地面を覆う、巨大な藍の花弁があった。
花の中央からは緑色をした円錐形の物体。長く伸びたその先端にはドラゴンの顔。花の正体は、植物の身体を持つドラゴン『樹母竜リンドヴルム』である。その腹部には大きく膨らんだ薄桃色の胞子嚢じみたものが十四個、小刻みに拍動を繰り返していた。
『ゴアアアアアアア…………!』
リンドヴルムの腹についた膨らみのひとつから、遠雷めいた咆哮が響く。同時に嚢は大きく膨らみ、内側から何かの頭部が表皮を無理矢理押し上げ―――そして突き破った。飛び出したのは光沢を持つ黒い竜燐のドラゴン!
瞳の無い白い目をした竜は、爆ぜた風船のように垂れ下がった嚢からゆっくりと這い出した。宇宙めいた色彩の煌めく体からいくつも生えた様々な鉱石。喉から腹の半ばまでを縦に裂き、アーチ状の牙が無数に生えた口。
生まれ落ちた異形の黒竜は、頭部と腹部の口から産声を上げた。
『グシャアアアアアアアアアアアアアア!』
膨大な唾液を滴らせるドラゴンの背後で、リンドヴルムは仰向けに頭を倒した。力尽き果て動かなくなった樹母竜の腹が次々と破裂し、さらなる竜が顔を出す。
冷えたマグマじみて赤い岩肌を持つ者。
一角獣めいて角を生やした者。
黄金の刃の如き背鰭を持つ者。
黒鉄の鱗をまとった者。
白虎じみた体色の者。
七彩の炎を吐く、毒々しい毛皮を生やした者。
恐竜めいた姿の者。
共通して体の各部からツタを生やしたリンドヴルムの落とし仔たちは、足をそろえて歩き始めた。
●
「と、いうわけでですね……クゥ・ウルク=アン樹海決戦に向かったケルベロス達が! 危ないのですっ!」
真剣な面持ちで、跳鹿・穫は語調強く言い切った。
最強の魔竜軍団の結成しようとしていたクゥ・ウルク=アンは、樹海にて討伐された。魔竜の軍勢を生み出す野望はここに途絶えた―――のはいいのだが、さらなる問題が発生したのだ。
何かと言うと、別の場所に居た『樹母竜リンドヴル』が、得られたマリュウモドキのグラビティ・チェインを利用し、不完全ながらも17体の魔竜を、孵化させてしまったのだ。
「17体の魔竜は、もともと魔竜だったものと、樹母竜リンドヴルムが魔竜に作り替えたものがいるわけですけど、共通する特徴として『攻性植物と同化』しているんです。不幸中の幸いとして、孵化できたのは17体きり。それも同化が不完全な上にリンドヴルが命がけで産んだ……まぁその、完全体じゃないわけです」
だが、問題となるのは生まれた魔竜たちの行動の方。17体の魔竜達は、クゥ・ウルク=アン樹海決戦に参加したケルベロスに復讐した後、攻性植物の聖王女の勢力に合流しようとしているとの予知が入った。
いかにケルベロスといえど、強敵と戦った後に17体のドラゴンを相手にするのは不可能だろう。不完全な形態であったとしても、相手はドラゴンなのである。
「なので、皆さんにはこの魔竜たちをやっつけて、撤退するみんなを守ってあげてほしいんです!」
今回の作戦においては、17班で1体ずつ魔竜の相手をすることになる。
当班が担当する魔竜の名はグルカルマ。胴体を縦に割いてできた大口と体の各所から鉱石を生やしたおぞましき宝石竜である。
「さっきも言った通り、リンドヴルから生まれた魔竜は攻性植物とほぼ同化していて、自分の能力の他に攻性植物の力も扱うことができます。ただ不完全なのと生まれたばっかりなのが祟って、最初は上手く戦えないみたいです」
元々攻性植物と一体化していなかったグルカルマは、戦闘開始時こそやや動きがぎこちない。しかしこれが大きなチャンス。下手に戦闘を長引かせた場合、グルカルマは今の肉体に慣れてその力を十全に発揮してくるだろう。ゆえに、短期決戦が望ましい。
「グルカルマは攻性植物の他に、全身から鉱石を生やして武器や防具にする力を持っています。鉱石は結構硬くて侮れない防御力を持ってるので、短期決戦の時はどうやって防御を突破するか考えておいた方がいいかもしれませんね」
また、ケルベロスが敗北した場合、グルカルマはクゥ・ウルク=アン樹海決戦のメンバーを諦めて、聖王女軍に合流する為に戦場から離脱していく。勝つのが無理だと判断すれば、撤退させるのも選択肢になるだろう。
「そういうわけで、皆さんの背中には仲間の命がかかっています! 魔竜は強敵ですが、なんとか倒して助けてあげてくださいね!」
参加者 | |
---|---|
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414) |
ルーク・アルカード(白麗・e04248) |
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426) |
神宮寺・結里花(雨冠乃巫女・e07405) |
ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397) |
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412) |
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027) |
副島・二郎(不屈の破片・e56537) |
『グルルルァァァァァァァァァ!』
二つの口から唾液をまき散らしながら、魔竜グルカルマは樹海を走る。
木々を踏み倒し、口で食い荒らし、無理矢理道を拓いて進む。前のめりになり、長い首を縦に裂いて出来た口を大きく開いて叫ぶグルカルマの上空を、ヘリオンがすれ違う形で飛行しグルカルマの後方でUターン。
開いた側面の扉から顔を出したユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)は、白く輝くゴーグル型のデバイスを目元に引き下ろした。グルカルマの背中をじっと見つめる。
「さて、当然だが周囲は樹海。このまま進めば、さっきのチームと鉢合わせるのは確実だ」
ユグゴトはゴーグルを額に上げると、機内を振り返った。
「第一陣、準備はいいか?」
「ああ」
「うむ!」
ユグゴトの真後ろで、ジェットパックを背負った水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)が腰に帯びた刀をつかみ、服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)が翼を忙しなく羽ばたかせながら肩を回す。
並び立つ二人の背後に歩いて入った副島・二郎(不屈の破片・e56537)は、腹から漏れだす青黒い混沌の水を両腕にまとわせた。
「始めるか。……時にだがウィゼ。連戦になるが、いいんだな?」
「当然じゃ」
二郎から一瞥をもらったウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)が大型バズーカを肩に担ぎながら力強く頷く。
「ここで撤退する私ではないのじゃ。仲間の無事もかかっているとなれば、なおさらじゃ」
「富士の樹海に竜の群れなんて洒落にならないっすからねぇ」
巫女服の紐をきつく縛りながら、神宮寺・結里花(雨冠乃巫女・e07405)。結里花はヘリオンの窓から突き進むグルカルマの後ろ姿を遠目に見ながら呟いた。
「あんなのが何匹も突撃とか考えただけでも地獄絵図っすよ。しかもなんか強化されてるっすし」
「嫌なもんだぜ。知ってる奴が知らないうちに強くなってるとか言う話は」
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)が苦笑いしながら額を掻く。その隣に立ったルーク・アルカード(白麗・e04248)は赤い瞳を険しく輝かせる。
「攻性植物と融合しているドラゴンは未知数だ。今までの知識だけで挑めば大火傷するだろう」
「これでベジタリアンになっててくれれば最高なんだけどな。……あの野郎のことだ。なんでもガッツリ食うんだろうぜ」
泰孝が肩をすくめると同時に、無明丸がバサバサと翼を鳴らした。もどかしげに足踏みをしながら、握り拳を持ち上げる。
「まだ行ってはならんのか? あのトカゲをぶっ飛ばすのであろう!」
「そうだな」
ユグゴトが扉の脇に移動して道を開けた。低姿勢で身構える鬼人と無明丸の背中に、二郎は混沌の水が渦巻く両腕を向ける。青黒い超自然の液体が濁った虹色に変色! 泰孝は軽薄に笑いながら声をかけた。
「ロケット発射みてえだな。カウントダウンはするか?」
「……言ってる場合か。カウントは無しだ。すぐに行く」
鬼人が呆れ気味に言った瞬間、二郎がカッと両目を見開く! 直後に彼の両腕が虹色の大爆轟を引き起こした! ヘリオンの扉から吹き出す噴炎から飛び出した鬼人と無明丸はジェット機めいた速度でグルカルマの背後へ急接近! 魔竜が首だけで振り返る!
「わはははははははっ! わーははははははははっ! わざわざ生まれ直しとは難儀なことよ! 無論! 逃がすことまかりならん! 敢えて望むならば押し通れっ! さぁ、いざ尋常に、勝負ッ!」
「先、もらうぜ」
啖呵を切る無明丸の隣で鬼人はジェットパックの爆炎を強めて加速! 居合いの構えを取り、一条の銀閃めいてグルカルマの首筋とすれ違う! 一拍遅れて響く甲高い金属音。鬼人は振り切った刀を一瞥し、血の付いてない刃を目にした。
「防がれたか。硬いな」
「ぬぁああああああああああああっ!」
呟く鬼人の後方で無明丸がグルカルマの横面めがけて飛行の勢いを乗せたパンチを繰り出す! 凄まじい轟音を響かせたグルカルマの横面と喉笛は鉱石に覆われて無傷! 怯まず逆の拳を振りかぶる無明丸!
「頑丈な奴め! しかしもういっぱああああああああああつッ!」
鉄拳を繰り出す無明丸を、グルカルマは大口を開けて飲み込まんとす! 鈍色の牙が生えそろう口腔が無明丸を捕らえた直後、無明丸の前に瞬間移動めいてルークが出現! ルークは背中で無明丸の胸を押す!
「むみょっ!?」
「危ないっ!」
ルークが無明丸を押し出した刹那、グルカルマがルークを呑み込む! 同時に魔竜の額に飛び乗る人影。それはナイフ二刀を手にしたルークだ!
「そっちは分身だ! 両目もらった!」
グルカルマの頭に紫色の剣閃がX字を描いた。魔竜の眼球が爆ぜ飛び赤い粘液を撒き散らす。二つの口から悲鳴を上げるグルカルマ!
『ギャアアアアアアアアアアアアアアア!』
グルカルマはルークを振り落とし、黒い尾にカミソリじみた鉱石の刃を無数に生やして一回転のテールスイング! 樹海を吹き飛ばし、血の涙を流しながら咆哮した。両前足を振り上げるグルカルマの真下を複雑軌道を描きながら結里花が飛ぶ!
「うひー、すごい暴れっぷりっす! ここで倒さないと駄目っすね!」
結里花は超低空飛行して振り返り、立ち上がったグルカルマの腹部を見上げる。両足を突いてブレーキをかけつつ白い大蛇を模した木槌を全身で振りかぶった!
「竜退治も神宮寺の巫女の務め。さあ悪しき竜を討ちましょう! 神宮寺家当代雨冠の巫女、結里花。参ります! ぶち抜け! 白蛇の咢!」
木槌頭部の大蛇が大口を開くと共に、結里花はハンマーをフルスイング! 放たれた純白の光弾がグルカルマの腹部に直撃爆発! 軽くC字に曲がった巨体の背中を泰孝とユグゴトが駆け上がっていく!
「ったく、ギャーギャーうるせえ。耳がおかしくなるぜ」
「生まれたばかりの仔はそういうものだ」
ユグゴトは言いながら、本を開いて木の枝が絡み合ったような形のペンを取り出す。逆手に握られたペンの先がどぎついピンク色の光を煙めいて零した。
「だが竜どもの孵化を見過ごす己ではない。何よりも胎生で『ない』のが問題だ。改めて私の胎内に還り生まれ給え。永遠の悦びを約束しよう」
開いた本のページに突き立てるペン! 直後、グルカルマの全身が桃色のノイズに包まれ姿が不明瞭になる。うつ伏せに倒れ込むグルカルマの絶叫を聞きながら、ユグゴトはペンで本のページを引き裂く!
「美しく鉱石には相応の場が必要だ。私の存在こそが貴様に真の愛を報せるだろうよ。抱擁の時。おいで。此処に貴様の故郷が有るのだ。HAHAHAHAHA」
地鳴りを響かせグルカルマが地に伏せる! 右手にマジックじみてトランプを出現させた泰孝は、桃色に歪んだ背中にカードを突き立てた。魔竜の背中から左右に跳躍する泰孝とユグゴト。刹那、魔竜の背中を巨大な7のトランプカード型バリアが押さえつけた!
「腹ペコドラゴンの標本、出来上がりってな。ダメ押し頼むぜ! ヘキセリエンの嬢ちゃん!」
「了解したのじゃ!」
泰孝が空中に叫ぶと共に、虚空に飛んだウィゼが構えたバズーカ砲を真下に向けた。砲門に青白い光をチャージ!
「冷凍魔竜になるのじゃーっ!」
放たれた凍結光線がトランプカード型バリアを透過し、グルカルマに直撃! 背中から頭と尻尾に向かって氷が拡大していく中、グルカルマは体をのけ反らせて咆哮を響かせる。背中を昇って来た白氷がその頭を覆い尽くした。
「冷凍魔竜、出来上がりなのじゃ!」
「ナイスだヘキセリエンの嬢ちゃん!」
着地した泰孝が廃材で固めた左腕を振り上げた。巨大な拳が高速回転しながら真上に迫り出し、錆びた擦過音を立てながら変形。巨大なバール形状を作り出す!
「縁のあったドラゴンが勢ぞろい、魔竜になってるたぁな。だがまずは一匹、こいつで終いだ! 一気にぶっ壊してやるぜ!」
廃材巨大バールを掲げたまま地を蹴る泰孝! グルカルマの頭上では無明丸が右腕をぐるぐると回し、地上の結里花が両拳に黄金色の光を宿した。
「わはははははははははっ! 天下の竜も氷像となっては形無しよ! ひと思いに打ち砕いてくれようぞーッ!」
「生まれたばかりで悪いっすけど、その命、食らわせていただきます!」
首筋めがけて走る結里花と勢いよく急降下する無明丸! 氷像と化した魔竜に殴りかかった三人がそれぞれの腕を繰り出しかけたその時、凍ったグルカルマの身体が震え、白氷が内側から爆ぜ飛んだ! 全方位に放たれる緑の奔流!
「うおっ!?」
「むみょっ?」
「のわっ!」
驚きブレーキをかける三人に巨大なハエトリグサが複数噛みつきにかかる! 泰孝の廃材バール化した肘先、無明丸の右足、結里花の胴体に緑の牙が突き立てられた瞬間、鬼人とルークが各々刃を構えて疾駆!
鬼人は上段斬り下ろしで泰孝の左腕に食いついた植物を斬り捨て、ルークは結里花に噛みついた葉をすれ違いざまに斬り刻む! 鬼人とルークはグルカルマに直角ターンしながら叫んだ。
「副島! 治療頼んだ!」
「食い止めつつ伐採するぞ!」
ルークはナイフを持つ手を引き、逆の手を襲い掛かってくる巨大ハエトリグサの群れに突き出す! 肘から先が漆黒に染まり、ラッパ状に広がったブラックスライムが食虫植物をまとめて飲み込み噛み潰した! 後方で尻餅をついた結里花をかっさらう二郎!
「すぐに治す。動くなよ」
「かたじけないっす……!」
二郎の足元から光の蝶が螺旋状に湧き上がり、彼の腕を伝って小脇の結里花に流れ込む。両体側面を深々と抉る噛み傷を一瞥した二郎は、包帯の隙間から覗く瞳で肩越しに振り返った。地鳴りめいた音を立てて起き上がるグルカルマ。全身に生える巨大食虫植物!
『グルルルルルルルルルァァァァァ!』
「難儀な姿になったもんだな……。まめにカバーする。死ぬなよ」
呟く二郎のグルカルマを挟んで反対側で、鬼人はジグザグ軌道で走りながら連続斬撃! ハエトリグサを次々と斬り捨てながら突き進む彼の足場が突如崩れ、黄色い液体を溜めた植物の穴が現れる! 地下から迫り出し鬼人を呑み込まんとする!
「食われてたまるかよ!」
鬼人はジェットパックの噴射で垂直飛行し、虚空を蹴って空中に炎の稲妻を描きながら飛翔した。一方でウィゼは自由落下しながらバズーカを連射! 半透明な灰色のシャボンじみた砲弾が無明丸に食いついた植物に命中し弾き飛ばす!
「無明丸おねえ! 鬼人おにい! 下がるのじゃ!」
ウィゼは声を張り上げながら己を狙いに来る複数のハエトリグサに砲弾を放つ! しかしハエトリグサは口を閉じ、アメジストめいた鉱石を装甲めいてまとった。巨大二枚貝じみた形状の宝石となった植物はウィゼの砲弾を粉砕して彼女の腹を殴打!
「ぐふうっ!」
僅かに跳ね上がったウィゼの両足首に新たなハエトリグサが噛みつき、グルカルマのもとへ引きずり下ろす。直後、グルカルマの足元に星座めいた光のライン模様が描き出された! やや離れた場所で地に両手をついたユグゴトが禍々しい桃色のオーラをまとう!
「育ち盛りは食べ盛りと言ったところなのだろうがな。それを食わせるわけにはいかないのだ」
置き上がったグルカルマの頭部が地上のユグゴトをにらみ、縦に裂けた口が大きく開いた。口回りに生えた無数のツタがユグゴトへ殺到! 彼女の前に滑り込んだルークが鋭く跳躍し、ナイフを振るってツタを斬り裂いていく!
「おおおおおおおおおおおおッ!」
虚空に刻む紫の軌跡。だがルーク真下の地面を突き破って飛び出したハエトリグサが、彼の腹に牙を突き立てた!
「ぐあっ!」
一瞬動きの止まったルークの両腕に粘ついたツタが絡みつき、グルカルマの縦に裂けた大口が噛みかかる! 地を蹴った魔竜の右後ろ脚に脳の如き肉縄が巻き付き、円筒形のミミックがグルカルマの進行方向と逆側にダッシュ! ユグゴトの目が光る!
「良い子だ、エイクリィ!」
次の瞬間、地面に描かれた星座めいた光模様から空へ桃色の光が吹き上がった! 光の結界に閉じ込められたグルカルマの身体から生えた植物が黒ずみ、しなびて枯れていく。噛みつきの牙を結界の壁に阻まれたグルカルマが叫び声を上げた!
「さあ母の胎内に還るが良い!」
笑みを浮かべるユグゴトの隣を結里花が突っ切った! 彼女を見送った二郎は広げた両腕から光の蝶を無数に解き放ちながら言い放つ!
「植物が立ち枯れた。今だ」
「わはははははははっ! そうか! 今か!」
呵々と笑った無明丸が両拳を引き絞って上空からグルカルマへと迫る! 両手首に嵌めた腕輪から漂う冷気を飛行機雲じみて尾を引きながら魔竜の脳天へと接近! 鋼で覆ったグルカルマの額にダブルパンチを叩き込む! 青白い光が大爆発!
「さあ! いざと覚悟し往生せい! もういっぱぁつっ!」
反動で下がった無明丸は頭上で両手を組み合わせてハンマーパンチ! グルカルマは霜の降りた額の装甲に無数の逆棘を生やして頭を振り上げての頭突き! 正面衝突した無明丸の両手がズタズタに引き裂かれ、魔竜の額表面を無数の斬撃が走る!
「ぬぅぅぅぅあああああああああっ!」
『ガアアアアアアアアアアアアアッ!』
咆哮したグルカルマの身体中に様々な色の鉱石が浮かび上がり、徐々に広がってマーブル模様の装甲を作り出していく。その背中に垂直落下したウィゼは二郎の蝶を身にまといながらバズーカ砲を両手で持って振り回し始めた!
「どんなに硬いという鉱石であっても、ある一方向からの衝撃にはもろいものなのじゃ。即ち」
両手で砲塔を振りかぶり、グルカルマの硬化した背中に振り下ろす!
「破壊属性のあたし理論で砕けるということなのじゃ!」
砲がマーブル模様の装甲に命中し、蜘蛛の巣状の亀裂を入れる! そこへ灰pジャンプして背中を曲げた結里花が御幣を振り上げた!
「ぶち割ってやるっす! 伸びろ、如意御祓棒!」
紙垂を把持した先端が真下に伸長し、ウィゼが入れた亀裂の中心に叩き込まれた! 砕けかけた鉱石装甲が放射状に波打って全身に伝わり、破砕! 煌めく鉱石の欠片を散らす魔竜の背中の尾に降り立った泰孝が二の腕だけ残ったガラクタの左腕を後方に引く!
「さーて、派手に暴れてくれたようだがここまでだ! 暴食なコイツにあやかって、オレも全部喰い尽くしてやるとするかねェ!」
食いちぎられた左腕の断面から飛び出す巨大な大鎌の刃を突き立てた泰孝は魔竜の背中を引き裂きながら全力疾走! 裂断傷から吹き出す竜の血を刃に吸わせながら加速し、背中を一気に駆け抜け首筋を駆け上がる!
そして後頭部付近で刃を引き抜きながら跳躍し、左腕を振りかぶった!
「うらあああああああああああああッ!」
巨腕を真横に振り抜いて一閃! 血濡れの大鎌に首を一息に飛ばされた魔竜の身体はダイヤモンドめいた輝きを放ち、盛大に爆発四散した。
作者:鹿崎シーカー |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年10月16日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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