富士樹海魔竜決戦~豊帝エルダンフェスト

作者:紫村雪乃


 鬱蒼と茂る富士樹海。
 その奥。緑の深海のただ中で樹母竜リンドヴルムは死に瀕していた。己の命と引き換えに新たな生命体を誕生させるために。
 クゥ・ウルク=アン樹海決戦において、クゥ・ウルク=アンの最強の魔竜軍団の結成という野望は阻止された。しかし、阻止されるまでに得られたマリュウモドキのグラビティ・チェインを利用し、樹母竜リンドヴルムは不完全ながらも十七体の魔竜を孵化させる事に成功したのだ。
 その時、樹母竜リンドヴルムの身体が血を噴いた。その肉体を食い破り、それが蹂躙すべき世界に現出しようとしているのだった。
 それは魔竜であった。攻性植物との同化に必要な期間が足りず、孵化に必要なグラビティ・チェインも不足していた為、樹母竜リンドヴルムのグラビティ・チェインも全て奪い尽くして孵化したのである。
 その中の一体。
 蒼白い体躯に紅葉色の腹、稲妻を思わせる角と獰猛な牙をもつ魔竜が辺りを睥睨した。
 紅玉のような目に映る世界はひどく美しい。が、そこに生きる生命はとるに足らぬほどに弱々しかった。
 小山のように屹立する魔竜は、その偉容を空に舞い上がらせた。生命体最高位の力をふるうために。
 エルダンフェスト。
 それが魔竜の名であった。


「クゥ・ウルク=アン樹海決戦に向かったケルベロス達が危機に陥っています」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は焦慮のにじむ声でいった。
「彼らはクゥ・ウルク=アンの撃破に成功し、ドラゴンの陰謀を阻止する事に成功しました。けれど不完全ながらも孵化した魔竜によって蹂躙されようとしています」
 魔竜の数は十七。完全な状態にはほど遠いが、それでも魔竜。恐るべき対敵には違いなかった。
「急ぎ樹海に向かい、彼らの撤退を援護し、孵化した十七体の魔竜を撃破しなければなりません」
 いうと、セリカは魔竜の戦闘力について説明を始めた。
「皆さんに担当していただきたいのは豊帝エルダンフェスト。特に攻性植物の影響を強く受けており、秋を司る魔竜です。攻撃方法は雷のブレス、それと爪と尾。さらには攻性植物のグラビティも扱えるようです。威力は絶大なので注意が必要。どうしても勝つのが無理そうなら、撤退することも選択肢のひとつと考慮しておいた方がいいかもしれません」
 恐怖に美貌を青白く染めたセリカは改めてケルベロスたちを見回した。そして、祈るかのような声音でいった。
「魔竜は強敵ではありますが、ケルベロスならきっと勝利できます。ここで勝利することができれば、ユグドラシル残党の魔竜勢力を壊滅させる事が出来るでしょう」


参加者
レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)
叢雲・蓮(無常迅速・e00144)
マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)
ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)
リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)
峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)
伊予野・仇兵衛(這い寄る契約獣・e15447)
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)

■リプレイ


「いたわ」
 ゴーグルを装着した女がいった。
 二十歳ほどか。秀麗な美貌と肉感的な肉体をもった娘である。
 名をマキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)というのだが、彼女が装着したゴーグルはゴッドサイト・デバイスといい、遠距離にある敵を捕捉することのできる代物であった。そして今、彼女は魔竜の存在を捉えたのである。
「ただでさえ地球へと向かっているドラゴンの脅威があるのに。地球にいるドラゴンたちが力を付けて、脅威になるのは厳しい。その前に撃破させてもらうわ」
「リンドヴルムの忘れ形見、か」
 マキナの見つめる方角をにらみ据え、リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)はシュシュを外し、蒼空を思わせる蒼の髪をポニーテールに結い上げた。常のそれより、より強く。リィンの覚悟のあらわれであった。
「絶大な力持つとはいえ引き下がる訳にはいかん。今此処で断ち切る!」
 リィンが宣言した。その時だ。それが姿をみせた。
 小山のような偉容。白銀と真紅に彩られた体躯もつ神話の体現。魔竜であった。
「あれがエルダンフェスト」
 魔竜を見やり、その若者は喘鳴のような声をもらした。穏やかなその美貌も、さすがにこの時ばかりは強張っている。ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)であった。
「今度は富士の樹海ですか、またしても大事になってますね」
「孵化したてで動き慣れないうちに倒しきれればいいけど…」
 黒ビキニにケルベロスコートを羽織っただけといういでたちの少女が暗鬱に呟いた。
 彼女の名は峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)。十四歳だ。が、その肉体を見る限り、とてもそうは思えなかった。
 たわわに実った乳房といい、引き締まった腰といい、むっちりと張り出した尻といい、その肉体は成熟した女のそれであった。
「そうだな」
 レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)が重々しく頷いた。漆黒の竜種たる彼なればこそわかる。エルダンフェストが潜在的に有する強さが。
 敵は秋の四季竜。帝を冠した大敵だ。もし、かの魔竜が力の全てを発揮した場合、たった八人のケルベロスでは抗するべくもないだろう。
「ホントは穏やかな龍だった……なんて思っちゃうのはなんでだろうね」
 マフラー姿の少年が首を傾げた。可愛いといってもよい顔立ちたが、思いの外身体はがっしりしている。鍛え抜かれたそれは精悍と評するべきだろう。
 少年ーー伊予野・仇兵衛(這い寄る契約獣・e15447)が抱いた疑念は、しかし間違ってはいなかった。エルダンフェストが豊帝と呼ばれるには理由があったのだ。本来、エルダンフェストは豊穣をもたらす白いタイガードラゴンであった。
「魔竜かぁ…ボス戦みたいで燃えるのです!」
 叢雲・蓮(無常迅速・e00144)がはしゃいだ声をあげた。


 女と見まがうばかりに綺麗な少年の声を聞き届けたか、豊帝が傲慢に、そして泰然と地に舞い降りた。鳴動に地が震える。
 その時、蓮が動いた。瞬く間に豊帝に肉薄する。
 豊帝はわずかではあるが、驚いた。虫けらにしては動きが速い。が、豊帝を相手にするにはまだまだであった。
 瞬間、蓮が抜刀した。瞬速の抜き打ちである。が、豊帝は憫笑すらうかべ、かわした。
「なにっ!」
 豊帝の口から愕然ある声がもれた。容易くかわしたはずであるのに、彼の足から鮮血が噴いている。
「な、何故……!」
 その時、翻然と豊帝は悟った。攻性植物を取り込んだ身体になじんでいないことに。
「やはり、まだ身体がなじんでいないようだな」
 地獄化した炎の両腕に巨大な縛霊手を装着したをレーグルは、山羊の王であるマーコールのものに似た角ある顔を仲間たちにむけた。その手から噴出した漆黒の鎖が地を削りながら疾り、紋様を描く。能力を底上げする守護魔法陣である。
「――おのれ」
 未だ苛立ちのとけぬ豊帝が、牙を軋らせた。途端、巨大な顎門から幾筋もの雷が迸る。
「させないよ」
 自陣後方を狙った一撃に、真白に塗られた視界をものともせずにその女は駆け出した。薄紅の髪を翻した穏やかな顔の娘。が、その灰色の瞳にあるのは強い覚悟の光であった。
 娘ーーガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)に続いてレーグルも走る。防げた射線は二つ。はじけた光がさら世界を青白く染めた。
 まさに青天の霹靂。十億ボルトの稲妻に撃たれ、ガートルードたちは細胞を煮えたぎらせた。
 ガートルードは盾で防いだ。それでもこの威力である。
「これだけの実力と数の竜が合流したら……普通にやっては勝てなくなるかも」
 ガートルードは戦慄した。さすがに虐殺を生き延びただけあってガートルードの見立ては正しい。が、なればこそ思うのだ。そうならないように、ここで一体でも多く魔竜を撃破しなければならないと。
「13・59・3713接続。再現、聖なる風」
 恵の左手の中指に複雑な光り輝く紋様が浮かび上がった。魔術回路である。
 その瞬間であった。涼やかな風が巻き起こり、ガートルードとレーグルに吹きつけた。彼女たちを苛む灼熱の痛みが和らいでいく。
 その風の正体は擬似的に作り上げられたな浄化の風であった。封鎖している魔術回路のごく一部を開放、それにより練り上げられた魔力を転換して作り上げられたものであった。「やはり生ける神話。本来の力を解き放つ前に撃破完了を目指す」
 女ーーリィンは地、を蹴った。一条の流星と化して豊帝の背を打つ。
 その光に刹那、目を細めたマキナは携行砲を思わせる砲をかまえた。超硬度鋼ハンマーを形態変化させた代物だ。迷彩服をまとって木陰に回り込んだ彼女に豊帝は気づいていないようであった。
「生まれたてとはいえ流石魔竜という所かしら。けれど私達は魔竜をも打ち破ってきた。このまま押し切らせて貰うわ」
 竜の咆哮に似た高い唸りが轟いた。撃ち出された竜砲弾が炸裂、豊帝の身をえぐり、白銀の竜鱗を雪のように散らせた。
「本来の力を取り戻していないのにこの戦闘力って反則ですよね。ドラゴンとは何度も戦いましたが…また力のある厄介な奴が産まれたのですか」
 ラインハルト困ったように顔をしかめた。が、その紅瞳にいつもやどっている餓狼たる光は消えている。
 道を作るように地を削りつつラインハルトは突進した。一息で間合いをつめ、脚をはね上げる。
 刃の鋭さを秘めた蹴りが豊帝を肉を軋ませた。エルダンフェストが歯軋りする。またもや避けることがかなわなかったからだ。
「雁字搦めにしてやるんだってばよ!」
 仇兵衛は機械化された身体に装備された全ミサイルポッドを展開、一斉射出した。唸り飛ぶ小型ミサイルが豊帝を取り囲むように降り注ぐ。
 無数の炎の花が開いた。何者も、この紅蓮の地獄にあって生をつかめるとは思えない。がーー。
 爆炎を貫いて鞭のようなものが疾った。


 仇兵衛が放ったミサイルは悉く外れたのであった。命中率が低いため、生まれたての魔竜であっても容易くかわせたのである。
 黒い鞭のようなものが豊帝の躰より放たれ、リィンの手脚を搦めとった。巻きつかれた場所に激痛が走る。鞭は蔦であった。
「これが攻性植物の力か。なかなかに使える」
 豊帝がニンマリした。
「ええい。思うようにはさせん!」
 レーグルの脚が疾った。閃く蹴撃が、まるで刃のように蔦を断ち切る。
「すまない。助かった」
 礼を述べたリィンががくりと崩折れた。手足の骨が砕かれてしまっている。
「やってくれるね」
 恵がぎりっと豊帝を睨みつけた。簒奪者たるデウスエクスを彼女は憎悪しているのであった。
「キミが奪うなら、ボクは与えるよ!」
 恵の身から薄紅の霧が噴出した。それは彼女が濃縮させた快楽エネルギーである。霧にまかれたリィンの負傷が見る間に治癒されていく。
 その様を見届けることなく、ラインハルトは跳ねた。足場は竜の尾だ。その動きを見極め、捉え。鉄槌と化した拳を豊帝の背に叩き込む。
 競うよう仇兵衛もまた駆け上がっていた。ドリルのように回転させた拳を打ちつける。零距離での攻撃はさすがに豊帝もかわせなかった。
 瞬間、空気が震えた。竜の尾が、波打ったと思うなり、視界から消えた。
 轟と唸るは竜の躰――叩きつける大地もないが、それは巨躯で以て、ラインハルトと仇兵衛を磨り潰すように走った。
「ああっ」
 ガートルードの身が空に舞った。二人の仲間の盾となり、尾の一撃を一人で受け止めたのである。地に叩きつけられたガートルードは血まみれの肉塊と化していた。
「ガートルード姉ちゃん!」
 開いた紅の眼で豊帝を一瞥し、蓮は怒りを稲妻に変えて解き放った。
 痛みより、とてつもない衝撃に、豊帝の身が僅かに沈んだ。そこへ、リィンは一心不乱に跳んだ。
「なるほど、お前は強い。このまま逃せば、災害となって人も街も蹂躙するだろう。それだけはさせぬ!」
 結い上げた海色の髪を靡かせ、リィンは敵へ肉薄し、蹴りをぶち込んだ。赤き腹を捉えた一撃に、紅蓮の炎が吹き上がる。
 リィンのその思いはマキナも同じであった。そも、人々を守りたいという思いが彼女に魂を芽生えさせたのである。
 そのマキナの手から白光が噴出した。カプセルを放ったのである。
 弾丸のように飛んだそれは避けもかわしもならぬ豊帝の身体に吸い込まれた。そして治癒プロセスを狂わせるウィルスを豊帝の肉体内部に送り込んだ。
 豊帝は苦悶した。が、痛みより、むしろ怒りのために。まだ身体が思うように動かない。
 その怒りを破壊力に変換し、豊帝は暴虐の爪をふるった。
 受け止めたのは守り手たるレーグルだ。黒き竜の男は低い唸りを零す――守護力だけでは殺しきれぬ衝撃に、噴き出した血飛沫が霧と舞う。
 身体の至るところが軋んで、いっそ感覚が無い。縛霊手を装着した腕が無事かどうかも解らぬ――だが、踏みとどまった。意識の外、自身の正体すら曖昧な一瞬から引き戻すのは、痛みを和らげる光。
 恵が光の盾を重ねて癒やした。
 守り手たちが命をかけて任を全うしているのだ。ならば癒やし手たる己は片っ端から再生してやる。その決意が恵の瞳に炎をやどした。
「恵殿、彼女を」
 ガートルードをひっ掴むと、レーグルは後方に放った。そして豊帝をぶん殴った。縛霊手から噴出した網が豊帝をからめとる。
「逃がさんぞ、豊帝! 皆、かかれ!」
 レーグルは叫んだ。


 レーグルの言葉を待たずとも、仇兵衛はすべきことを解っていた。翼があるかのように空に舞い上がる。
「逃がさないよ、ここで、さよならだ。篁流射撃術死憑雨、どうか一射、御覧召しませ?」
 高速で落下しつつ、仇兵衛は無数の弾丸をばらまいた。さらに自らをも弾丸と変じて豊帝に着弾。鋼の雨にうたれたかのように豊帝の全身から血がしぶいた。
 されどまだ、豊帝を斃すにはいたらぬ。
 直後。網を引き裂いて疾った豊帝の爪が完膚無きまでに仇兵衛を粉砕した。
 続く攻防。もはや戦えぬ仲間をケルベロスたちは顧みなかった。その余裕はない。短期のうちに仕留めなければ、エルダンフェストは災厄としての本性をあらわすだろう。
「早く斃さなければなのだ!」
 最初の踏み込みで地を爆裂、音すら後に残し蓮は疾駆した。風切り音を響かせる、静かな二閃――空を裂くのは銀光。玉環国盛と弾正大疏元清の斬撃だ。
 無心で疾駆した彼の後、ただ、豊帝は長大な躰の裂傷を刻んでいた。風そのものが魔竜を喰らい、蹂躙したかのように。
「おのれ!」
 疾駆する蓮を豊帝の爪が追った。蓮よりも速く。豊帝の力が蘇りつつあるのだ。
 その時ーー。
「お前の敵は……ここにいるぞ!」
 絶叫は空で響いた。天蠍星剣を手にしたガートルードだ。恵に治癒された彼女は豊帝の身ごなしから、次の行動を読み、空に跳んでいたのであった。
 凝縮した力を一気に解放、爆発的な破壊力を注ぎ込んだ天蠍星剣を豊帝の背に叩きつける。重い手応えにガートルードの腕のみならず全身が震えた。
 が、ガートルードの攻撃はまだ終わらない。身体をねじ切るようにして天蠍星剣を振り切る。大量の鮮血が噴いた。
「ええい、虫けらが!」
 蓮を切り裂くはずの爪を翻し、豊帝はガートルードを薙いだ。吹き飛んだガートルードが樹木に激突、数本なぎ倒してようやくとまったが、すでにガートルードには立ち上がる余力はない。
「ケルベロスの牙の連撃に耐えられるかしら?」
 いどみかかるような声音に、豊帝は目を転じた。彼を見上げる玲瓏たる美貌の女の胸に白光が生まれている。
 危険な光だ。そう悟った豊帝は吼えた。
「女、させぬ!」
 刹那だ。女ーーマキナが展開させた胸部砲口から眩い白光が噴いた。あらゆるものを滅殺せずにはおかぬエネルギー光が豊帝を撃ち、灼く。
 続いたのリィンであった。樹木を利用して移動していた彼女はすでに豊帝の懐に飛び込んでいる。
 ぎら、と。リィンは豊帝すら怖気をもつほどの剣呑な目を上げた。竜は彼女にとって宿敵ともいえる存在であったから。
「貴様はここで殺す」
 リィンの姿が消失した。そう常人に見えたであろう。
 この時、迅雷の速さでリィンは氷の刃をのせた拳撃と蹴撃を豊帝に叩き込んでいた。疾る稲妻がそうであるように、この場合のリィンを目で追うことなど不可能であった。
 そして時はいたれり。氷の刃を合一させて錬成した大太刀でリィンは豊帝を貫いた。
「ガアァァァ」
 豊帝は身を仰け反らせた。その口から発せられたのは断末魔ともいうべき絶叫である。
「ば、馬鹿な」
 豊帝は呻いた。天を裂き、地を割ることすらできるこの我がーー豊穣の帝王たる四季竜であるこのエルダンフェストが、虫けらのような番犬どもの牙にかかって死ぬというのか。
「だ、断じて承服できぬ、そのようなこと」
 目を上げた豊帝は見た。デバイスにより飛行して接近するラインハルトの姿を。
「承服できぬ!」
 怒号と共に豊帝は爪を薙ぎ上げた。瞬間、ラインハルトがデバイスをパージ、豊帝に叩きつける。
「ヘリオンデバイスにはこういった使い道もある!」
 豊帝の爪がとまった。一瞬だけ。が、ラインハルトにとってーー彼の使う如月流・無極にとってはそれで十分であった。
「秋を司る魔竜よ、冬へ移り変わる紅葉の如くその身を散らせ」
 落下するラインハルトは豊帝とすれ違いざま、抜刀。地にラインハルトが激突した数瞬後、驟雨のごとく首から鮮血をしぶかせた豊帝エルダンフェストは地響きたてて倒れ伏した。

 戦いは終わった。ケルベロスたちは、たった八人のみにて豊帝エルダンフェストを斃してのけたのである。
「何があるかわからない。早く引き上げようよ」
 恵が促した。リィンが頷く。
 ケルベロスたちもまた惨憺たる有り様であった。もはや戦う力などどこにも残ってはいない。が、この勝利は、地球の未来にとって大きな一歩であった。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月16日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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