●都内某所
ロボット掃除機にとって、掃除をする事が生き甲斐であった。
とにかく、綺麗に。
隅から隅まで、ゴミを残さず、クリーンに。
だが、新しいロボット掃除機が、家にやってきた事で、必要とされなくなった。
そして、捨てられた。
粗大ゴミが不法投棄された場所に……。
そこはゴミの宝庫。
本来であれば、ロボット掃除機が望む場所。
この場所なら、掃除し放題。
しかし、ロボット掃除機の気持ちは違っていた。
そうじゃない。
こんなの求めていない。
そんな気持ちが通じたのか、ゴミ捨て場に小型の蜘蛛型ダモクレスが現れた。
小型の蜘蛛型ダモクレスは、機械的なヒールを使って、ロボット掃除機を変化させた。
「ロボットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、ダモクレスと化したロボット掃除機が、耳障りな機械音を響かせ、ゴミ捨て場から飛び出すのであった。
●セリカからの依頼
「氷鮫・愛華(幻想の案内人・e71926)さんが危惧していた通り、都内某所にあるゴミ捨て場で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にあるゴミ捨て場。
そこに捨てられていたロボット掃除機が、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、ロボット掃除機です。ロボット掃除機はダモクレスと化した事により、人型ロボットのような姿をしているようです」
セリカが真剣な表情を浮かべ、ケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
天月・悠姫(導きの月夜・e67360) |
氷鮫・愛華(幻想の案内人・e71926) |
オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471) |
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488) |
●都内某所
ロボット掃除機にとって、掃除をする事こそが生き甲斐であった。
掃除をすれば、それで幸せ。
ただ、それだけの事で、幸せになる事が出来た。
だが、その望みは叶わなくなった。
新しいロボット掃除機が、家に現れた事によって……。
それはロボット掃除機にとって、ショックな出来事であったが、拒否する事は出来なかった。
そして、ロボット掃除機は、捨てられた。
不要なゴミとして……。
今まで自分が掃除してきたゴミと、同じように……。
しかし、ロボット掃除機には、どうする事も出来ない現実であった。
どんなに叫んでも、どんなに嘆いても、その言葉が届く事はないのだから……。
少なくとも、小型の蜘蛛型ダモクレスが現れるまでは……。
「まさか、私が危惧していたダモクレスが本当に現れたとは……。少し驚きましたが、これも何かの因縁ですね」
氷鮫・愛華(幻想の案内人・e71926)が何かを悟った様子で、仲間達と共にダモクレスの存在が確認されたゴミ捨て場にやってきた。
その場所は廃墟と化した工場の裏にあり、特別な用事がなければ立ち寄る事が無いような所であった。
そのため、辺りにまったく人気がなく、何とも言えない不気味な雰囲気が漂っていた。
その分、ゴミを捨てるには最適な場所で、ケルベロス達を歓迎するようにして、大量のハエが纏わりついてきた。
それは歓迎とは程遠い行為であったが、ハエ達は一生懸命であった。
だが、ケルベロス達にとっては迷惑以外のナニモノでもなかった。
むしろ鬱陶しく思えてしまう程、大量のハエが辺りに飛び回っていた。
「ところで、ロボット掃除機って、感情を持っているのかしら? 掃除を淡々とこなすだけって印象があるけど、やっぱり捨てられたら、悲しいのかな?」
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、不思議そうに首を傾げた。
おそらく、ロボット掃除機に、感情はない。
しかし、残留思念に引き寄せられ、小型の蜘蛛型ダモクレスが現れた事を考えると、それに近いモノがあるという事だろう。
「確かに、ロボットならゴミ捨て場は掃除し放題だから喜びそうなのに……。やっぱり感情も持っている物なのかしらね?」
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が、ゆっくりと辺りを見回した。
ゴミ捨て場は山の如く盛り上がっており、異様なニオイに包まれていた。
その上、どのゴミも特大級で、ロボット掃除機では、吸い取る事が不可能なモノだった。
もしかすると、それが原因で余計にストレスが溜まってしまったのかも知れない。
「まあ、この場所じゃ実力の半分も出せないだろうしね。ゴミも詰まって酷い状況になっているのかも……」
オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)が複雑な気持ちになりつつ、そっと視線を落とした。
次の瞬間、ゴミの山が激しく揺れ、ダモクレスと化したロボット掃除機が、勢いよく飛び出して、ケルベロスの前に降り立った。
「ロボットソウジキィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
ダモクレスは人型ロボットのような姿をしており、ケルベロス達を威嚇するようにして、耳障りな機械音を響かせた。
●ダモクレス
「まわりに一般人がいないのが幸いですねー。とにかく、街に繰り出す前に倒してしまいましょうか」
愛華が仲間達と連携を取りながら、ダモクレスに攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
「ロボットソウジキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その事に気づいたダモクレスが、ケルベロス達を牽制するようにして、激しく唸り声を響かせた。
だが、ビームの発射口は大量のゴミで塞がれており、地面にボロボロと崩れる程の量だった。
「やっぱり、吸い込み口がゴミでいっぱいになっているようだね。それじゃ、行こうか、トト」
オズが何やら察した様子で、ウイングキャットのトトに声を掛け、マインドシールドを発動させ、マインドリングから浮遊する光の盾を具現化し、仲間達を防護させた。
「ロボットソウジキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、超強力なビームを放ってきた。
その途端、発射口に詰まっていた大量のゴミが塵と化し、まわりにあったゴミも消滅させた。
それは掃除するというより、一掃するという表現が正しいほど、破壊力を秘めた一撃であった。
「ひょっとして、そのビームで私達を一掃する気? だったら、これで防いであげるわ」
すぐさま、リサがエナジープロテクションを発動させ、自然属性のエネルギーで盾を形成し、ダモクレスが放ったビームを防いだ。
だが、完全には防ぐ事が出来ず、勢いよく後ろに吹っ飛ばされた。
幸い、その場所が茂みになっていたため、大怪我はしなかったものの、当たりどころが悪ければ怪我をしていたところである。
「とにかく、動きを止める必要がありそうね。……霊弾よ、敵の動きを止めてしまいなさい!」
悠姫がキリリとした表情を浮かべ、プラズムキャノンを仕掛け、圧縮したエクトプラズムで大きな霊弾を作って、ダモクレスを攻撃した。
「ロボットソウジキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!」
その事に腹を立てたダモクレスが、耳障りな機械音を響かせ、狂ったようにブラシ型のアームを振り回した。
それと同時に、辺りに散らばったゴミが掃除され、ケルベロス達のところまで続く道が出来た。
その道をズシンズシンと足音を響かせ、ダモクレスがケルベロス達に迫ってきた。
「あんなに汚れていた地面が、見違えるほど綺麗になったようだね。ダモクレスで無ければ、褒めてあげたいところだけど……」
オズが複雑な気持ちになりつつ、ダモクレスに視線を送った。
「ロボットソウジキィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その間に、ダモクレスが距離を縮め、ケモノの如く勢いで、耳障りな機械音を響かせた。
しかし、辺りを荒らしながら、掃除をする姿は、実にシュール。
色々な意味でツッコミどころが満載であったが、ダモクレスは真剣な上に本気であった。
そこに躊躇いが無い分、恐怖すら感じる程だった。
「……ですが、ここから先には行かせませんよー!」
それを迎え撃つようにして、愛華がホワイト・エターニティ(ホワイト・エターニティ)を発動させ、懐中時計を媒介とした魔法の空間を作り出し、ダモクレスを閉じ込めた。
「ロボットソウジキィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!」
それはダモクレスにとって、牢獄に閉じ込められたのと、同じ事。
どんなに足掻いても、その空間から脱出する事が出来ないため、かなりイラついている様子であった。
だが、ダモクレスはまったく諦めておらず、怒りに身を任せて、魔法の空間を叩いて、叩いて、叩きまくっていた。
「ロボットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
それでも、魔法の空間を破壊する事が出来なかったため、ダモクレスが耳障りな機械音が辺りに響いた。
「随分とイライラしているようだけど、自分の身を守る事も考えた方がいいわよ。まあ、いまさら考えたところで、手遅れかも知れないけど……」
悠姫がガジェットを拳銃形態に変形させ、魔導石化弾を撃ち込んで、ダモクレスを石化させようとした。
「ロボットソウジキィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それに対抗するようにして、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ロボット掃除機のミサイルを飛ばしてきた。
そのミサイルは地面に落下したのと同時に、スゥーッと滑るように移動し、ケルベロス達の傍で次々と爆発していった。
その影響で先程綺麗にした場所が、すべて台無しになった。
そのため、まるで綺麗に整頓された玩具箱をひっくり返したほど荒れ、酷い有り様になっていた。
「一体、何処を狙っているんですか? そんな事では、私達を傷つける事なんて出来ませんよ?」
その間に、愛華がダモクレスの死角に回り込み、フォーチュンスターを発動させ、理力を籠めた星型のオーラをダモクレスに蹴り込んだ。
「……とは言え、少しかすってしまったようね。みんなも怪我をしているようなら、遠慮なく言ってね。すぐに治療をするから……」
リサが仲間達に声を掛けながら、鎮めの風を発動させ、竜の翼から仲間の心の乱れを鎮める風を放った。
それに合わせて、オズがサークリットチェインを使い、地面にケルベロスチェインを展開し、味方を守護する魔法陣を描いた。
続いてトトが清浄の翼を発動させ、羽ばたきで邪気を祓った。
「ロボットォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
しかし、ダモクレスは、まったく怯まない。
むしろ、逆ッ!
すべてを破壊する勢いで、ケルベロス達に迫ってきた。
「ダモクレスになったのが間違いだったわね。ロボット掃除機のままなら、まだ活躍する機会があったかも知れないのに……。でも、これて終わりよ。……諦めなさい」
それと同時に、悠姫がスカルブレイカーを仕掛け、高々と跳び上がって、ルーンアックスを振り下ろし、ダモクレスのコアを叩き割った。
「ロボットソウジキィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その一撃を喰らったダモクレスが断末魔を響かせ、崩れ落ちるようにして完全に機能を停止させた。
「これでようやく眠る事が出来そうね。もう悩む事もないわ。だから、ゆっくり休みなさい」
リサがダモクレスだったモノを見下ろし、優しく声を掛けた。
だが、ダモクレスだったモノは、二度と動く事はない。
完全の機能を停止させ、ガラクタの山と化した。
「さすがに、このまま放っておく訳にはいかないね。すぐに掃除しておかないと、またゴミを捨てる人が増えそうだし……。少し骨の折れる作業だけど、頑張って片付けようか」
オズがホッとした様子でヒールを使い、辺りを修復しながら、トトと一緒に掃除をし始めた。
愛華もダモクレスとの戦いで、全身ゴミまみれになっており、シャワーを浴びたい気持ちになっていたが、一緒に作業をするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年9月30日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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