大阪城へ舞い戻って残された全戦力を投入、ケルベロスハロウィンを襲撃してくる——という予知も判明したでありますよ」
 ドリームイーター残党であるパッチワークの魔女はもはや勢力全体が追い詰められていて、この作戦を阻止すれば壊滅状態にできるのは間違いない。
「そこで皆さんには、大阪城から出撃してくるドリームイーターの軍勢とパッチワークの幹部を撃破して、大阪城内で季節の魔法を集める儀式を行う最後の魔女ドロシーの撃破まで目指していただきたいであります!」
 かけらは続ける。
「皆さんに倒していただきたいパッチワークの幹部は、『第七の魔女・グレーテル』であります」
 とはいえ、グレーテルが率いている軍勢の構成員、量産型白魔女・エーテルを倒さないことには、グレーテルと相見える自体難しい。
「量産型白魔女・エーテルは、コギトエルゴスムにユグドラシルの根のエネルギーを与えて『ハロウィンの魔力を奪うことに最適化したドリームイーター』として復活させた個体であります」
 何せ、コギトエルゴスム化する前のドリームイーターの個性などは全て消して、この作戦を行うためだけに調整したというのだから、パッチワークの魔女の執念のほどが伺えよう。
「エーテルは、ハロウィンの魔力を奪う能力を持ちますが、戦闘力は決して高くありませんので、皆さんならば楽に無双できましょう」
 ただ数だけは多く、各方面に百体以上は配置されているせいで、まともに戦うと消耗は避けられないだろう。
「エーテルは、その可愛らしい見た目に違わず、魔女っ子っぽいグラビティを使って攻撃してくるであります」
 丈夫そうな小さなジャックオランタン人形の口から破壊力のある炎を吐かせて、広範囲に火傷を負わせたり。
 また、ふわふわと軽そうなスノーマンのぬいぐるみに吹雪を起こさせて、こちらは敵単体へ身を切る寒さを味合わせて凍てつかせたり。
 さらには、白いショルダーポーチに入ったキャンディケーンを振るって、殺傷力の高い魔力そのものを敵複数人目掛けて飛ばしてくることもあるようだ。
「グレーテルとは、エーテルの大群を突破した後に戦えるであります」
 そして最後の魔女ドロシーは、グレーテル撃破後に大坂城へ向かうと戦闘可能だとか。
「あっ、この作戦の開始に先立って、東京焦土地帯のブレイザブリクへ死神からのメッセージが届いたでありますよ」
 かけらがそう前置きして、巻物の複製を読み上げる。
 曰く、
『ドリームイーターの残党が、季節の魔法を狙って動き出している』
『それを阻止し、季節の魔法を奪われないようにするため、我々も軍勢を派遣する』
『ケルベロスが討ち漏らして、市外に抜けてくるドリームイーターの撃破を行う予定だ』
『我々が倒したドリームイーターの得ているハロウィンの魔力は回収させてもらうが、それ以上を行うつもりは無い』
『こちらからケルベロスを攻撃するつもりは無いが、戦闘を仕掛けられれば応戦するだろう』
 とのことだ。
「折角の楽しいハロウィンを台無しにしないためにも、頑張ってくださいね」
 かけらはそう皆を激励してから、付け加える。
「ちなみに、幹部や最後の魔女をもし撃破できなくても、ケルベロスハロウィンを守り切れればドリームイーター勢力は壊滅となります」
 その場合は、ドリームイーター残党が攻性植物の聖王女勢力や死神勢力へと吸収されるそうな。


参加者
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)
皇・絶華(影月・e04491)
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)
トート・アメン(神王・e44510)

■リプレイ


 ケルベロスハロウィンの準備や仮装で市民が沸き立っている大阪。
 当のケルベロスたちは、量産型白魔女・エーテルが大阪市街へ襲撃するのを防ぐべく、大阪城を囲うユグドラシルの根から出てくるところを待ち構えていた。
「後方支援があるのはありがたいと思うにしくはないけど、なるべく討ち漏らしたくないものだな……」
 日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)は、いつでも応戦できるように斬霊刀を携えつつ、そんなことを言った。
 デウスエクスである死神を完全には信用していないからこそ、倒したエーテルのコギトエルゴスムを何かしら利用するかもしれないと危惧するのもあろうし、それとは別に、蒼眞自身が己が実力だけで戦果を上げたいという気持ちもあろう。
 ちなみにハロウィンの雰囲気を壊さないためか、この日は西部劇のガンマンの仮装をしている蒼眞。
 日頃から刀を得物とする彼だけに、ベルトに2挺短銃を提げている様は珍しかった。
「トリックオアトリック」
 とまあ、どれだけ格好良い仮装をしていても機内で小檻の胸を揉みしだいた上に蹴落とされていては、全て台無しなのだが。
「そうね。多少逃しても大丈夫とはいえ、今まで何度も防いできたのだからしっかりとやるわよ」
 氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)も明るく頷いて、来るべき集団戦へやる気を見せている。
「全部使ったわけじゃないけど、デバイスもだいぶ慣れてきたかな?」
 安心したふうに笑うかぐらのアームドアーム・デバイスは、愛用のアームドフォートと違和感なく一体化していて、一見しただけでは見た目の変化に気づかないほどだ。
「慣れたデバイスと逆に、今回は普段あんまり使わないグラビティがあるから、ちゃんとしないとね」
 戦い慣れたディフェンダーを担う傍ら、ミサイルポッドや超加速攻撃の手順を何度も頭の中でシミュレーションするかぐらだ。
「ケルベロスへの信頼の重さと商魂たくましさがなんとも」
 ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)は、相変わらず笑顔に見える無表情ながら、大阪市民の盛り上がりを微笑ましく感じていた。
「そして抜け目なく狙ってくるあたり敵さんもあれですけど……」
 ラーナもまたかぐらと同様に、毎年飽きもせずハロウィンの魔力を奪いにくる魔女勢力と戦っているだけに、内心苦笑したい心地でもある。
「……参入してくる死神も考えればなかなかハロウィンな雰囲気は出ているのかもしれません、カオスな感じで」
 それでも、今年はドリームイーターのみならず奴らを迎え討つ死神勢力もいるだけに、この混沌とした雰囲気を楽しもうという心の余裕も生まれていた。
 一方。
「さて、新しい機能とやらを試してみるとしよう」
 トート・アメン(神王・e44510)は、どうやら初体験らしいゴッドサイト・デバイスを嵌めてご満悦だった。
「特に幹部クラスの敵と思われる存在は要チェックよな」
 グレーテル率いるエーテル軍団と、自分たち以外のグレーテル討伐担当の3班の位置を概ね把握して、チェイスアート・デバイスを使う蒼眞へ伝える。
 いつでも連携が取りやすかろうと、トートの神経の砕きようは持参した地図へ他班の潜伏位置を書き込むぐらいに徹底していた。
(「やはりああして堪能するからこそ、活力が高まるというものよ」)
 これだけ気合充分なトートの上機嫌の理由が、実は機内で蒼眞よろしく小檻の胸へ顔を埋めていたからというのは、誰も知らない。
「さあさあ、全霊をもって魔女たちにハロウィンらしくチョコを捻じ込みにいこうぞ」
 皇・絶華(影月・e04491)も、何やら妙に楽しそうな風情で、自分のジェットパック・デバイスから伸ばしたビームで皆を繋いでいた。
「……エーテルとやらの大群は未だ目視できんが……10時の方角から現れるので間違いないな?」
 双眼鏡でユグドラシルの根を監視する時も、どことなく興奮を隠せていない様子だ。
 他方。
「ハロウィン……成程、確かに人ならざる者の祝祭。ならば死神もかかわる事もあろうよ」
 コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)は、しかつめらしい表情でこの状況を飲み込む度量の深さをみせていた。
 だが。
「とりあえず……チョコが怖い」
 その余裕は何故だがすぐに消え失せ、顔面蒼白になって震え出す。
「……チョコが怖い? 不可解な上に聞き捨てならんな」
 絶華が思わず聞き咎めるも、まさか自分が理由だとは夢にも思っていないような、きょとんとした顔をしている。
「絶華のチョコは色々な依頼で食わされてるのでな……」
 そんな彼へ明らかな嫌味を言うコクマは、もしかすると絶華のカカオ凝縮チョコの副作用ではないかと危惧するレベルで、がくがくがくがく肩を震わせているのが気の毒だ。
 さて、他班からの連絡が入ったのは、ケルベロスらがユグドラシルの根の蔓延る市街地に着いてほどなくであった。
(「こちら対グレーテルA班。グレーテルを発見しました、これより戦闘を開始します」)
(「此方もグレーテルを確認しタ。戦闘ヲ開始する」)
 次いでもう1班からも同様の報せが舞い込んだ。
(「了解。こちらも丁度エーテル掃討を開始するところだ」)
(「しろの、まじょ、たおしてから、いきます、ね」)
 蒼眞とさらに別の班が応じる。
 このスピードの差は、量産型白魔女・エーテルの相手を自分たちでするか魚類型死神に任せるかの違いである。
 だから一行が量産型白魔女・エーテルと戦い始めるのと、他の3班中2班がグレーテルに相見えるのとほとんど同時になるのも、道理であった。


 いよいよ量産型白魔女・エーテルの大群が根っこから姿を現した。
 これをケルベロスたちは、トートの索敵のおかげで市街地へ先回りし、真正面から迎え撃つ。
「……元のドリームイーター達の個性も消して調整して蘇らせるって……」
 蒼真は天空より無数の刀剣を召喚し、広範囲へ降り注げと解き放つ。
「本人達の了承を得ているとは思えないし、発想ややっている事は寧ろ死神達に近いな……」
 そう真面目な感想を洩らす一方で、死天剣戟陣の刃たちがどんどんエーテルを仕留めていく間にも、蒼眞自身はエーテルの胸目掛けておっぱいダイブを試みていた。
「この調子で、アメンさんのデバイスでエーテルがいっぱい固まってるところを狙って、どんどん倒していけば効率がいいかな?」
 ゾディアックソードを手に、勢いに乗った突撃をかますのはかぐら。
 凄まじい超加速によって固まっていたエーテルたちを一気に蹴散らし、さらには討ち漏らしなく斬り伏せた。
「すまない皆……私の本能が叫ぶのだ」
 絶華は何やら内なる衝動に飲み込まれた様子で、怪気炎をあげる。
「トリートオアトリート!」
 そう叫んでエーテルの口へ捻じ込むのは例の『カカオ10000%チョコ漢方薬添え』だ。
「圧倒的な力を持つお菓子……即ちチョコの魔力を求める魔女であるお前ならば! 我がチョコを以て圧倒的なパワーが得られるはずだ!!」
 絶華の物言いだけを見れば利敵行為に思えなくもないが、実際のところはチョコに込められたグラビティがしっかりエーテルにダメージを与えているだけに、ただの挑発ととるのが自然だろう。
「さぁ! 歓喜の叫びをあげろ!」
 無論、標的にされたエーテルは苦悶の絶叫をあげて事切れている。
「トリートオアトリート……? 何処がだ!?」
 一方、哀れなエーテルの代わりに鋭いツッコミを入れるのはコクマ。
「ヘルアンドヘルではないかぁぁぁぁ!!!」
 怒声を発するのみならず、コクマはコクマで大地を断ち割るが如き強烈な一撃を、エーテルに叩きつけていた。
「余としては死神勢力と協力するのは吝かではないがな。余も死神故に」
 トートはそんな度量の深さを覗かせつつ、機敏に跳躍して飛び蹴りを見舞う。
「だが……今の余はケルベロス。今の役割を全霊を以て尽くさねばなるまいて」
 流星の煌めきを宿した蹴りは鋭く重く、トートの決意の表れのようだ。
 しかし。
 ——ドゴォッ!
 そんなトートの器の大きさとは反対に、姑息な真似をするのが夢見のオリヴィ配下の魚類型死神たちだった。
 魚類型死神は、トートが弱らせたエーテルのトドメをかっさらうかのように撃破。
 さらにはその遺体の下に魔法陣を発生させて、遺体から魔力を吸い取ったのだ。
 急速に干からびたエーテルが塵になって消えてしまう様は、いくらコギトエルゴスムが残ろうとも、見ていて気分の良いものではない。
「これは……もしかすると死神が奪いとっている魔力は、予想以上に多いのでしょうか?」
 ラーナが笑顔に見える面持ちのまま、さらりと危惧を口にする。
 魚類型死神へ不必要に『おこぼれ』を与えるのはマズいと、エーテルにはルドラの子供達含む2本で殴り倒し、雷も流し込んで引導を渡した。


『我々が倒したドリームイーターの得ているハロウィンの魔力は回収させてもらうが、それ以上を行うつもりは無い』
 死神勢力の宣言が一気に疑わしくなって、ケルベロスたちは困惑した。
「恐らく死神の目的は、元々『量産型白の魔女からハロウィンの魔力を回収』することで、強力な幹部を此方に押し付けて自分たちの目的を労せずに達成した……のだろうな」
 それが、前々から死神を信用していなかった蒼眞の見解である。
「もし死神にエーテルの対処を任せてしまっていたら……と考えれば、死神に頼らず倒す方針にしていて、まだよかったわね」
 と、複雑な心境に駆られる皆を慰めるのはかぐら。
「パッチワークとの決戦を有利にすべく死神を利用している班もあるから、まあお互い様ではあろうな」
 死神に親しみを感じているトートも客観的な視野を心がけて、双方のフォローに回った。
「ケルベロスの考え方や行動を良く理解している存在が死神にいるのならば、奴らの宣言自体が誘導だったのかもしれん」
 絶華はそう推理する。ちなみにこの場にいる全員が、熱い議論を戦わせる傍らでエーテルたちを楽々に葬っている最中であるのは、言うまでもないだろう。
「だとすると妙ですね。死翼騎士団とは何度か共闘していますが、彼らが考えるような策略ではありません」
 不思議そうに首を傾げるのはラーナだ。
「確かに……」
 勇将と何度も顔を合わせているかぐらが頷く。
 ともあれ、そんな魚型死神の要らぬ助けも借りて、エーテルを掃討したケルベロスたち。
「グレーテルはここから11時の方角と言ったところか」
 トートが魔女の居場所を確認するのに合わせて、蒼眞が他班へ自分たちの動きを思念で報せる。
(「周辺のエーテルの殲滅を完了。グレーテル戦の加勢に向かう」)
 絶華とコクマがジェットパック・デバイスで皆を牽引し、グレーテルの元へ飛んでいく。
(「こちらも、いどうちゅう、です」)
 エーテルと戦っていたもう1班も、時を同じくして掃討を終えたようだ。
「あれだな」
「大丈夫か!? 助太刀に来たぞ!」
 コクマが叫ぶも、はっきり言って彼は自分の心配をした方が良いぐらい顔色が悪い。
「トリックオアトリート?」
 蒼眞は早速グレーテルの体力を削るべく、石英の残霊を召喚。
 そこから小檻の残霊に蹴落とされるという、お決まりのパターンで突撃をかました。
 それにしてもこの技、おっぱいダイブの反撃で蹴られているのに、その落下の勢いに任せてグレーテルの胸へさらなるダイブを試みているあたり、何ともろくでもないグラビティである。
「ドローン起動。通常モードで展開」
 かぐらは小型治療無人機の群れを展開。
 スタンダードな警護機能で前衛陣の守りを固めつつ、傷の治療にあたらせた。
「個人的には平和なハロウィンを希望しますが、そのためにもお仕事がんばりましょうか」
 ラーナも手早く薬液の雨を広範囲に降らせて、後衛陣の怪我を癒していく。
「出来れば魔女どもも我が炎で太陽神アメン・ラーの御許に導きたいが……ともかく力を尽くすとしよう」
 と、超小型の太陽の如き灼熱の火の玉を召喚するのはトート。
 魂を浄化するという火球はグレーテルの薄い腹部へ命中し、素朴な見た目のドレスもろともしなやかな胴体を燃やした。
「以前のチョコすらパワーに変える邪神植物も新たにブレンドした、超滋養強壮チョコだ!」
 絶華はグレーテル相手だろうと変わらず、本人曰くの超滋養強壮チョコを奴の口へ捻じ込んでいる。
「感じるだろう! 宇宙を! 圧倒的なパワーを!!」
 チョコの味に宇宙を感じてしまっては、全く美味しいように聞こえないのだが、
「さぁ!! お代わりはいくらでも在る!! 存分にお菓子を楽しめぇえええ!!!!!!」
 果たしてその自覚があるのかないのか、絶華は無理やりチョコをグレーテルへ味わわせて——目論み通りかはともかく、奴を苦しめていた。
「とりあえずあのチョコは……ワシに向かわぬことを祈るぞ」
 そして絶華のチョコ大盤振る舞いは、確実にコクマのトラウマを抉って精神を蝕んでいるようだ。
「我が刃に宿るは光(スキン)を喰らいし魔狼の牙! その牙が齎すは光亡き夜の訪れなり!」
 けれども、青白い水晶の刃を纏わせた鉄塊剣の太刀筋に狂いはなく、グレーテルをばっさりと薙ぎ払ってみせた。
 4班が息を合わせての集中攻撃は、怒涛の勢いでグレーテルに襲い掛かった。
 そして、大鎌を手にしたレプリカントの軍服女子が、悪を許すまじと大鎌を振るう。
「自分は貴方を救いません。願いもしないし祈らない。ええ、ええ。神の手など払いのけましょう。それが貴方の結末ですよーぅ♪」
 業火へ変じた魔力によって、心臓を焼き尽くされたグレーテル。
「あれれ!? ボク死ぬりん!? みんなバイバイり~ん!!」
 死の床にあってもなお陽気なセリフは、かつて牛を被っていた頃から変わらない。
 なんともグレーテルらしい最期であった。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月31日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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