翔ける剣撃

作者:柊透胡

 磨羯宮ブレイザブリク――その隠し領域には、死者の泉に繋がるルートが在る。
 其処は、明らかなる異境。魔空回廊の如き異次元の通路を、黒騎士が剣を引きずり彷徨い歩く。
 黒騎士の動作はいっそ自動的であり、機械的であり――なればこそ、敵を認めれば、容赦も躊躇いも無くその禍々しき剣は振るわれるだろう。
 死者の泉に取り込まれ、防御機構の一部となり果てたエインヘリアルであったモノに、既に個体を示す名前は無い。
 故に、死者の泉の門番たる黒騎士達は、十把一絡げに『門』と呼称されている。
 
「……定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
 今日も粛々と、ブリーフィングを開始する都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)。眼鏡越しの碧眼も鋭く、ケルベロス達を見回す。
「ケルベロス大運動会終了後より、死者の泉の『門』の攻略は順調に進行しています」
 リューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)が発見した磨羯宮「ブレイザブリク」の隠し領域は、双魚宮「死者の泉」に繋がる転移門だ。
「ご存知の通り、死者の泉は防衛機構『門』によって護られており、まずはこれを突破しなければなりません」
 『門』は『死を与える現象』が実体化したような黒鎧のエインヘリアルで、死んでも蘇り転移門を守り続けている。
「皆さんは、転移門の内部……魔空回廊のような異次元の回廊で、『門』と戦う事になります」
 転移門の内部では、『門』の戦闘力が数倍に強化されている。ヘリオンデバイスで強化されたケルベロスであろうと、油断は禁物だ。
「『門』の武器は、両手剣です。今回の『門』は、剣撃を飛ばして攻撃してきます」
 繰り出される剣撃は、時に単体を精確に切り裂き、時に一閃を以て場を制する。
「皆さんの生命力を喰らって回復する技もあるようです。お気を付け下さい」
 創の『門』のアナウンスも、これで2度目。
 既に20に迫る回数、ケルベロス達は『門』に挑んでいるが、死者の泉への転移を可能とするには、42体の『門』の撃破が必要と推測されている。
「死者の泉はエインヘリアルの生命線でもあり、死神の最優先攻略目標でもあります。死者の泉に直通するルートが開けば、エインヘリアルとの決戦は避けられません」
 『門』は、死者の泉による自動防御機構だ。42体の『門』を撃破して防御機構を破壊するまで、エインヘリアル側に露見する可能性は低い。
「それでも、攻略に時間が掛かり過ぎれば、エインヘリアルに勘付かれて、ルートを閉鎖されてしまうかもしれないのです」
 現状のペースが速いか遅いかは判らないが、無駄骨を折る結果だけは避けたい所。
「私も、『門』の演算を優先するように致しますので……どうぞ宜しくお願い致します」


参加者
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
シル・ウィンディア(鳳翼の精霊姫・e00695)
エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)
メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)

■リプレイ

●邂逅幾度か
「ヘリオンデバイス・機動! ――ご武運を」
 そろそろ、ヘリオライダーのコマンドワードも耳に馴染んできただろうか。
 ヘリオンデバイスを装着したケルベロス達は、それぞれ追加能力を起動すると、静かに磨羯宮ブレイザブリクの隠し領域に足を踏み入れる。
「さて、道は遠いけど、着実に『門』の攻略を進めて行こう」
 おっとりと呟く源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)が『門』に挑むのも、今回で3度目。のみならず、居並ぶケルベロス達全員が『門』との戦いの経験者である僥倖。
「これで4回目か……さて、今回も気合入れていくぞっ!」
 既に『門』が彷徨う領域だ。シル・ウィンディア(鳳翼の精霊姫・e00695)の掛け声は、勢いがありながら控えめか。代わりに、左手の薬指――大切な人と交わしたプロミスリングにそっと触れる。
(「離れていても、いつも想いは一緒……絶対、生還するんだから」)
「発見しましたわ」
 ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)の報告は、程なくして。唐突な反応に、首を巡らせば案の定。一見、いつもの眼鏡と変わらぬ『ゴッドサイト・デバイス』越しに、黒き長躯を捕捉する。
 周囲は、ケルベロスと黒騎士1体の他に、味方も敵もいないようだ。
 異空間に遮蔽の類も無ければ、イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)が奇襲を掛けるより速く、黒騎士は両手剣を構えてケルベロスと対峙する。
 今回の『門』は、剣撃を飛ばしてくるという。
「今日も今日とて黒騎士組手……技が日替わりなのもイケてんじゃん」
 ライドキャリバーの藍を伴う山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)は、不敵な笑みを浮かべている。言葉遣いこそJK、もといJC風であるが、内にはオウガらしく強敵を求める闘志を秘めている。
「じゃぁ、殺し合い、始めよっか」
 一歩引いて様子を見るルーシィドとは対照的な前のめりぶりだが、意気軒昂は他も同じ。
「やぁやぁ、最近良く会うね? ……なんて、君には分からないのかもしれないけれど、ふふ」
 いっそマイペースに、『門』へ声を掛けたのはメロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)だ。覿面、殺意を漲らせる黒騎士を目前にしても、貼り付けたような微笑は変わらない。
「まあ、それはそれ、毎回新鮮な気持ちで出会えるということで……さて、今回も始めよう♪」
「何体出てきても、わたしたちは止められないよ! 全部倒してあげるから!」
 そろそろ見慣れた「死者の泉」の防御機構を前に、イズナも屈託なく啖呵を切る。
「よし、1つ1つ確実に退治していこうぜ」
 己が拳同士、そして背中の機械腕同士を力強く打ち鳴らし、筋肉を誇示するように身構える相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)。
 そして、マッスル拳士と肩を並べるエステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)の表情は、既に抜身の刃のような剣呑を帯びて。
(「敵は……デウスエクスは、全員殺す」)
 喩え42で足りなかったとしても、何度でも。
「お前らに、死を与えてやる!」

●翔ける剣撃
 戦いの火蓋が、切って落とされる。
 予め、ジェットパック・デバイスで宙に在るのはシルとエステル、クラッシャー2名。
「闇夜を切り裂く、流星の煌めきを受けてみてっ!」
 勇ましく叫び、シルのスターゲイザーが奔る。ジェットパックの推力を利用するように一気に降下し、白銀の戦靴が一閃する。
「無情の冷えた煌めきが、その体躯を凍り落とす」
 ほぼ同時、エステルの改造バスターライフル「エース530DMR」より白魔が迸った。
 初撃より、命中すればクラッシャーの威力は甚大。だが、重甲冑に違う俊敏が、飛び蹴りと凍結光線の軌道を、相次いで躱す。
 ――――!!
 両手剣を握り締め、振り抜く。『門』の場を圧する法力が、上空地上関係なく、後衛の護りを砕かんと。
「うおぉぉぉっ!」
 雄叫び上げた泰地が、辛うじて、メディックのメロゥを庇う。
「てめぇの相手は、俺だ!」
 高く飛び上がるや、マッスルレガースに虹を纏わせ、降魔の格闘家は急降下蹴りを浴びせ掛ける。
「悪いが巻き込むぞ!」
「上等じゃん!」
 敵の攻撃は、列に及ぶグラビティの方が多い。泰地が売り付けた怒りは、時に肩並べることほとライドキャリバーを巻き込むだろう。だが、同様に盾として立つならば、オウガの少女は不敵に言い放つ。
「私だって、やるって言ったら、やるの!」
 藍が炎に包まれ突撃すると同時、エクトプラズムで疑似肉体を作り上げるや、後衛の外傷を素早く塞いだ。
(「キャスター? ……ううん、多分違う」)
 敵のポジションを推し量らんと、目を凝らすイズナ。眼力が示す命中率は、特に低下は認められない。だが、この異空間に於いて、敵の戦力は何倍にも増強されている。如何に歴戦であろうと、デバイスの援けがあるジャマーとスナイパーばかりでなければ、早々の総攻撃はやはり厳しいか。
 ――――!!
 響き渡る雷鳴の如き轟音。イズナの黄金の小槌より、竜砲弾が稲妻の如き奔れば、瑠璃の轟竜砲も、その軌道を追うように。相次いで、敵の足許に爆ぜる。
「ふむ……」
 逡巡も束の間。竜翼を広げたメロゥは鎮めの風を起こす。キュアを重ねるメディックのヒール、である筈が。
「……っ」
 思わず胸元を抑えるイズナ。敵の初撃で被ったひび割れた感触が、完治しない。となれば。
「この『門』、ジャマーだよ!」
「了解致しました」
 イズナの報せに頷いたルーシィドは、すぐさまエクトプラズムを圧縮する。
(「私も、無様は見せられません」)
 同じ師団であるシルは、戦争時には司令部に詰める事も多く、姿をよく目にしている。年下であっても大先輩として尊敬の念も殊更だが、他のケルベロスとて頼もしい味方だ。自身も真剣に作戦に取り組む姿勢を見せなければ、と――肩に力が入る思いで、プラズムキャノンで狙撃する。
 ――――!!
 初手から、怒りを生じさせられた幸い。黒騎士の二の手は、泰地目掛けて飛刃を浴びせ掛ける。
「ぐっ……」
 感触からして力技。防具の相性は合致していた筈だが……ジャマー故に精確さも重なれば、その斬撃は容赦なく露な上半身を刻んでいく。
「マッスルガード!」
 気合を入れてポージングする泰地。筋力流の構えの1つであり、回復と同時に肉体の硬度を引き上げる。怒りの発動率は1つの付与でも五分五分と高い。出来得る限り、敵の攻撃を引き付け、仲間には安全に、確実に攻撃を続けて貰わなければ。
 その意気を感じたことほも、「天津桜」と銘したアニミズムアンクを掲げ、自らと泰地と大自然を霊的に接続する。どれだけ強靭な盾であっても、適切に癒し続けなければ、十全の力を発揮出来ないのだから。
「さて、本日の披露は手品か魔法か――分かるかな?」
 奇術師めいた挙措で光の盾を顕すメロゥは、やはり芝居がかった仕草で泰地へ寄越す。
(「お次は……後衛にブレイブマインで援護出来れば、何よりだけれど」)
 クラッシャーとスナイパーが同列にいる現状、同時に火力アップが狙える好機を活かさぬ手は無かろう。
 回復と援護の体勢が、着実に整っていく間にも、狙い澄ました攻撃の手は休まない。
「うーん、まだもう少し、掛かりそうかな?」
「だったら、総攻撃出来るようになるまで、頑張るだけですわ」
「うん。確実に、追い詰めないとね」
 轟竜砲にプラズムキャノン、スターゲイザー、更には猟犬縛鎖と、イズナとルーシィド、瑠璃はこれでもかと足止めのグラビティを『門』に浴びせ掛ける。藍もことほの代わりに、何度もエンジンを吹かせて突撃を敢行した。
「わたしは、もっと高く飛べるんだからっ!」
 マインドソードを手にシルが急降下すれば、兎のそれに変じたエステルの拳の高速かつ重量ある一撃と交錯する。
「潰す、殺す……絶対に」
 喩え、率は万全でなくとも、命中の可能性はある。故にシルもエステルも、倦まず弛まず、グラビティを繰り出し続けた。

●準備万端
 一丸となったケルベロスの攻勢に対し、『門』はあくまでも1体。手数では、ケルベロスが圧倒的に優位だ。
 それでもまだ、黒騎士の動きは淀みない。
 ――――!!
 怒りを振り切った『門』の全身より、黒き靄が迸る。
「キャッ!?」
 避ける暇も無く、纏わりつく靄がルーシィドの生命力を吸い取った。咄嗟にイズナを庇ったことほも、歯を食い縛って耐えている。
「ダメージが……」
 悔し気に顔を顰めるエステル。最大効率の5名在る後衛へ、ドレインを飛ばした黒騎士の傷が、癒えていく。その実、ジャマーのドレインは、クラッシャーのそれより回復量が大きい。
 ならばと、瑠璃はインペリアルバスターに弱体化光弾を装填。武器封じの技は、瑠璃のゼログラビトンのみ。フロストレーザーとの併用で、攻防何れからも援助せんと狙いを付ける。
「やっぱり、ヘリオンデバイスのパワーアップはすごいね」
 ミョルニルを構え直し、イズナはしみじみと呟く。
 如何に強力なグラビティも、命中してこそ。故に、ディフェンダーが敵の攻撃を引き受けメディックが癒す間に、スナイパーの足止め技を反撃の起点に、ジャマーが更に厄を深め、そうして漸く総攻撃を成す。
 だが、デバイスによってスナイパーとジャマーの命中率が最初から上昇していれば、序盤からスナイパーは痛撃を狙えるし、ジャマーもより早くバッドステータスを撒けるようになる。
 ヘリオンデバイスは、各ポジションの長所をより伸ばす。元より、手数の優位が圧倒的であれば、戦況の進行速度は段違いと言えよう。
「デバイスだって、もう、かれこれ4回以上使ってるんだ。慣れても来るっ!」
 続く、飛刃は執拗にシルを狙う。躱しきれないと悟るや、急上昇。下からの追尾を旋刃脚で蹴り砕くように相殺する。気を引くように、低空飛行で肉迫したエステルの掌が螺旋を注ぐ。黒騎士の内で何かが砕ける音を確かに聞いた。
「これ以上、余所見させるか!」
 泰地の両の虎爪刃手甲がジグザグに閃く。『門』に刻まれた厄を――怒りを更に増幅するべく。
「あー、そろそろ、行けそうじゃん?」
 ヒールの準備は余念なく、時に身構えて確認することほの命中率は、確実に上がっている――チラと肩越しに見やれば、頷き返したメロゥがシルクハットをクルリ。唐突に派手な爆煙が、後衛の数だけ上がった。
「やりましょう!」
 誇らかに応じたルーシィドより、鋭槍の如きブラックスライムは毒を帯びて『門』を強襲した。

●これでまた1体
 ――――!!
 『門』より噴き上がる黒靄。だが、憤怒に抗えず、前衛へと押し寄せる。
「藍、さんきゅ!」
 エンジン唸る相棒に庇われ、ことほはそのシートを撫でる。大丈夫、この程度で盾が潰えたりはしない。
「もう逃がさないし、離さないし!」
 誓いは枷となって、祈りは呪いとなって――ことほが咲かせた迷宮の妖怪桜は、『門』を包囲し挙動を抑える。
「さぁさぁご注目あれ、今日も楽しい手品の時間だよ」
 トランプを放り投げるメロゥ。『門』の視線が1枚を捉えたのを見逃さない。
「お代は見てのお帰りだけれど――見たのなら、無事には帰れないかもね」
 パチリ、と彼女が指を鳴らした瞬間。
「――おや、種が知りたいって?  まいったな……そんなものあったっけ」
 よもや、忽然と消えたその1枚が、黒甲冑を破って現れようとは。
「俺の筋肉は、最強だ!」
 すかさず、渾身の膂力を込めた泰地の絶空斬が『門』の亀裂をこじ開ければ、瑠璃も素早く術式を組む。
「力借りるよ!! カーバンクル、その魔力にて停止を成せ!!」
 少年と呼ぶには成長した長躯の傍らに出でしは、太古の月・紅玉獣――太古の盟約に則り、召喚された伝説の霊獣はその額の紅玉から拘束のビームを放つ。
(「さて、『門』に私の予言は通じるでしょうか」)
 ルーシィドの糸紡ぎの針の予言とて、グラビティであれば。
「あなたは15のたんじょうび、糸つむぎの針に刺されて死ぬでしょう。さぁ数えてください、誕生日まで、あと……」
 それは、ルーシィドの心の裡にある夢の幻視のひとつ。レース重ねた黒の袖から零れた紡ぎ車の錘が、真っ直ぐに『門』を穿つ。ほんの小さな刺し傷であろうと、呪いの言葉は標的の命を削るのだ。
 間断なく『門』にグラビティを浴びせるケルベロス達。相殺も回避も許さず、『門』がドレインした回復の量を消し飛ばす。
「もう終わりだよ」
 イズナが喚ばうは、勝利の剣――正しき道を標し。勝利を約束する陽の剣。自在なる攻防一体の飛翔剣は、敵が滅ぶまでどこまでも翔け追い詰めよう。
 眩き飛翔に翻弄されたか、『門』の動きが停止した、その瞬間。
「最大火力で押し通すっ!」
 風精の涙『シルフィード・ティアーズ』をしっかと構え、シルは声高らかに詠唱する。
 ――闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ……。
「六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!」
 さぁ、全部もっていけ!! ――推力全開で一気に接敵するや、六芒精霊収束砲零距離射撃。反動を抑え込むべく展開した一対の青翼がビリビリと震える。
「ドラゴンをも撃ち砕く一撃。門の騎士であろうと、ただで済むとは、思わないことだよっ!」
 強気を言い放つシルの言葉に違わず、光の中で、黒き甲冑は瓦解していく――否!
「光の中で終われると思うな」
 辛うじて踏み止まった黒騎士の影を、シルと正反対の位置――背後から、急降下するエステル。甲冑ごと頸を掴む。
 落ちて行け。夜の中に――宵待月の如く。
 重厚も構わず一転、急上昇。円錐曲線の如き軌道で勢い付けて、叩き落とす。
「砕けろ! 潰れろ! さっさと死ね!」
 語気粗く、再度『門』の腕を浚って宙に舞い上がり、駄目押しに投げ落とした。

「……うん、特に変わった所はなさそうだね」
 潰えた『門』は忽ち失せる。ゴッドサイト・デバイス越しに、周囲を警戒するイズナとルーシィド。
「すぐ撤退するぞ、ここは敵の拠点内も当然、長居は危険だ」
 確かに、大規模な人数で一気に「門」を撃破を重ねれば、手早く道は開けるだろう。だが、派手に動き過ぎれば、エインヘリアル側に察知されかねない。
「うんうん、次に繋げるために早く帰ろっ」
 泰地の判断に否やは無く、早速藍に騎乗することほ。瑠璃がチェイスアート・デバイスを全員ビームで繋いだので、撤退の足取りは速い。
「シル様、お疲れ様でした」
「お疲れ様! ……焦っても仕方ないよね。1歩ずつ、確実に」
 ルーシィドに笑顔で応じたシルの独り言に、エステルは肩を竦めるのみ。
(「本当は、もっと殺したいけど……入り口の前から、味方を損じる訳にはいかない」)
 物騒な本音は、おくびにも出さない。
「本日の逢瀬もここまで、と」
 メロゥの愉悦含んだ呟きは異空間に響く事無く、消えていった。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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