磨羯宮から双魚宮へと続く転移門。
その内側に広がるのは硝子のトンネルを連想させる、一本道の回廊であった。
赤、青、紫、白、緑――回廊をつつむ光は絶えず揺蕩い続け、決してとどまる事はない。そんな異次元の空間を、黒騎士は虚ろな足取りで彷徨っていた。
『ウウ……オォォ……』
漆黒の鎧、漆黒の剣。漆黒の翼に漆黒の闘気。
何もかもが闇に染まったこの騎士は、泉の番人が防御機構に取り込まれた成れの果て。
転移門を守り、侵入者を排除する――ただその為だけに、それは存在していた。
『ウゥゥ……オォォォォ……』
『門』たる騎士は、ひとり泉を護り続ける。
今までも、そしてこれからも。役目を終えて朽ち果てるその時まで。
「集まったようだな。早速だが、依頼の説明を始めるぞ」
ザイフリート王子はそう言って、ケルベロス達を見回した。
「磨羯宮ブレイザブリクの隠し領域にて、双魚宮へと繋がる転移門が発見された。この門の先には、エインヘリアルの生命線でもある『死者の泉』が存在する。お前達には、この泉を守護している『門』と呼ばれる存在の撃破を頼みたいのだ」
『門』は泉の防御機構であり、巨大な黒騎士に似た姿をした敵だ。
その正体は、泉の番人であるエインヘリアルが防御機構に取り込まれ、死をもたらす現象へと昇華したもの。『現象』であるが故に、一度滅んでも時間を置けば復活してしまうが、それとて無限ではないと王子は言う。
「『門』は42体倒せば復活が不可能になる。お前達が今回戦う『門』は火力に優れ、空間の影響で戦闘力も強化されている故、十分気をつけて貰いたい。無論、ヘリオンデバイスも用いてくれて構わぬぞ」
戦場となる回廊は一本道の広大な異空間で、戦闘の障害になるものはない。
飛行なども問題なく、道に迷う事もないだろう。『門』は門を守護するように道を塞いでおり、回廊に入ればすぐに戦闘が始まるはずだと王子は告げた。
「泉への転移門が発見されてから、もうじき2か月……ユグドラシルが着々と制圧されつつある今、残された時間はそう長くなかろう。アスガルド本国の勢力に先手を打たれぬよう、確実な遂行を頼むぞ」
エインヘリアルの侵攻時期はいまだ不明。死神もいつまで味方でいるか分からない。
決戦での優位を得るためにも、泉への道を開く事は急務なのだ。
「泉へのルートは着実に築かれつつある。『門』に勝利し、更なる一歩を踏み出してくれ。お前達の健闘を祈っている!」
そうして話を締めくくると、王子はヘリオンの搭乗口を開放するのだった。
参加者 | |
---|---|
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550) |
ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020) |
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753) |
君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801) |
尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130) |
ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434) |
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678) |
メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450) |
●一
冷たい殺意を帯びた空気が、虹色の異空間に満ちていた。
磨羯宮ブレイザブリクの隠し領域、空間の内部に広がる一本道。泉への扉を閉ざす番人を撃破するため、ケルベロス達はその場所へたどり着く。
「皆、気をつけろ。……いるぞ」
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)が、回廊の奥を見澄まして警告を発した。
視線の先、泉に繋がる転移門には、とば口を塞ぐ黒騎士が1体。
『門』――死をもたらす現象に昇華した、エインヘリアルの成れの果てである。
『ウウ……オオオ……』
絞り出すような呻き声を漏らし、一歩二歩と『門』は向かってきた。対するケルベロスも陣形を組み、ただちに戦闘態勢を取る。
「確実に撃破していこう。時間は貴重だからな」
「そうですね。竜の襲来も気がかりですが、こちらも早めに開けたい所です」
ジェットパック・デバイスで飛行する泰地に、ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434)は頷きを返すと、戦場となる空間を強化ゴーグル越しに凝視する。
久方振り、というにも慣れない景色。前回の戦いから二か月が過ぎた今も、転移門は固く閉ざされたままだ。開放に必要な撃破回数は、すでに折り返しを過ぎたようだが――。
「ターニングポイント通過、ってやつだね。しっかり勝って、次に繋げようじゃないか」
ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)が、靴型デバイスを踏みしめながら呟く。
「死者の泉。死神の秘密にまつわる場所か……情報屋としては興味が尽きないなあ」
「どんな所なんだろうね。私は強い敵が沢山だといいなー、いっぱい修行できそうだし」
可愛い拳をパキパキ鳴らし、山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が頷いた。
オウガの少女であることほにとって、強敵との戦いは修行と同じ。幾度にも及ぶ『門』との連戦も同様だ。今回の相手も必ず撃破せんと、闘志をメラメラと燃やしている。
(「復活の終わりも見え始めたしね。絶対にブッ倒す!」)
「さてさて頑張ろう。ことほ、今回もよろしくね」
空中を舞いながら、メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)が微笑む。
彼女もことほと同じく、『門』との連戦を重ねるメリュジーヌの少女だ。シルクハットにタキシード、そして鳩モチーフの可愛いデバイスで戦いに臨む彼女の手には、ハテナの印が描かれた箱がひとつ。戦闘用奇術の小道具だ。
「よろしく、メロゥさん。マジック楽しみにしてるね!」
「ありがとう。最高のショーをお届けするよ」
微笑を浮かべて手を振るメロゥ。大剣を構える『門』との距離がじりじりと縮まるなか、玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)は敵から目を離さずに吐息を漏らした。
「死んでも蘇る黒騎士か。外国の怪談に出てきそうだよな」
「そウだな。そして最後は、退治されて終わりと相場が決まっていル」
メロゥの牽引ビームで飛ぶ君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)が、小さく相槌を打つ。
レスキュードローンの調子は万全だ。頼もしい仲間達と、信を置く相棒もいる。懸念する要素は何ひとつない。
「まさしく戦うためのフィールド。やりやすくて有り難イな」
「へへっ、本当だよなあっ!」
最前列で拳を掲げ、尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)が応える。
彼は無骨な鉄翼の様な機械腕を展開すると、目の前まで迫った『門』に向けてとびきりの笑顔を送った。
「よお、また来たぜ。つっても分からねえか」
無言で剣を構える『門』。それに広喜も、破壊の拳を突きつける事で返す。
通じなくとも構わない。これは排除する者と壊す者、お互いの存在をかけて戦う事への、いわば儀礼なのだ。
「んじゃ、勝負しようぜっ!」
回廊に、黒騎士の咆哮が轟いた。
転移門を巡る24度目の戦い、その幕開けである。
●二
『オオオオオオオッ!!』
獣じみた雄叫びをあげながら、『門』は攻撃を開始した。
心持たぬ、死をもたらすだけの現象。それが大剣を手にケルベロスへと迫る。
「さあ勝負だよ。一歩も退かないから!」
機械腕を大きく広げ、陣内を庇うことほ。
直後、剣から迸る光が後衛を襲った。洪水の如きグラビティの奔流に服を破られながら、ことほは癒し系オウガメタル『めたるにゃんきー』を展開。中衛で突撃態勢を取ったライドキャリバーに指示を飛ばす。
「藍ちゃん、ヒットアンドアウェイだよ。無茶は禁物だからね」
藍がスキール音を立てて『門』に突っ込む傍ら、ことほはオウガ粒子で後衛の身体能力を強化していく。敵の火力は相変わらず高い。回避も並の相手を凌ぐ。ここからはいかに早く攻撃態勢を整えられるか、時間との勝負だ。
「やれやれ。まるで猛獣だな、あの『門』は」
陣内は軽く舌を巻き、番犬鎖を構える。
藍のスピンで『門』が転倒すると同時、精神力を込めた鎖を発射。猟犬縛鎖で甲冑を絡め捕り、その動きを捕縛で封じていく。
「獣は鎖で繋ぐに限る。……猫、キャットリングを」
猛獣使いよろしく鎖を操る陣内の一声に、ウイングキャットは縞模様の尻尾から花の輪を放つ。暴れる『門』の大剣が輪に打たれ、その勢いを衰えさせた。その一瞬を逃さず、眸がビハインド『キリノ』と広喜に視線を向ける。
「好機ダ。――行くぞ」
「了解だぜっ、眸!」
同時、二人が放つのは、息を合わせてのメタリックバーストだ。
レスキュードローンの力を帯びた濃厚な粒子が後衛を包み、みるみる傷を癒す。させじと剣を構える『門』。そこへキリノがポルターガイストを浴びせかける。耳障りな怪奇音は敵の足を強制的に止め、その動きを鈍らせ始めた。
向上する後衛の能力。鈍り出す『門』の動き。そこへヴィルフレッドがステルスリーフを発動し、突撃態勢のローゼスを包み込む。
「これでよし。派手なの頼むよ」
サムズアップを送るヴィルフレッド。応じるようにローゼスが地面を蹄で踏みしめた。
敵の回避を確実に封じる。この剛脚が繰り出す『Giino deos』で――!
「彷徨うのみで歩む先を失った者よ、このローゼスの脚について来れるか。いざ征くぞ!」
メインブースター点火。――突撃。
重装駆動機の力を込めた踏込みが、デバイスの導く狙いをのせて、鍛え抜かれた躯体から繰り出された。刃のような重撃に脚を貫かれ、黒い液体を噴出させる『門』。派手に回避を奪われた黒騎士の周りを、メロゥはひらりと飛び回る。
「やぁやぁ、今日もよろしくね♪」
可愛らしく首を傾げ、ハテナの箱をパカッと開ける。
飛び出したのは、シャーマンズカード『《misos》』。引いた絵柄は氷結の槍騎兵だ。
「ねえ、僕のことを覚えていないのかい? 本当に?」
『…… ……』
「そうか、覚えていないんだね。知っていたけど悲しいなぁ……泣いちゃうよ?」
涙を拭う仕草と共にカードを掲げるメロゥ。召喚されたエネルギー体がいななきを上げて疾駆し、態勢を崩した『門』の甲冑を氷結の刺突で凍結させた。
「今日のショーは、まだこれから。楽しんでいってね?」
『ウ……オオ……』
「余所見は禁物だぞ。喰らえ!」
泰地がバトルガントレットを構え、跳躍。
空の霊力を宿した拳が、氷った甲冑の亀裂をこじ開けた。ピシッ、と響く鋭い音。返す刀で飛んでくる斬撃を回避しながら、泰地の攻めはますます激しさを増していく。
「俺達は絶対に勝つ。覚悟して貰うぞ」
泰地も、そして仲間達も。
ケルベロスの振るう刃に一切の迷いはない。
●三
漆黒に沈んだ大剣を振るい、『門』は更に暴れ狂う。
端から保身を排した捨て身の攻撃だ。防御も回避も回復も、そこには一切ない。
劫滅のルーンを宿す一撃がヴィルフレッドに迫る。それを庇った広喜の巨体が、鉄の翼と共に派手な軋みをあげる。
「へへ。こいつ凄えパワーだぜ、眸!」
「ああ、さすがの火力ダ。故に防がせてもらウ」
空中から戦況を俯瞰していた眸が、『機械駆動式白金剛糸』を展開した。
駆動するワイヤーがエメラルドグリーンの魔法陣を描き、守護の力で前衛を包む。いまだ敵の攻撃は苛烈なれど、レスキュードローンとて伊達ではない。『門』の火力と真っ向から張り合うように、仲間の傷を癒していく。
同時、息を合わせて回復をフォローするのはことほとヴィルフレッドだ。
「夢つぼみ、ひかり望みてまだ咲かぬ。夢ふくれ、のぞみ開いて咲きほこれ。里に花舞い、野に風巡れ」
握りしめた拳を、ことほが大きく開く。
そこに現れたのは『小さなつぼみ』。オウガの怪力で圧縮された蕾状のエクトプラズムが花開き、癒しの風で広喜を癒す。一方のヴィルフレッドは、『門』に関して把握した弱点や死角を後衛に伝え、その命中精度を飛躍的に高めていった。
「特別サービス、この情報はタダで教えてあげるよ!」
「なるほど。……そんな弱点があったとは」
陣内の目つきが鋭さを帯びる。ローゼスとメロゥ、泰地も同様だ。
命中確保は万全。そう来れば次は攻撃を封じる番だ。陣内は全身から毒気を放つと、猫の毛並みを美しい紫色に変えていく。
「飼われてみるのも、悪くないと思わないか」
陣内がささやく誘惑と、猫の浮かべる妖艶な微笑。
『キルケーの家畜』が自我なき『門』に直撃し、その戦意を挫いた。そこに追撃をかけた広喜のフロストレーザーが、凍結した甲冑を捉える。命中と同時にバキバキと音を立てて、純白の霜が『門』を侵食していく。
「へへっ。まだまだブッ壊し合おうぜ」
『オオ……オオ……』
「よし、いい子だ。もう少し大人しくして貰おうか」
氷、捕縛、足止めに武器封じ。状態異常を積み重ね、なおも攻勢を緩めぬ『門』。一方、それを番犬鎖で縛る陣内もいっそう鎖に力を込めた。ならばと力任せに暴れようとすれば、すぐさまローゼスが神速の刺突を放つ。
「反撃の猶予など与えはせん、覚悟!」
高速移動と共に繰り出す雷刃突は、決して狙いを過たない。雷の霊力が、『門』の甲冑を破片に変えて吹き飛ばす。そこへ泰地が叩き込むのは、強烈な高速回し蹴りだ。
「旋風斬鉄脚!」
泰地の蹴りが『門』の肉体を砕く。金属とは異なる手応え。甲冑の隙間から重苦しい響きが漏れ、大剣を振るう動きが精彩を欠き始めた。
そして――その瞬間を、メロゥは見逃さない。
「さあ箱から飛び出たのは……小型チェーンソーだ!」
箱から飛び出したチェーンソー剣を構え、『門』に肉薄。傷に根元まで突き刺した刃を、メロゥは高速で回転させた。
刃がこぼれ、鎧が剥がれ、衝撃で飛び散る黒い飛沫が空間を汚す。並の敵なら悶絶必至の攻撃にも、しかし『門』は淡々と攻撃を返すのみ。
『ウ、オオオ……』
黒剣の波動が前衛へ放射される。広喜は魔法陣の守護が失われるのも構わず、傷だらけの顔で『門』に問いかけた。
「わかるか? なんで俺が壊せねえか」
満面の笑顔を、起動したピースの青い光が照らす。
無言を貫く門。広喜はパズル型ホログラム『腕部換装パーツ拾参式』で雷の竜を組み上げながら、「それはな」と胸を張って告げた。
「俺が一人じゃねえからだ。背を任せられる相棒がいるからだぜ」
「――うむ、そういウ事だ」
眸の描きだす魔法陣は、まさに阿吽の呼吸。
全身を照射するエメラルドグリーンの光に、広喜はこれ以上ない頼もしさを覚えながら、いまドラゴンサンダーの一撃を解き放った。
「プログラム構築完了。行くぜっ!」
雷が、『門』を貫いた。
同時、暇を与えず陣内が放つのは稲妻突きの刺突である。
「逃げられると思うなよ?」
稲妻と稲妻、二人のはなつ連撃に『門』がぐらりとよろめいた、その瞬間。
残る5名のケルベロス達は、ほとんど同時に『門』めがけ駆け出していた。言葉も合図も必要ない。あとはただ攻めて攻めて攻め落とす、それのみだ。
『オオオオオ……』
「長い間、門番ご苦労様。そろそろ終わりにしようか」
ぎこちない動作で剣を構える『門』。だがヴィルフレッドの攻撃はそれより早い。
銃型ガジェット『farfalla nero』の弾丸を、死角から連射。視認の困難な射撃に穿たれた装甲が音を立ててはじけ飛んだ。続く泰地が、固めた拳を叩き込む。
「捉えたぜ。食らえ!」
速さ、重さ、そして筋肉。渾身の絶空斬が『門』の体を抉り、傷口の氷を押し広げた。
猛攻はなおも止まらない。ローゼスはメインブースターを再点火すると、巨大なランスを掲げて突撃。デバイスが導く高速移動によって、全速で、全力で、空の霊力を帯びた穂先を『門』めがけて刺し貫く。
「ぬんっ!」
『オオオオオオッ!!』
衝撃で折れ曲がった腕で、『門』が漆黒の剣を構える。
そこへことほは掌をかざし、黄金色に輝く鬼神角の先端を向けた。
「あなた、結構強かったから。……これはお返しっ!」
黒と金、ふたつの光が交叉した。
無言で角をしまうことほ。その背後、『門』が飛沫を散らして崩れ落ちる。
どうやら舞台も終幕らしい。メロゥは箱から飛び出たトランプの束を振りまいて、異空間をきらびやかに彩っていく。
「さぁさぁご注目あれ、今日も楽しい手品の時間だよ。お代は見てのお帰りだけれど……」
スナップが鳴り響き、カードが一枚忽然と消えた。
「――見たのなら、無事には帰れないかもね」
『ウ……オオ――』
何の前触れもなく、『門』の心臓を突き破って飛び出したのは、消えた筈の一枚だ。
倒れ伏す甲冑の上、ひらりと舞い落ちるカード。そこに描かれた道化の笑顔を見つめて、『門』は静かにこと切れた。
そうしてローゼスは槍を掲げ、新たに守人を失った転移門に向けて勝鬨をあげる。
――我らケルベロス。"騎士"を討ち取ったり!
●五
「敵の撃破を確認。無事終わって何よりダ」
眸が怪我人を治療し終えると、泰地とヴィルフレッドが合図を送ってきた。
「此方は準備OKだ。すぐ撤退するぞ」
「他の勢力に見られるとヤバいからね、パパッと帰っちゃおう」
戦いが終われば去るのみだ。『門』の復活回数は未だ尽きず、長居は望まれない。
「そろそろ感想のひとつでもくれていいのに、ね?」
メロゥは名残惜しそうに回廊を飛び回ると、小さな苦笑を漏らした。
戦闘用奇術を披露する敵として、『門』の強さは申し分ない。後は、せめてもう少し反応があれば張り合いも出るのだが――ないものねだりとは知りつつ、苦い笑みが漏れる。
「戦い、そして散った戦士に……敬意を」
一方ローゼスは、消滅した『門』の痕跡を振り返り、勝利の誉を胸へと刻んだ。
たとえ何もかもを無くそうとも、彼の者は確かにこの一戦に在ったのだ。散華した強者への敬意と共に、赤き棋士は勲を高く掲げる。
そうしてケルベロス達が離脱を開始するなか、広喜は回廊を振り返り、呟いた。
「あと少しだ」
転移門を開き、決戦に勝ち、焦土地帯を復興する。
今日の勝利は、その未来へつながる一歩。
刻々と迫る戦いへの決意を胸に、広喜は仲間と共に帰還していった。
作者:坂本ピエロギ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
|
種類:
公開:2020年10月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|