クゥ・ウルク=アン樹海決戦~伐

作者:天枷由良

 霊峰の裾野。大海の如く広大な森林を縫って進む、幾つかの影。
 槍を手にして翼翻す、その姿は勇士の目覚めを待望する戦乙女のようで。
 けれども、彼女らが崇め奉るのは神でなく――竜。
 生い茂る草木の合間に潜む夥しい数のそれは、まるで多肉植物の葉のような厚い鱗に覆われている。見るからに堅牢な角は毒々しい色に染まり、一瞥しただけで人々を震え上がらせる眼も花弁へと形を変えていた。
 もはや“擬き”の誹りは免れようもないだろう。
 然し、明日を得る為ならば、と。
 狂信の徒に見守られるドラゴンたちは、ただひたすらに開花の時を待つ――。

●ヘリポートにて
「富士の樹海周辺に、ドラゴン勢力の集結が確認されたわ」
 ミィル・ケントニス(採録羊のヘリオライダー・en0134)は語り、手帳の頁を捲る。
 其処にはまず、竜の動きを探っていた功労者達の名が記されていた。メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)、カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)、伏見・勇名(鯨鯢の滓・e00099)、伏見・万(万獣の檻・e02075)――樹母竜リンドヴルムの拠点を暴くべく探索を続けていた彼らの働きが、シル・ウィンディア(鳳翼の精霊姫・e00695)による植物化ドラゴンの群れの発見を経て、此度の予知に繋がったのだ。
 敵は大軍であり、ドラグナーの姿も確認されているが、群れの中心である“邪樹竜クゥ・ウルク=アン”を撃破できれば、樹母竜リンドヴルムの拠点にも手が届くだろう。

 勿論、それは容易い事ではない。邪樹竜クゥ・ウルク=アンが座す樹海の奥地。其処へと至る為に敵の目を欺くべく、ケルベロスは一度に多方面から侵攻する事となる。
「マリュウモドキの戦闘力はそれなりだけれど、戦意や知能は低く、真横で仲間が襲われていたとしても、自分が攻撃されなければ全く動かないようなの。この習性を利用すれば、一つの班で数多のマリュウモドキを屠る事が出来るはずだわ」
 けれども……と、ミィルは一拍置いてさらに語る。
「其処にドラグナーが加われば話は別よ。樹海のあちこちで警戒活動に当たっている彼らは数こそ少ないけれど、ケルベロスを発見すればマリュウモドキを集めて統率し、戦いを挑んでくるでしょう」
 なまじ思考力が有るせいか、陽動の可能性を考えてドラグナー同士での連携は行わないようだが、腐ってもドラゴンであるマリュウモドキが統制の取れた群れとなれば、途端に脅威度は増す。ドラグナーと出会した際には真っ先に討つなど、対応は考慮しておくだろう。

 クゥ・ウルク=アンは、かつて大阪城地下で邂逅したケルベロス一班を一蹴した強敵だ。
「確実に撃破する為にも、出来るだけ多くの班がマリュウモドキの群れを突破して辿り着けるよう、作戦を考えて挑みましょう」
 ミィルはそう締めくくり、手帳を閉じた。


参加者
霧島・絶奈(暗き獣・e04612)
ステイン・カツオ(砕拳・e04948)
レスター・ヴェルナッザ(凪ぐ銀濤・e11206)
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)
シャムロック・ラン(セントールのガジェッティア・e85456)
メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)

■リプレイ


 遥かな高みから眺めた時、靡く木々はうねる海原のように見えるという。
 ならば密やかに進む己等は、さながら潜航する艦か。或いは深き水底を這う魚か。
 霊峰富士の裾野。
 樹海を征くケルベロスたちを、まず最初に襲ったのは――驚愕。
「……尋常ではない数ですね」
「ええ」
 霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)と、霧島・絶奈(暗き獣・e04612)が囁き合う。
 二人の眼に映るのは膨大な量の敵を示す印。それら全てが何であるのかは聞き及んでいるが、耳にするのと目の当たりにするのでは大きな違いがある。
 土の上。幹の陰。洞の中――物言わぬ木々と同じように静寂を纏い、来たるべき時を待つ異形の竜。マリュウモドキ。
 それらは微動だにせず居るからこそ、却って不気味な雰囲気を醸し出している。
「一体、何を企んでいるんでしょうか……?」
「……さて、ね」
 訝しむ和希に、アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)は最小限の言葉で返した。
 この場で考えても答えの出ないそれは、どうせ碌でもない事に決まっているのだ――と。心中で疑問を突き放すように思い、ドラグナーを警戒する為と顔を上げても、個体最強と呼ばれたデウスエクスの成れの果てからは絶えず躙り寄ってくるものがある。
 嫌悪。若しくは、恐怖。
(「……そこまでして生きたいなんて、よく思えるな」)
 植物に侵されるという現実を客観視して味わう想いから、尚も逃れるように視線を動かせば、侵攻の痕跡を消すべく殿を務めているはずの朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)と目が合った。
「アンちゃん?」
「……大丈夫、何でもないよ」
 僅かに手を振りながら答えて、アンセルムは先を急ぐ。踏み出す脚より少女人形を抱える腕に力が籠もったのは、本人でさえ知る由もなく。
 その背を暫し眺めてから、環は振り返る。
 其処に在るのは自然が築いた小路。よくよく目を凝らしてみなければ分からない程度の、ごく僅かな木々の捻れで作られたそれは、役目を終えたと察したかのように元の姿へ戻りつつあった。
 一方、前を見やればまた新たな道が出来上がっている。
 環と同じ力を用いて、ステイン・カツオ(砕拳・e04948)が道を拓いているのだ。彼女は斥候としてさらに先行する和希やレスター・ヴェルナッザ(凪ぐ銀濤・e11206)からのハンドサインを受けると、迷彩服に押し込めたドワーフの頑強な短躯で、大胆かつ慎重に歩を進めていく。
 その最中、マリュウモドキの間近を通る事も少なからずあった。
 だが――沸々と湧く敵意を努めて抑え、刃も抜かず通り過ぎるケルベロスたちに、異形の竜たちは牙剥くどころか身動ぎ一つしない。
(「まるで家畜だな」)
 じっと佇む様は植物でも岩でもなく、より上位の者が何某かを起こす為だけの贄としか思えなかった。弱肉強食を是とするドラゴンの世界において、本来は生存し得ないのではないかとさえ感じる知能の低さと消極的な姿勢には、最早憎悪のみならず嘆かわしさすら覚える。
 そうして湧き出る感情のままに、剣を振り下ろす事など実に容易い事だろう。
 だが、其処にレスターたちの果たすべき使命はない。刃と滾る炎を叩きつけるべき相手は、此処より更に奥深くで待ち受けている。
(「クゥ・ウルク=アン。その首、必ず」)
 大阪の地下で己を射抜いた眼光。金兜から覗くその煌きを思い起こしながら、レスターは竜擬きから視線を外す。
 同じような景色ばかりが続いているが、見据える先、進むべき方向を見失うはずはなかった。気を引き締めているのは当然だが、今日の進撃には航空写真による地図とスーパーGPSも上手く機能している。
「……うん。他の皆も順調に来ているみたいだ」
 隊列の中団で頷いたメロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)が、地図に目を落としながら言った。
 マーカーが示す現在位置は“C2”。部隊毎のAからGに、深度を示す1から5までの数字を割り振ったそれを確かめつつ、メロゥは胸元のピンマイク型デバイスを用いて、彼方の仲間と思念を交わす。
 遮られず、妨げられず、声にする必要もなく、あらゆる情報の共有を可能とする――戦場での連携や意思疎通に苦心していたケルベロスたちにとって、マインドウィスパー・デバイスの能力は革新を齎したと言っても過言ではない。
 他のデバイスについても同様だ。適切に使いこなせたならば、その特殊な能力の数々はこれからの戦いに恩恵を齎すだろう。例えば――。
「万が一の時には、これでひとっ走りっす」
 シャムロック・ラン(セントールのガジェッティア・e85456)が、逃走と追跡を補助するチェイスアート・デバイスの具合を確かめる。
 無論、万が一など起こらずに済むのが最良ではあるのだが――しかし。


 行軍の最中、メロゥから飛ばされた報せに皆が息を呑む。
 他班がドラグナーと交戦に入ったのだ。それを伝え聞くのは、気づけば四度目であった。
(「急ぎましょう。彼らの戦いが意義あるものである内に」)
 絶奈が思念を返す。地図に表示された印は、後少しで“C5”に届くところ。
 此処まで来てドラグナー如きに足止めされる訳にはいかない。
 八人は逸る気持ちを制しながら、尚も無言の進撃を続けて――また、暫しの後。
 程なく見えたその姿に、レスターは拳を強く握り締めた。
 邪樹竜クゥ・ウルク=アン。大樹の如き体躯と目にも鮮やかな翼、金色の兜。大阪城地下で苦渋を嘗める要因となった忌々しき竜は、迫る番犬の牙に未だ気付いていないのか、直立不動のままで佇んでいた。
 その周りを取り囲むのは、これまでに見た以上のマリュウモドキたち。此処まで歩んできた世界が樹木の海だと言うのなら、其処に広がっているのは禍々しき竜の湖と呼べるだろうか。
(「踏みつけて駆け回るわけには……いかないっすよね」)
 此処ではセントールの健脚も真価を発揮し辛いように思えて、シャムロックは苦笑いを浮かべながら槍を構える。
 それに続いて各々が武器を手にする中、流れてきた思念にメロゥが応じた。
(「……ああ、此方からも見えているよ」)
 そのまま片手を上げ、仲間たちの視線を集める。奇襲の好機は一度きり。それを最大限に活かすなら、無事に辿り着いた他班と息を合わせなければならない。
 ケルベロスたちは呼吸を整え、連絡役である奇術師の少女に集中する。
 3、2、1――。
(「さあ、舞台の幕を開けようじゃないか」)
 悠然と微笑んだまま、メロゥが何処からともなく滑らせたステッキを掴んだ。
 刹那、ケルベロスたちは一斉に動く。
 絶奈が構えた巨鎚から竜砲弾を撃ち出せば、着弾を待つまでもなくメロゥが杖を振り、重ねて撃ち出された砲弾を追うようにステインが凝縮した悪意の弾丸を放つ。
 それらと同じように飛び出した和希は大地を蹴って高々と跳び上がり、猛禽の如く急降下して蹴りを打った。邪樹竜の巨躯が揺れ、葉擦れと似た音が届く。
 その僅かな響きを掻き消したのは、環が掲げた駆動剣の唸り。
「環!」
「ぶちかましてやるっすよ!」
「任せてくださいー! ざくざくばっさり斬り倒してやりますよー!」
 銀の煌きと共に送られるアンセルムとシャムロックの声に押されて、息巻く環が振るった刃は牙のように喰らいつく。
 伐採にこれ以上相応しい武器もあるまい。駆動剣は存分に唸り、抉り、緑色の肉を噛み千切って大きな裂け目を作り上げた。
 その最中、絶奈のテレビウムまでもが果敢に殴りかかり、同時に仕掛けた他班の攻撃も次々と炸裂していく――が。
「矮小なる野鼠どもが、こそこそと――」
 強襲にたじろぎもせず、邪樹竜はケルベロスたちを睨みつけた。
「よくぞ潜り抜けやってきたものだ。ここぞ我らが本願の聖地なれば、貴様らも儀式の贄としてくれよう」
「っ、下がれ!」
 黒鎖の防護陣を敷いていたレスターが叫ぶ。環が弾かれたようにして駆動剣を引き抜き、マリュウモドキを飛び越え戻ってくる。
 直後。金兜の合間から覗く第三の眼より光が迸った。
 視界が白く染まり、大地が揺れる。戦場には草木や肉の焦げた臭いが漂い始め、全方位を焼き払う圧倒的な力を振るった邪樹竜の咆哮が轟く。
 その耳障りな音が――銀の炎を一層苛烈に燃え上がらせる。
「……萎びているのかとも思ったが。壮健で何よりだ、竜よ」
 最前で盾となったレスターの瞳が邪樹竜を射抜いた。
「なればこそ、あの時の礼を返す甲斐があると言うもの。……今度は一つとして残さんぞ。お前も、お前の仔らも、お前の望みも。何もかも皆焼き払い、砕き潰してやる――!」
「笑止! 野鼠が些か増えて来た所で!」
 突き付けられた殺意を一蹴して、クゥ・ウルク=アンが再び吼える。
 その瞬間、我関せずとばかりに固まっていたマリュウモドキの幾つかが動き出した。
「群れには群れで、という訳ですか」
「そっちがそのつもりなら、こっちも全力でぶつかるだけっすよ!」
 絶奈は淡々と、シャムロックは威勢よく言い捨てれば、道中では一度たりとも聞く機会の無かった鳴き声と共に、一匹のマリュウモドキが牙を剥き出して跳ねる。
 植物の葉にも似た、厚く奇妙な色の鱗に覆われた身体は瞬く間に迫り――然し獲物に喰らいつく間際、割り込んだ小柄な影に阻まれるばかりか、ぐっと掴まれたままでハンマー投げのように勢いよく放り捨てられた。
「魔竜でもモドキでも、災いとなるなら狩り尽くすまででございますが」
 まず叩くべきは、大元の邪樹竜。
 事前に取り決めた優先度に照らし合わせてもそうだろうと、ステインは言外に示すように再び飛びかかってきたマリュウモドキを殴り飛ばして哮る。
「……てめぇらの相手なんざ腕一本ありゃあ十分なんだよ。かかってきやがれ!」
 怒号は邪樹竜にまで突き刺さる程の勢いで響く。
 だが、マリュウモドキが大挙して押し寄せるような事はない。一匹、二匹……追い払われた数と同じだけが、這いずるように近づいてくるだけだ。
(「あれを“減らしたくない理由”があるって事かな」)
 訝しみながらも、メロゥは弄んでいたトランプから一枚を抜き取って放る。
 それは忽ち氷の騎士となり、マリュウモドキの合間を抜けて邪樹竜に槍を突き立てた。
 どうやら擬きには盾の役割もないらしい。ならば尚更、相手にする理由はない。
 剣先、銃口。ケルベロスたちは持てる力の全てを邪樹竜討伐へと注ぎ込む。
 その猛攻に対するは、再び眼より放たれる――閃光。


 しかし、其処にかつてのレスターが感じた程の驚異は無い。
 より多くの勇士。新たに得た力。それらを前にして戦いを成り立たせるのは、さすがドラゴンと言うべきかもしれないが。
(「……命運尽きたな、クゥ・ウルク=アン」)
 マリュウモドキの突進を払い除けて、レスターは無骨な剣を構え直す。
 今や邪樹竜の翼はくすみ、尊大な台詞に代わって零れ落ちるのは苦悶の声。矮小と罵る瞳には、迫る敗北を悟ったが故の憎悪ばかりが強く滲んでいる。
「あと一息っす!」
 仲間を鼓舞するように声を張り上げたシャムロックが、環と共に氷結輪を射った。
 二つの戦輪は螺旋を描くように飛びながら邪樹竜を裂き、凍てつかせる。更に続けざま、テレビウムと共に絶奈が殴りかかって巨鎚を振るえば、一瞬ばかり氷柱と見紛う姿に変貌した邪樹竜に狙い定めて、和希が引き金を引く。
 撃ち出されたエネルギー光弾は正確無比。幾度の攻撃で脆弱化していたクゥ・ウルク=アンに為す術などなく、風穴を開けられた身体を辛うじて折れる間際で留めたそれは、じろりとケルベロスたちを睨めつけた。
 其処にアンセルムが何某かの覚悟を感じ取ったのは、優位に進む戦いを最後衛から支えていたが為だろうか。
 或いは、勝利が見えたと口にして良い程の状況にあって尚、拭いきれぬ嫌悪と恐怖を感じていたままだったからか。

「今こそ、マリュウモドキを捧げて魔竜軍団を作り出す――完全な復活はできなかったが、魔竜達の贄は集まっている……魔竜達よ、今こそ孵るのだ」

 邪樹竜が宣った瞬間、ケルベロスたちの眼前に溢れていたマリュウモドキが次々と溶け始めた。
 形を失くしたそれらは、コギトエルゴスムだけを残して塵となっていく。
 理解し難い現象。ただ一つ明らかなのは、漠然と見過ごしてはならないという事だけ。
「言ったはずだ。お前の望みは、此処で砕く!」
 猛るレスターが銀炎滾る剣を手に駆け出す。
 竜擬きの湖は干上がり、遮るものは何もない。渾身の力で叩きつけた刃は深く深く突き刺さり、獄炎は邪樹竜の身体を飲み干さんと熾る。
 それに続くは、満を持して嵐のように疾駆するシャムロックの槍。
 そして、全身全霊を込めて振るう環の駆動剣。
 貫き、呪い、刻み、千切り、断ち切らんとする猛撃に、ステインが弾丸の形をした悪意を重ねれば、忽然と喚び出された巨大な輝きが竜を穿つ。
 曰く、生命の根源にして原点の至宝。絶奈が狂気の笑みと共に幾度も振るってきた、定命ならざる者にのみ牙を剥くその輝きが次第に失せた後、邪樹竜が目にするのは紙に描かれた道化師の姿。
「冥土の土産に、とくとご覧あれ」
 ぱちん、とメロゥが指を鳴らせば、53枚目のトランプはクゥ・ウルク=アンの身体の奥深くから、肉を切り裂き、抉り取り、突き破って再び現れる。
 如何に竜とて、その苦痛は想像に難くない。悶え、唸り、それでも為すべきを為すまではと堪える巨躯。
 此処に至っては治癒は不要と、アンセルムも攻勢に転じた。不可視の檻にて竜を囲い、力を籠める。
 その傍ら、和希が白いライフルの引き金を引く。放たれた魔法光波は数多の異形の魔法陣を通り抜け、その度に拡散と圧縮を繰り返しては速度と威力を高めていく。
 双方を炸裂させるべき瞬間は――計るまでもない。
「爆ぜろ――」「墜ちろ……ッ!」
 囁くように、絞り出すように紡がれた言葉を、爆音が掻き消す。

 そして程なく、共に戦う仲間の繰り出した斬撃が邪樹竜の首を撥ねた。
 金兜の合間に覗く眼が濁り、死を示す。

 しかし、ケルベロスたちに余韻を味わう暇はない。
「な、なんすか、これ……!」
 シャムロックが忙しなく周囲を見回す。其処に明確な何かを見て取る事は出来ないが――それでも、ケルベロスたちは明らかな異変、尋常ならざる力の集束を感じ取っていた。
「死力を尽くし、此処で雌雄を決すると……そう考えていたのは、どうやら私達の側だけだったようですね」
「完全な復活はできなかったが――なんて言っていたけれど。参ったね、これは」
 泰然と状況把握に務める絶奈の傍ら、メロゥは努めて平静を保ちながら思念を飛ばす。
 ドラグナーとの戦いを制し、此方へ向かっているであろう者たちに向けて、ただ一言。
 逃げろ、と。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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