散りゆくのは赤き死人花

作者:芦原クロ

 秋祭りが開催中の公園では、燃えるような色の彼岸花が咲き誇り、秋を彩っていた。
 花の、あまりの多さに、まるで赤い絨毯が敷き詰められたようにも見える。
 彼岸花が咲いている場所から数メートル先には祭り会場が有り、屋台が並び、沢山の一般人が食を楽しんでいた。
 焼いたサンマや国内産の牛肉、豚肉、海鮮丼や豚カツなどが人気だ。
 食を楽しみ、彼岸花を眺め、人々は思い思いに祭りを楽しんでいる。
 漂って来た異物が、彼岸花にとりつくまでは。
 1本の彼岸花が巨大化し、動き出すと、一般人はパニックに陥る。
 異形は、逃げる一般人をツルで纏めて捕まえては絞め殺し、殺戮の限りを尽くした。

「六星・蛍火さんの推理のお陰で、攻性植物の発生が予知出来た。早速だが、討伐を頼みたい」
「眠たい……でもやらなきゃね。急いで現場に行かなきゃ」
 常に眠そうな六星・蛍火(武装研究者・e36015)を気遣いつつ、霧山・シロウ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0315)が説明を始めた。

 敵は1体だけで、配下は居ない。
 一般人の避難誘導に関しては、警察などが迅速に対処してくれる。
 ケルベロスたちが現場に到着する頃には、避難は完了し、現場は無人となっているだろう。
 現場に到着後、出現した攻性植物を迎撃する形となる。

「放っておけば、多くの命が失われるだろう。死者を出さない為に、確実に撃破してくれ。……討伐後は、秋祭りに参加したり、彼岸花を見てみたらどうだ? 約数百万本の彼岸花が咲いている光景は圧巻だ。祭りで売られている食べ物も美味いぞ」


参加者
六星・蛍火(武装研究者・e36015)
尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)
霧矢・朱音(医療機兵・e86105)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)
 

■リプレイ


「一般人の避難誘導は終わったみたいだから、私達は攻性植物の相手に集中するわね」
 無人の現場に到着し、周囲を素早く見回す、リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)。
 言い終えた直後、敵が出現し、ケルベロスたちに接近して来る。
(「まさか私の危惧していた攻性植物が本当に現れるとは驚いたわ」)
 六星・蛍火(武装研究者・e36015)は警戒しつつ、敵を観察する。
「此方のサーヴァントを含めた、人数の多さを活かして敵を囲む様に布陣しましょう」
 一般人が避難している方向へ行かないよう、敵の前に立ちはだかる、綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)。
「あと、敵を取り逃がしてしまわない様に気を付けておくわね」
 敵の動きに注意しつつ、霧矢・朱音(医療機兵・e86105)が重要な事を告げた。
「綺麗な花だなあ。なんで死人花って呼ばれてんだろ、こんなに生き生き咲いてんのに」
 彼岸花に視線を送ってから、敵を真っ直ぐ見据える、尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)。
「でもあの個体はちょいと活気が良すぎるか。逃がさねえようにするぜ」
 広喜は、敵があまり移動しないよう、被害を最小限に減らせるスペースまで、敵を誘き寄せた。
「周りの花も荒らさねえように気をつけて戦いてえな」
 花のことまで気遣う、広喜。
「さぁ、行くわよ月影。頼りにしているわ」
 蛍火もメンバーと共に敵を囲むようにして動き出し、月影に声を掛け、戦闘態勢に入った。


 彼岸花のことは、良く知らない。
 ただただ、その綺麗で美しい花に、素直に感動していた、広喜。
 だからこそ、攻性植物と化してしまった花を、止めてやりたいという気持ちが、強い。
「さあ、力比べしようぜ」
 笑顔で地面を蹴って跳躍し、敵の頭上から、肘の先をドリルのように回転させた、高威力の一撃を食らわせる。
「この飛び蹴りを、見切れますか?」
 広喜が跳躍したタイミングを合わせ、流星の如く煌めく軌跡を描いて、機動力を奪う飛び蹴りを叩き込む、玲奈。ネオンは、仲間の回復に専念している。
「敵にはBSを沢山付与していく戦法で、戦闘を有利に進められる様にするわね」
 連携した朱音が蹴撃を炸裂させ、足止めの状態異常を更に重ねた。
 敵は、連携が途切れた隙を狙って反撃に出る。
 光を集束し、灼熱の破壊光線がリサに向けて放たれるが、蛍火が素早く庇い、負傷する。
(「眠がっている場合ではないわね、さっさと攻性植物を倒しましょう」)
 痛みでやっと眠気が薄れて来たのか、蛍火は吹き飛んで一度は崩れたものの、素早く起き上がる。
「この一撃で、氷漬けにしてあげるわ」
 敵との距離を一気に詰め、渾身の一撃を浴びせる、蛍火。月影は、蛍火の傷を癒そうと一生懸命だ。
「自然を巡る属性の力よ、仲間の盾になりなさい!」
 蛍火の傷を完全に癒やすと共に、形成した盾で、蛍火の守りを強化する、リサ。
(「彼岸花か、秋らしい花だし、綺麗な形だから私は好きな花だわ。でも、それが攻性植物になったからには倒すしかないわね」)
 戦場を駆け回りながら、冷静に思案する、朱音。
「虚無に飲まれて、消滅してしまいなさい」
 敵の背後を取ると、朱音は、触れたものを消滅させる球体を放つ。
 体の一部を削り取られ、敵は怒りからか、それとも痛みからか、大きく咆哮した。
「弱点を見抜いたわ、これでも食らいなさい」
 見抜いた箇所へ、痛烈な一撃を与える、蛍火。
「こまめに癒やして、対処するわね」
 敵の高威力の攻撃を仲間が受ける度に、こまめに回復を行ない、状態異常も取り除く、リサ。
「さぁ、この爆発に耐えられるかしら?」
 朱音が拳撃を叩き込むと、追い打ちの爆発から、敵は吹っ飛びそうになる。
 他の彼岸花が巻き添えにならないようにと、逆側から攻撃するのは、玲奈だ。
「氷の属性の一撃を、受けてみなさい!」
 宙へと跳躍し、属性の爆発を斜め上空から浴びせる、玲奈。
「あの花が仲間の花を傷つけねえで済むように止めてやるぜ」
 笑みを浮かべたまま、腕部換装パーツ拾肆式で敵を突き刺す、広喜。
 直後、噴出したオーラで敵を爆破する。
 怒涛の勢いで連携した攻撃を、一気に受けた敵は、耐えられずに霧散して消滅した。


「戦闘の痕跡は片付けておかねえとな」
 一般の子供たちが怖がらないようにと、広喜はしっかり修復する。
「ヒールで修復したら、秋祭りに参加するわね」
「私は海鮮丼とかも食べてみたいです」
 修復作業をしている朱音と、仲の良い玲奈が、秋祭りを楽しみに会話を交わしている。
「海鮮丼も美味しそうね。私は牛肉を食べてみたいわ」
「聞いていたら、益々参加したくなったわ。私も、秋祭りに参加するわ」
 朱音の言葉を拾い、リサが優しく微笑む。
 そんなやり取りを交わしている間に、避難が解かれ、一般人が戻って来る。
「へへ、守れてよかった。俺は花見てからお祭りいくぜ」
 楽しむ子供たちが視界に入ると、上機嫌に笑う、広喜。
 祭り好きの広喜も、もちろん秋祭りに参加するつもりだ。
「花の説明書きとかどっかにあるかな。名前の由来とか、どんな花なのか調べてみるぜ」
 まずは彼岸花の景色を楽しもうと、広喜は咲き誇る彼岸花を眺めた後、説明が記載された掲示板を見つけた。
 じっと食い入るように説明を読み、再び彼岸花のほうへ視線を移す。
「この花、毒あるのか。そういう花もあるんだな。色んな呼び方もあるのか……でもやっぱ綺麗なんだぜー」
 広喜の笑顔が柔らかくなり、彼岸花を見つめる瞳も優しげだ。
(「彼岸花って、何だか不思議な形をしていますから綺麗ですよね。そんな花が沢山咲いているのを見られるのは楽しいですね」)
(「彼岸花か、別名曼殊沙華とも言われるわね。ちょっと妖しげな印象を与える花だけど、私はその幻想的な雰囲気が好きよ」)
 胸中で想いを並べる、玲奈とリサ。
「わぁ、沢山の彼岸花が広がっていて、まさに壮観ね」
 光景を見てから帰るつもりだった蛍火は、眠たげな瞳を僅かに見開き、感想を口にする。
 外側へ弧を描く形で、変わった咲き方をする、彼岸花。
 真っ赤な色の絨毯を広げたかのように、咲き誇る様は美しく、幻想的だ。
「そうですね。真っ赤な彼岸花が辺り一面に咲いていて、綺麗ですね」
「こんなに沢山の彼岸花が、とても華やかで綺麗に咲いているわね。秋祭りって楽しいわね」
 玲奈とリサが同意を示して頷き、鮮やかに咲く秋の花を暫し眺める。
「さぁ、牛肉を沢山食べるわよ!」
 彼岸花を見終えた朱音が、屋台が並ぶ場所へと足を進めた。
「食欲の秋、という言葉も有りますからね」
「美味しい物が食べられるなら、秋祭りを更に楽しめるわね」
 玲奈とリサはそう言葉を交わしてから、朱音の後を追う。

「さすがは国内産、肉質が柔らかくて脂身もとても甘くて美味しいわ!」
 人気の焼き肉や豚カツなどを購入し、満足そうに食べている朱音。
 玲奈が言った通り、食欲の秋という言葉が相応しい。
「これ美味えなあっ」
 広喜も、お土産に出来るものを探しながら、美味しい肉を味わっている。
 一緒に食べたい相手の分の、串焼き肉を持ち帰り用に包んで貰い、上機嫌の広喜。
「秋祭りかあ。そっか、夏、もう終わりなんだな」
 暑かった夏も、過ぎ去ると思えば名残惜しささえ感じる。
 そして、訪れる秋に心を弾ませ、わくわくして笑みを深める広喜だった。

作者:芦原クロ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月20日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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