●都内某所
廃墟と化したファミリーレストランに、ドリンクバーがあった。
そこに行けば、何でもかんでも、飲み放題。
しかも、座席にはコンセントが設置されているため、電気も使い放題であった。
だが、その事が災いして、ドリンクだけで、時間を潰す客が増え、閉店に追い込まれてしまったようである。
その場所に小型の蜘蛛型ダモクレスが現れた。
小型の蜘蛛型ダモクレスは、ドリンクバーにヒールを掛けた。
「ドリンクバァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
次の瞬間、ダモクレスと化したドリンクバーが、耳障りな機械音を響かせ、ファミリーレストランの壁を突き破って、街に繰り出すのであった。
●セリカからの依頼
「四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)さんが危惧していた通り、都内某所にあるファミリーレストランで、ダモクレスの発生が確認されました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にあるファミリーレストラン。
この場所にあったドリンクバーが、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、ドリンクバーです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスはドリンクバーがロボットになったような姿をしており、ケルベロスを敵として認識しているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
エマ・ブラン(ガジェットで吹き飛ばせ・e40314) |
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764) |
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969) |
オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471) |
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488) |
●都内某所
「ファミリーレストランって、ドリンクバーが充実しててコンセントもあって空調も効いているから快適だよね。わたしも、ついつい長居しちゃうけど、もしかして開店から閉店まで居座るお客ばっかりだったのかな? ちょっと気の毒だけどダモクレスが出たなら倒さなきゃ」
エマ・ブラン(ガジェットで吹き飛ばせ・e40314)は自分自身に言い聞かせるようにしながら、仲間達と共にダモクレスの存在が確認されたファミリーレストランにやってきた。
ファミリーレストランは既に廃墟と化しており、高校の通学コースの傍にあった。
そのため、学生達が勉強をするため、頻繁に利用していたようだ。
その影響もあって、ドリンク一杯で何時間も粘る客が多く、売り上げには繋がらなかったようである。
「ファミレスでは便利なシステムだけど、それを悪用してドリンクバーだけで長く居座る客もいるのも問題だよね」
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、何やら察した様子で答えを返した。
実際に店側もドリンク一杯で長居をする客達を問題視しており、遠回しに注意をしていたようである。
しかし、その気持ちが客には全く伝わらず、状況が改善される事はなかったようだ。
その結果、ファミリーレストランは、廃業。
ドリンクバーは撤去される事なく、放置されたまま時が過ぎた。
「私もドリンクバーは良く利用するけど、ドリンクバーだけで長時間居座るマナーの悪い客も多いわよね」
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、何やら察した様子で答えを返した。
おそらく、学生達に悪意はない。
ただ、その場所で勉強した方が、効率的に良かったから。
それに加えて、沢山の学生が一緒に勉強する事で、一体感が生まれていたのかも知れない。
「えーっ、ファミレスって喋るとこじゃないのっ?! だってだってー、色んな種類のジュースを混ぜてオリジナルドリンク作ったりするの楽しいんだもん♪ 充電も使い放題かぁ……。だから絶対居座っちゃうわね。うぅー、なにかしら、この罪悪感……っ。あたしも、よく近場のお店でねばってたし……あのお店、閉店なんてしてないわよね? も――っ、こーゆーの苦手ぇ」
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)が、困った様子で頭を抱えた。
もちろん、レイも悪意はない。
だが、店側が迷惑している事を知った上で長居をするのは、非常に心が痛む事であった。
そう言った意味でも、次に行く時は、いつもより多めに頼もうという考えが芽生えた。
「ネットカフェだと時間当たりの単価で貰えるから、業態を工夫したほうが良かったかもね」
オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)が、廃墟と化したレストランに足を踏み入れた。
室内は異常なほど埃っぽく、ほんのりとカビのニオイが漂ってきた。
窓の傍には幾つも蜘蛛の巣が出来ており、そこに捕まった蛾がジタバタと暴れていた。
「ドリンクバァァァァァァァァ!」
次の瞬間、ダモクレスと化したドリンクバーが、耳障りな機械音を響かせながら、ケルベロスの前に陣取った。
その姿はドリンクバーで出来た、巨大なロボット。
それが、まるで砦の如くケルベロス達の行く手を阻んでいた。
●ダモクレス
「……ちょ! ちょっとドリングバー型って、そういう意味!? ベンダーマシンだけじゃなくてドリンクバーコーナー全体って聞いてないよ!」
その姿を目の当たりにしたエマが、信じられない様子で大声を上げた。
どうやら、単体ではなく、ワンセット!
そのため、予想を上回るほど、巨大であった。
「ドリンクバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、様々なドリンクをビーム状にして放ってきた。
そのビームはコーラであり、サイダーであり、スポーツ飲料であった。
「こ、これは、さすがに防ぐ事が……」
すぐさま、リサがエナジープロテクションを発動させ、自然エネルギーの盾を形成した。
しかし、ビームを完全には防げない。
まるで花火の如く飛び散り、大量のドリンクが雨の如く、ケルベロス達に降り注いだ。
「でも、このビームって、全部ドリンクのようだね? 手についたのは、ジュースで、こっちはホットドリンクか。もしかして、リクエストOKって事かな?」
一方、オズは身体に掛かったドリングの味を確認し、不思議そうに首を傾げた。
ウイングキャットのトトも、同じようにドリンクを浴びたものの、それがオニオンコンソメであったため、全身に鳥肌を立たせて、反射的に飛び上がった。
「それじゃ、私は順番に頂戴! 全部飲み干してあげるから、ばっちこーいよ!」
レイが飲む気満々な様子で、ダモクレスを挑発した。
「ドリンクバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
その挑発に乗ったダモクレスが、再びビーム状のジュースを放ってきた。
だが、レイはまったく気にしていない。
むしろドンと来い状態!
その気持ちをあらわすようにして、真正面からビームを撃ち止め、ガブガブと一気に飲み干した。
「ド、ドリングバ……」
それはダモクレスにとって、衝撃的な光景。
そのため、ドン引き、後ずさり。
「……と言うか、あんなものを飲んで大丈夫なの? 絶対にお腹を壊すと思うけど……。そっちがドリンクなら、こっちはインクだよ!」
そんな中、エマが危機感を覚え、ペイントラッシュを仕掛け、激しく塗料を飛ばして、ダモクレスのボディを塗り潰した。
「確かに、そうだね。だったら、このまま凍らせてしまおうか」
司が納得した様子で、螺旋氷縛波を放ち、ビームの発射口を凍らせた。
「ドリンクバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
その途端、ダモクレスがパニックに陥り、ドリングバー型のアームを振り回した。
それは本体の半分以下のサイズであったが、それでも巨大で禍々しかった。
しかも、そのアームを力任せに振り回し、まわりにあったモノを壊していった。
「さすがに、この攻撃は当たったら、痛いだけじゃ済まないかな。それじゃ、トト援護よろしくね」
オズがトトに声を掛けながら、ダモクレスの注意を引いた。
それに合わせて、トトがキャットリングを使い、尻尾の輪を飛ばし、ダモクレスを牽制した。
「大丈夫よ。何かあっても、援護するから」
その間に、リサが鎮めの風を発動させ、竜の翼から仲間の心の乱れを鎮める風を放った。
「……って、さすがに、これは遠慮するわ。ドリンクだったら、いくらでも貰うけど……」
そんな中、レイが涙目になりつつ、ダモクレスの攻撃を避けていった。
いまのところ、腹も痛くなっていないため、ドリンクが悪くなっていた可能性も低いため、もっと飲みたいという気持ちが勝っていた。
「だったら、壊してしまおうか。関節部分は脆そうだし……」
すぐさま、司が薔薇の剣戟を繰り出し、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟で、ダモクレスを幻惑した。
「ドリンクバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
その影響でダモクレスが見当違いの方向に突っ込み、そこにあったモノを壊しながら、ドリンクバー型のミサイルを放ってきた。
それはケタ外れに、巨大ッ!
シャレにならないほど大きなミサイルが、雨の如く降り注いだ。
「けほっけほっ……見た目がアレなだけで一応ミサイルなんだね……。それなら、こっちも気合を入れておかないと……! ノズル出力最大、ドリンクバーをわたしのカラーに染め上げちゃえ!」
その間を擦り抜けるようにして距離を縮め、エマがバラマキスプラッシュを仕掛け、塗料を撒き散らして、ダモクレスの動きを鈍らせた。
「それなら動きを完全に封じ込めてしまおうか。これ以上、暴れられても困るしね」
その隙をつくようにして、司が紫蓮の呪縛(シレンノジュバク)を仕掛け、レイピアを華麗に振りかざし、衝撃波を飛ばして、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「ド、ド、ド、ドリングバ、バ、バ……」
それでも、ダモクレスは必死に身体を動かそうとしていたが、完全に動きが封じられているため、まったく動く事が出来なかった。
「あともう一息だね。ガジェット・フュージョン! この必殺ビームをお見舞いしてやるんだよ! いっくよー! ファイナルエクスプロード!」
次の瞬間、エマがファイナルエクスプロードを仕掛け、ふたつのガジェットを最終砲撃形態に変形合体させ、極大の必殺ビームを発射した。
「ドリンクバー300円で喋り倒した日々に謝罪と感謝を込めてぇ、デリンジャーアタ――ック!」
続いて、レイがスーパー神風デリンジャーアタック!(イザノトキノゴシンジュツ)を仕掛け、空高く舞い上がって、懐から取り出したデリンジャーをぶん投げた。
それと同時にエマの放ったビームが、ダモクレスの装甲を剥ぎ取り、無防備なコア部分があらわになった。
その場所にレイがぶん投げたデリンジャーが落下し、コア部分を木っ端微塵に破壊した。
「ドリングバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
その一撃を喰らったダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、完全に機能を停止させて崩れ落ちた。
「みんな、無事? 怪我をしているようなら、治療するわよ?」
リサが仲間達に声を掛け、無事かどうか確認をした。
仲間達に怪我はなかったものの、ビーム状のドリンクを浴びたせいで、ビチョビチョになっていた。
エマも飛び散ったインクやドリンクで、ベトベト、ベチャベチャ。
すぐにでも帰って、シャワーを浴びたい感じであった。
「この場所を片付けたら、シャワーを浴びておかないとね。僕も自宅でシャワーを浴びたら、ちゃんと営業しているファミレスでゆっくりしていこうかな」
オズがホッとした様子で、近くのファミリーレストランを思い浮かべた。
その店は、オズ達がいるファミリーレストランとは、ライバル関係にあった。
だが、それは過去の話。
もしかすると、ここに居座っていた客達が、そちらに移動しているかも、と思いつつ、オズが何処か遠くを見つめるのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年9月28日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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