強炭酸がガツンと来る!

作者:ゆうきつかさ

●栃木県某所
 強炭酸オンリーの炭酸水メーカーがあった。
 これさえあれば、どんな飲み物も、強炭酸。
 喉にガツンと来るのが癖になると話題になったが、『正直、毎日はキツイ』、『いつでも強炭酸が飲みたいと思うなよ!』、『そもそも、普通は炭酸の強さを調節できるモノだろ!』と言ったクレームが相次いだようである。
 それでも、メーカー側の社長が、『うるせぇ、俺は強炭酸が大好きなんだ!』と突っぱね、考えを改めなかったようだ。
 そのため、そう言ったクレームが来ても、『仕様です』、『いや、仕様だから!』『改善とか、そう言う予定もないから』と言った感じで返し、強炭酸を貫き、最後には半ばヤケになり、意地になりつつ、貫き通したらしい。
 だが、世間には受け入れられず、在庫の山を築き上げてしまったようである。
 その場所に、小型の蜘蛛型ダモクレスが現れた。
 小型の蜘蛛型ダモクレスは、炭酸水メーカーに機械的なヒールをかけた。
「タァァァァァァンサァァァァァァァァン!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した炭酸水メーカーが、耳障りな機械音を響かせ、倉庫の壁を突き破った。

●セリカからの依頼
「四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)さんが危惧していた通り、栃木県某所にある倉庫で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、栃木県某所にある倉庫。
 この場所に保管されていた炭酸水メーカーが、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、炭酸水メーカーです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは炭酸水メーカーが合体したロボットのような姿をしており、ケルベロスを敵として認識しているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)
 

■リプレイ

●栃木県某所
 炭酸水メーカーを販売していた会社の社長にとって、自分の言葉こそ正義であった。
 自分は正しい、何も間違っていない。
 その気持ちを支えにして、一代で会社を築き上げた。
 それが証拠、自分が正しかった証明であった。
 だから何も間違っていない、間違っている訳がない。
 自分が正しい、自分だけは正しい。
 そう自分に言い聞かせながら、会社の経営を続けてきたようである。
 だが、結果は散々。
 愛想を尽かして、社員達が次々と会社を辞め、酷い状況に陥ったようだ。
「まさか僕の危惧していたダモクレスが、本当に現れるとはね。少し驚いたけれど、人に危害が加わる前に対処出来て幸いかな」
 四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)は事前に配られた地図を頼りにしながら、仲間達と共にダモクレスの存在が確認された倉庫にやってきた。
 倉庫はワンマン社長の性格を表すようにして、強固で武骨!
 無駄なモノを一切省いた頑固一徹と言った感じに倉庫であった。
 そのためか、空気がピリピリとしており、何やら近寄り難い雰囲気だった。
 その影響もあってか、辺りに人影はなく、随分と寂しい印象を受けた。
 それは、まるで倉庫から放たれる威圧感で、誰も近づく事が出来ないような感じであった。
「へぇー、炭酸水メーカーなんてあるんだー! 知らなかったなー。ジュースも作れるんなら、アレンジ色々楽しそうじゃん。見た目もお洒落だしちょっと欲しくなっちゃったかも……」
 そんな中、山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が、炭酸水メーカーのカタログを見始めた。
 カタログには社長がデザインしたと思しき武骨なモノや、若手社員がデザインしたと思しきスタイリッシュなモノまで様々だった。
 しかし、どれも強炭酸オンリーなので、見た目に騙された客が、悶絶する事間違いなしと言った感じであった。
 そう言った意味で、社長のデザインが特化しているように思えたが、客の言葉を無視して経営が成り立つ訳がない。
 その代償は大きく、会社が大きく傾いた。
「……炭酸水ですか。私はあまり炭酸系を飲まないですね。炭酸は、ちょっと喉が痛くなりますので、苦手です」
 アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)が、ゲンナリとした表情を浮かべた。
 ただでさえ苦手な上に、強炭酸となれば、鳥肌モノ。
 本能的に全力で拒絶してしまうレベルなので、決して飲みたいとは思わないモノだった。
 それでも、一部のマニアの間では好評だったらしく、売り上げには貢献しなかったものの、その心意気には共感していたようである。
 それが売り上げに繋がっていれば、このような事態にはならなかったものの、それはそれ、これはこれと言った感じで、きちんと線引きがされていたようである。
「私も炭酸の強いものは苦手ですね。微炭酸なら飲みやすくて好きなのですが……」
 綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)が、少し残念そうにした。
 メーカー側の社長も、もう少し柔軟な考え方であれば、ここまで酷い事に気ならなかったかも知れない。
 しかし、ちっぽけなプライドが邪魔をしてしまい、社員の言葉に耳を傾ける事は無かったようだ。
 それでも、『自分は間違っていない! 間違っているのは、世間の方だ!』と言う考えを改めなかったため、売り上げが伸びる事はなかったようである。
「まぁ、偶には強い炭酸も刺激になって良いかも知れないけど、毎日は流石につらいわよね」
 リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が乾いた笑いを響かせながら、ダモクレスの存在が確認された倉庫に足を踏み入れた途端……。
「タンサァァァァァァァァァァァァァァァァァン!」
 ダモクレスと化した炭酸水メーカーが耳障りな機械音を響かせ、倉庫の壁を突き破った。
 それはまるで卵の殻を破って誕生したヒヨコのようでもあったが、愛らしさのカケラもないほど禍々しかった。
 その姿は、まるでロボット。
 昭和の特撮モノに出てきそうな武骨な感じのロボットだった。
 しかも、ダモクレスは完全にケルベロス達を敵視しており、鋭い殺気を刃物の如く勢いで向けてきた。

●ダモクレス
「さぁ、行きますよ、ネオン。サポートは任せますね!」
 すぐさま、玲奈がボクスドラゴンのネオンに声を掛け、ダモクレスを囲むようにして攻撃を仕掛けていった。
 このままダモクレスを逃がしてしまえば、一大事。
 最悪の場合は、何の罪もない人々が襲われ、グラビティ・チェインを奪われてしまうため、ここで倒しておく必要があった。
 その事をネオンも理解したのか、属性インストールで回復に専念した。
「タンサァァァァァァァァァァァァァァン!」
 次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ビーム状の強炭酸水を放ってきた。
 それはビームではなく、炭酸水!
 それがシュワシュワシュワッと音を立てながら、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
「こんなモノに当たったら、シャレにならないね」
 その事に危機感を覚えた司が、強炭酸水の射程から離れた。
 それでも、身の危険を感じてしまう程、炭酸水は強力ッ!
 一瞬、アスファルトの地面が溶けてしまうのではないか、と心配になってしまう程、危険なシロモノだった。
「……って、私はモロに掛かったんだけどー! まぁ、浴びていなかっただけマシだけど、肌がヒリヒリとするし……。ほら、藍ちゃんも怒っているよ!」
 一方、ことほは全身ビショビショになりながら、ぷんすかと怒った様子で、ダモクレスを叱りつけた。
 幸い直撃は免れぬものの、それでもドン引き、涙目である。
 ライドキャリバーの藍も、ことほ程ではなかったが、強炭酸水を浴びて、御立腹であった。
「大丈夫ですか、緊急手術を施術しますね」
 その事に気づいたアクアがウィッチオペレーションを発動させ、魔術切開とショック打撃を伴う強引な緊急手術で、ことほの治療をし始めた。
 そのおかげで大事には至らなかったものの、ダモクレスだけは違っていた。
「キョウタンサァァァァァァァァァァァァァァァン!」
 怒り狂った様子で耳障りな機械音を響かせ、先程よりも威力マシマシで、超強力な炭酸水をビームにして放ってきた。
 それは藍が全力でことほから離れるほどの強炭酸。
「……えっ?」
 ポツネンと一人にされたことほが、思わず二度見してしまう程のレベルであった。
 その視線に気づいた藍が『あ、ごめん』と言わんばかりに、ボディを震わせたものの、その気持ちはことほには伝わらなかった。
「今のうちに逃げなさい。ここは私が何とかするから……」
 それと同時に、リサがスターゲイザーを仕掛け、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りで、ダモクレスの機動力を奪った。
 その影響で、ダモクレスが放っていたビーム状の強炭酸水がズレ、民家の壁にポッカリと風穴を開けた。
「タンサンスイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!」
 次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、炭酸水メーカー型のアームを振り回した。
 その上、ビーム状の強炭酸水を狂ったように放ちながら……。
 だが、それはケルベロス達を狙っているのではなく、単なる威嚇。
 その分、先程と比べて威力は落ちているものの、危険な攻撃である事は間違いなかった。
「……水よ、光よ、煌く万華鏡の様に皆に届け」
 すぐさま、アクアがシャボン玉万華鏡(シャボンダママンゲキョウ)を発動させ、魔力を込めたシャボン玉を無数に創造し、光を乱反射させる事で仲間に癒しの輝きを与え、超感覚を覚醒させた。
「それじゃ行くよ、藍ちゃん! びしょびしょになったら一蓮托生だよっ! だから逃げない! ほら、覚悟を決めて!」
 その間に、ことほが藍に飛び乗り、ルーンディバイドを仕掛け、ルーンを発動させ、光り輝く呪力と共に斧を振り下ろした。
 それに合わせて、藍がデットヒートドライブを繰り出し、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
 続いて、玲奈がサイコフォースを発動させ、精神を極限まで集中させる事でダモクレスを爆破し、頑丈な装甲を吹っ飛ばした。
「キョウタンサァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!」
 その事が引き金になって、ダモクレスが全身すら炭酸水を噴き出し、耳障りな機械音を響かせながら、炭酸水メーカー型のミサイルを飛ばしてきた。
 炭酸水メーカー型のミサイルは、アスファルトの地面に落下すると、プシュッと激しい音を立て、大量の破片と炭酸水を飛ばして爆発した。
「そっちが、その気なら、こちらも容赦しません」
 その爆発の中を勢いよく駆け抜け、玲奈がボルトストライクを仕掛け、自らの拳を殴りつける事で、ダモクレスを爆発させた。
「キョウタンサァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!」
 だが、ダモクレスは怯まなかった。
 爆発の影響で装甲が損傷し、コア部分が剥き出しになっても、ダモクレスは戦う事を止めなかった。
 そのため、ネオンが警戒した様子で、ボクスブレスを仕掛け、ダモクレスを牽制した。
「……これで最後よ。虚無球体に飲まれて、消えてしまいなさい……!」
 次の瞬間、リサがディスインテグレートを仕掛け、触れたもの全てを消滅させる不可視の虚無球体を放った。
 それはダモクレスに飲み込む勢いで迫り、触れた部分を瞬時に消滅させていった。
「タ、タ、タンサンスイィィィィィィィィイイイィィィィィィィィィ!」
 その事に危機感を覚えたダモクレスが、近距離からビーム状の強炭酸水を放ったものの、虚無球体を消滅させる事は出来なかった。
 逆にダモクレスの肉体が呑み込まれ、消滅し、跡形も残さず消え去った。
「今日も無事に倒す事が出来たね。だいぶ倉庫が壊れてしまったけど……。これだったら、何とかなりそうかな」
 そう言って司がホッとした様子でヒールを使い、倉庫の破損した箇所を修復するのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月14日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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