強襲屍隷兵製造拠点~八景島調査

作者:ハル


 宮城県八景島。
 そこは無人島であり、原生林で覆われた自然豊かな美しい景観を有するはずの島――のはずであった。

 ジュゴジュゴジュゴジュゴ、ゴゴゴゴゴーー!!

 しかし今や、八景島地下には屍隷兵製造拠点が設置されており、昼夜を問わず駆動音が鳴り響いている。
 怪しげな機械や謎のチューブが施設のそこかしこを占有しているのは序の口。
 水槽には人間の死体が当たり前のように浮かび、バラバラに分解された上で冷凍された人体の部品がそこかしこに。極めつけは居並ぶ薄緑の溶液に満たされた円筒状のカプセルであり、その中には繋ぎ合わされた死体が浮かび、存在感をこれでもかと発揮していた。
 例のカプセルを覗き込めば、さらなる奇怪が視界を襲う。

 ――肉体に様々な武器類を継ぎ接ぎのように取り付けられた死体。
 ――人と異種族のキメラのような死体。

 ふいに、ガシャンと甲高い音が鳴る。見れば、ピクリとも動かなかった死体が産声を上げるようにカプセルを内部から破壊して、死体――屍隷兵が外に飛び出していた。
 陸に打ち上げられた魚の様に痙攣する屍隷兵を、搬送ロボがどこかへと運んでいく。壊れたカプセルや破片なども同様に清掃、回収されると、即座に次のカプセルが運ばれて来て設置される。
 カプセルの中に浮かぶのは、真新しい死体。新たな屍隷兵に他ならなかった……。


「集まって頂き、ありがとうございます! 実は暴食機構グラトニウムの行動範囲などから、新たな情報を得ることができまして――」
 挨拶もそこそこに、山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)は本題に入った。彼女の口から出る名は、情報収集に大きく貢献してくれた者達だ。
「まずは、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)さん、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)さん、ナターシャ・ツェデルバウム(自称地底皇国軍人・e65923)さん達に感謝を。彼らが集めてくれていた情報ですが、ジュモー・エレクトリシアンの居場所について、になります」
 ジュモー・エレクトリシアン。それはケルベロスにとって、最早聞きなれた名だ。その居場所について進展があったとなれば、意気は自然と上がるだろう。それは桔梗も同様のようで、彼女はケルベロス達にコクリと深く頷いてみせる。
「割り出された幾つかの予測ポイントについて、有志のケルベロスさん達が現地調査を行ってくれました。その最中、宮城県八景島を調査していた、マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)さんが、八景島にダモクレスの屍隷兵製造拠点がある事を突き止めてくれました」
 現状、ジュモー及びユグドラシルの根は確認されていない。
 しかし――。
「八景島で生産されている屍隷兵が、ユグドラシル・ウォーで見かけた個体である事は確認済みです。屍隷兵製造拠点の地下などに、ジュモーの本拠地がある可能性は高いと踏んでいます」


「先に、八景島の説明からさせて頂きますね? 八景島は本土から2km程離れた地点にある、周囲3kmの瓢箪型の無人島です」
 ヘリオンで島の上空へと直接移動する事は可能だ。だが今回は奇襲作戦となるため、宮城県の本土側から八景島へ、出来る限り目立たないように上陸してもらいたい。
「製造工場は地下にあり、八景島の中央部――瓢箪型の島のくびれの部分に地下への突入口が既に確認されていますが、恐らく他にも未確認の入口があると想定されています」
 工場内には、生産された屍隷兵が多数存在しているだろう。
「ですが、生産された多数の屍隷兵は、作戦のために休眠状態で保存されているはずです。動き出す前に一掃できれば、無駄な手間も省けると思われます」

 既に稼働している屍隷兵の撃破。
 未稼働で休眠状態の屍隷兵の一掃。
 研究施設の破壊。
 ジュモーの拠点への手掛かりの探索。

「この辺りが、八景島への上陸後に皆さんへお願いしたい主な内容となります。出来うる限り効率よく、素早く行動するのが吉でしょう。任務の達成後は、速やかに島から脱出してくださいね!」
 桔梗が丁寧に頭を下げ、言い忘れていた事を補足する。
「幸い、八景島には屍隷兵以外の護衛戦力は見当たりません。ですが、時間が経てば増援が送り込まれる可能性は十分あるので、その点には気を付けてください」
 宮城県の本土が見えてきた頃、桔梗はヘリオンから出撃するケルベロス達の頼もしい背中を見つめ、告げる。
「――新たな力を手に、新たな領域へ! ヘリオンデバイス・機動です!」
 ヘリオンから、眩い光が放たれた。


参加者
シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する悩める人形娘・e00858)
イピナ・ウィンテール(剣と歌に希望を乗せて・e03513)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
レヴィン・ペイルライダー(己の炎を呼び起こせ・e25278)
植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)
ベルベット・フロー(紅蓮嬢・e29652)

■リプレイ


(「anxiete……ジュモーお母様の手掛かり、残っているかな……?」)
 シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する悩める人形娘・e00858)達ケルベロスは、海中ルートを用いて八景島への接近を試みていた。
(「fait……これまでもチャンスがありながら、まともに相対できたのはたった2度だけですの」)
 シエナの眉根は寄り、彼女の心情を言葉よりも雄弁に語っている。
 だが同時に、今度こそはという強い意気込みが彼女を――彼女達を突き動かしているのも事実。
『上陸組、海中組共に準備はいいか? 大丈夫、オレ達になら見つけられる。オレ達がダメでも、他の班が必ず見つけてくれるさ!』
 マインドウィスパー・デバイスを通し、若干戯けたようにレヴィン・ペイルライダー(己の炎を呼び起こせ・e25278)が仲間と意思疎通を図る。シエナが『Bien sûr』と思念を飛ばしてきたのを確認した彼は、次いでゴッドサイト・デバイスを装着するイピナ・ウィンテール(剣と歌に希望を乗せて・e03513)と円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)に状況を尋ねた。
『他の班の方々も含めて異常は感じられません』
『敵の反応もないわ。あなた達の位置情報もキッチリ把握しているわよ!』
 二人の返答は極めて明確。
(「アタシの分まで地上の探索は任せたよ、ビースト♪」)
 ベルベット・フロー(紅蓮嬢・e29652)がサーヴァントを一撫。
 それを合図に、ケルベロスは海中と地上の二手に分かれ、行動を開始する。
『奇襲が成功するよう、お互いに慎重にね!』
 ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)はジェットパック・デバイスの浮力を使い海中から上昇。つれて他の地上探索組も追随する。
『気を付けて! ……さて、私達も怪しげな場所を探しましょうか。岩場や海藻類に隠されていたりしないかしらね?』
 水中呼吸ができる植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)が軽やかに海中を泳ぎ、広範囲を探索する。
 ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)とベルベットはダイバースーツを装着しているため、レヴィン抜きでも簡単な意思疎通ならば支障はない。
(「不審な穴や洞窟があれば分かりやすいんだが……さすがにそう簡単には見つけさせてはくれないか」)
 スーパーGPSで仲間との距離感を確認しつつ、ヴォルフが辺りをライトで照らし、目にした景色を記憶する。事前に把握していた地理と齟齬はなし。
(「海中から施設に通じる入口があるとアタシは踏んでるんだけどね……。ケルベロスとして、そしてシエナちゃんのためにも見つけてあげたいし!」)
 目的や意味は違えど、ベルベットも『母』の面影を追い求める者。何より、八景島も屍隷兵のプラントである事に違いはない。
(「考えてみると、わたしも少しジュモーとは縁があるのよね……」)
 無貌の仮面の下から目を凝らし、キアリは暴食機構の痕跡を探す。
 だが、どれだけ探しても海底にそれらしい痕跡は見当たらない。
(「一度、地上のみんなとコンタクトを取りましょうか?」)
 機を見て視線で仲間に問いかけた碧は、レヴィンに思念を送った。

「海中に未発見の入口はなし、か。けっこう自信あったんだけど、残念ね。海中トンネルの存在なんかを想像していたんだけれど」
 八景島の最南端から上陸し、東側の海岸沿いに探索していたローレライ達に情報が寄せられた。
「Oui……だからこそ、わたし達の方で見つけられればいいのですですけれど……」
 薔薇の攻性植物――ヴィオロンテの力を借りたシエナが、茨状の蔦と真紅の花弁を自在に操って岸壁の隙間に滑り込ませている。
「……これまでの経緯から、やっぱり海中を利用しているのは間違いないと私は思うのです。もしかしたら、そうと悟られないよう、その都度証拠隠滅を図っているのかもしれませんね」
「オレもイピナに同意するぜ。海中に目をつけたのは悪くなかったってな。ただ、相手はあのジュモーだからなぁ。島も表面上は整備されている様子とかもないし」
 怪力で巨石を撤去しながらイピナが呟き、それに同意を示すレヴィンが青の頭髪を乱雑に掻く。
 暴食機構グラトニウムと相対した経験のあるケルベロスは、グラトニウムならば長距離かつ経路を埋め立てながらの移動も可能だと結論付けるに至った。


 ケルベロスは合流後、八景島の中央の括れた部分にある入口に到着する。
 他班の姿はまだなく、一番乗りのようだ。
「この辺りで間違いないな」
 ヴォルフが情報を追加で記載し、より詳細となった地図を一瞥。
「なるほどね。こりゃ簡単には見つからない訳だよ!」
「Oui……植物に加えて、高度な偽装が施されているようですの」
 ベルベットとシエナが顔を見合わせる。基地の入口は植物で覆われ、かつダモクレスがユグドラシルの力さえも利用し、各種迷彩、阻害が施されていた。隠された森の小路があってなお、目視でなければ発見は困難。
「連絡がないという事は、まだ他の班の人たちも入口を見つけていないって事よね?」
 ここの詳細を報せた方がいいと、碧が言及。
「うん、わたしも同感よ!」
「了解だ!」
 キアリが他班の動向を補足し、レヴィンが早急に伝達する。
「――ここは、監視施設かしら?」
 他班の到着を待つ間、ローレライは各種偽装が施されている地上部分――地下への第一層が、ある種の監視施設になっている事に気づく。屍隷兵が多数配置されており、地下へ進むためには避けては通れない状況だ。
「なら、後続が来るまでに一掃しておくのがいいだろう」
 ヴォルフの提案は最もだ。
 隠れてやり過ごせないのであれば、情報を地下へと送られないためにも必要だろう。
「今後のためにもこの製造施設は確実に潰しておきたいわね。もちろん、ジュモーの手掛かりも。スノーも、いつも通り頼むわね」
 碧がスノーに指示を出す。
 幸い、中の屍隷兵にケルベロス達の存在はまだ気取られてはいない。
「我が道を作る!」
「任せたよ♪ ――さあ、やってみなさい。あなたが高嶺まで至れるかどうか見ててあげるわ」
「こっちからも援護するわ!」
 和風トランスミュージックに合わせてステップを刻むベルベットが魔方陣を描き、碧がカラフルな爆風を発生させる中、先陣を切ったのは炎剣の騎士たるローレライ。影の如き視認困難な斬撃が、施設内を彷徨う屍隷兵を一刀の元に斬り捨てた。屍隷兵特有の嫌な感触がローレライを襲う。が、彼女はその感触を振り払う様にさらに前進。
「……ア、アァ……アアアアェァ!!」
「悪いな、これがオレにできるせめてもの事だ。こんな事件、さっさと終わらせてやる!」
 狙いは厄介なディフェンダー。浮かぶ苦々しさを右目の地獄の炎で覆い隠し、レヴィンが星形のオーラを蹴り込む。
「Brechen…」
 対照的に、ヴォルフの瞳には一切の容赦はない。敵と定めた屍隷兵に与えるのは興味と殺意のみ。術の行使と共に捧げた朽ち果てた祈りは絶望で辺りを侵食し、召喚された精霊は混乱を齎した。
 と、屍隷兵らもそこで反撃に出る。
 オーバースペックが継ぎ接ぎされた工具を振り回し、ハイエンドが竜の顎で喰らいつく。フラッグシップは、その剛腕を振り上げた。
「すぐに楽にしてあげるから、ちょいと待ってな!」
「シュテルネ!」
 身を挺して盾となるベルベット、そしてビーストとシュテルネもディフェンダーとして後に続く。
 奮闘する前衛に、スノーが白磁の翼を羽ばたかせた。
「わたし達は急ぎなのよ。三度目の正直はごめんだからね!」
 ディフェンダーの位置に陣取る屍隷兵が減少したのを見計らい、キアリは神器の剣を咥えたアロンと連携し、大量に分裂させた螺旋手裏剣を後衛の屍隷兵に向けて殺到させる。
「屍隷兵、悍ましい存在ですが……この作戦で、少しでも根絶を……!」
 地球に暮らす者として、許してはおけない存在だ。イピナはキアリの攻撃によって怯む屍隷兵を、目にも止まらぬ動作で背中から抜き放った妖精弓によるホーミングアローで、一体ずつ刈り取っていく。
「Pour planter……さぁ、あなたも攻性植物さんの宿主になるですの」
 ヴィオロンテの蔦とアイゼン型のチェイスアート・デバイスによって向上した機動力で、シエナは音もなく屍隷兵に忍び寄る。
「……グ、グギャ、ギャギャ……!!!!」
 屍隷兵が異変を察した時には既に手遅れ。シエナが愛する攻性植物の宿主とされている。
 碧が遠隔爆破で屍隷兵を仕留め、ヴォルフが最後と思われる一体をフォーチュンスターで粉砕した。
「このエリアの戦況、状況は把握しているつもりだが、その上で確認したい。先ほどの屍隷兵が最後で間違いないか?」
 屍隷兵に興味を失ったヴォルフが、念のために仲間に尋ねる。
「はい、間違いありません……!」
 不慣れながらも、デバイスの表示に素早く目を通したイピナが頷く。
「――後は、ここからが本番ね!」
 同じく無貌の仮面が伝える情報を探っていたキアリは言った。それは、他班到着の報せでもあった。


 地下に潜入したケルベロスの瞳に映る光景は、まさに地獄そのもの。
 水槽に浮かぶ死体、完成形である屍隷兵、無感情なロボ。
 吐き気を催すそれらは、製造プラントにおいての日常だ。
「bonne nuit……ヴィオロンテ、お願いしますの」
 蔦を伸ばしたシエナは、円筒状のカプセルに向かって伸びる謎のチューブを器用に喰い千切る。
 ヴォルフが魔力を籠めた咆哮で、休眠状態にある屍隷兵らを一掃していく。
「機械迷宮と植物迷宮が混ざりあったような場所ね。相当な広さがあるわ!」
 ローレライは地下迷宮とでも言うべき広大な敷地に面積に目を剝く。その広さゆえ、ケルロス各班で手分けをしながら探索し、基地の破壊及び情報収集に尽力している最中だ。
「中枢システムがあるなら、そこを破壊できれば一番だな。――っと、そこのロボ、こっちは行き止まりだぜ!」
「そこまでは無駄な戦闘は避けたいわね。……気づかれていないといいのだけれど」
 レヴィンが運搬ロボやカプセルの機能を停止させ、碧が運搬ルートの経路といったデータを収集する。
「監視カメラやセンサーも類もあるわ。用心して進むわよ」
「あとはアタシの隠密気流がちゃんと機能してくれてるのを祈るしかないね」
 キアリが仲間を死角へと誘導し、布陣の中心を歩くベルベットは全体の動きを考慮した立ち回りを見せる。
「地下施設――といえば、隠し扉や本棚なんかが王道よね?」
「さすがに本棚はないかもしれませんが……障害物の撤去は任せてください……!」
 一同は地下へ。
 その道中、ローレライが細かい場所を調査し、腕捲りをしたイピナが重量物を撤去して補佐を。
「あれ、ここは……何かありそうですよ、皆さん! ただし、デバイスにも敵の反応があります……!」
 やがてイピナは、重要そうな機械類が居並ぶ施設を探し当てた。
「あれも屍隷兵か? ともかく、調べる価値はありそうだ」
 だが同時に、ヴォルフの視線の先。ケルベロス達はそれまでの屍隷兵とは一味違う、両腕に鋭い剣と槍を継ぎ接ぎされた敵と会敵した。

「――――!!」
 屍隷兵――マスターピースが猛然と剣を振り下ろす。
「ここはアタシが! 今だよ!」
 ベルベットがその一撃を受け止めると、隙を突いてイピナがガトリングガンを連射する。
 アロンが地獄の瘴気を解き放った。
「important……ジュモーお母様に繋がる手掛かりがここにあるといいですの」
「彼が重要地点を警護するために配置された屍隷兵なら、その可能性は十分あるわ!」
 目当てのモノが目の前に迫っているかもしれない。しかしシエナと碧らに油断の色はない。「捕食形態」に変形したヴィオロンテが絡みつき、戦乙女の歌が戦場に響き渡る。
「上で相手にしたのと比べれば強敵だが、それでも屍隷兵だ! 一気に片をつけさせてもらうぜ!」
 レヴィンが化物と言うよりも、騎士然とした出で立ちのマスターピースを見据える。悲哀、悲劇を連想させないだけ戦いやすいが、それでも彼は慈悲を抱いて体内のグラビティ・チェインを銀の銃に乗せ、引き金を引く。
「アアアアアァァァァアアアア!!」
 マスターピースが今度は、エンチャント破壊の呪を乗せた槍を突き出した。
「――無駄だ。動きも鈍っているようだな」
 ヴォルフは靴型デバイスの機動力で敵を翻弄する。マスターピースの挙動を瞬時に把握した彼は、空間を掌握しているが如く流れるようにクイックドロウを放ち、撃ち抜いた。
「全力で行かせてもらうぞッ!」
 シュテルネの応援動画で支援を受けながら、ローレライが苛烈な攻撃を繰り出した。
「あなたの技を借りるわよ……朝顔。あの子の炎は、わたしと共にある!」
 手掛かりを持ち帰る、その決意を込め、キアリが金色の炎を発生させる。臀部から伸びるそれは、まるで狐の尾。伸縮自在の尾がマスターピースに絡みつき、燃焼させた。

「施設の構造、屍隷兵の使い道、ジュモーの行方について記されているのは――これ、かしら?」
 キアリが、居並ぶ機械類から目当ての情報を手早く抜き取っていく。しかし、ジュモーの残したものだけはあり、現場での解析は不可能に近いようだ。
「持ち出せるだけ持ち出すしかないみたいだね!」
 ベルベットが持ち出した資料を、レヴィンがアイテムポケットに収納する。
「データの収集を終えたら破壊しましょう!」
「なら、私の出番ね!」
 碧の合図を受け、ローレライが勢いよくトンカチを振り下ろした。
 キアリもハウリングで休眠中の屍隷兵諸共に破壊工作を。
「――なにぃ!?」
 だが、ふいにレヴィンが素っ頓狂な悲鳴を上げた。
「Faute……さすがはジュモーお母さまですの。予想はできたはずですの!」
 回収したデータの一部が、自壊を始めていたからだ。シエナ達は何かしらの対策が必要であったと悔やむ。
 だが同時に、ケルベロス達の元へ、他班からとある研究区画を見つけたという報告が舞い込む。そしてそこにいたダモクレスが、基地の自爆装置を稼働させたという情報も!
「撤退するぞ!」
 ヴォルフがシエナに視線をやると、彼女も即座に応じてチェイスアート・デバイスで仲間をビームで繋ぐ。
「私とキアリさんで皆さんを先導します! 急ぎましょう……!」
 ローレライのアリアドネの糸とゴッドサイト・デバイスをフル活用し、最もロスのない経路をイピナ達は疾走する。デバイスの表示、地形が目まぐるしく書き換わる中、イピナは頭痛を堪えながらも、「わたしもいるから!」キアリと協力して仲間を地上まで無事に送り届けた。
 やがて大爆発に巻き込まれる基地。
 粉塵の中からジュモーの拠点へのヒントを手に入れたらしい最後の班が脱出したのを確認して、ケルベロスは任務を終えた。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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