ねころび日和~ルーチェの誕生日

作者:朱乃天

 にゃー♪
 にゃー♪
 にゃーにゃーにゃー♪

 甲高くて可愛らしい鳴き声が、室内中に木霊する。
 ここは猫カフェ――多くの猫を愛でながら、楽しむことができる癒しの空間。
 お店の中は広々として、ふかふかの絨毯やソファーの上に、たくさんの猫が気持ちよさそうに寝転がる。
 その中央にはソファーでぐるりと囲むようにして、大きな木の形をしたキャットタワーが聳え立つ。猫たちはそこへぴょんと身軽に飛び乗って、自在にタワーの台から台へと飛び移り、猫同士でじゃれあいながら戯れている。
 自由気ままな猫たちは、遊びたい時には大いに遊び、眠くなったら好きに寝て。
 お客さんが時々来たら、待ってましたと言わんばかりにふわもこな毛並みですりすりし、構ってほしそうに見つめながら、にゃん、とおねだりするかのような猫撫で声で、人の心を魅了する。
 猫と一緒にいるだけで、心が安らぐ素敵な世界。憩いと和みの猫カフェへ、貴方も寛ぎにいらっしゃいませんか――?

「そんな可愛いにゃんこたちと、一緒に過ごしてみたいって思わない?」
 猫宮・ルーチェ(にゃんこ魔拳士・en0012)が尻尾をふりふりさせながら、この日の太陽みたいな明るい笑顔を浮かべてケルベロスたちに呼び掛ける。
 そこは最近新しく出来た猫カフェで、現代風のモダンでオシャレな雰囲気らしい。
「猫カフェだけに、ひたすらにゃんこと過ごすことがメインになるね。撫でたりもふもふしたりとか、猫じゃらしやおもちゃを使って遊んだりしてもいいんだよっ♪」
 遊ぶ際にはサーヴァントと一緒の場合でも、お店や猫に迷惑がかからなければ問題ない。
「後は普通にカフェらしく、スイーツなんかも味わえるんだけど。メニューの全てが猫をモチーフにしているんだよっ」
 猫の顔の形をしたケーキやクッキー、肉球みたいなふわふわマカロン。
 コーヒーやカプチーノなどのラテアートには可愛らしい猫キャラを、もしも望めば3Dラテアートも作ってくれる。
 そして猫といっぱい遊んだ後は、お礼に猫用のおやつでご褒美を。
 普段の何気ない日常も、猫がそこにいるだけでそれは特別な時間に変化する。
 一人で猫を愛でるのも、友達や恋人同士で一緒に楽しむことも、過ごし方は人それぞれ。
 愛くるしい猫と触れ合う至福の時を、心行くまで満喫しよう――。


■リプレイ

●そこはもふもふパラダイス
「まずは、ルーチェ殿。誕生日おめでとうじゃな」
「ルーチェお姉さんお誕生日おめでとうです!」
 誕生日の祝福を告げる二人の声が響き渡る。
 紫揚羽師団の仲間でもある祇音と蓮が、ルーチェの誘いに応じて誕生日のお祝いに駆け付けてくれたのだ。
「えへへっ、二人ともありがとー。今日はいっぱい楽しんでいってね♪」
 そんな祇音と蓮に、ルーチェは嬉しそうに笑みを浮かべて二人をカフェの中へ誘う。
「蓮ちゃんと一緒に今日は楽しませてもらうのじゃよ」
 ルーチェの喜ぶ姿に、祇音も釣られるように微笑み返し、促されながら猫の園へと足を踏み込むと――。

 にゃー♪

 店内に一歩入ったその瞬間、二人を出迎えてくれたのは可愛らしい鳴き声だ。
「ここが! にゃふにゃふ天国!!」
 蓮は初体験となる猫カフェに、期待いっぱい夢いっぱい、想像を膨らませて楽しみにしていたのだが。いざ本番ともなると、ちょっぴり不安な気持ちも出てきたりして。
 事前に仕入れた情報によると、動物に好かれる人でも猫には嫌われる人がいるらしく。
 寄ってきてくれる子が果たしているか……どきどき胸を高鳴らせ、じっと眺めながら猫達が来てくれるのを待っていた。
 その一方、祇音は両手で猫じゃらしをシャキンと構え、二刀流猫じゃらしを振るって慣れた手つきで猫を誘う。
 ふりふりと、小気味よくリズミカルに揺れる猫じゃらしに、猫達が目を光らせて反応し、目の前のふわふわした物体に、シュッと手を伸ばして捕まえようとする。
 しかし祇音は猫じゃらしを素早く真上に上げて、猫の頭上でくるくる回し、それを追うかのように同じく顔をくるくる回す猫の仕草を楽しんだ。
「ん? それは猫じゃらしではないのじゃぞ?」
 猫じゃらしで遊んでいるかと思ったら、祇音のふわもこ尻尾にじゃれつく猫も現れて。
 それならそれで仕方がないと、軽く溜め息吐きながら、尻尾もふりふりさせて猫との戯れタイムを堪能していた。
「ほら、蓮ちゃん。ゆっくり傍においで?」
 初めての猫カフェに、緊張している様子の蓮に気付いた祇音が、声を掛ける。
 期待と不安が入り混じり、猫に近寄れないでいた蓮は、聞こえた声にはっとして、振り向く先で目にしたものは――たくさんの猫さん達に囲まれた、にゃんこパラダイスな天女様。
 笑顔で手招きする祇音に誘われ、一歩ずつ、ゆっくり彼女に近付く蓮。
 そうして祇音の隣に腰を下ろすと、天女様は彼の膝の上にちょこんと猫を乗せてみる。

 にゃー♪

 猫の喜ぶ鳴き声に、蓮は蕩けるように頬緩め。猫の頭をふわりと撫でれば、もふもふした柔らかい感触にすっかり夢中になって、この上ない幸福感に包まれる。
 それから二人は時間の許す限り猫と遊んで、全てが猫で満たされるのだった――。

●猫の気持ちと乙女心と
 こうしてどこかへ遊びに行くのは、半年ぶりくらいだろうか。
 久々のお出かけだから、お友達と一緒に会話を楽しみながら……なんて、小町は思っていたのだけれど。猫カフェに一歩入って、猫の姿を目にした瞬間!
「はぁぁ……にゃんこ尊い、尊死ぬ……」
 小町の理性はすぐに意識の彼方に飛んでしまい、瞳をキラキラ輝かせながら、ふらふらとまるで夢遊病者みたいに猫の方へと近寄っていく。
 そんな彼女に、クレスは苦笑しつつも微笑ましいと目を細め。共に猫との時間を過ごそうと、逸る気持ちを抑えるように小町の後を追っていく。

 にゃん♪

 と可愛い鳴き声がして、猫が二人をお出迎え。
 小町は本能の赴くがままに手を伸ばし、目の前の猫をすっと抱き上げながら、顔を見る。
「触っても抱っこしても逃げない懐っこい~!」
 猫の為にも大きな声を出さないようにと気を付けつつも、小町は既にテンションMAX。
 頬擦りすれば、そのもふもふした毛並みに身悶えし、溢れんばかりの笑顔ですっかり夢中になっていた。
 クレスはそうした小町の姿を眺めることが楽しくて。自由気ままな猫達と、戯れている彼女の方も猫のようだと……そう考えると納得し、癒される気分になるのであった。
 おやつを片手に、群がる猫と戯れながら。その一方で、クレスは緩む彼女の横顔を、暫く見つめていたのだが……。不意に猫じゃらしを取り出して、小町が頬擦りしているところへゆらゆら揺らして悪戯してみる。
 するとそれに気付いた小町は、抱えた猫の手を借りて。ちょいちょいと、猫じゃらしとじゃれ合う仕草で対抗する。
 嗚呼、やっぱり猫みたいだと。可愛らしい反応を見せる彼女に、クレスは軽く笑みを浮かべて、目を合わせ――。
「偶には俺にも構ってくれないか?」
 などと、おねだりするかのように意地悪っぽく言ってみる。
「構って……って……こ、こんな感じ?」
 突然の彼の申し出に、小町はどうしていいのか分からなくって、戸惑いながらクレスの方へと手を近付けて――ほっぺたを、ふにっと指で突いてみせる。
 はにかみながら、そっと触れてくる様子もまた愛おしく。クレスは彼女のその手を優しく掴み、連れて帰りたくなる可愛らしさだな、と紫紺の瞳を和ませながら、小町の顔を映し込む。
「え……ええ、と……」
 手を握られて、顔が仄かに火照って思わず焦る小町だが。どうにか心を落ち着かせ、気持ちを切り替えながら言葉を返す。
「拾ったコを連れ帰るなら、最後まで責任取らないと駄目なのよ?」
 彼女の意外な返答に、クレスは一瞬、言葉を失くして瞠目し……勿論心得てるよ、と少し考えながら伝えると、小町は白い歯を覗かせながら、彼の瞳と視線を交わす。
「本当に分かってるのかしらねー?」
 なんて、抱えた猫に語りかけ、したり顔で満足そうに微笑むと。
 にゃん? と猫は不思議そうに小首を傾げるのみだった――。

●ねこが隣にいるしあわせ
「うわぁ……猫さんがこんなにいっぱい……」
 可愛らしい猫の園へと入るなり、ロゼットは目の前にいる猫の数の多さに驚愕する。
 これだけたくさんの猫を間近で見られる場所は、おそらく猫カフェ以外にないだろう。
「俺は動物に好かれやすいとは思う。特に猫とは相性が良い」
 自身も猫のウェアライダーであるトーマは、自信ありげにそう言って、ソファーに腰を下ろすと舌を鳴らして手招きしながら猫を誘う。
 すると一匹の猫が早速トーマの側に寄ってきて、脛をすりすりしながら、にゃん♪ と猫撫で声で甘える仕草をしてみせる。
 きっとトーマを仲間と認識したのだろうか、周りの猫達も後から続いてトーマのところに集まり出した。
「確かに猫には好かれやすいけど……それにしたって人懐っこすぎない?」
 足元で構ってほしそうにコロコロ転がる猫もいれば、軽やかにピョンと膝の上まで飛び乗って、撫でてほしそうに身体を丸める猫もいる。
 それが一匹だけなら可愛いものだが、二匹、三匹と次第に数が増えてゆき、毛玉の塊みたいな物体がトーマの膝上で展開される。
「わぁ! 相変わらず好かれるね」
 群がる猫の可愛さに、ロゼットが笑顔を向けると、トーマはちょっと膝が重いんだけどと苦笑しつつも、気分は満更でもなさそうだ。

「可愛いー……けど猫さん、トーマを困らせちゃ駄目ですよ。わかったかにゃー?」
 猫に対して、「にゃー」とねこ語で話すロゼットに、猫はキョトンとしながら彼女の顔を見つめるばかり。
 それでもロゼットはマイペースに、膝の上にいる猫を一匹抱きかかえ、ふにゃりと柔らかな感触に思わず顔を綻ばせ、トーマの邪魔にならないよう、彼と背中合わせで座り込む。
「ふふ。にゃあ? にゃー。やっぱり癒されますね」
 変わらず猫口調で会話するロゼットの、表情とか柔い瞳や甘い声、その他諸々を聞いたり見たりしていると、次第にトーマの心臓が跳ねて鼓動が脈打ち……自分も猫変身して彼女に構ってもらいたい、なんて気持ちが一瞬過ぎるが。
(「いやいやいやっ! 別に同列になりたいわけじゃないし!?」)
 思わず猫に嫉妬してしまった自分が恥ずかしく、そんな邪な心を見透かすように見つめる猫と目が合うと、バツが悪そうに人差し指を唇へ。
「ねぇ、トーマも癒された?」
 横目でチラリと見た彼の、その表情はロゼットの瞳には寂しく映り、それならと――。
「うん、癒されてる。猫もロゼも可愛いし――んっ?」
 つんつんと、肩を軽く叩かれる感触がして、トーマがくるりと振り向いた時――頬にぺたりと肉球たっち!
「……ひっかかったにゃ。ふふ! トーマも一緒にあそぼ?」
 悪戯っぽい笑みを浮かべるロゼットに、トーマの猫への嫉妬もどこかに吹き飛び――遊ぶ遊ぶと返事して、身体にもたれる彼女の頭に、ふわりと手を乗せ、深い瑠璃色の髪を優しく撫でた――。

●猫スイーツで甘やかなひと時を
 可愛らしい猫達が寛ぐ楽園に、一歩足を踏み入れればそこは夢のような世界の始まり。
 ラウルとシズネの二人は、人懐っこい猫達と目一杯はしゃいで楽しんで、たくさん遊んでお礼におやつをあげた後、今度は自分達のおやつタイムと猫スイーツを頼むのだった。
 猫と戯れた後は猫スイーツに癒される。まさに猫尽くしのイベントは、なんて最高なのだとラウルは思っていたのだが……。
 メニューを開いたその瞬間――そこにあるのは、全部食べたくなるほど可愛らしい見た目のスイーツばかり。
 でも流石にそんなに食べることは無理だから……眉間に皺を寄せながら、険しい顔で悩むラウルに、まるでデウスエクスと戦っているくらい真剣だなとシズネは思う。
 きっと甘いものに目のない彼のことだから、大きいとは言えない自分の胃と、絶賛相談中なのだろう――と、よく知る相棒の気持ちを考えながらも、自身はウキウキと心躍らせながらメニュー表に目を走らせていた。
 真剣に、人生の重大な選択と思えるくらい悩んだ末、ラウルが最終的に決めたメニュー。
 猫型のチョコケーキ、ふかふか肉球マカロン、焼きメレンゲの白猫が眠る桃パフェの三つにどうにか絞り、残りは今度また訪れた時に食べようと、名残惜しそうにメニュー表を閉じて注文する。
 それから出来上がるのを待つ間、シズネは何を頼んだの? とラウルが聞けば。何故だか得意げな顔でラウルの方を見るシズネ。
 そいつは後のお楽しみ、と笑って答えをはぐらかすシズネに、ラウルは不思議そうに首を傾げて見つめていると――お待ちかねの猫スイーツ達が、二人のテーブルに運ばれてきた。
 そしてシズネの前に並べられたスイーツ類を見て、ラウルは彼の思わせぶりな態度と笑みの理由に漸く納得するのであった。

 薄縹色の双眸に映る、テーブルの上に置かれた物は、パンケーキとどら焼きとクッキー。それらはラウルが頼みたくても泣く泣く諦めたスイーツ達。
「ソレ……もしかして俺の為に頼んでくれたの?」
 そう問えば、シズネはニヤリと口元緩め、気が利く男だろうと言わんばかりのしたり顔を披露する。
「おめぇも一緒に食うだろ?」
 返ってきた言葉に、ラウルは表情を綻ばせ、今日一番の笑顔を浮かべて喜んだ。
 嬉しそうな彼の笑顔を見られただけでも、頼んだ甲斐があったとシズネも満足そうに微笑んで。心が通じ合っている二人だからこそ、嬉しさも甘い幸せも、こうして分け合えることができるのだ。
 後は甘やかなるスイーツで、二人だけの蕩けるようなひと時を。
 それぞれ頼んだお菓子を食べ比べたり、何気に抓んだマカロンを、相手の口に運んだり。
 そんなやり取りをしながら食べるスイーツに、二人は幸福感でお腹も心もいっぱいに満たされるのだった――。

●ご褒美タイムはおやつのじかん
「猫宮さんはお誕生日おめでとうございますー! 猫のようにみんなから愛される一年となりますように」
「猫宮はお誘い感謝と、誕生日おめでとう。どうか良い1年を過ごしてね」
 環とアンセルムは、猫カフェに誘ってくれた感謝の気持ちと、誕生日のお祝いを兼ねて、ルーチェにお礼の言葉を述べるのだった。
「二人ともどうもありがとー! にゃんこといっぱい遊んでいってね♪」
 ルーチェにとってはこうして来てくれたことが何より嬉しく、ゆっくりしていってねと、満面の笑顔で二人を猫の楽園世界に案内する。
 店内に入ればそこは可愛い猫だらけの空間。所狭しと遊び回ったり、寝転がっている猫達が目の前にいる。
 これは楽しみ甲斐がありそうだ、とアンセルムがわくわくしながら眺めていると、一匹の猫が彼の近くに寄ってきた。
 身体をすりすりさせながら、にゃん♪ と甘える仕草を見せる猫の子の、頭をふわりと撫でるアンセルム。
「ふふ、あったかい。ぬいぐるみもいいけれど、本物は本物にしかない良さがあるよね」
 このふわふわした毛並みと温もりは、生身だからこそ感じられると改めて思い、そうして猫とスキンシップを取りながら、そっと猫じゃらしを取り出した。
「……この羽根がついた猫じゃらし、気に入ってくれるかな?」
 猫の顔に羽根の猫じゃらしを近付けて、鼻を擽るようにふりふりすれば、猫はその羽根を捕まえようと手を伸ばす。
「さて、私も猫ちゃんと遊びたいなー」
 アンセルムが猫じゃらしで戯れている様子を横目で見つつ、それならば、と環はねずみのマスコット付き猫じゃらしで猫に挑む。
「最初に興味を持ってくれる子は誰ですかねー?」
 床に這わせるようにねずみマスコットを操る環。すると寝転がっていた猫がそれに反応したのか、ぴょんと起き上がって態勢変えて、素早くねずみマスコットに飛びついた。
「あ、早速……この子動きがいい! でも簡単には捕まりませんよー!」
 環は妙な対抗心を燃え上がらせて、猫に捕まるまいとねずみマスコットを逃がそうと――斯くして猫とねずみの追いかけっこが始まって、わいわい楽しく盛り上がりを見せる。

 ――そして一通り遊んだ後は、お礼におやつのご褒美タイム。
 環が棒付きアイス風のおやつを手にしながら、差し出すと猫は目を輝かせ、両手でおやつをパシッと掴んで齧りつく。
 その動作がたまらなく可愛すぎると、環は胸がきゅんとなって幸せ気分に満たされる。
 片やアンセルムはどんなおやつがいいかと悩んでいたが、クリーム入りのクッキーが美味しそうだと気になって。それにしようかと買った後、ちらっと環の方を見て――。
「……すみませーん、こっち猫のおやつもう一つください」
 アンちゃんは2個もおやつを? と環が不思議に思っていると。
「いや、ほら。一緒に遊んでくれた猫さんにお礼を、と思ってね?」
 そう言って、猫耳の彼女に視線を送るアンセルム。
「え、片方は私に? わーいおやつ大好きありがとにゃん♪ ……って私はウェアライダーですけどー!?」
 言葉の意味に気付いて膨れる環に、アンセルムは冗談だよ、と苦笑して。
「代わりにあっちのカフェで、何か好きなの奢ってあげよう」
 フォローも忘れず。後は二人で仲良く、猫スイーツを心行くまで堪能していった――。

●今日はとってもにゃんだふる☆
「ね、ね……猫ちゃぁんっ! かわいい猫ちゃんっ」
 ミリムが目にした光景は、猫だらけのまさににゃんこパラダイス。
 猫カフェに来たのはこれが初めてではないけれど、猫に囲まれて過ごす幸福感に、ミリムは感動のあまりただただ言葉を失ってしまう。
「こ、ここはひとまず落ち着くのです……。とりあえずは深呼吸を……」
 すぅっと大きく息を吸い込んで、肺いっぱい溜まった空気をふぅっと吐き出し、どうにか平静を取り戻そうとする。しかし猫と一緒の空気にいると思うと、余計に興奮してきたり。
 それでも何とか落ち着いて、猫じゃらしを片手にテーブル席に着き、机の上にでんと居座るずんぐり大きな猫ちゃんを、じーっと見つめてみるが猫は動じることなく起き上がろうとしない。
「だったらこれでどうでしょう……!」
 ならばとミリムは、必殺の猫じゃらしを猫の目の前でふりふりするが、猫は気にせず欠伸をし、くるりと丸まり、うたた寝をする。
「むぅ……この猫ちゃんはおねむでしょうか?」
 遊び疲れて眠いのだろうか、そう考えながらミリムはずんぐり猫をそっと抱き、隣に置いて寝かしつける。
 気持ち良さそうだと微笑ましそうに眺めていると、注文していたラテアートがテーブルの上に運ばれてきた――。

「わわっ! 可愛い猫ちゃんのラテアートだねっ」
 そこへルーチェがやってきて、目を輝かせながらミリムのラテアートを覗き込む。
「折角ですから、ルーチェさんも一緒にカフェしませんか?」
「うんっ、いいよっ! それじゃアタシも注文するねっ」
 そう言ってルーチェが向かいの席に腰掛けて、二人は暫しのカフェの時間を楽しんだ。
 ルーチェが注文したのは立体的な3Dラテアート。
 猫の形の泡がカップの中から零れ落ちそうなほど飛び出して。カップを手に取り、揺らしてみれば、泡がぷるぷる震える様子が何とも可笑しく。飲むのが勿体ないくらい、ほっこり気分で癒してくれる。
「見た目も可愛いけれど、おいしいねっ♪」
 泡をスプーンで掬って、ぱくっとお口の中へ。蕩けるような甘さに頬も緩んで、至福の時に満たされる。
 そうしてひと息吐いた後、ミリムは不意に悪戯心で、ルーチェに猫じゃらしをふりふりしてみる。するとルーチェは手を軽く握って、にゃんっ、と猫じゃらしを叩いてみせた。
 えへへっ、と冗談めかして笑う彼女に、ミリムもにっこり笑顔を返し、温かくて優しい気持ちに包まれるのだった――。

作者:朱乃天 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月17日
難度:易しい
参加:11人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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